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突然起こるマンションでの停電。なぜ停電しているのか、水道やインターネット、トイレは使えるのか、復旧までどうすればいいのかわからなくて慌ててしまいます。停電のときは、ブレーカーが落ちたのか、わが家だけなのか、共用部分も含めたマンション全体なのか、原因によってその後の行動が変わりますから、対処法を知っておきましょう。また災害などで停電が数日続く場合にはどう備えておくとよいのかも紹介します。さくら事務所のマンション管理コンサルタント、土屋輝之さんに話を聞きました。
マンションで停電が起きたとき、わが家だけなのか、住んでいるマンションだけなのか、それとも地域全体なのかによって、その後の対応が違ってきます。
各住戸に設置されている分電盤のブレーカーが落ちていたら、わが家だけの停電です。
下の写真は分電盤。ここには、3種類のブレーカーがあります。
アンペアブレーカーは、契約アンペア以上の電気が流れると落ちます。この画像の分電盤の場合は60Aと書かれています。電力会社と契約している60A以上の電力を一度に使うとブレーカーが落ちることになります。使用中だった電化製品のスイッチをオフにしてから、ブレーカーのスイッチを入れましょう。
漏電ブレーカーは住戸内で漏電があると電気が遮断されます。漏電は自力では修理できませんから、マンションの管理会社(管理員)や契約している電力会社に連絡をしましょう。
安全ブレーカーは住戸内でいくつかに分かれている電気回路ごとの電気量を管理。電気を使い過ぎている回路のブレーカーが落ちます。家の中のどこかの部屋の照明や電化製品がオフになっているはずですから、その部屋の家電製品をオフにしたあとに、ブレーカーのスイッチを入れます。
「電力の使い過ぎや漏電のほか、電気回路の故障でもブレーカーが落ちることがあります」(土屋さん、以下同)
そのほか、原因不明な場合は、すぐに管理会社(管理員)や電力会社に連絡をしましょう。なお、マンションによっては、管理員が不在の曜日や時間帯もあります。管理員不在時や夜間の管理会社の窓口や、電力会社の緊急連絡窓口の電話番号を控えておくといいでしょう。

マンションが停電する状況や原因にはほかに次のようなことがあります。
自分が住んでいるマンションだけが停電している場合もあれば、地域全体が停電していることもあります。
「1棟のマンションだけが停電している原因には建物内の配線などのトラブルが、自分のマンションのほか、周辺のマンションが停電しているなら送電関係のトラブルが起きていることが考えられます」
そのほか、一瞬だけ停電する現象は、多くが送電線への落雷などが原因。自動的に再送電が行われます。
自力では復旧させることができず、数日間、場合によってはそれ以上続くことがあるのが自然災害による停電です。2019年9月9日には台風15号の影響で千葉県内では多くの電柱や電線が損壊。一部の家庭を除き復旧が完了したのは9月24日という長期にわたる被害を受けました。
「台風や地震などによる停電は、長期におよぶ可能性があります。東日本大震災のときには発電所が被災したことによる電力供給低下で計画停電が実施されています。停電の中でも深刻なのは、自然災害によるものです」
停電時に住戸内で水道水が使えるかどうかは、物件がどの給水方式なのかによって異なります。
給水方式は大きく分けると水道管からの水をマンションの地下などにある受水槽にためて、高架水槽(高置水槽)まで上げる『受水槽方式』と、水道管から直接各住戸に給水する『直結増圧方式』『直結直圧方式』があります。
水道管からの水が断水していなければ、停電していても給水されるのは水道管からの水圧を利用して給水される『直結直圧方式』です。
断水に関係なく停電時には使えなくなるのは、電力によるポンプで加圧して水を給水する『受水槽方式』と『直結増圧方式』です。

「受水槽方式のマンションの場合、停電直後は受水槽にためてある水を使用することができます。ただし、断水になるかもしれないからと、各世帯がバスタブに水をためたりすると、せっかくの受水槽の水があっという間になくなってしまいます。マンションによっては地震になると自動的に受水槽のバルブが閉じて給水できなくなります。これは、受水槽や高架水槽などの配管に損傷を受けても水槽内の水が流れ出すことなく、安全確実に水槽内の水を守るための緊急遮断弁と呼ばれる装置ですが、マンションの居住者みんなで大切に水を使えるようにという目的もあります。同時に地域と協定を結び、災害時には受水槽の水を地域で利用できるようにしているマンションもあります」
「オール電化のマンションの場合、停電時には電気を使う給水方式なら水も使えなくなります。水が使えたとしてもガスが通っていないため、お湯を沸かすことができません。普段から災害時用の水やカセットコンロなどの備蓄をしておくことが重要になります」
停電になると、マンションでは何が使えなくなるのでしょうか?
オール電化かどうかにかかわらず、停電するとマンションではさまざまな機能が使えなくなります。
「停電するとオートロックが自動的に解錠されるものと、施錠されるもの、停電してもしばらくはバッテリーで稼働するタイプがあります。施錠された場合は手動で開けることになります。ドアの開閉にはチカラが必要なので、停電中は人が通れるくらいの幅で開けておくマンションが多いようです。そのため、停電中は、『オートロックの機能がないマンション』になるのが一般的です」
停電中は、防犯カメラも作動しなくなります。
オートロックも使えず、セキュリティ機能が落ちた状態になりますから、居住者は住戸の玄関ドアの施錠をしっかりして、外部からの侵入被害に遭わないよう気をつける必要があります。
停電になればエレベーターは停止します。
「停電中は階段を使っての昇降になります。停電が長期になり、自力で住戸へ帰れない高層階の方がいる場合は、エントランスなどで避難できる仕組みをつくっておくといいですね」
タワーマンションなどでは非常用のエレベーターが稼働できますが、長期間の停電の場合は対応ができなくなるので安心はできません。
宅配ボックスには大きく分けてダイヤル式とコンピュータ式があります。ダイヤルやプッシュボタンで暗証番号を押すことで開閉するダイヤル型の場合は、電気を使わないため停電時でも使用できます。一方、コンピュータ制御されたタッチパネルやテンキーで施錠し、受け取る人は暗証番号や所有している鍵で解錠するコンピュータ式は、電気やインターネットを使用しているため、停電時には使えなくなります。どうしても荷物を取り出す必要がある場合は特殊鍵を使用して手動で解錠してもらうことになります。
マンションの宅配ボックスの種類や特徴について詳しく読む
「マンション宅配ボックスのサイズや種類、正しい使い方、トラブルの対処法を知って、暮らしをもっと便利に快適に!」
非常用照明が設けられていないマンションの場合は、廊下やエントランスなど共用スペースの照明がない状態になります。
停電時には駐車場入口のシャッターの開閉ができません。機械式駐車場も動かせなくなります。大雨が予想され機械式駐車場の地下部分が水没する可能性がある場合、車を移動させるなら危険のない雨が降り出す前のタイミングにしましょう。
マンションによっては、停電に備えて予備電源、非常用電源、発電機、などを備えています。また、太陽光パネルが設置されているマンションもあります。
「予備電源、非常用電源、発電機があっても、その電力でまかなえるのは非常用エレベーターや廊下の照明など最低限の共用設備のみなのが一般的。最近は、電力消費の少ないLED照明が各住戸のリビングなどに設置されていて、停電時には非常用電源で点灯するマンションもあります」
非常用電源などで使える設備はマンションによって異なりますから、一度、確認しておくといいでしょう。

停電すれば電気で動くものは使用できなくなります。照明器具やテレビなどのAV機器、電子レンジなどの調理家電、冷蔵庫、ドライヤーなどさまざまなものに影響があります。
エアコンや電気ストーブなど、電気を使用する冷暖房機器も使用できません。
換気扇も使えません。停電中にカセットコンロで料理をしたり、ガスストーブで暖をとったりする場合は窓を開けるなど室内の換気に注意をする必要があります。
バッテリーを内蔵したスマートフォンやパソコンは、停電時でも充電が切れるまでは使用できますが、インターネットは回線の混雑状況や通信事業者による通信量の制限、基地局の設備損傷など、回線の状況によって使用できなくなります。電源が必要なWi-Fiの接続機器も使えなくなるため、Wi-Fiを使用することもできません。
AC電源が必要な固定電話機の場合、機種によって停電時には内蔵バッテリーで通話が可能です。しかし、停電時対応の機能がついていない場合は使用することができません。
なお、住戸の玄関ドアに使用される電子錠は、ほとんどが電池式なので停電でもそのまま使うことができます。
「電子錠は停電では影響はありませんが、電池切れで動かなくなることがあるので注意しましょう。充電タイプの電池よりも、コンビニなどで買える普通の乾電池で動くものが安心です」

停電が起きると電動のポンプで給水している『直結増圧方式』『受水槽方式』のマンションは水が出なくなるため、トイレは使えません。受水槽に水をためてある受水槽方式でも、水は飲料水としての使用が優先されますから、トイレ用に使う余裕はありません。
「災害用のトイレを用意しておきましょう。1人当たり1日5回分程度を目安に最低でも1週間分は備えておきたいですね」
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「マンションは災害時にトイレを流してはいけない?その理由と対処法を紹介」
災害への対策には行政が行う『公助』、地域やマンションの管理組合などで助け合う『共助』、自分自身や家族で備えておく『自助』があります。
「マンションのお住まいの方の中には、災害時用の水や管理トイレの備蓄は管理組合がするものと考えている方もいらっしゃいます。もちろん助け合う『共助』はあったほうがいいのですが、しかし、災害対策、停電対策は『自助』が基本です」
被災時には管理組合の理事や管理会社も被災者。不自由な思いをするのは皆一緒ですから、水や食糧、乾電池など、停電など被災時に必要なものは自分で備蓄しておくことが必要です。

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地震後、停電が復旧すると、電気ストーブなどの倒れた電気機器や、家電の配線から出火する通電火災という現象があります。通電火災を防ぐには、使用中のドライヤーや暖房器具などの家電のスイッチを切り、電源プラグをコンセントから抜いておくこと。また、地震が起こると内蔵のセンサーが反応してブレーカーが落ちる感震ブレーカーや、一定の震度でおもりが落下してブレーカーを落とすオモリ玉などを設置しておく方法もあります。ただし、自動でブレーカーが落ちるため、夜間の地震の場合は停電していない場合でも室内が真っ暗になってしまいます。
「コンセントに差しておく非常用の小さな照明器具があります。停電すると充電された電力で照明がつく仕組みです。廊下や寝室、トイレ、リビングなどにつけておけば、停電でブレーカーが落ちても部屋の中が真っ暗にならず安心です」
停電しても、給水に影響がない直結直圧方式のマンションでも、上水道からの送水が止まる断水になった場合は、水を使うことができません。マンションの給水方式がいずれであったとしても、長期の停電に備える水の備蓄は必要です。
「飲料水や料理に使う水は、最低でも1人当たり1日3Lは必要。1週間分の水を用意しておくのが望ましいです。4人家族なら84L。2Lのペットボトルで42本です。普段からペットボトルのお水を使うご家庭なら、使いながら補充していくローリングストックがおすすめです。普段、ペットボトルのお水は使わないというご家庭なら、保存期間5年などの長期保存水を備蓄しておくのがいいでしょう」
豪雨などによる水害と停電で機械式駐車場に止めていた車が水没し、動かなくなってしまった場合、マンションの管理組合が入っている損害保険では補償されません。
「個人の車両保険などでも種類によってはヒョウや水害などの自然災害による損害は補償されません。機械式駐車場で地下を利用しているなら、保険の見直しをしましょう。最近は車もずいぶんと値上がりしていますから、被災したときのダメージは大きいもの。ちなみに、最近、天災による損害の補償のある保険内容に変更した場合の保険料を確認したところ、差額は月3000円程度でした」
(2024年12月調べ)

災害への備えは自分で行うのが基本ではありますが、停電でエレベーターが動かず、自宅に帰れない人が出るケースもあります。
「管理組合で水や寝具、パーテーションなどを準備しておき、エントランスなどマンション内で避難ができるようにしておくといいでしょう。保管場所はエントランスか1階フロア。管理員室は管理組合員が自由に出入りできない場合は保管場所には向きません」
また、自分で災害への備えを、といわれても何をそろえておけばいいのかわからない人もいるでしょう。
「防災セットは通信販売などでも手に入りますが、マンションの居住者の中にはパソコンやスマホで買い物をしたことがない方や、通信販売は苦手という方もいらっしゃるでしょう。管理組合と管理会社で備蓄品の展示即売会を開くのも一つの方法です」
停電が起きたとき、オートロックはどうなるのか、エレベーターは全て使えなくなるのか、水は出るのか、トイレの水は流していいのか、非常用電源でまかなえるのはどの設備かなど、停電時のマンションの状態は物件によって異なります。管理組合で、自分たちのマンションが停電時にどのような状態になるのか、普段から知らせておくことで、いざというときに居住者の方たちも慌てずに済みます。
停電時にどうなるかを管理組合や管理会社でも把握していない場合があります。管理会社にマンションを設計した会社や、エレベーターやオートロックの設備会社などに確認してもらいましょう。
災害時に安否の確認をしてほしいという居住者がいれば、居住者名簿にその旨を記載。名簿はパソコンに保存しておくと、停電後にバッテリーがなくなると閲覧ができなくなります。
「紙の名簿を作成し、個人情報ですから封筒に入れて管理組合の理事長の印鑑などで封をします。年に一度、総会のときなどに更新するのがいいでしょう。そのほかの時期でも、『最近ちょっと体が自由に動かなくて。安否確認してほしい』といった方がいらっしゃれば、その方に立ち会っていただいて名簿を差し替えて封をすればよいと思います」
マンションで停電が起きると、使える設備、使えない設備が出てきます。災害などで停電が長期になると、エレベーターが使えず不便な暮らしが続きます。停電に備えて個人でできること、管理組合でしておくことなどを災害が起きる前に整理しておくとよいでしょう。
マンションでの停電は住戸内での電力の使いすぎ、マンションの電気設備の故障、自然災害など原因はさまざま
マンションの停電で使えなくなるものはマンションによって異なる
水が使えるかどうかは電力が必要な給水方式なのか、断水しているのかなど
停電への備えは、個人がそれぞれに行うのが基本
マンションの管理組合は停電時の設備がどう動くのか、動かないのかを居住者に広報しておくことが大切