木造住宅とは？メリット・デメリット 寿命や耐震性、その他の住宅構造との違いを徹底解説

木造住宅とは？木材の種類

木造住宅とは、主たる構造材に木材が使用されている住宅のことです。日本の伝統的な建築様式で、現在でも一戸建て住宅の多くが木造で建てられています。木造住宅は、自然素材である木材の特性を生かした温かみのある空間を提供し、日本の気候風土に適した住まいを実現できるのが特徴です。

木造住宅の建築には、さまざまな種類の木材が使用され、それぞれの特性に応じて適材適所で活用されています。また、木造住宅の工法にも複数の種類があり、それぞれに特徴があります。ここでは、木造住宅に使用される木材の種類や主要な工法について詳しく見ていきましょう。

木造住宅の木材

木造住宅に使用される木材は、主に針葉樹と広葉樹に分類されます。構造材としては、主に針葉樹が用いられます。代表的なものとしては、ヒノキ、スギ、カラマツなどです。これらの木材は、比較的軽量で加工しやすく、構造材として優れた特性を持っています。

一方、内装材や家具には、主に広葉樹が使用されます。ブナ、ミズナラ、ケヤキなどが代表的です。これらの木材は硬く、美しい木目を持っているため、見た目の良さと耐久性を兼ね備えた内装材として重宝されています。

近年では、合板や集成材といった加工木材の使用も増えており、強度や寸法の安定性を高めつつ、コストを抑える工夫がなされています。

木造住宅の工法や特徴は？

木造住宅は大きく「木造軸組工法」と「木造枠組壁工法（ツーバイフォー（2×4）工法）」の2種類に分けられます。「軸組工法は点を結ぶように構造物を造っていく工法で、枠組壁工法は面を組み立てて構造物を造る工法です」と佐川さん。

木造住宅の工法

【工法①】木造軸組工法（在来工法）の特徴とは？

木造軸組工法は日本古来の工法で、在来工法ともいわれます。柱を立て、梁（はり）を水平に渡し、筋交いという斜めの材を入れて補強――という具合に家を建てます。このように柱や梁、筋交いなどを使って、まるで空間上の点を結ぶかのように空間を構成します。

木造軸組工法は、柱や梁を点と点で結ぶ構造で間取りの自由度が高く、大きな開口部も設けやすくなるのが特徴です。狭小地や変形地でも土地を有効活用できるメリットがあります。また、リフォーム時の間取り変更にも対応しやすく、ライフスタイルの変化に合わせて間取りを変えられるのも魅力の一つです。

耐震性や防火性は、適切な設計と材料選択で十分に確保できます。工期は120～140日程度かかりますが、多くのハウスメーカーが手がけるため、建築後のメンテナンスやリフォームの選択肢が豊富です。伝統的な日本建築の技術を生かしつつ、現代の住宅ニーズにも柔軟に対応できる工法です。

木造軸組工法

【工法②】木造枠組壁工法（ツーバイフォー（2×4）工法）の特徴とは？

一方で木造枠組壁工法は、戦後に北米から輸入された「ツーバイフォー（2×4）工法」が代表的です。木製パネルと角材（※2インチ×4インチ）で作ったパネルで壁や床、天井という面を作り、この面を組み立ててできる6面体の構造をベースに家を建てます。輸入住宅やログハウスなども基本的に面の構成で、木造枠組壁工法の一種といえます。主に低層集合住宅などに用いられるコンクリートの壁式構造も同じ考え方です。

木造枠組壁工法は、面を組み立てた箱型の構造物なので、外部からの衝撃を建物全体で受け止めます。ゆえに優れた耐震性を持ち、面で炎を跳ね返しやすい構造によって高い防火性も備えています。工期は100～120日程度で、木造軸組工法より短いのがメリットです。

ただし、面で建物を支えるので、間取りの自由度や大きな開口部の設置にはやや制限があります。リフォーム時も壁を抜くことが難しく、空間を後から広げるのは容易ではありません。また、メーカー独自の工法を使用することが多いことから、リフォームは新築時のハウスメーカーに依頼することが一般的です。

木造枠組壁工法は、高い耐震性と防火性、短い工期が求められる場合に適した工法といえます。

※角材のサイズによって、ツーバイシックス（2インチ×6インチ）、ツーバイエイト（2インチ×8インチ）、ツーバイテン（2インチ×10インチ）などの工法がある

木造枠組壁工法(ツーバイフォー（２×４）工法）

木造住宅以外の工法

木造住宅が一般的な日本の住宅ですが、他にもさまざまな建築工法が存在します。ここでは、木造以外の代表的な工法である鉄筋コンクリート造（RC造）と鉄骨造（S造）について解説します。

鉄筋コンクリート造（RC造）

鉄筋コンクリート造（RC造）は、コンクリートと鉄筋を組み合わせた構造です。コンクリートの高い圧縮強度と鉄筋の引張強度を生かし、強固で耐久性の高い建物を実現します。

主にマンションや大型商業施設、公共建築物に採用されており、高い耐火性と遮音性が特徴です。また、自由度の高い設計が可能で、大空間の創出にも適しています。一方で、建設コストが比較的高く、工期は長くなる傾向があります。

鉄骨造（S造）

鉄骨造（S造）は、鉄骨を主要構造材とする建築工法です。軽量で強度が高く、大空間の実現が容易なため、商業施設や工場などに多く採用されています。工期が短く、建設コストも比較的抑えられるのが特徴です。

また、耐震性に優れ、柔軟な設計変更が可能です。ただし、防錆（ぼうせい）対策や耐火被覆が必要なため、メンテナンスにコストがかかる場合があります。近年では、住宅にも採用されるケースが増えており、デザイン性の高い建物を実現できるでしょう。

木造住宅のメリット

木造住宅は、日本の伝統的な住宅様式として長年親しまれてきました。現代においても、多くの人々に選ばれる住宅の工法です。ここでは、木造住宅の主な3つのメリットについて詳しく解説します。

建築コストと維持費の優位性

木造住宅は、鉄骨造住宅と比較して建築費用が抑えられる傾向にあります。これは、木材が鉄骨よりも材料費が安く、工期も短いことが主な理由です。

また、木造住宅は軽量であるため、地盤改良工事が必要になるケースが少なく、建て替え時の解体費用も比較的安価です。長期的な視点で住宅のコストを考えた場合、木造住宅は経済的な選択肢といえるでしょう。

さらに、木造住宅の断熱性の高さは、冷暖房費の節約にもつながります。室内温度が安定しやすいためエネルギー消費を抑えられ、ランニングコストの面でも優位性があります。

優れた断熱性と調湿効果

木材は優れた断熱性を持っています。この特性により、木造住宅は夏は涼しく、冬は暖かい快適な室内環境を維持しやすいです。

また、木材には調湿効果があります。湿度が高いときには湿気を吸収し、乾燥時には湿気を放出する特性により、室内の湿度を一定に保つ効果があります。結露の発生を抑え、カビやダニの繁殖を防げるでしょう。

建材技術が進歩したことから、近年はドアやサッシ周りの気密・断熱性能も向上しているため、現代の木造住宅は一年を通して快適な室内環境を実現できるのが特徴です。

自然素材がもたらす癒やしの空間

木造住宅の大きな魅力の一つは、木材特有の温かみと柔らかさです。木材に触れたときの感触や、木の香りは他の素材にはない心地よさをもたらします。日本では古くから木を生活に取り入れてきたため、木造住宅に親しみを感じる人は多いでしょう。

構造材だけではなく、柱や床など目に見える部分にも木材を使用することで、自然を身近に感じられる温かみのある空間を作り出せます。この自然素材に囲まれた環境は、住む人に心理的な安らぎを与え、ストレス軽減にもつながるでしょう。

また、木材の調湿効果は、室内の空気質の向上にも貢献します。適度な湿度が保たれることで、喉や肌の乾燥を防ぎ、快適な生活環境を作り出します。これは特に、乾燥しやすい冬季や、アレルギー体質の方にとって大きなメリットです。

木造住宅のデメリット

木造住宅は多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、木造住宅の主な3つのデメリットについて詳しく解説します。

シロアリによる被害リスク

木造住宅の最大のデメリットは、シロアリによる被害のリスクです。シロアリは木材を主食とし、住宅の構造材を食べることで深刻な被害をもたらす可能性があります。

シロアリは特に、風通しが悪く湿気の多い場所を好みます。家の近くに川や池が多い、庭木が常に外壁に接している、一年中日が当たらない部屋があるなどの条件に当てはまる場合は特に注意が必要です。

新築時は建築会社が薬剤処理などのシロアリ対策を行っていることが多いですが、その後は施主が対策しなければなりません。シロアリによる被害が気になる場合には、定期的に家中をチェックし、早期発見・早期対処に努めることが大切です。

耐用年数と維持管理

木造住宅は、他の工法に比べて法定耐用年数が短いとされています。木造住宅の法定耐用年数は22年であるのに対し、鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年です。

法定耐用年数は税務上の基準であり、実際の家の寿命や丈夫さとは必ずしも関係ありません。しかし、木造住宅は天然の素材が多く使われているため、場合によっては耐久性が劣ることもあります。

定期点検や早めのメンテナンスを行い、丁寧に住めば長く住むことも可能です。木造や他の工法に関わらず、耐火性・耐震性の基準をしっかりとクリアすることが重要です。

品質や強度のばらつき

木造住宅では天然の木材を利用するため、素材によっては品質や強度に差が出ることがあります。これに対し、鉄骨造住宅で使う材料や部品は、ほとんどが工場で生産されるため、品質や強度が一定に保たれやすいです。

また、木造住宅は職人の技量次第で、仕上がりに大きな違いが出ることがあるといわれています。従来は大工が現場で継手や仕口を加工していましたが、昭和60年代にはコンピューター制御による「プレカット」が開発されました。

このように、品質や強度のばらつきというデメリットは徐々に補われてきていますが、従来の工法で施工する場合には、腕のよい職人の存在が重要となります。

木造住宅の寿命や耐震・耐久性・防火性は？

木造住宅の寿命は短い？

木造住宅の寿命が短いという印象は、法定耐用年数が22年と設定されていることから生まれた誤解かもしれません。実際の木造住宅の寿命はこれよりも長く、適切にメンテナンスすれば100年以上持つ例もあります。

法定耐用年数はあくまで税務上の基準であり、実際の建物の寿命を示すものではありません。木造住宅の実際の寿命は、設計、施工の品質、そして何よりも継続的なメンテナンスによって大きく左右されます。

定期的な点検と適切な補修を行うことで、木材の劣化を防ぎ、構造体の強度を維持できます。特に重要なのは、雨漏りや湿気対策、シロアリ対策です。これらの問題を早期に発見し、対処することで、木造住宅の寿命を大幅に延ばせるでしょう。

木造の耐震・耐久性は！？

木は腐ると思っている人もいるかもしれません。確かに湿気には弱いものの、きちんと対応すれば木造住宅はとても長持ちします。

ちなみに、世界で最も古い木造建築物は法隆寺の五重塔。築1200年以上の国宝です。また最近は築100年以上の木造の古民家も人気で、カフェやホテルにリノベーションされて注目されているケースもあります。つまり、それだけ木造住宅は本来耐久性があるのです。

また木造住宅の耐震性は、適切な設計と施工が行われていれば、非常に優れているといえます。木材は軽量で柔軟性があるため、地震の揺れを吸収しやすいのです。木造住宅の耐震基準は2000年に基準が厳格化されており、現在新築される住宅は筋交いや耐力壁を適切に配置することで、地震に対する抵抗力を高めています。

定期的な点検とメンテナンスを行い、必要に応じて耐震補強を施すことで、木造住宅の耐震性を長期にわたって維持・向上させられます。

木造は防火性が弱い！？

そもそも木造住宅の防火性はどうなのか、もう少し詳しく見てみましょう。

「木は燃えるといわれますが、実は燃え切るのは木材の白木部分（辺材）を使った部分で、木材の中心部である赤太は燃えにくいのです。なぜなら燃えた部分が炭化層となってそれ以上の酸素供給を阻むため、中心部まではなかなか燃え進まないからです」

木材の断面

そのため、防火地域などで必要な耐火建築物にも木造住宅が認められています。

「さらに2018年9月に公布された建築基準法の改正で、従来木造の耐火構造は2階建てまででしたが、それが3階建てまでに改められました。それだけ防火性能の高さが認められているということなのです」

木造住宅建築に失敗しないためのポイント

木造住宅の建築は、適切な計画と実行が重要です。木造住宅建築に失敗しないためには、いくつかの重要なポイントがあります。

まず1つ目は、信頼できるハウスメーカーの選択です。木造住宅の品質は施工を行うハウスメーカーの技術力に大きく左右されるため、過去の施工例や顧客の口コミなどを調べ、実績と評判を確認しましょう。また、適切な資格や認定を持っているかをチェックし、複数のハウスメーカーから見積もりを取って比較することをおすすめします。

2つ目のポイントは、適切な設計と材料の選択です。木造住宅の性能や耐久性は、設計と使用する材料に大きく影響されます。地域の気候や環境に合わせた設計を心がけ、耐久性の高い木材や防腐・防蟻（ぼうぎ）処理された材料を選んでください。また、断熱材や高性能サッシなどを採用し、省エネ性能を高めることも重要です。

3つ目は、定期的なメンテナンスの計画です。木造住宅を長く快適に使い続けるためには、定期的なメンテナンスを実施する必要があります。建築時から定期点検やメンテナンスの時期と内容を事前に計画し、点検や修理がしやすい設計を心がけましょう。また、将来のメンテナンス費用を見込んで予算を立てることも大切です。

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  取材協力

  佐川旭

  ｜佐川旭建築研究所代表。一級建築士、インテリアプランナー
  間取り博士とよばれるベテラン建築家で、住宅だけでなく、国内外問わず公共建築や街づくりまで手がける
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  執筆

  籠島 康弘

  ｜フリーライター
  雑誌「カーセンサー」編集部を経てフリーライターに。中古車からカーシェアリング、電気自動車までクルマにまつわる諸々の記事執筆を手がける。最近は住宅雑誌の記事も執筆していて、自分が何屋なのかますます分からなくなってきた。