マンションの駐車場には、平置き駐車場、自走式立体駐車場、機械式立体駐車場などいくつかタイプがあるのをご存じですか? 専門家のグロープロフィット竹内さんのお話をもとに、トラブルに備えてマンションの駐車場で気を付けることと、EV充電設備についても紹介します。
マンションの駐車場には、どのようなタイプがあるのでしょうか?
「大きく分けて、自走式駐車場と機械式駐車場があります。自走式駐車場の中に、平置き駐車場と自走式立体駐車場があり、機械式駐車場の中にパズル式やピット式、タワー式などがあります」(竹内さん、以下同)
種類 | |
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自走式駐車場 | 平置き駐車場、自走式立体駐車場 |
機械式駐車場 | パズル式、ピット式、タワー式など |
そうした中から代表的な3つのタイプについて紹介します。
自分の自動車を止める区画が白線やロープなどで区切られており、道路からそのまま自走して駐車することができる駐車場です。
「特徴は、オープンで屋根のないことです」
道路から自走して決められた区画に駐車することができますが、駐車場が複数階建ての構造物になっており、自走して上下階へ移動します。
「最上階以外は屋根がありますが、最上階は屋根のないことが多いですね」
駐車場が機械式になっており、駐車した後に機械を操作して自動車を上下に移動させます。
機械式駐車場にはさまざまなタイプがありますが、機械式立体駐車場で思い浮かぶのはタワー式のものでしょう。
機械式駐車場についてもっと詳しく
→機械式駐車場の基本~仕組み、使い方、メリット・デメリット~
機械操作が必要ないので、入出庫に時間がかかりません。また、平地に駐車するため複数階建ての構造物はなく、機械を使わないので、初期コストやメンテナンスコストも不要または低額で済みます。
「車高制限がなく、背の高い自動車を駐車できる点もメリットです」
自動車に誰でも簡単にアクセスできるので、いたずらや車上荒らしに合いやすい点はデメリットです。風雨にさらされやすいので、高級車を駐車したくないという住民もいるでしょう。
「駐車する区画によって、不公平感が出やすい点もデメリットです。駐車しにくい区画、自分の住戸から遠い区画などがどうしてもできるので、何年かに一度抽選をして駐車区画を入れ替えるマンションもあります」
広い面積が必要で、都心部など地価の高い地域では、1台あたりの利用料が高くなる場合もあります。
機械操作が不要です。階段やエレベーターを使って自分の駐車区画に移動しなければなりませんが、機械式よりは入出庫に時間がかかりません。
「最上階でなければ屋根があるため、夏場でも暑くなり過ぎない点はメリットです。雨にあたらないので、乗り降りもスムーズでしょう」
いたずらや車上荒らしに合いやすい点、駐車しにくい区画があり不公平感が出る点は、平置き駐車場のデメリットと同様です。
「駐車する構造物の初期コストやメンテナンスコストが駐車場の利用料金に跳ね返ることも想定しておいてください」
タワー式の立体駐車場の場合、入庫する場所はどの自動車も同じなので、不公平感を感じることはないでしょう。風雨にさらされることも、直射日光を浴びることもないため、夏場に車内が暑くなり過ぎることもありません。
また、機械を操作しなければ自動車にアクセスできないため、いたずらや車上荒らしに合う危険もありません。
「敷地面積が狭くても駐車場を設けることができるため、地価の高い地域でも取り入れやすいのはメリットです」
自分で機械を操作しなければならないので時間がかかり、降車や発車がすぐにできません。降車した後に、車内の忘れ物に気づいた場合は、機械を操作して車内にアクセスし直さなければならないなど、煩わしく感じることも多いでしょう。車高制限もあり、背の高い自動車は使えない場合があります。
「機械式駐車場の初期コスト、メンテナンスコストが、駐車場の利用料に跳ね返る点はデメリットです」
また、メンテナンス費用を大規模修繕用の修繕積立金でまかなうため、マンション駐車場を利用する家庭のコストは高額になりがちです。
マンション駐車場の権利や料金も気になる点です。
「一般的に、マンションの駐車場は共用部です。共用部を独占的に使う権利は、専用使用権といいます。マンション駐車場に所有権を設定しているケースは、あまりありません」
専用使用権は駐車場に限らず、ルーフバルコニーなども専用使用権で利用することになります。
なお、利用料金は、地域やマンションの規模、マンションの完成年次によって相場が異なります。
マンション駐車場を使用するには、入居時に管理組合に申請して駐車場の使用契約書を締結しなければなりません。また、管理規約に車幅や車高制限があり、マンション駐車場と自動車によっては契約できない場合もあります。
マンションには、駐車場を使う住民もいれば、使わない住民もいます。利用料金の支払いはどのようになっているのでしょうか?
「駐車場を使う人、つまり専用使用権を有する人は、利用料金として専用使用料を支払います」
専用使用料は、管理費へ充当されます。もちろん、駐車場を使わない人、つまり専用使用権を有していない人は、駐車場の利用料金を支払う必要はありません。
参考までに、国土交通省の『平成30年度マンション総合調査結果』によると、使用料・専用使用料から管理費への充当額は、東京圏で1戸あたり月に4315円です。
ただし、上記の使用料・専用使用料には、駐車場の利用料金だけでなくルーフバルコニーなどの使用料も含まれているため、注意が必要です。
マンション駐車場の利用料金についてもっと詳しく
→国土交通省 マンションに関する統計・データ等
「マンションの場合、自分の住戸から駐車場まで、距離が遠くなりがちです。一戸建てのように、玄関の前に駐車場があるわけではないので、米や水などの重い荷物を運ぶのは大変だと思ってください。
マンションのエントランス近くに一時駐車しておける『車止め』があるマンションもありますが、一部の高級マンションに限られます」
マンションに駐車場があっても、必ず空きがあり自分も使えるとは限りません。空きがあるかどうかを確認しましょう。
「もしも、自分のマンションに駐車場の空きがなければ、周囲の月極駐車場などを契約して、マンションの駐車場に空きが出るまで待つことになります」
平置き駐車場は、駐車区画に誰でも簡単にアクセスできるため、区画を間違えて駐車してしまう、または駐車されてしまう場合があります。
「自分の区画に知らない自動車が止まっている場合は、管理組合にその旨を伝えて、マンションの館内放送などで移動を促すアナウンスをしてもらいましょう」
自分の駐車区画に他人の自動車が駐車されていて、マンションの館内放送が使えない場合、ワイパーに警告文を挟んだりする方法がありますが、数日間駐車されているなど悪質なケースは、必要な手続きをふんで、陸運局で自動車の持ち主を割り出し、直接警告しなければなりません。管理会社と相談して対応しましょう。
区画を間違えて駐車してしまう、されてしまう点は、平置き駐車場と同様です。
「構造物内に駐車するため、柱などが邪魔になり、平置き駐車場よりもぶつけやすい点は注意しましょう」
「出庫に時間がかかるため、余裕を持って準備しましょう。雨の日の朝などは、子どもの送り迎えに自動車を使う人が増えるので、出庫に30分以上かかる場合もあります。
また、子どもが小さく、ベビーカーを使っている家庭は、親子2人で出かけようとすると、親が自動車に乗り込む間など、一時的にベビーカーから目を離さざるを得ないため危険な場合もあります」
「機械式ではあまりありませんが、自走式では無断駐車されてしまうことがあります」
「自走式の場合、車同士の事故があり得ます。柱などにこすってしまうこともあるでしょう。
機械式では、駐車するスペースが狭いので、慎重に入出庫しないと機械にこすってしまうことがあります。また過去には、機械の操作ミスで子どもを巻き込んでしまうような、痛ましい事故もありました」
「機械式の場合は、停電で車を動かせないことや、機械の故障によって使えないことがあります」
「自走式のデメリットでも挙げましたが、常に誰かの目がいき届いているわけではないので、車上荒らしなどの犯罪は起こり得ます」
では、マンション駐車場でトラブルが起きたときは、どうすればいいのでしょうか?
「まずは、管理組合に連絡することです。車上荒らしなど明らかな犯罪の場合は、警察に連絡してもいいでしょう」
最近、ニュースなどで話題に上ることの多いEV(電気自動車)ですが、EV充電設備をマンションに導入して欲しいという人もいるでしょう。
「EV充電設備のあるマンションもありますが、少ないのが現状です。日本では、EV自体があまり普及しておらず、マンションのEV充電設備もほとんど普及していません」
では、EV充電設備をマンションに導入する際の課題は何なのでしょうか?
「日本のEV普及率が少ないので、EV充電設備を導入しようというマンションは多くありません。経済産業省の資料によると、EV購入者のうち、マンションなど集合住宅に住んでいる人は1割程度しかいないのが現状です」
分譲マンションの住人でEVに乗っている人が増えないと、EV充電設備を導入しようという声は上がらないでしょう。
マンションに設置するEV充電設備を整備するのに、補助金が出ることがあります。マンションのある地域が対象になっているかどうか、補助が受けられる充電設備や補助金の額などを確認してください。
充電設備の補助金についてもっと詳しく
→一般社団法人 次世代自動車振興センター
「EV充電設備をマンションに導入したい場合は、導入を希望する住人が管理組合の理事会に議案を上げ、総会の普通決議で過半数の同意があれば、導入が決定します」
導入が決定したら、充電設備の整備会社へ工事を依頼する、補助金を申請するなどの具体的な手順に進みます。
「新築マンションの場合は、デベロッパーの判断で最初から設置されている場合もありますが、現状ではあまり期待できないでしょう。
EV充電設備が欲しいけれど自分のマンションにない場合は、自ら理事会に議案を上げて、過半数の同意を得る必要があります。
今後、日本でももっとEVが普及すれば、マンションへのEV充電設備の普及も進むでしょう」
マンションの駐車場にはさまざまなタイプがあり、それぞれにメリット・デメリットがあることが分かりました。メリット・デメリットを理解して、トラブルには注意しましょう。
また、マンションにおけるEV充電設備の現状や課題も確認して、今後に活かしましょう。
マンション駐車場にはさまざまなタイプがあり、それぞれにメリット・デメリットがある
マンション駐車場での事故や犯罪などトラブルに注意
現状、日本のマンションにEV充電設備は普及していない