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音楽や映画などを楽しむ趣味部屋、ガレージ、寝室、時にはワインセラーや非常時のシェルターなど……さまざまな用途に使える「地下室」。実は、狭い土地に家を建てる場合に、居住空間を増やすための手段としても効果大!地下室のある家を1100棟以上設計・施工しているフローレンスガーデン(工藤建設)の沼倉英之さんに、地下室のメリットや快適な空間にするためのポイント、条件や建築費用などを聞きました。
“部屋がひとつ分増える”こと以外にも、地下室にはさまざまなメリットがあります。まずは、地下室を作る3つのメリットをご紹介します。
地下室と聞くと、音楽室やスタジオ、シアター、ワインセラーなど、施主の趣味や憧れを反映するためのもの、というイメージを持つ人が多いですが、魅力はそれだけではありません。
「たとえば、都心部に多い狭小地の場合、容積率いっぱいの床面積の家を建てても、地上階だけでは部屋数や収納が十分に確保できないことがあります。しかし、地下室を作ることで容積率の緩和が受けられて、『もっと広い家に住みたい』『諦めていた両親との同居を、広い家にすることで実現したい』という希望をかなえる方法も。つまり、土地の広さはそのままで、居住面積を増やすための手段として地下室を活用することもできるのです」(沼倉さん、以下同)。
容積率とは、その土地に建てることができる建物の延床面積の割合のこと。たとえば、100m2の土地で容積率が80%の場合、延床面積は80m2が上限になります。しかし、一定の条件を満たした地下室は、建物全体の住宅部分の延床面積の3分の1まで容積率算定上の延床面積から外すことができます。これが容積率の緩和です。
下の図は、その一例です。土地面積100m2、容積率80%の土地の場合、延床面積(この例では1階と2階の合計)80m2が建てられる家の広さの限界。延床面積80m2の一戸建てでは、家族が多い場合、部屋数や収納スペースが足りないこともあるでしょう。しかし、地下室を作る場合は、建物全体の3分の1までは容積率で出す面積に入れなくてもいいのです。40m2の地下室を設けて延床面積120m2の家を建てることが可能になります。

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地面に埋まっている地下室は、通常の居住スペースよりも気密性が高く、遮音性や断熱性に優れています。地下室=寒いというイメージがありますが、しっかり断熱工事を施せば年中快適に過ごせるでしょう。
「地下室を寝室にしたら雨や風の音が聞こえず静かで寝過ぎてしまう、という声もあります。ご近所に気兼ねせずに音を出せるので、楽器を弾いたり、ホームシアターにしたり、という方も多いようです。深夜に家族でサッカーを見ながら大きな声で応援することが、家族のコミュニケーションにもつながっているというケースも聞きますね」
基本的には窓がなく、周囲から隔離された環境である地下室はプライバシー性の高い空間。先ほどご紹介したように遮音性も高いため、地下室内で過ごしているときの音や振動が伝わりにくく、プライベートな時間を過ごせます。静かに本と向き合える書斎や楽器演奏をするスペースなど、趣味空間にも向いています。



地下室ならではのメリットが多い一方、作る前に知っておきたいデメリットや注意点も。以下の4つが代表的なデメリットです。
地下室作りにおいて、大きなデメリットとなるのが費用面の問題です。地下室作りは土地の調査から掘削、配筋など、工程が多い分どうしても建築費用がかさみます。コンクリートなどの材料費のほか、掘り出した土の処分費などがあるため、地上の建物部分より費用がかかると考えておきましょう。詳しい費用内訳やコスト削減のポイントについては、のちほど詳しくご紹介します。
地下室を作る場合は、地盤や水害のリスク、下水管の位置、排水環境などを考慮したうえで「地下を掘っても問題のない土地」を探す必要があります。建てられる土地が限定されるため、どうしても通常の土地探しよりハードルは高くなるでしょう。
地下室を作るときは、土を掘り、隣地の土の壁が崩れないように処理をします。このほかコンクリートを流し込み、乾くのを待つ時間も必要になるため、工期は長くかかると覚悟しておきましょう。
「通常の施工に比べて施工の技術や近隣への配慮が必要なため、工期は1.5~2カ月程度長くなります」
通気性が悪く、外気との温度差によって結露が生じやすい地下室は、1階以上の部屋と比べて湿度が高くなりやすいです。場合によってはカビが発生してしまうため、湿度管理ができるように設備を整える必要があります。
地下室は、遮音性が高く外気温にも左右されない環境です。こうした強みを活かしたオススメの用途を7つご紹介します。
遮音性の高い地下室は、音楽室やホームシアターといった大きな音を出すスペースにぴったり。「近所の人に迷惑をかけてしまうかも」という心配もなくなり、楽器演奏や映画鑑賞に没頭できます。
外気温による影響を受けにくい地下室は、一年を通して湿度や温度が一定しています。乾燥によって酸化リスクがあるワインの貯蔵庫としても優秀です。実際に本場ヨーロッパでは、自宅の地下を丸々ワインセラーにしている事例も。十分なスペースを確保できるので、水や米、季節家電などを保管する場所、大型荷物やコレクションを保管するための倉庫としても重宝するでしょう。
プライバシー性が高く、周囲の音が聞こえにくい地下室は、集中したいシーンにも最適。書斎や在宅ワークスペースにすれば、仕事や作業がはかどるでしょう。
振動や音が漏れにくい地下室を子ども部屋にするのも一案。周囲への影響を気にすることなく、思いっきり遊べます。プライバシー性が高いので、学習スペースにも向いています。
「体を鍛えたいけど、寒い冬や暑い真夏にジムに行くのはつらい」「忙しくてジムに行く時間がとれない」という場合は、地下室をまるごとフィットネスルームにするのもオススメ。壁面ミラーやトレーニングマシンを置けば、本格ジムさながらの雰囲気に。部屋に置くとかさばるトレーニングマシンも、地下室であれば置き場所を気にせずに済みますね。
あえて特定の用途では使わず、来客があったときのゲストスペースとして使っているケースも。保管スペースをとる寝具や簡易ベッドなども置いたままにできます。
地下室を設けると建物を支える力が強化され、家全体の耐震性がアップします。また、地下に埋まっている分、揺れが伝わりにくいという特徴も。こうした点を活かして、もしものときの避難シェルターとして使われることもあります。水や保存食などを置いておけば、外に出ることなく数日間しのげるでしょう。
「通常のベタ基礎よりも、さらに地盤面よりも深く基礎を作ることになるため、耐震性がアップします。砂浜の上に置いたコップよりも、砂浜を掘って一部を埋めたコップの方が安定性は高い、というとイメージしやすいかもしれませんね」
地下室は用途も可能性もさまざま。“自分がどう過ごしたいのか”を考えながら、レイアウトや材質などを考えていきましょう。
先述したように、建築費用がかさみやすいことが地下室を作るデメリットのひとつ。では、地下室の建築にはいくらかかるのでしょう。費用内訳やコスト削減のコツをご紹介します。
地下室のある家は地下室ならではの工事などが発生するため、同じ床面積の一般的な家に比べて割高になります。地下室の施工は、建築会社によっては施工を中小のゼネコン等に外注するため、コストが割高になりやすいのです。仮にワンフロアが10坪(約33m2)程度の一般的な木造2階建てに地下室を作ると、費用は約800万~1000万円程度プラスになるイメージ。通風・採光を確保する場合、費用はさらに上がります。
「地下室の躯体(くたい)部分の坪単価が100万~200万円程度になることも。自社で地下室の設計・施工を行うノウハウと実績がある建築会社の場合は、躯体部分の坪単価は50万~70万円程度が目安。これに、内装や防音などの工事費がプラスされます。地下室を作ることで住宅の価格がいくらになるかは、建築の依頼先と地下室の用途や土地の条件によって違ってきます」
詳しい費用内訳はこちらの記事を参考にしてください。なお、費用は建築会社によって幅があります。
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地下室の作り方。一軒家の増築費用は? 失敗しないためのメリット・デメリットと施工例5選
高額な費用がかかる地下室の建築ですが、土地の値段が高いエリアでは、広い土地を買って床面積を広げるより、狭い土地に地下室を設けた方がコストを抑えられるケースも。特に狭小地に家を建てて、かつ将来的に二世帯住宅や同居を考えている場合は、後悔しないためにも新築時に地下室を検討しましょう。
「リフォームで地下室を作り、床面積を広げて二世帯住宅にすることは技術的には可能ですが、基礎を壊して土を掘るという手間やコストを考えると現実的ではありません。建て替えた方が安くつく場合も。将来の暮らし方やトータルでのコストも考えたうえで、新築時に地下室を作るかどうかを検討しましょう」
衛生面や安全性を確保するため、地下室建築にあたってはさまざまな法規制や条件があります。どのような決まりがあるのか見ていきましょう。
最初に解説したとおり、一定の条件を満たした地下室では、建物全体の住宅部分の延床面積の3分の1までを容積率算定上の延床面積から外すことができます。容積率緩和の条件は、以下の3点です。
床が地盤面の下にある階のこと。半地下になっている空間も地階になり、天井部分が地盤面から1mを超えていなければ容積率緩和の要件を満たすことになります。なお「住宅」として使われることが条件なので、地下室を作って店舗や事務所を併用する場合、容積率は住宅として使う部分の3分の1まで緩和が受けられることになります。
地下室を作る土地について法的な規制や条件はありませんが、次のような場合には建築ができません。
「地面を掘ると地下水が湧いて施工や建物に影響するエリアでは、地下室の施工はお断りする場合があります。また道路の拡張や新しく道路ができる計画がある土地では、地下室や鉄筋コンクリート造の建物の建築は制限されているため、地下室を作ることができません」
地下室を建築したい場合は、地下室が実現できる立地かどうか、早いタイミングで建築会社に相談しておくと安心です。
地震や大雨などが生じた際に安全に避難するため、地下室では避難経路の技術的基準が設けられています。
※国土交通省「特定少数の者が利用する地下空間における技術的基準」より
ただし、通常の経路以外にはしごなどの特別な避難設備を設け、かつ、当該避難設備からの避難が可能である場合においては、この限りではありません。
せっかく地下室を作るなら、過ごしやすく快適な空間にしたいもの。作るうえで知っておきたいポイントをご紹介します。
地下室で心配なのは湿気。ジメジメしてカビが発生すると、部屋としても収納としても使えなくなってしまいます。
「湿気は下の階にたまりがちなので常に強制的に換気を行い、空気を循環させることが大切です。義務付けられている24時間換気システムの導入は当然ですが、ドライエリアを設けることで防湿や通風、採光に効果があります」
ドライエリアとは、建物の地下部分の外側に設けた「空堀り(からぼり)」のこと。地下室ではあっても、窓のある空間にできますし、万が一のときの避難経路としても使えます。
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ドライエリアとは? 地下室を快適にする「ドライエリア」のメリット・デメリット


ドライエリアを設けずに明るさを確保したいなら、「光ダクトシステム」という技術を活用するのも一案。これは太陽光を家の外部から取り込み、内側がアルミミラーのダクトを通して地下室まで光を運ぶ仕組み。窓やドライエリアのない地下室でも、太陽光ならではの柔らかな明るさを取り入れられます。
最後に、地下室のある家へのイメージを膨らませるため、実際の施工例を見ていきましょう。

明治時代の洋館を思わせるクラシックな雰囲気が漂う、東京都のSさん宅。地下室はレトロなデザインのガラス引戸で仕切り、音楽室兼書斎スペースとして使用しています。ドライエリアも設けられていて、採光性も高い。
本体価格:2690万円
延床面積:148.56m2 (44.9坪)
敷地面積:100.21m2 (30.3坪)
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敷地面積に限りがあるなかでも、+αのゆとりを手にいれるために地下室を建築したIさん宅。地下は12.4帖と4.2帖の2部屋で構成されていて、バンド演奏ができるよう楽器類が配置されています。防音性を向上させる、壁面のブルーの吸音パネルが良いアクセント。
本体価格:4000万円以上
延床面積:138.10m2 (41.7坪)
敷地面積:81.99m2 (24.8坪)
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ゴルフや映画、ピアノ、バレエなど思う存分趣味に没頭できる地下室は、Aさん宅の最大のこだわりポイント。外断熱仕様なので、地下や居室から熱が逃げずオールシーズン快適。近隣にはもちろん、家のほかの階にも音が漏れないのだそう。
本体価格:3520万円
延床面積:166.55m2 (50.3坪)
敷地面積:86.96m2(26.3坪)
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