賃貸の部屋の壁、画鋲(押しピン)はだめ?代わりになるものはある?

最終更新日 2025年03月13日
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賃貸の部屋の壁、画鋲(押しピン)はだめ?代わりになるものはある?

賃貸アパートやマンションでも、自分好みのポスターや絵画、カレンダーなどを壁に飾って素敵な部屋にしたいと思う人も多いはず。でも、心配なのが壁に画鋲(押しピン)を刺してもいいの?ということ。賃貸借契約にある原状回復義務は関係するのか、画鋲でとめる以外の方法でアートを楽しむにはどうすればいいのかなどを紹介します。

賃貸物件に画鋲はだめ?壁に刺したらどうなる?

そもそも、借りている賃貸物件に画鋲を刺すのはOKなのでしょうか。借主が負う「原状回復義務」や「賃貸借契約書」の重要性など、画鋲を刺す前に確認したいポイントからご紹介します。

賃貸借契約書や特約事項のチェックが大切

まず画鋲を刺す前にチェックしたいのが、部屋を借りるときに交わした「賃貸借契約書」です。この契約書には賃貸借契約にかかるさまざまな取り決めが記載されており、次の要件を満たす場合には同契約においてもっとも強い効力を持ちます。

<特約についての考え方(過去の判例などより)>

  • 記載された特約の必要性があり、かつ暴利的でないなど、客観的かつ合理的理由がある
  • 賃借人が、特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕などの義務を負うことについて正しく認識している
  • 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしている

つまり上記が満たされている場合、後述する「国のガイドライン」をクリアしていたとしても、賃貸借契約書で画鋲やネジなどの使用が禁止されていれば、それに従わざるを得ません。

契約書の本文だけでなく、「特約事項」として別途記載されている場合も。特約事項は物件所有者と入居者間でとくに決めておきたい重要事項を記載したもので、原状回復費用やクリーニング費用、入居中の利用制限などについて記載されていることが多いです。見落とすことがないよう、すみずみまで目を通しましょう。

賃貸借契約で条件になる原状回復義務とは

賃貸物件で暮らしている人の中には、「持ち家ではないから壁にはクギを打たないし、画鋲も刺さない」という人も多いでしょう。その理由は、賃貸アパートや賃貸マンションを借りる際に交わす賃貸借契約の条件として、「原状回復」が義務づけられているケースがほとんどだからです。では「原状回復」とはどういうものなのでしょうか?

「これは、『借りたときの状態に戻して退去すること』と思われがちなのですが、実は違うんです」(ハウスメイトマネジメント 伊部尚子さん、以下同)

住まいというのは時間が経つにつれて、壁紙が少しずつ汚れたり、窓からの紫外線で床や畳などが傷んだりしていくもの。どんなに気をつけて暮らしていても、新築時や入居時の状態をキープすることは難しいでしょう。

「そういう事情もきちんと考慮されていて、原状回復には『年月の経過によって劣化した』『普通に使用していて傷んだ』と考えられるものは含まれません。つまり、『借主の住まい方や使い方によって発生した損耗のうち、借主の故意や過失などによって発生したもの』について、元の状態に戻す必要がある、ということです」

例えば、一般的に画鋲の使用を禁止している賃貸物件はほとんどありません。これは、画鋲程度の穴は通常損耗や経年劣化にあたると考えられるためです。のちほど詳しく解説します。

賃貸物件の画鋲の穴には原状回復義務が発生する?場所別・状態別に確認!

では、賃貸物件に画鋲を刺したとき原状回復義務は生じるのでしょうか。結論から言うと、場所と状態によって原状回復義務の発生有無は異なります。

壁に刺した画鋲の穴

部屋の壁にカレンダーやポスター、子どもが描いた絵などを画鋲でとめた場合はどうなのでしょう。画鋲の跡は、畳や壁の日焼けのように防ぎようがない劣化とはちょっと違います。部屋を使っている人が自分の意志で壁に刺したわけですから、原状回復義務が発生して壁紙の張り替えが必要になるのでは?と心配になります。

「普通に使用して傷んだものなのか、借主の故意や過失などによって傷んだものなのかは、国土交通省が出している『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』を指針として判断されるのが一般的です。それによると、壁に刺した画鋲やピンの穴程度であれば、通常の住まい方、使い方によって発生したものと考えられるので、原状回復義務は発生しません」

つまり、壁にカレンダーを画鋲で貼るのは普通の暮らし方だから問題ない、ということなのです。

以前は、原状回復義務の範囲は、賃貸借契約に関する民法では明確にされていませんでした。しかし、2020年4月1日から「民法の一部を改正する法律」が施行され、通常損耗や経年劣化については原状回復義務を負わないことが明記されました。

壁にカレンダーを貼っている人のイラスト

画鋲でとめたカレンダーの日焼け跡や、クギを打った跡

壁にカレンダーやポスターを貼ると、その部分だけが跡になることがあります。これは日焼けなどの自然現象によるもので、通常の生活をしていてもできるものと考えられるため原状回復義務の範囲外となります。

しかし、壁に打ったクギの跡となると話は別です。クギやネジの穴は画鋲やピンに比べて深く、穴も大きくなります。壁紙の内側にある下地ボードの張り替えが必要になる場合もあり、通常使用による損耗の範囲を超えていると判断され原状回復義務が発生することが多くなるでしょう。

ほかにも、故意にした壁の落書きや、引越し作業でできた引っかき傷、ペットによる壁や柱の傷なども通常損耗・経年劣化にあたらないとされ、原状回復義務を負うことになります。

室内の襖やドアの画鋲の穴

先ほど「壁に刺した画鋲やピンの穴程度であれば、通常の住まい方によって発生したものと考えられる」とお話しましたが、和室の襖や部屋のドアに画鋲を刺して穴を開けた場合には対応が違ってきます。

「賃貸借契約書で原状回復に触れる特約は物件によって違います。退去時に襖の紙の張り替え費用を負担することになっている場合、画鋲を刺したり、子どもがわざと破ってしまったりしても、どちらにしても張り替え費用が発生するので気にしなくていいでしょう。ただし、襖の枠は躯体と同じ扱いなので、まるごと交換になり費用がアップすることがあります。また、室内ドアに画鋲の穴を開けたり、傷をつけたりすると、場合によってはドアごと交換することになって費用がかかります。交換費用は襖や建具のグレードによって違いますが、数万円はかかると思っていいでしょう」

クロスの壁と違い、木製のドアや襖は穴が目立ち、穴埋めできれいにするのも難しいとか。扉や襖はそのままの状態で使用するほうが良いでしょう。

画鋲で絵が飾られたドアを見て困惑するお母さんのイラスト

原状回復について国交省のガイドラインを見てみよう

原状回復にかかる費用は、入居当初に預けた敷金から精算されるのが一般的です。その敷金精算の際のガイドラインとして使われている国交省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』から、画鋲やピン、クギの跡がどのような理由でそれぞれ原状回復義務の範囲内、範囲外に分けられているかを見てみましょう。

■原状回復義務の範囲外
賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるもの
項目 考え方
【壁、天井の画鋲、ピンなどの穴】
クロス張りの場合。下地ボードの張り替えが不要な程度のもの
ポスターやカレンダーなどを貼ることは、通常の生活の範疇。そのために使用した画鋲、ピンなどの穴は、通常の損耗と考えられる
【壁に貼ったポスターや絵画の跡】 クロスなどの変色は、主に日照などの自然現象によるもので、通常の生活による損耗の範囲と考えられる
【エアコン設置による壁のビス穴、跡】
賃借人所有のエアコンの場合
エアコンはテレビと同様に一般的な生活をしていくうえでの必需品になっている。その設置のために生じたビス穴などは通常の損耗と考えられる
※出典:『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』(国交省)から抜粋、一部編集
■原状回復義務の範囲内
賃借人の使い方次第で発生したりしなかったりするもの(明らかに通常の使用による結果とはいえないもの)
項目 考え方
【壁、天井のクギ穴、ネジ穴】
クロス張りの場合。重さのあるものをかけるために開けたもので、下地ボードの張り替えが必要な程度のもの
重さのあるものをかけるためのクギ、ネジ穴は画鋲などと比べて深く、範囲も広い。そのため通常の使用による損耗を超えると判断されることが多い。なお、地震などに対する家具転倒防止措置については、あらかじめ賃貸人(家主)の承諾、またはクギやネジを使用しない方法などの検討が考えられる
【天井に直接取り付けた照明器具の跡】 あらかじめ設置された照明器具用コンセントを使用しなかった場合は、通常の使用による損耗を超えると判断されることが多い
※出典:『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』(国交省)から抜粋、一部編集

賃貸物件の退去時、壁紙の修繕費用はどのくらい?

修繕費用に大きく関係する、入居期間と原状回復義務の負担割合について見ていきましょう。

住んだ期間が長いほど負担割合は下がる

先述したように、壁にカレンダーやポスターを貼るための画鋲やピンの穴程度であれば、原状回復義務は発生しません。しかし、「わざと書いた落書き」や「ペットの爪の跡」などは原状回復のための費用が発生します。

しかし、築年数が古い物件の場合には「大家さんの許容範囲が広くなって多少の傷や汚れなら許され、費用が少しで済む」というケースも。古い物件のほうが原状回復の費用負担が軽いケースがあるのは、国交省のガイドラインに記載された減価償却に関係するルールがあるためです。

「例えば、壁紙は6年で減価償却されます。下のグラフのように、新築で入居した場合の壁紙は、3年たつと負担割合が50%になります。新築で10万円かかった壁紙でも、3年住んで原状回復義務がある場合にすべて張り替えたとしても負担は50%の5万円ということになります」

減価償却を表した表
入居時の設備などの状態により、左方にシフトさせる。新築や交換、張り替え直後の場合は、始点は「入居年数0年、割合100%」。出典:『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』(国交省)

減価償却期間が過ぎても、わざと傷つけた場合の負担はゼロにならない

ただし、減価償却期間が過ぎていても、故意に傷つけた場合には修繕費用を負担しなければなりません。これは、借りている住まいの設備などの本来持っている機能を保つ義務が入居者に課せられているためで、正確には民法第400条に定められる「善良なる管理者の注意義務(通称:善管注意義務)」といいます。

「例えば、減価償却が8年のタイプのキッチンの場合、使用期間がすでに8年を超えているからといって、退去時に破損しても回復の費用負担はない、ということではありません。また、室内ドアや襖・障子の枠など建具の場合は経過年数が考慮されないため、傷をつけると100%の負担での回復義務が発生する場合があります」

原状回復の費用負担は、住宅の部位や物件によって違ってきますから、賃貸借契約を結ぶ際にきちんと確認しておくことが必要です。

賃貸物件で画鋲を使わずにカレンダーやアートを飾るには?

「国のガイドラインでは問題なくても、賃貸物件に画鋲などで穴を開けるのはやっぱり抵抗がある」という人も多いはず。最後に、画鋲を使わずにカレンダーやポスターアートを飾る方法をご紹介します。

ピクチャーレールのある物件を探す

もっとも理想的なのは、ピクチャーレールのついた物件を探すこと。一般的な耐荷重は30kg程度(1mあたり)で、ハンガータイプのカレンダーならそのまま、1枚もののカレンダーやポスターも市販のポスターフレームに入れればワイヤーでつり下げることができます。

「最近は賃貸でもピクチャーレールがついている物件が増えている印象があります。ピクチャーレールのメリットは、好みや家具の配置などに合わせて、飾る高さや位置の微調整がしやすいことです」(インテリアデザイナー・アートライフスタイリスト 住吉さやかさん、以下同)

ただ、ピクチャーレールからつり下げたポスターフレームや額縁はレールの幅の分、上部が少し前傾します。また、ブラブラと揺れるのが気になるという人も。

「最近は剥がせるタイプの粘着剤が売られていますから、それでフレームと壁を固定するといいでしょう。また、レールとフレームをつなぐワイヤーを自分で調達する場合、重たいフレームでも安心なのは金属製のワイヤーです。ただ、金属製は目立つので部屋の中で浮いてしまうかもしれません。気になる場合は透明なタイプを選ぶといいですね」

ピクチャーレールの写真
壁に取り付けられたピクチャーレールからワイヤーでカレンダーやポスターフレームをつり下げることができる。天井と壁の境目の目立たない場所に取り付けられているタイプのほか、壁の中程の高さに取り付けられていてワイヤー無しでフレームを飾ることができるタイプも(画像/PIXTA)

粘着式フックの選び方や使い方

裏面の粘着テープを使って壁に貼り付けるフックも、カレンダーやポスターアートの設置に最適。粘着テープとなると糊残りを心配する人も多いかもしれませんが、最近では長期間貼ってもきれいに剥がれる工夫が施された商品も多いです。

カレンダーやポスターアートであれば耐荷重500g程度で十分な場合が多いですが、絵画などの場合は3〜10kg程度まで耐えられるタイプを選びましょう。

突っ張り棒やスタンドの活用

突っ張り棒や突っ張りスタンドを壁にかけ、フックなどを使ってカレンダーを引っ掛けるのも一案。布製のタペストリーなどであれば、直接タペストリー上部の穴に突っ張り棒を通して引っ掛けることもできます。耐荷重はバネ式タイプで1~5kg程度で、壁材や設置場所を選ばず気軽に使えるのが魅力です。

ただし、突っ張り棒に長期間大きな負荷をかけてしまうと壁が傷ついてしまうことも。カレンダーやポスターアートなど軽量なものをかけるにとどめ、心配な場合は衝撃吸収パッドを活用しましょう。

画鋲の代わりになるその他の便利グッズ

ピクチャーレールがない物件で、壁に穴を開けずにカレンダーなどを飾るなら、貼って剥がせる粘着剤を使うのが手軽です。

「ポスターや小さなフォトフレームなど軽いものなら、貼って剥がせるタイプの接着剤が便利です。ちぎって、練り消しのようにもんで貼るだけ。剥がすのも簡単なので退去時にも安心です。このほか、壁紙に使ってもきれいに剥がしやすい壁紙用の両面テープもあります」

壁に開くのは画鋲やピンの穴程度で、重たい絵画や鏡をかけることができるグッズもあります。

「画鋲は、軽いものをとめることはできますが、重たい絵画やフォトフレーム、鏡などは落下の危険性があります。落ちるときに壁にできた穴が大きくなってしまうことも。小さな穴しか開かないけれど、耐荷重のあるフックなど、便利なものがいろいろありますから試してみるといいですね。ホチキスで固定できる壁掛金具、ひとつのフックにつき7kgまで耐えられる石膏ボード用画鋲も便利です」

種類 耐荷重 用途・メリット
ピクチャーレール 30kg程度(1mあたり) 絵画やカレンダーなど、さまざまな用途で使用可能。好みや家具の配置などに合わせて、飾る高さや位置を微調整できる。
粘着式フック 500g〜10kg フックの耐荷重によって絵画やカレンダーなど、さまざまな用途で使用可能。フック自体が小さく、かさばらない。
突っ張り棒、突っ張りスタンド 1~5kg(バネ式タイプ) ポスターアートやカレンダーの設置に最適。壁材や設置場所を選ばず気軽に使える。
ソフト接着剤 200g程度 軽量のポスターアートやカレンダーの設置に最適。簡単に剥がせる。
絵画で飾られた壁面
石膏ボード用画鋲を使用して絵を飾った壁面。画鋲を使った場合のように落下の心配がない(画像提供/住吉さやか、撮影/東涌写真事務所)
『かけまくり』を使用した跡
上の画像と同じ石膏ボード用画鋲を使用した跡。ボールペンのペン先程度の小さな穴が2つ残る程度(画像提供/住吉さやか)

賃貸マンションやアパートの壁でも、壁にカレンダーを貼るなど、普通の生活の範囲で画鋲やピンを使用することは問題ありません。でも、注意したいのは通常使用というにはあまりにたくさんの画鋲跡をつくったり、扉や襖の枠などに穴を開けたりすること。入居者は、経年劣化などを除いて入居当時の住まいの機能を保つ義務があるからです。

壁にカレンダーやポスターを飾りたい場合などは、穴を開けない工夫、できるだけ小さな穴にとどめる配慮をするのがいいでしょう。

まとめ

画鋲の使用有無や原状回復に関する詳細、費用の負担については、まず賃貸借契約と特約事項を見て確認しよう

賃貸の場合、年月の経過による劣化や普通に使用していて傷んだ箇所については原状回復義務の範囲外

いたずらでつけた傷など、通常の使用による結果ではないものは原状回復義務が生じる

ピクチャーレールや粘着式フック、突っ張り棒などを活用すれば、壁に穴を開けることなくアートやカレンダーを飾れる

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取材・文/田方みき イラスト/別府麻衣
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