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マンションを譲渡されたり、住宅取得資金の提供を受けたりしたときには、基礎控除額(※)を超えると贈与税が発生します。しかし親や祖父母、他人から資金提供を受けたときや、夫婦間で不動産を譲渡したときでも贈与税はかかるのか、どのくらいかかるのか気になる人もいるのではないでしょうか? この記事では、「マンションと贈与税」について、発生するケースや計算方法、暦年課税と相続時精算課税の違いなどや贈与税を払えないときにどうなるのかについて、高柳総合事務所の高柳俊久さんに伺いわかりやすく解説します。
※基礎控除額とは、贈与税の計算をする際に、贈与財産の価額の合計額から控除する金額のことです。
※本記事は令和6年(2024年)1月1日現在の法律に基づき作成しています。
贈与とは、当事者の一方が財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって効力が生じる契約です。贈与は親族間だけでなく、他人や法人との間でも成立します。この贈与のうち、個人間で行われた贈与に対して課税される税金が贈与税です。当事者の一方又は双方が法人の場合は贈与税ではなく、法人税や所得税の課税が生じます。
「贈与税は、1年間に基礎控除額である110万円を超える財産の贈与を受けた場合にかかる税金で、受け取った側が払います。課税対象となる財産は金銭に限らず、マンションなどの不動産や宝飾品、自動車なども含まれます。
贈与は『双方の合意』がなければ成り立たない点に注意が必要です。また贈与は口頭でも成立しますが、口頭での贈与は解除される可能性があり、また証拠を残す意味においても書面(贈与契約書)をつくっておくことをおすすめします」(高柳さん/以下同)

マンションで贈与税が発生するのには、主に2つのケースが考えられます。
最初に考えられるのは、マンションそのものを贈与(現物贈与)されたケースです。具体的には以下のような状況が考えられます。
1.親の名義のマンションを生前贈与された
2.親がマンションを購入し、子どもの名義で登記した
3.親族から著しく低い価格でマンションを購入した
「1と2のケースでは、マンションを贈与したあとに高額な贈与税がかかると知り、親の名義に戻す登記をすることもあります。3は一見贈与には見えませんが、市場価格よりも明らかに低い価格で購入した場合、贈与とみなされる場合があります。マンションを贈与するときには、どの程度贈与税がかかるのか、あらかじめ確認のうえ決断することが重要です」
マンションを購入する際、親や祖父母から資金援助を受けることもあります。その場合も、基礎控除額の110万円を超えると贈与税が発生します。
ただし、マイホームに対する資金援助の場合、要件を満たすと一定額まで非課税になる制度があります。詳しくは「直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けたときの非課税制度」をご覧ください。

贈与を受けた場合、税金の計算方法には相続時精算課税と歴年課税があります。それぞれの計算方法を解説します。
「贈与財産額は、マンションの資金贈与であればその金額で計算します。一方、マンション現物の贈与の場合は、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で計算するのが原則です。路線価とは、その土地が面している道路ごとに設定された、1.0m2あたりの価額です」
相続時精算課税とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子や孫が贈与を受けた場合にのみ選択できる制度です。この制度を選択した場合、1年間に贈与により取得した財産の合計額から、基礎控除額110万円を控除し、さらに累計2500万円に達するまで特別控除を受けることができ、これを超えた額に対して一律20%の贈与税が課されます。
「相続時精算課税は令和6年(2024年)1月1日から改正され、それ以降に贈与された財産については、特別控除の2500万円の枠とは別に、1年につき基礎控除である110万円を差し引けるようになりました。」
なお、本制度により財産の贈与を受けた後、その贈与者が死亡した場合、その者から贈与により取得した財産の価額(基礎控除額110万円を控除した後の金額)の合計額を、相続財産に加算して相続税の計算をします。ただし、贈与を受けた総額(基礎控除額110万円を控除した後の金額)が、相続税の基礎控除内(※)におさまる場合は、相続税は発生しません」
※相続税の基礎控除額は、3000万円+(600万円×法定相続人の数)で計算した金額です。
【例】父一人子一人の家庭で、令和6年(2024年)1月1日以降に父のマンション(3500万円)の贈与を子が受け、相続時精算課税制度を選択した場合
・特別控除2500万円+基礎控除110万円までは贈与時に課税されず、残りの890万円については20%の贈与税が課税される
・そして、相続発生時に3390万円(3500万円-110万円)が相続税の対象となるが、父に他の相続財産が無い場合は相続税の基礎控除内(3000万円+600万円=3600万円)なので相続税はかからず、既に課税された贈与税分は還付される

「なお相続時精算課税は、個人対個人の関係で考えます。そのため、父に対しては相続時精算課税、母に対しては歴年課税といった選択も可能です。ただし一度選択すると、その相手に対してはすべて相続時精算課税が適用され、あとから変更はできません。
また、相続時精算課税制度のデメリットとして、相続であれば受けられる小規模宅地等の特例が使えなくなるという点が挙げられます。この制度は一定の要件を満たすと宅地の評価額が80%または50%減額されるものであり、相続税の負担を著しく軽減できます。
相続時精算課税の場合は、贈与時の評価額(基礎控除額110万円を控除した後の金額)を相続時に相続財産に加算するため、宅地の評価を80%または50%減額することができません。よって、生前贈与をしない方が税負担という観点からは有利な場合もありますので、どちらがよいか事前に税理士に相談をすることをおすすめします」
歴年課税は、相続時精算課税の対象とならない場合や、対象となるけれども選択しなかった場合に採用されます。
歴年課税におけるマンションの贈与税は、以下の計算式で求めます。
歴年課税での贈与税の税率は、特例税率と一般税率があります。
「特例税率とは、直系尊属(父母や祖父母など)から、18歳以上の子や孫に対して贈与された財産(特例贈与財産)に対して用いる税率で、基礎控除後の課税価格により以下のように税率と控除額が定められています」
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | – |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4500万円超 | 55% | 640万円 |
「対して一般税率は、特例税率に該当しない場合に使用されます。例えば他人同士や夫婦間、また18歳未満の子や孫に対する贈与は、以下の一般税率が適用されます」
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | – |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3000万円超 | 55% | 400万円 |
「贈与税は、基礎控除の110万円を超える贈与を受けた場合、翌年の2月1日から3月15日までの間に住所地の所轄税務署に申告し、3月15日までに一括納付するのが原則です。一方、110万円を超えない場合は、申告の必要はありません。
なお相続時精算課税を選択すると、基礎控除を超えても2500万円の枠内であれば贈与税が発生しませんが、その場合も同じ期限内に申告が必要です」

婚姻期間が20年を超える夫婦間でマンションを贈与した場合には、「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」を受けられる可能性があります。
「この制度は、居住用不動産もしくは居住用不動産を購入するための資金の贈与が行われたときに、基礎控除110万円にプラスして2000万円、つまり年間2110万円まで控除される制度です。婚姻期間が20年以上ある夫婦間の贈与に限られるため『おしどり贈与』とも呼ばれます」
夫婦間のマンションの贈与でこの制度の適用を受けるには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与を受けた人が贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた資金で取得したマンションに現実に住んでいて、その後も引き続き住む見込みであることも条件です。

夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除についてもっと詳しく
No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
「直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けたときの非課税制度」は、18歳以上(贈与を受けた年の1月1日時点)の人が、父母や祖父母などの直系尊属からマイホームの新築や購入にかかる資金を受けたときに、一定の要件を満たすことで贈与税が非課税となる制度です。令和6年(2024年)1月1日から、令和8年(2026年)12月31日までの間に受けた贈与が対象です。
「非課税となる限度額は住宅性能によって異なり、省エネ住宅の場合は1000万円まで、それ以外の住宅だと500万円が上限です」
ほかにも贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下(対象住宅の床面積が40m2以上50m2未満の場合は1000万円以下)など、さまざまな要件があります。適用を受けられるかどうかは、よく確認が必要です。
「なお住宅取得資金の贈与の非課税制度は、相続時精算課税と併用が可能です。併用すると、最大で3610万円(相続時精算課税の非課税枠2500万円+住宅取得資金の贈与の非課税枠1000万円+基礎控除110万円)まで贈与税が非課税になります」
「直系尊属からの非課税制度」と「相続時精算課税の住宅資金特例」についてもっと詳しく
親からの資金援助。贈与税の2つの特例 「直系尊属からの非課税制度」と「相続時精算課税の住宅資金特例」をどう使う?
直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けたときの非課税制度についてもっと詳しく
No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
それではマンションの贈与を受けたときに実際どのくらいの贈与税がかかるのか、2つのケースでシミュレーションしてみましょう。
マンションの評価額は以下で試算します。
・土地の評価額:1500万円
・建物の評価額:3000万円
18歳以上の子が、60歳以上の親から以下評価額のマンションを贈与された場合について、相続時精算課税と歴年課税でシミュレーションしてみました。
4500万円 - 110万円(基礎控除)= 4390万円
4390万円 - 2500万円(特別控除)= 1890万円
1890万円 × 20% = 378万円
贈与税 = 378万円
4500万円 - 110万円(基礎控除)= 4390万円
4390万円 × 0.5 - 415万円(控除)= 1780万円
贈与税 = 1780万円
18歳以上の子が省エネ住宅の購入に際し、60歳以上の親から1500万円の資金贈与を受けた場合のシミュレーションは、以下のようになります。
1500万円 - 1000万円(省エネ住宅に対する控除)=500万円
500万円-110万円(基礎控除)= 390万円
390万円 - 2500万円(特別控除)= 0
贈与税 = なし
1500万円 - 1000万円(省エネ住宅に対する控除)=500万円
500万円-110万円(基礎控除)= 390万円
390万円 × 15%-10万円(控除)= 48.5万円
贈与税 = 48.5万円
関連リンク
住宅取得等資金の贈与税非課税特例について
「親や祖父母が購入したマンションに、家賃を払わず子どもが住む場合、贈与税が発生するのか気になる人もいるようですが、このようなケースでは贈与税はかかりません。たとえ子どもだけが住んでいても、マンション自体の所有権が存命している親や祖父母のものであるなら、贈与されたわけではないためです」
マンションの贈与で10万円以上の贈与税が発生し、納税が困難な場合、一定期間内に分割して納税する「延納制度」を利用できる場合があります。
「ただし延納制度を利用するには担保を提供する必要がありますし、また利子税もかかります。そのため利用するケースは非常にまれです。払えないほどの贈与税を発生させてまで、贈与を選択する必要が本当にあるのか、まずは税理士に相談してみることをおすすめします」

マンションの贈与を受けたときに、贈与税以外にかかる税金には以下のようなものがあります。
| 不動産取得税 |
|
|---|---|
| 登録免許税 |
|
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登録免許税とは? 相続の場合は? 計算方法や軽減措置の要件をわかりやすく解説!
最後にあらためて高柳さんに、マンションと贈与税についてアドバイスをいただきました。
「贈与のなかでも、直系尊属や夫婦間での贈与は将来の相続にも影響するものです。とくに直系尊属間の贈与は、精算課税の改正がされるなどし、制度がものすごく複雑になってきています。
『贈与したけれども、相続したほうが結果的に得だった』と後悔するケースは決して少なくありません。贈与税だけでなく、相続税も含めてトータルで税額を抑えたいと考える場合には、ぜひあらかじめ税理士に相談してみていただきたいです」
マンションの贈与税はマンションそのものを贈与されたときと資金の贈与を受けたときに発生する
直系尊属からの贈与や夫婦間の贈与では控除制度を活用できる場合がある
贈与税は相続税とあわせて考える必要があるため、専門家への相談も検討する