SUUMO(スーモ)は、住宅・不動産購入をサポートする情報サイトです。

近年、若者の浴槽離れが起きており、「風呂キャンセル界隈」という言葉も日常的に使われています。この記事ではこうした状況を受け、浴槽レスのライフスタイルや浴槽のない賃貸物件の実態について、三菱地所レジデンスの近藤さん、賃貸管理・売買仲介などを多く扱う株式会社明光トレーディングの武澤さん、収納可能な浴槽「bathtope(バストープ)」を開発したLIXILにお話を伺いました。
「髪の毛を洗ったり、ドライヤーで乾かすことが面倒」「疲れていると、服を脱いで髪と体を洗う工程が嫌」「帰宅が遅いときは、風呂より寝る方を優先したい」など、若い世代を中心にお風呂に入りたくない(入らない)人が増え、SNSでは一時「風呂キャンセル界隈」という言葉がトレンドになりました。それに派生して、主にZ世代を中心にタイムパフォーマンスなどを重視して「シャワーだけでいい」と浴槽を使用しないライフスタイルが増えつつあります。
また、国土交通省は高齢者の入浴中の事故の増加を受け、浴槽レスの浴室のバリアフリー基準と設計ガイドラインを策定しています。デイサービスなど高齢者施設での入浴も浴槽を使わずシャワーで済ませるなど、浴槽レスの入浴スタイルはシニア世代にも広がりつつあります。

また、LIXILは2024年に20~65歳の男女726人を対象にした「父の日にちなんだ入浴に関する意識調査」も行っています。そこでは、「入浴を面倒に思うことはありますか?」の問いに対して、7割以上が「お風呂を面倒だと感じたことがある」(入浴を面倒に思うことがよくある)「入浴を面倒に思うことがたまにある」を合計)と回答しました(下のグラフ参照)。
面倒に思っても入浴する理由としては、「身体を清潔に保ちたいから」(67.1%)が「疲れをとりたいから」(25.6%)を大きく上回っており、「入浴を面倒に感じてもキャンセルしない理由として、身体を清潔に保ちたいという気持ちが強くあることが分かります」(LIXIL)
参考:LIXIL「父の日にちなんだ入浴に関する意識調査」


入浴を面倒だと思ったときにとる行動として、「その日は入浴をやめる」と回答した人は17.6%、「いくつかの工程を省略して入浴する」人は25.1%いました。省略する工程として3人に1人(34.4%)が「湯船につかること」を選択しています。
「『清潔を保ちたい』というニーズに対し、面倒だから『湯船につかること』を省略し、『シャワーのみで清潔を保てる』という思考に至り、シャワー浴のみの増加の一因になり得ると考えています」(LIXIL)
「『湯船につかること』を省略する意図としては、『シャワーのみでも清潔を保てる』だけでなく、背景に浴槽にお湯を溜めるのが面倒、浴槽を洗うのが面倒、浴槽にお湯が溜まるまで待つのが嫌、水道光熱費を節約したい、入浴時間を短くしたいなど、他の要因もあると考えます」(LIXIL)
参考:LIXIL「父の日にちなんだ入浴に関する意識調査」


こうした世の中のトレンドやライフスタイルの多様化に応える製品開発をしているLIXILでは、「お風呂はもっと、自由でいい。」をコンセプトに、布製の浴槽(fabric bath)にお湯をためて入浴し、使用後はコンパクトにたたんで収納できるリムーバブルな 浴槽を備える浴室空間『bathtope』(バスト―プ)を2024年11月に発売しました。既存のシャワーブースに後付けして利用することはできませんが、浴室リフォーム時に使用できるように改修することは可能です。新しい入浴スタイルとしてデザイン・住宅のトレンドに敏感な層、若年層や都市部のコンパクト住宅層、節水志向やミニマリスト層に加え幅広く支持されています。
「発売当初はマンションのリノベーションや、都心部に住む単身者や共働きの夫婦、少人数世帯などをターゲットにしていましたが、実際は世代を問わず、賃貸マンションや民泊、戸建新築など多様な先で利用していただいています」(LIXIL・長瀬徳彦さん)
固定の浴槽をなくすことで居住スペースは広くなります。リフォームやリノベーションをするときも、「浴室に浴槽は必要なのか」を検討してみるのもよさそうです。

三菱地所レジデンスは、標準装備が当たり前だったお風呂やキッチンなどの住宅設備に自分で優先順位をつけ、取捨選択できる『Roomot(ルーモット)』シリーズを開発。その中の一つが、ホテルライクで高級感のあるシャワーユニット「Luxwer(ラグジャー)」や浴槽と洗い場を兼用し洗練した空間を生み出す「BathMor(バスモル)」です。
「Luxwer」は、常時フィットネスジムのシャワーや銭湯で入浴をして自宅で浴槽を使用しない人をターゲットに、浴槽をなくして洗い場のみにすることで居室を広く取る仕様となっています。BathMorは、毎日ではないけれど浴槽も利用したい人向けに開発されています。
「どちらも透明ガラスの扉や全面タイル張りの内装、オーバーヘッドシャワーなどホテルライクでインテリア性の高い仕様です」(三菱地所レジデンス・近藤都さん)

フィットネスジムのシャワーやサウナの普及によって、近年シャワーユニットのライフスタイルを好む人もいます。『Roomot(ルーモット)』シリーズは、コロナ禍に、ワンルームの部屋の使い方やライフスタイルが多様化したことが開発のきっかけだったといいます。
「コロナ禍以前、ワンルームの部屋は仕事から帰って寝るだけという人が多かったのではないでしょうか。しかしコロナ禍になり、自宅で仕事をする人が増え、『居室がもっと広くあってほしい』というニーズが出てきました。暮らし方やライフスタイルが多様化する中で、暮らしやすい間取りや設備を選べるワンルームを提案したいと思ったのが開発のきっかけです」
「LuxwerやBathMorは浴室の間取りを選べるため、浴槽がなかったり、洗い場と浴槽を兼用する分居室は広くなります。部屋を借りている方は今まで置いてみたかったけれど大きくて断念していた家具や充実したテレワークスペースを設置し、自分だけの空間を作ることができているようです」(三菱地所レジデンス・近藤都さん)
浴槽がない(シャワーブースのみなど)物件だとユニットバスがある物件に比べて賃料が安くなると思われがちですが、LuxwerやBathMorは、浴室のスペースが小さい=居室が広くなるため、賃料は同条件のユニットバスの部屋より割高です。しかし浴槽をあまり使わないライフスタイルの場合、浴槽より居室の広さに価値を感じるため、賃料が割高だったとしても納得の上で選択されているようです。
管理会社から見た賃貸のシャワーのみ物件の動向はどうでしょうか。
「賃貸物件では依然『バス・トイレ別』が人気ですが、20~30代(特に男性)は『(浴槽がない)シャワーのみでもOK』という方も一定数いらっしゃいます。しかし積極的にシャワーのみでいいというよりは、場所と予算が決まっていて複数の物件を比較検討する中で、浴室以外の条件は合致しているので『浴槽なしでも妥協できる』となるケースが多いです」(明光トレーディング・武澤さん)
「当社では全室シャワーのみの物件も取り扱っていますが、9平米(約5畳)と極小です。全室埋まっており、借主側からの需要はあります。しかしこうした一部のコンセプト住居以外、近年シャワーのみ物件の数が増えているといった実感はありません」(武澤さん)
シャワーのみだと家賃が安くなりそうですが、立地や広さ、設備など家賃にはさまざまな要素が含まれるので、浴槽がないだけで家賃が安くなることはなく、シャワーブースの仕様によっては浴槽付きよりも家賃が高くなることもあるようです。
シャワーのみの物件は10平米以下の極小物件に多いそうですが、東京23区をはじめとする都市部では、現在単身者の住居の最低住戸面積は25平米に設定されている場所が多く、それだけの広さがあれば浴槽を設置している物件のほうが多いのが現状のようです。築年数が古めの物件やシャワーブースをうたったコンセプト物件以外では、シャワーブースのみの物件が増えているといった現象はあまり見られないのかもしれません。また、シャワーのみ物件はユニットバスの設置はありませんが、一棟建てなのでオーナーにしてみれば浴槽ありの物件と建築費用は大きく変わりません。ユニットバスより需要が低いため、費用が高くなることもあるそうで、コスト面でも積極的に採用するメリットが大きいとは言えなそうです。
参考▶ 国土交通省「住生活基本計画における「水準」について」
取り外しが可能な浴槽や、シャワーブースのみ、浴槽と洗い場を兼用した浴室が装備されているなど物件の選択肢は近年広がっていますが、賃貸のシャワーブースのみ物件の数は、一部のコンセプト住居以外では大きく増えてはいないようです。しかしシャワーのみの物件は、浴槽がない分浴槽以外の居室を広げることができるため、「居室を少しでも広く使いたい」という視点で選択することもできます。
「シャワーのみだから家賃が安い」というわけではないですが、物件探しを予定していて「居室を少しでも広く使いたい」人は、シャワーのみ物件も選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。
毎日浴槽に浸かる入浴習慣から、(浴槽に浸からず)シャワーのみの日もあり、シャワー浴と浴槽浴を併用する日もあるというスタイルに変わってきている
近年取り外しが可能な浴槽や、シャワーブースのみ、浴槽と洗い場を兼用した浴室が装備されているなど物件の選択肢が広がっている
浴槽がない分居室を広げることができるため、「居室を広く使いたい」という視点で選択することも可能。シャワーのみだから家賃が安いわけではない
●取材協力
株式会社LIXIL
世界中の誰もが願う豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供している。 2024年には日本国内の水まわり・タイル事業が100周年を迎え、INAX、GROHE、American Standard、TOSTEMをはじめとする製品ブランドを通じて、人びとのより良い暮らしに貢献している。
会社HP
近藤都さん
三菱地所レジデンス株式会社 建築マネジメント部/賃貸・投資アセットグループ 統括
2006年に藤和不動産株式会社(現・三菱地所レジデンス)に入社。新規分譲マンション販売やリノベーション事業の開発担当などを経験し、2019年に商品企画部、2020年に建築マネジメント部に異動、ザ・パークハビオの商品設計に携わる。標準装備が当たり前だったお風呂やキッチンなどの住宅設備に優先順位をつけた『Roomot®』シリーズの開発も担当し、ザ・パークハビオの一部の部屋に導入し、話題となった。
【保有資格】一級建築士、宅地建物取引士、管理業務主任者
SUUMO 三菱地所レジデンス株式会社ページ
会社HP