敷金が返ってこない! 返金はいつ・どのくらいが相場?  返金されないケースやトラブルを回避するコツ

最終更新日 2025年11月28日

敷金が返ってこない! 返金はいつ・どのくらいが相場?  返金されないケースやトラブルを回避するコツ

賃貸住宅を退去するとき、ふと頭をよぎるのが、契約するときに預けた敷金はちゃんと返ってくる? 全額返ってこない? いつ・どのくらい戻ってくるの?……ということ。誰もが気になる「敷金」の返金のあれこれについて、賃貸物件の管理運営を手がけるハウスメイトマネジメントの伊部尚子さんに聞きました。

敷金って具体的に何? 金額はいくらくらいが目安?

賃貸物件を借りるとき、よく見聞きするのが「敷金」という言葉。何のためのお金かというと、部屋を退去する際の原状回復(生活でできてしまった傷などを直す)費用に充てるため、入居前にあらかじめ「預けておく」準備金のようなお金です。基本的には、退去時に未納家賃がなければ原状回復にかかった費用が差し引かれ、残ったお金が返ってきます。

セットで説明されることが多い「礼金」は、大家にお礼の意味で支払うもので、これは退去しても返ってこないというのが最大の違いです。

金額は、物件によってまちまち。「以前は敷金・礼金とも家賃の2カ月分という物件が数多くあり、中には3カ月分という物件もありました。ところが最近は敷金が減る傾向にあり、金額は家賃の1カ月分が当たり前。ゼロという物件も増えています」(伊部さん、以下同)

そもそも、預け金である敷金は「退去の際に原状回復やクリーニングの費用をそこから差し引くためのもの。また、ちゃんと敷金を支払えるだけの資力がある人だという信用の担保のような意味合いもありました」

そして今では、家賃保証会社を利用するケースが増え、さらに国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」ができて部屋の原状回復の費用をどこまで入居者が負担するのかが明確になったこともあり、敷金も礼金もゼロという物件が増えてきているそうです。

「最近は、大家さんがお金を預かっておく必要がなくなってきたことが大きいですね。また、できるだけ初期費用を抑えたいという入居者が多いことも、敷金のいらない物件が増えてきている理由の一つです」

敷金の返金はいつ・どのくらい返ってくるの?

経年劣化は貸主負担

経年劣化とは、時間の経過や通常の使用に伴って自然に生じる劣化のことです。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、これらの修繕費用は原則として貸主負担とされています。

具体的な例としては、壁紙の自然な退色や畳のへたり、フローリングの色あせ、設備機器の経年による機能低下などです。また、冷蔵庫の裏の壁の黒ずみや、家具によるフローリングのへこみ、日光による変色なども経年劣化に含まれます。

これらの修繕や交換にかかる費用を、敷金から差し引くことは認められていません。ただし、借主の故意や過失による損傷、または通常の使用方法を超えた使用による劣化は、経年劣化とは見なされず、借主負担となる可能性があります。そのため、退去時の立ち会い検査では、どの部分が経年劣化で、どの部分が借主負担なのかを明確にすることが重要です。

敷金はいつ返金されるの?

敷金が戻ってくる時期は「契約書の敷金の欄に明記してありますが、だいたい退去してから1カ月以内が目安」。つまり、次の引越し先の初期費用に充てることは現実的に難しいといえます。

敷金は全額戻ってくる?返金相場は? どのくらい戻ってくる?

返ってくる金額は、原状回復費用を差し引かれた残りの金額。つまり、原状回復の費用がどれだけかかるかによって、金額は大きく変わります。

例えば壁紙の張り替えは1m2当たり約1000~1500円(ひと続きの面ごとに全面張り替え)、畳の表替えは1枚当たり約5000円、ふすまの張り替えは1枚2000~3000円ぐらいが目安ですが、地域や物件によって異なります。

敷金が戻ってこない可能性もある?

敷金は、家賃滞納の保証金や原状回復費用として使用されるため、家賃の滞納がなく、部屋を丁寧に使用していれば、より多くの金額が返金される可能性が高くなります。

返金額=敷金-不払い家賃-借主が負担すべき原状回復費用等

原状回復費用については、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にするとよいでしょう。このガイドラインでは、経年劣化による損耗は貸主負担、借主の故意・過失による損傷は借主負担と明確に区分されています。

トラブルを避けるためには、入居時と退去時の部屋の状態を写真で記録し、退去時の立ち会い検査に参加することが重要です。また、契約書の内容をよく確認し、不明点があれば事前に貸主や不動産会社に確認することをおすすめします。

イラスト
和室は畳の表替え、ふすまの張り替えなど、原状回復の費用がかかりがちなポイント(イラスト:もり谷ゆみ)

敷金を償却する契約を結ぶ場合もある

敷金が返ってこないというトラブルは、「まず契約書に『償却』という記載がないかどうかをチェックしてみてください」

例えば契約書に「敷金2カ月(解約時償却1カ月)」と書かれていたら、1カ月分は通常の敷金として預けられますが、残り1カ月分は返金しない前提で契約をしたことになります。

「賃貸借契約には時間がかかり、確認すべき書類も多いので、説明されてもよく理解していなかったり、退去までに忘れてしまったりするケースに気をつけましょう」

敷金が返ってくるまでの流れ

敷金が返ってくること自体は理解していても、どういった流れで返金されるのかまでは分からないことが多いですよね。敷金返金までの流れを把握し、不明点があれば不動産会社に問い合わせるなどの対応ができるようにしてください。

1.修繕費の見積もりを確認する

退去時は、大家や管理会社が立ち会って、部屋の確認が行われます。そこで部屋の状況を確認し、修繕が必要な箇所があるかどうかをチェックします。
それをもとに、管理会社は修繕費やクリーニング代の見積もりを作成する流れです。

2.敷金の精算内訳書が届く

退去の立ち会いから1カ月以内には、精算内訳書が届きます。1カ月を過ぎても送られてこない場合には、管理会社に直接確認してください。精算内訳書を確認後、疑問点や不明点があれば早めに管理会社に連絡するようにしましょう。

3.敷金が返金される

その後、賃貸借契約書に記載された敷金返金時期に従って敷金が返金されます。一般的には精算内訳書が届いてから1カ月以内には返金されることが多いですが、それまでの過程で何かトラブルなどがあれば、遅延する可能性もあります。1カ月を過ぎても連絡もなく返金されない場合は、管理会社に確認しましょう。

敷金トラブルを防ぐための注意ポイントは?

敷金返還に関するトラブルを防ぐには、事前の準備と適切な対応が重要です。契約内容の確認、入居時の部屋の状態チェック、退去時の立ち会いへの参加など、借主自身が注意を払うことで多くのトラブルを回避できます。ここでは、具体的なポイントを解説します。

入居時に部屋の状態を確認して記録しておく

入居時に部屋の状態を詳細に確認し、記録しておくことは、将来的な敷金トラブルを防ぐ上で重要です。内見時には、部屋の間取りや雰囲気だけではなく、既存の傷や汚れ、設備の不具合なども注意深くチェックしましょう。これらの状態をスマートフォンなどで写真や動画を撮影し、日付入りで保存しておくことをおすすめします。

さらに、国土交通省が発行している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にし、退去時の立ち会い検査の際に、このガイドラインに沿って原状回復義務の範囲を確認することが重要です。入居時の記録と併せて、ガイドラインの内容を理解しておくことで、退去時に適切な原状回復の範囲を貸主とすり合わせることができ、不当な請求を避けることができます。

参考:国交省「現状回復をめぐるトラブルとガイドライン

退去時の立ち会いに参加して原状回復義務の範囲を確認する

退去時の立ち会いに参加することは、敷金トラブルを防ぐ上で非常に重要です。立ち会いでは、大家や管理会社の担当者が部屋の状態をチェックし、原状回復費用を見積もります。借主も同席することで、適切な範囲内での負担となっているかを直接確認できます。

立ち会いの際には、入居時に撮影した写真や動画を用意し、経年劣化と借主の故意・過失による損傷を明確に区別できるようにしておくことをおすすめします。請求される修繕費用の明細を細かくチェックし、不当な請求がないか確認することも大切です。

例えば、部分的な修繕で済むものを全面交換で請求されていないか、ハウスクリーニングの範囲や単価が適切かなどをチェックします。疑問点があれば、その場で質問し、納得のいく説明を求めてください。

契約内容をきちんと確認する

敷金トラブルを防ぐためには、賃貸借契約書の内容を詳細に確認することが不可欠です。特に注意すべきは「特約事項」です。

例えば、退去時のハウスクリーニング費用の負担や敷金の償却に関する条項などが含まれていることがあります。これらの特約は、通常のガイドラインとは異なる取り扱いを定めていることがあるため、よく理解しておく必要があります。

次の「契約書で特に確認すべきポイント」では、具体的にチェックすべき項目について詳しく見ていきましょう。

契約書で特に確認すべきポイント

敷金トラブルを防ぐためには、まず契約内容をよく確認することが鉄則です。「契約書にガイドラインのルールが書いてあるかどうか、自分に不利になりそうな特約がついていないかをチェックしましょう」

特に注意したいポイントを以下にまとめたので、参考にしてください。

●畳・ふすま

和室のある物件が多かったころの名残で、特約事項として「畳の表替え、ふすまの張り替え、クリーニングの費用は入居者負担」と契約書に書いてあるケースがあります。

費用は前述の目安で計算すると、例えば和室が6畳2間の物件では、畳5000円×12枚で6万円、さらにふすまの枚数も加算されるので、敷金では足りないケースも出てきます。契約時は、これが特約事項として入居者負担になっているかどうか、畳・ふすまが何枚あるか確認しましょう。

●ペット

ペットに起因する損傷は全て入居者負担となっているケースが一般的です。飼っているペットの習性にもよりますが、木製の建具をかじったり引っかく癖があったりするペットの場合、弁償金額は大きくなりがちです。これまでペットを飼ったことがない人や、引越し先で新しいペットを飼う人は、習性が分からないので注意が必要です。

●たばこ

たばこは臭いだけでなく、ヤニによる汚れの問題も考えておくべきです。特に明記されていない場合、掃除して落ちる程度の汚れなら、入居者の過失と見なされないこともありますが、見て分かる程度の汚れで落ちない場合は過失と判断されることもあります。

ヤニの汚れは、ポスターや壁掛け時計を外したら壁の色が違うなどで分かり、臭いは喫煙しない人がはっきり感じる状態であれば換気しても時間がたっても消えにくく、過失と判断される場合があります。

●住宅設備

例えばキッチンの天板やシンク内に空き缶を放置したり、洗面台にヘアピンを放置したりしたことでさびの跡が残ってしまうケースや、ユニットバスの継ぎ目のゴムパッキンにカビが生えたまま放置し、色が残ってしまうこともあるでしょう。住宅設備は、簡単に張り替えられる壁紙と違い、修繕費用が高額になりがちなので、日ごろの掃除が大切です。

敷金トラブルが起こってしまったら?

返してもらう敷金の金額や、入居者の負担となることに納得できないなど、敷金の返還を巡るトラブルは「まずは不動産会社に連絡してください。金額の根拠や入居者の負担となる理由などの説明を受け、それでも納得できないという場合は、箇所の写真を撮り、消費生活センターなどに相談しましょう」

敷金をできるだけ多く取り戻すには、まず契約時に、退去費用に関してどのようなルールになっているのかを確認することが大切です。さらに入居して生活がスタートしたら、部屋をきれいに保つことも重要となります。

「汚れはためればためるほど落としにくくなるもの。退去時に頑張って大掃除をするより、日ごろからこまめに掃除することが大切です」と伊部さん。掃除を習慣とし、住宅設備を丁寧に扱い、借りる人も貸す側も気持ちよく過ごしましょう。

まとめ

敷金は預けるお金。退去時に、そこから原状回復の費用を引かれ、残りが戻ってくる

敷金が返ってくるのは、退去してからだいたい1カ月以内が一般的

敷金を多く取り戻すためにも、部屋はきれいに掃除をし、住宅設備は丁寧に扱うこと

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取材・文:前川ミチコ、SUUMO編集部 イラスト:もり谷ゆみ
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