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高度地区という言葉を聞いたことがありますか。高度地区とは、その名のとおり建築物の高さが制限されている地区のこと。この記事では建築家の佐川旭さんにお話を伺い、高度地区の意味や種類、家を建てるときのメリット・デメリットなどを紹介します。混同されやすい高度利用地区や絶対高さ制限、北側斜線制限についても解説します。
そもそも高度地区とはどのような区域で、何を目的に指定されているのでしょう。まずは高度地区の定義から種類まで、基本的な理解を深めていきましょう。
高度地区は、都市計画法に基づく地域地区の一種。建築物の高さ(最高限度または最低限度)に制限が設けられている地区で、その制限内容や導入の有無などは自治体ごとに異なります。
「建物の高さに関する制限はいくつかあり、高度地区はそのうちの1つです。具体的には絶対高さ制限、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限、日影規制、高度地区の6つが存在します」(佐川さん、以下同)
高度地区は、都市計画法によって「用途地域内において市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区とする」と規定されています。高度地区の制限内容は自治体ごとに異なり、多くの場合は高さ制限に加えて北側に斜線制限が設けられています。
高度地区は、建築物の最低限度の高さを定める「最低限度高度地区」と、最高限度の高さを定める「最高限度高度地区」の2つに分類されています。
「最低限度高度地区とは商業地やオフィス街などにおいて、その土地の有効利用を図るために一定の高さに満たない建築物を建ててはいけない地区のことです。一方、最高限度高度地区では一定の高さ以上の建築物を建ててはいけないという決まりであり、そのエリアの住環境を良好に保つ目的で定められています。住宅を建てる場合に注意したほうがよいのは最高限度高度地区のほうです」

建築基準法の中には絶対高さ制限や北側斜線制限といった規制がありますが、高度地区においてもこれらの制限が適用される場合がほとんどです。高度地区とほかの規制が重なった場合は、より厳しいほうの内容が適用されます。
なお、高度地区の規定内容における北側の斜線制限と、北側斜線制限は混同されやすいのですが、厳密には異なるものです。都市計画法によって定められる高度地区は自治体によって内容が異なるため、地域によっては北側の斜線制限が設定されていないこともあります。一方、建築基準法によって定められる北側斜線制限は一定の用途地域内で必ず適用されるものです。
また、北側斜線制限や道路斜線制限、隣地斜線制限においては、ある位置から建物を見たときの、全天に対する空の割合である「天空率」を用いることで斜線を超える建物を建築可能ですが、高度地区では天空率制度を利用できないという点が異なります。
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高度地区は自治体によって第1種、第2種、第3種といったように、規制内容のレベルに応じた区分が定められています。一般的に住宅地では最高限度高度地区の規制内容が適用されますが、その中でも「第1種高度地区」の規制内容が最も厳しくなっています。住宅を建てる場合は、第1種の規制内容にはとくに注意したほうがよいでしょう。
ただし、自治体によって高度地区の内容は異なるため要注意。たとえば、同じ東京都内でも高度地区の制限内容は市区町村ごとに異なります。自治体によって第1種のみ存在しないケースや区分が6つ以上存在するケースなどさまざまで、中には高度地区自体を設けていない市区町村もあります。

ここでは、東京都足立区の高度地区の区分例を紹介します。
隣地境界線の上で、地盤面から5mの位置を基準とし、真北方向から高さ0.6対奥行き1の勾配が設定されています。この斜線内に建物を納めて建築する必要があり、斜線からはみ出して建築することはできません。※東京都足立区の場合

隣地境界線の上で、地盤面から5mの位置を基準とし、真北方向から高さ1.25対奥行き1の勾配が設定されています。また、水平距離が8mを超える範囲においては真北方向から高さ0.6対奥行き1の勾配が設定されています。この斜線内に建物を納めて建築する必要があり、斜線からはみ出して建築することはできません。※東京都足立区の場合

隣地境界線の上で、地盤面から10mの位置を基準とし、真北方向から高さ1.25対奥行き1の勾配が設定されています。また、8mを超える範囲においては真北方向から高さ0.6対奥行き1の勾配が設定されています。この斜線内に建物を納めて建築する必要があり、斜線からはみ出して建築することはできません。※東京都足立区の場合

家づくりで気になる高度地区。規制によって、どのようなメリットとデメリットが考えられるのでしょうか。
高度地区(最高限度高度地区)に家を建てるメリットは、周辺に高い建物がなく良好な景観が保たれていることや家の通風・採光を確保しやすい点です。
一方で、建物の高さの制限があるため間取りや外観のデザインが制限されてしまうというデメリットもあります。高さ制限があるため3階建ての住宅にするのが難しくなったり、屋根の形の自由度が狭まってしまったりするおそれがあります。
「高度地区のメリット・デメリットは表裏一体ともいえます。建築上の高さ制限があることについては注意が必要ですが、設計の工夫によって制限を活かすことも可能です。たとえば、北側の斜線制限により敷地内に建物を建てられない場所が出てくる可能性はありますが、その場所を有効活用して駐輪場や物置を設置することができるというよさもあります。また、北側の斜線制限を避けるため隣家と建物の距離を離した場合、採光や通風のよい家をつくりやすい点に加え、防犯・防火上の安全性も高くなります。建築上の条件が制限される土地と聞くとマイナスのイメージを持つ方が多いかもしれませんが、人々の住環境をよくするために都市計画法で定められたものなので、良好な景観をはじめ享受できるものがたくさんあることをぜひ知っておいてください」

建築上の制限がかかってくるため、家づくりや土地を購入する前には必ず高度地区について確認しておいたほうがよいでしょう。具体的な調べ方をご紹介します。
高度地区を調べる方法は、大きく3つあります。
「高度地区の分布は行政機関のホームページで公開されているので、個人がインターネットを活用して簡単に調べることができます。また、販売されている土地に関しては、不動産会社から説明がなされるのが一般的です」
高度地区について調べたい場合、最も手軽なのが各自治体のホームページで「都市計画情報」や「都市計画マップ」などをチェックする方法です。地図を見ると高度地区の指定有無と区分が一目瞭然です。多くの場合で分布のほか、容積率や建ぺい率、高さ制限の計算方法等も紹介されています。土地を探す際は目を通しておくとよいでしょう。
インターネットでも調べることはできますが、「地図を見てもわかりづらい」「相談したいことがある」という場合には、建築指導課など、行政機関の窓口に直接問い合わせて教えてもらうことも可能です。高度地区の分布以外にも、該当地区の規制や注意点などもあわせて確認できるでしょう。また、多くの自治体で都市計画図の販売も行なっています。紙の地図を手に入れたい方は、行政機関の窓口に問い合わせてみてください。

高さを制限することで、良好な住環境や街並みを守っている「高度地区」。通常、この制限を超えた場合には不適格建築物となりますが、一定の要件下において特例的な緩和が認められるケースも。先進自治体による運用状況を参考に、昨今は少しずつ特例運用も広がりを見せています。
以下は、特例的に高度地区の規制緩和が認められる条件の一例です。ただし、特例運用の概要や認定の有無については自治体によって異なります。
特例的な緩和ということもあり、高度地区の規制緩和の申請手続きは非常に複雑。次のステップで認定および許可を受け、慎重に工事を進める必要があります。東京都港区の例を見てみましょう。
<緩和の申請手続きから工事完了まで>
なお、認定・許可を受けた後に建築計画を変更する場合には事前相談が必須。大幅な内容変更だと判断された場合、再度手続きをしなければなりません。さらに工事完了後も、3年ごとの環境空地の維持管理報告も義務付けられます。
家を建てた後に後悔しないよう、高度地区に関して、土地購入前には次の4つのポイントをチェックしましょう。
一口に高度地区といっても、その種類によっても注意点は変わってきます。とくに注意すべきなのが、第1種高度地区。
「自治体によって規制内容に差はあるものの、一般的な一戸建て住宅を建築する際に第2種、第3種の規制はそれほど懸念する必要はありません。しかし、第1種高度地区の場合は建築条件がシビアになってくるので注意しましょう。高さ制限の内容を知らないまま土地を購入して後悔しないように、事前に規制内容をチェックしておくことがポイントです」

非常に稀なケースですが、場合によっては同じ敷地内に2つ以上の異なる高度地区が設定されているケースも。この場合、どちらが適用されるのでしょうか。
「土地の半分は第1種高度地区、もう片方は第2種高度地区といったように、同じ敷地内に種別の違う地区が混在するケースも稀にあります。その場合はより厳しい制限内容が適用されます。建築上の工夫が必要となるため、できれば土地を購入する前に設計者に相談するとよいでしょう」

狭小地で家を建てる場合、いわゆるペントハウスなど高さを活用した3階建ての家にすることが多いです。しかし、高度地区の場合はさまざまな制限がかかるかもしれません。
「高さ制限が設けられた狭小地では、高さを活かした建築が難しくなる可能性があります。半地下をつくったり、居室をつくれない部分を納戸にしたり、北側斜線の斜めの部分を活かして窓を設けたり、設計の工夫が必要です。高さ制限のある土地では設計力のある、実績豊富な建築会社を選んで依頼することをオススメします」

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高度地区と似た名称の「高度利用地区」もまた、都市計画法で定められた地域地区の1つ。こちらは低層の建物が密集している地区を再開発し、高層ビルやマンションを建設できるようにすることを目的としています。
高度利用地区では、建物の容積率および建ぺい率、建築面積、敷地面積等の最低・最高限度が定められ、これによって地域の利便性や防災機能の向上が期待できます。
高度地区と高度利用地区では規制内容が異なるので注意しましょう。

最後にまとめとして、高度地区について正しく知ることの大切さを佐川さんに伺いました。
「土地を購入して建築が始まってから高さ制限があることを知り、理想の家を建てられなかったと後悔しないために、自分が買おうとしている土地の特性について事前にしっかりと把握しておくことが大切です。今回紹介した高度地区以外にもさまざまな建築制限があるので、知っておいて損はありません。親切な不動産会社であれば高さ制限などについても購入前に丁寧に教えてくれると思いますが、自治体の用途地域マップなどを調べ、確認するとよいでしょう」
高度地区とは建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区
規制内容は自治体ごとに異なり、第1種の制限が最も厳しい
既存不適格建築物の建替や公益性などがある場合、特例的に高度規制の緩和が認められる
家の外観や間取り決めにかかわるため、土地購入前に制限内容を確認したほうがよい