原状回復ってどこまで自己負担? ガイドラインからみる賃貸の入居時・退去時に注意すべきこと

原状回復ってどこまで自己負担? ガイドラインからみる賃貸の入居時・退去時に注意すべきこと

賃貸の部屋を借りる際に支払う敷金や保証金。本来はキレイに住んでいれば退去時に戻ってくるのですが、部屋の状態によってはそっくり戻ってこないこともあり、トラブルになることも。そもそも「原状回復」って何? どこまで入居者が負担しなければならないの? 敷金や保証金のトラブルに詳しい不動産コンサルティングの長谷川高さんに教えてもらいました。

「原状回復」の意味とは?

入居時に支払う敷金や保証金。これらは入居者が汚したり損傷させた部屋を原状回復するための費用として充てるために、大家さんが事前に預かるお金です。また大家さんとしては敷金や保証金を預かっておくことで家賃の滞納リスクを担保できます。

そもそも原状回復の「原状」とは何でしょうか? 住んでいれば自然とできる汚れや傷、色あせもあります。こうした線引きがあいまいなため、かつては退去時に敷金の返還をめぐるトラブルが多かったのです。そこで1998年に国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表しました。

ここには「原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。簡単に言えば「普通に住んで自然にできる汚れや損傷は、入居者の責任ではありません」ということです。

普通に住んで生じた汚れや傷は、入居者の責任ではない

「原状回復というと、入居した当時の状態に戻すことだと思う人もいるようですが、そうではありません。何十年も前に最高裁の判決で『原状回復は入居時の状態に戻すのではない。自然に生活をしてできた損傷や汚れなどは貸借人(入居者)が負担する必要はなく、賃貸人(大家)が敷金の中で支払うべきだ』という判決がでています。国土交通省のガイドラインはそれに沿うものです」

また東京都も「賃貸住宅紛争防止条例」を2004年に施行しました。この条例は「東京ルール」と呼ばれることもありますが「国土交通省がガイドラインを示してもなかなかトラブルが減らなかったので、さらに周知しようという意味合いで条例が定められました。その内容は国土交通省のガイドラインとほぼ同じです」

どこまでが入居者の負担になるのか?

では具体的に、どんなことが「普通に住んでいればできて当然の汚れや損傷」であり、入居者負担になる汚れや傷とはどんなものなのでしょうか。東京都が作成した「賃貸住宅紛争防止条例&賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」の冊子(2018年5月発行版)から、その一部を表やイラストで見てみましょう。

●入居者と大家の負担区分の一例
入居者と大家の負担区分の一例
(画像作成/SUUMO編集部)

入居者の負担の場合は、修繕にかかる費用を敷金から引かれることになります。

ほかにも床なら、日差しで色あせたフローリングの張り替えは大家の負担になりますが、不注意で窓を開けたまま外出してしまい、その間に降った雨で床が変色した場合は入居者の負担になります。また壁では、ポスターやカレンダーなどを貼った際に、画鋲やピンの跡ができた場合や、日照によってポスターの貼ってあった部分とほかとのクロスの色が変わったため、クロスを張り替える場合は大家の負担になります。一方、クギやネジを使って壁に棚を設置したためクギ穴等ができた場合は、入居者の負担になります。

●床の原状回復の一例
床の原状回復の一例
左/日差しで色あせている。右/雨で変色している
●壁の原状回復の一例
壁の原状回復の一例
左/ポスターを貼った画鋲の跡は入居者負担にならない。右/壁に棚を設置したクギやネジの穴は入居者負担になる

なお、例えば床のフローリングに雨によるシミをつけてしまった場合、上記のとおり入居者負担で床を交換しますが、シミのない部分まで負担することはありません。といっても一部だけ新しいフローリングでは原状回復とはいえないため、すべてのフローリングの交換が必要になります。その場合はシミのできた部分のみ(床の場合、単位はm2)、さらに通常の使用でできた摩耗や経年変化分も差し引いた金額を負担する、という考え方で計算します。

トラブル防止には入居時と退去時がポイント

高い買い物をするのと同じだから契約は慎重に

国土交通省や東京都のガイドラインが示されたことで、トラブルは減ってはいますが、それでも無くなったわけでもありませんし、表に出なくても入居者側が「これくらいなら仕方ないか」と泣き寝入りしている場合もありえます。では、原状回復にまつわるトラブルを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。

「まずは慎重に部屋を選ぶべきです。借りるとはいえ、月に8万円の家賃を払うとしたら年間96万円、5年間住めば更新料を除いても480万円も支払うことになります。約500万円の買い物をする際は、誰だって慎重に選びますよね。それと同じように注意深く部屋を探しましょう」

そのためには契約時に契約書と、一緒に渡される重要事項説明書に書かれている内容を確認しましょう。「例えば『専門業者による清掃を施すための費用○万円を敷金から差し引く』というような特約が書かれていることがあります。そのまま契約して、あとになってから『全部払う必要がないんじゃないか?』と思ってももう遅いのです」。例えば東京の場合ほとんどの賃貸住宅でついているクリーニング特約については裁判所の判例でも有効/無効の判断が別れています。特約がある場合は内容をきちんと把握し、それで納得できるかどうか判断することが必要です。

「ガイドラインには、例えば壁のクギの穴は何センチまでならOKか、なんてことまでは書かれていません。ですから分からないところは契約前に一つひとつ確認することが大切です。できれば契約書と重要事項説明書を事前にもらって読んでおけるとベストです」

まだ契約するかどうか分からない段階で契約書と重要事項説明書をもらえるのかと思う人もいると思いますが「たいてい、ある程度のひな形があるはずなので、言えば見せてもらえる可能性はあります」

入居前に必ず部屋の隅々をチェック

内見時や引越し前にやっておきたいのが、傷やシミ等の有無の確認です。もしあるようなら写真を撮っておき、不動産会社と情報を共有しておくようにしましょう。「レンタカーを借りる場合、乗る前に傷や凹みがないか確認しますよね。それと同じです」

写真を撮っておけば、入居中に不動産会社が変わっても(昨今の景気事情では、不動産会社や大家が変わることは往々にしてあります)証拠になります。

入居中は当たり前ですが、掃除はきちんと行いましょう。東京都のガイドラインでは「手入れを怠ったことによるガスコンロ置き場や換気扇の油汚れの修繕は、借主(入居者)の負担」と示されています。浴室やトイレの水あかやカビについても「清掃・手入れを怠った結果損傷が生じた場合は借主(入居者)の負担」と記載されています。普通に生活するということと、掃除も何もしないこととは違うのです。

退去時に原状回復をめぐってトラブルになってしまうと、お互いに嫌な思いをします。それを防ぐためにも契約は慎重に行い、日ごろの掃除を怠らずに暮らすようにしましょう。

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取材・文/籠島康弘 イラスト/つぼいひろき
公開日 2019年03月12日
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