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空間を有効に使えるうえ、おしゃれで個性的なイメージのある「スキップフロア」。魅力のある間取りですが、一部には失敗した、後悔したという声もあります。では、スキップフロアで後悔しない間取りにするにはどうすればいいのでしょうか。スキップフロアのメリット・デメリットや適した条件をスタジオ・ノアの森信人さんに聞きながら、後悔しないポイントや間取り実例をあわせてご紹介します。
まずは、スキップフロアがどのような間取りなのかを知るために、基本的な特徴とあわせて、ロフトや小上がりなどほかの空間との違いを見ていきましょう。
簡単にいえば、スキップフロアは同じフロア内に複数の階層を持つ間取りのこと。狭小地などで注文住宅を検討する際、プランの候補として挙げられることの多い造りです。
「上下階が半階ずつずれている構造、またはそういった構造の空間や住居のことをスキップフロアと呼んでいます。ひとつの空間の中に異なるフロアがあるという点で、段差をつけて収納を設けた空間もスキップフロアといえるでしょう」(森さん、以下同)

スキップフロアと似た言葉に、「半地下」や「中二階」、「ロフト」「小上がり」「ダウンフロア」などがあります。それぞれ、スキップフロアとはどのような違いがあるのでしょうか。
半地下は、床から天井までが完全に地盤面の下にあるのではなく、一部が地盤面の上にある空間のことです。
「ただし、建築基準法において半地下という定義はなく、通常の地下と同じ扱いになるため、半地下は正式には『地階(ちかい)』と記されることが一般的です」
なお、建築基準法の「地階」とは、「床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの3分の1以上のもの」のことを指します。
中二階は、1階と2階の中間の高さに床を設けた階のことです。なお、これも半地下と同様に建築基準法に定義はありません。
屋根裏に設けられた部屋をロフトといい、基準を満たせば延床面積に算入されない「小屋裏物置等」になります。
居室の中にある、段差で間仕切られたスペースのことで、床面より高い場合はこう呼び、畳敷きの場合小上がり和室ともいわれる。リビングの一角に設けられることも多く、その高さを活かして内部を収納にすることも多いです。
居室の中にある、段差で間仕切られたスペースのことで、こちらは床面より低い場合です。壁に囲まれたスペースができるため別空間のように感じられます。
「半地下、中二階、ロフト、小上がり、ダウンフロアは、スキップフロアにした場合に生まれやすい空間の種類です。構造上、スキップフロアの家で自然とできる、または採用されやすい空間ということです」

スキップフロアを採用すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
建築基準法施行令第2条第1項第8号によると、一定の条件を満たした場合にはスキップフロアをはじめとする「小屋裏物置等」は一般居室には該当せず、延床面積としてカウントされません。
<条件例(自治体により異なる)>
延床面積および課税床面積にも算入されないため、結果的に床面積の影響を受ける固定資産税の節税にもつながります。課税床面積とは、固定資産税を計算する際に用いられる床面積です。つまり、条件を満たせば、小屋裏収納や床下収納を設けても固定資産税は高くなりません。
ただし、課税床面積に算入されるか不算入かは、より詳細な決まりがあり、自治体ごとに異なるので、建築予定の自治体に確認が必要です。
スキップフロアの最大の魅力は、空間をうまく活用して部屋を広く使えること。
「やはり最も大きいのは、空間を有効活用できることでしょう。スキップフロアにすることで、延床面積に算入されない小屋裏収納や床下収納、ルーフバルコニーなどの空間が活用しやすくなります」
空間だけでなく、“家族のコミュニケーション”もつなぐのがスキップフロアの魅力のひとつ。
「部屋が立体的につながるため、普通の2階建て・3階建てよりも、上下階にいる家族の気配が伝わります」
人の気配だけではなく、半階上または半階下の空間が自然と目に入るので、その空間を活用しようという意識も働きます。
「例えば、リビングの半階上に設けたルーフバルコニーは、視界に入らない屋上よりも活用されやすいでしょう」
平面だと単調になる空間も、スキップフロアにすることで目線に変化と広がりが生まれます。フロアごとに見える景色も異なり、空間の表情も豊か。アイデア次第で、おしゃれな雰囲気を演出できます。

このほか、狭い空間でも広がりが感じられる、光を効率的に取り込みやすい、個性的で見た目がおしゃれになる、などのメリットが挙げられます。
メリットの多いスキップフロアですが、個性的な構造なので、そのデメリットも気になります。どのような注意点があるのでしょうか。
空間を有効活用できる反面、一つひとつの空間が狭くなってしまうのはスキップフロアのデメリットです。
「スキップフロアは1つのフロアを広く使えません。そのため、段差がない空間を好む人にとってはデメリットになります」
その家を“終のすみか”にしようと考えている場合、段差が増えるスキップフロアはやや不向きです。また、上下階の用途によっては家事のしづらさを感じることもあるかもしれません。
「通常の2階建てや3階建てに比べてフロア数が多いため、行き来するのを面倒に感じることもあるでしょう」

建具で仕切らず、ひとつながりの空間にすることが多いため、冷暖房をつけたときに上下階で室温に差が生じ、冷暖房効率が悪くなるというデメリットもあります。
「ただし、断熱性の高い家にすれば、気にならないレベルになります」
カーボンニュートラル実現に向け、最近は家の性能向上にかかるリフォームや追加施工にさまざまな助成が設けられています。スキップフロアを採用する場合は、制度もうまく活用しながら断熱性も高めたいですね。
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建物の構造が通常の平屋や2階建てより複雑になるスキップフロアは、どうしても一般住宅よりコストが高くなります。構造の難易度も上がり、作業工程や必要な部材も増えると考えておきましょう。また、木造住宅では必要のない構造計算が発生することもあります。
では、どのような世帯や土地にスキップフロアは向いているのでしょうか。土地の形や広さ、住む人のライフスタイルなど、スキップフロアに適した条件について紹介します。
「必ずしもどの形とはいい切れませんが、平面のボリュームを2つに分けやすい形のほうが適しています。例えば、正方形の土地よりは長方形の土地のほうが2つに分けやすいので、スキップフロアに適しているといえるでしょう」

スキップフロアの魅力を活かしやすいのが、高低差のある土地。
「土地に高低差がある場合、通常の2階建て・3階建てよりは、スキップフロアのほうが高低差を活かしたプランにできます」

「北側斜線制限や道路斜線制限など、建物の上方が斜めに切り取られるような制限がある場合、スキップフロアの家では、その斜めの線に沿ってフロアを配置できるので、通常の2階建て・3階建てよりも空間を有効活用できます」

「通常の構造の家に比べて、特にこの広さ以上は必要という条件や目安はありません」
スキップフロアは、20坪以下のいわゆる狭小住宅でも採用されることが多く、廊下や間仕切りが少なくて済む、縦の空間を有効利用できるなどの理由から、むしろ狭小住宅に適しているといわれています。
家を建てる際には木造や鉄骨造、RC造など、さまざまな建物のタイプがありますが、特にスキップフロアに適した構造はなく、どのタイプでも採用可能です。一方で、建物の高さは関係するのだそう。

「基本は半階ずつずらします。一般的な天井高は2.4mなので、床・天井の厚みを考えると約1.4~1.5mずつずれるイメージです。3階建ての高さまで使って建てるケースも多いですが、フロア数が多くなるため、2階建てくらいまでの高さがオススメです」
ただし、最適な高さ(レベル差)も土地の形や周辺環境などによって変わります。
家族の気配を感じられるのもスキップフロアの特徴。その反面、空間がつながっているため、あまり多くの人が住むと落ち着かないでしょう。
「3人家族または4人家族くらいまでが適しています」
「家族一人一人のプライバシーを重視するような暮らし方よりは、家族みんなで開放的な空間を楽しむようなライフスタイルのほうが適しています」

良くも悪くも個性的なスキップフロア。魅力を感じる人も多いですが、スキップフロアにしないほうがいいケースもあるようです。
「私が施主の方と打ち合わせする際には、延床面積にカウントされない空間がつくりやすい点に魅力を感じてスキップフロアを選ぶ人が多いですね。
もちろん、住まいに対するこだわりは人それぞれ。できるだけ段差のない空間を好む人もいて、必ずしもスキップフロアがいいという人だけではありません」
スキップフロアかどうかよりも、自分や家族のこだわりや暮らし方にふさわしいプランかどうかが重要なのです。
スキップフロアは階段が多いので、年を取ってから階段の上り下りがつらいのではないかと不安に思う人もいるでしょう。たしかに車椅子だと移動しにくいということはいえますが、スキップフロアにしたからといって上り下りにかかる負担が増えるわけではありません。
「当然、平屋に比べれば階段の上り下りはあります。ただし、通常の2階建て・3階建てと比べて、全体の段数が多いわけではなく、逆に上下階をつなぐ段数は少なくなるので、1度の上り下りでは負担は軽くなります」

「スキップフロアは部屋が立体的につながり、家族の気配が伝わる点がメリットのひとつです。家族間のプライバシーを守りたいという人は、このメリットが活かせないことになります」
自宅でリモートワークをしている人など、家族との時間と自分だけの時間をしっかり区別したい人には不向きかもしれません。
前述のように、建物の構造が複雑になるスキップフロアは通常の平屋や2階建てよりコストが高くなりがち。
「建築コストを徹底して抑えたいという場合は、シンプルなつくりのほうがローコストにできます。スキップフロアは構造が複雑になるため、ローコスト向きとはいえません」

「スキップフロアにはさまざまなメリットがありますが、単に個性的で面白いというだけで選ぶのはオススメできません。ライフスタイルによっては、通常の2階建て・3階建てのほうがふさわしいケースもあります」
スキップフロアのメリット・デメリットだけで決めるのではなく、自分や家族のライフスタイルなどとの親和性についてもしっかり考えましょう。
「スキップフロアでは半地下を採用するケースが多いのですが、浸水想定区域内など、周辺の地盤に比べて低い地形の土地では、地盤面より下に部屋をつくると、浸水被害に遭うリスクがあります」
浸水想定区域は各自治体が発行している「ハザードマップ」に記載があることが多いので、事前にチェックしておくといいでしょう。
家を建てるなら、後悔しない間取りにしたいもの。スキップフロアを採用する際には、どのような点を意識すべきなのでしょう。
間取りを決めるときには、まずスキップフロアのある家でどんな暮らしがしたいのか、活用法をイメージしてみましょう。
「狭小住宅だけど収納はしっかり確保したい、ルーフバルコニーを設けてセカンドリビングのように広々と使いたいなど、理想の暮らし方とスキップフロアのメリットが合致した間取りにするのがポイントです」
スキップフロアの間取りについて、詳しくはこちら
スキップフロアの間取り実例と知っておきたい注意点 どんなメリットやデメリットがあるの?
スキップフロアに適した広さは、家族構成によって異なります。一概に“〇平米以上なら向いている”というわけではないため注意しましょう。
「一人暮らしなら、狭くてもいいので1フロア3畳くらいの広さでも可能です。ただし、1フロアに二人で寝る場合は、4.5畳以上のスペースが必要です」
採光については、個々のロケーションによります。周囲の環境も踏まえて、どこからどう光を取り込むかを考えましょう。
「スキップフロアの場合、屋根から半階下にずれた位置にルーフバルコニーを設け、そこで受けた光をさらに半階下の部屋へ取り込むというような工夫がしやすいですね」

「スキップフロアにすることで、小屋裏収納や床下収納が設けやすくなります。このような比較的広めの収納を有効活用することがポイントです。その分、ほかの収納を節約でき、代わりに居室にあてることができます」

「ピットリビング」や「ダウンフロア」とは、ほかの床よりも床面が1段下がったリビングのことです。
高さ制限のある土地に家を建てる場合、スキップフロアと組み合わせることで、家全体の高さを抑えつつ、中二階の下に配置したリビングの天井高を確保できます。

スキップフロアの設計には経験が必要です。敷地の方角や周辺環境などを踏まえて、それらを活かすような設計が求められます。
「経験の少ない依頼先の場合、構造上問題がないスキップフロアの家であっても、実際に暮らしてみて暮らしにくく感じることも。そもそも、規格住宅が主流の建築会社では、対応できない可能性もあるでしょう」
スキップフロアを取り入れたい場合は、同構造の経験が豊富な建築設計事務所などに依頼するのがオススメです。
では、実際にスキップフロアを導入した実例を見ていきましょう。ここでは、平屋、30坪、35坪の各ケースで、スキップフロアの間取り実例を紹介します。「わが家に向いているのはどんなスタイルかな」とイメージも膨らむはずです。
平屋にスキップフロアを設け、上を主寝室、下を収納にした事例です。1階リビングから階段を上らずに収納できるので、大きな荷物の出し入れも楽にできます。
このように、収納を確保しづらい平屋でも、スキップフロアを利用すれば広い収納をつくることができます。
階段上の主寝室へ上るための段数も少なく抑え、将来的な負担が少なくなるよう配慮しました。
| 土地面積 | 約328m2(約99坪) |
|---|---|
| 延床面積 | 約109m2(約33坪) |
| 間取り | 4LDK |


この実例について、詳しくはこちら
→ランニングコストを抑え、将来を見据えたバリアフリーの平屋暮らし
続いては、リビングの吹き抜けに面して、スキップフロアの中二階を設けた事例です。
カウンターデスクを造作して、スタディスペースとして活用できます。リビングからも様子がうかがえるので、子どもの勉強の様子を見守るのに最適だそう。
中二階の下は広めの収納スペースとして活用しており、間取りに無駄がありません。
| 土地面積 | 約254m2(約77坪) |
|---|---|
| 延床面積 | 約104m2(約32坪) |
| 間取り | 3LDK |


この実例について、詳しくはこちら
→収納や家事動線の工夫で家族時間を充実させた、夏も冬も快適な家
約35坪のスキップフロアは、各フロアに余裕があるうえ、最上階の天井の高さが印象的なつくりになっています。
スタディコーナーや、段差を利用して設けた広めの収納のある和室など、2階建てながら余裕のあるレイアウトを実現したぜいたくなスキップフロアです。
| 土地面積 | 約166m2(約50坪) |
|---|---|
| 延床面積 | 約115m2(約35坪) |
| 間取り | 5LDK |

明るく開放感たっぷりの吹き抜けのLDKにスキップフロアを設け、空間を有効活用しました。リビングから階段を上がるスキップフロアは、LDKを見渡せて開放感たっぷり。カウンターを設け、読書や仕事ができる書斎のような空間にしています。
スキップフロアの下部には子どもたちのプレイスペースをつくりました。おこもり感が人気です。
| 土地面積 | 98.05m2(29.6坪) |
|---|---|
| 延床面積 | 115.51m2(34.9坪) |
| 間取り | 2LDK(将来3LDKにする予定) |



この実例について、詳しくはこちら
→家族がゆるやかにつながり伸び伸び過ごせるスキップフロアのある家
「実は、私が設計したスキップフロアの施主の方で、はじめからスキップフロアを希望していた人はあまりいません。
いろいろな事例を見るうちに、通常の2階建てだと面白味が感じられずに、スキップフロアのさまざまなメリットに魅力を感じるようです。
住まいのどこにワクワクするかは人それぞれなので、スキップフロアと普通のプランを比べてみて、実際に住んだ後のことをイメージして、ワクワクできるほうを選ぶといいでしょう」
スキップフロアは空間が有効活用でき、条件を満たせば節税につながる
階段が多いので、家の中を行き来するのが面倒に感じるケースも
土地の高低差や斜線制限を利用した間取りが可能
メリットだけで決めるのではなく、取り入れる必然性やライフスタイルとの親和性を重視しよう