住まい探しを始めるタイミングは、就職・転勤・結婚・子どもの誕生など、ライフステージの変化がきっかけになることが多いといわれています。心配なのは、今の年収500万円で、いくらの家賃なら無理なく払っていけるのかということです。
そこで今回は、年収500万円の単身世帯と、世帯年収500万円の二人世帯の家計をシミュレーションし、家賃の目安金額・いくらの家賃なら家計を圧迫しないのか考えてみたいと思います。あわせて、気になるエリアの家賃相場や、家賃を安く抑えるためのポイントもご紹介します。
住まい選びで目安になるのは、「家賃の額を収入の何割くらいに抑えたらいいのか」ということ。そこで、住まい選びについて紹介する前に、一般的な収入の状況を見てみたいと思います。
厚生労働省が公表している「令和5年賃金構造基本統計調査」の結果によると、令和5年(2023年)の短時間労働者(※)を除いた平均給与は、男性が前年度比2.6%増の35.09万円、女性が同1.4%増の26.26万円で、男女合わせた合計は同2.1%増の31.83万円でした。年収に換算すると、男性の平均年収は約421.1万円、女性の平均年収は約315.1万円、男女合わせた全体の平均年収は約382.0万円です。
※同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、又は1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者のこと。
年齢・男女別の平均月収は、20代前半では男女差はあまり見られません。しかし、20代後半から男性の賃金の上昇スピードが女性を上回るようになり、男性の平均月収は30代前半で30万円を超え、50代後半でピークの42.74万円(年収換算で約512.9万円)に達します。一方、女性の平均月収は30代前半で25万円を超え、その後も緩やかに上昇していきますが、ピークは50代前半の28.59万円(年収換算で約343.1万円)で、平均月収が30万円を超えることはありません。
女性の賃金の上昇が男性より緩やかな点について調査では触れていませんが、調査対象となった男性の平均勤続年数が13.8年だったのに対して、女性の平均勤続年数は9.9年でした。勤続年数の短さが要因の一つになっている可能性がありそうです。
年齢 | 男性 | 女性 | 男女計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均月収 | 平均年収 | 平均月収 | 平均年収 | 平均月収 | 平均年収 | |
全体平均 | 35.09 | 421.1 | 26.26 | 315.1 | 31.83 | 382.0 |
~19歳 | 19.11 | 229.3 | 18.84 | 226.1 | 19.00 | 228.0 |
20~24歳 | 22.93 | 275.2 | 21.96 | 263.5 | 22.46 | 269.5 |
25~29歳 | 26.78 | 321.4 | 24.58 | 295.0 | 25.83 | 310.0 |
30~34歳 | 30.21 | 362.5 | 25.96 | 311.5 | 28.60 | 343.2 |
35~39歳 | 33.79 | 405.5 | 27.01 | 324.1 | 31.48 | 377.8 |
40~44歳 | 37.18 | 446.2 | 27.68 | 332.2 | 33.88 | 406.6 |
45~49歳 | 39.69 | 476.3 | 28.17 | 338.0 | 35.57 | 426.8 |
50~54歳 | 41.77 | 501.2 | 28.59 | 343.1 | 37.11 | 445.3 |
55~59歳 | 42.74 | 512.9 | 28.17 | 338.0 | 37.64 | 451.7 |
60~64歳 | 33.42 | 401.0 | 24.66 | 295.9 | 30.59 | 367.1 |
65~69歳 | 29.33 | 352.0 | 21.71 | 260.5 | 26.98 | 323.8 |
平均年齢 | 44.6歳 | 42.6歳 | 43.9歳 | |||
平均勤続年数 | 13.8年 | 9.9年 | 12.4年 |
年齢とともに年収は増える傾向がありますが、勤務先や働き方、勤続年数などによって収入の状況は変わってきます。そこで、各年代別に年収500万円(年収500万円以上550万円未満)の人がどのくらいの割合でいるのか調べてみました。厚生労働省が公表している「令和5年賃金構造基本統計調査」をもとに編集部が計算したところ、40代が34.92%、50代が44.37%で年収500万円になると若い世代が減り、40代と50代で全体の8割弱を占めています。
20代 | 1.37% |
---|---|
30代 | 11.53% |
40代 | 34.92% |
50代 | 44.37% |
60代 | 7.80% |
毎月の給料から天引きされるのは、所得税や住民税、厚生年金・健康保険・雇用保険の保険料などです。一般的には、月収の約8割から7割が手取り額の目安といわれていますが、独身なのか、パートナーが働いているのか、子どもがいるのかなど、家族構成によっても目安が変わってきます。そこで、年収500万円の家計を、家族構成に応じてシミュレーションしてみたいと思います。
年収500万円の単身世帯の会社員は、毎月の額面給料は41万6667円です。そこから、厚生年金保険料が3万7515円、健康保険料が2万459円、雇用保険料が2500円、所得税が1万1494円、住民税が3万2369円、合わせて10万4337円が天引きされ、月の手取り額は31万2330円になります。
額面給料 | 41万6667円 |
---|---|
厚生年金保険料 | 3万7515円 |
健康保険料 | 2万459円 |
雇用保険料 | 2500円 |
所得税 | 1万1494円 |
住民税 | 3万2369円 |
月の手取り額 | 31万2330円 |
夫婦ともに会社員として働く、世帯年収500万円でシミュレーションしました。
まず、夫の毎月の額面給料は25万円で、そこから厚生年金保険料が2万3790円、健康保険料が1万2974円、雇用保険料が1500円、所得税が4378円、住民税が1万7924円、合わせて6万566円が天引きされ、月の手取り額は18万9434円です。
一方、妻の毎月の額面給料は16万6667円で、そこから厚生年金保険料が15万5555円、健康保険料が8483円、雇用保険料が1000円、所得税が2248円、住民税が1万913円、合わせて3万8199円が天引きされ、月の手取り額は12万8468円です。
その結果、夫婦二人の手取り給料の合計額は31万7902円になります。なお、妻の年収が200万円だと、夫の所得税を計算する際に配偶者特別控除(年3万円)の対象になります。これにより、夫の所得税は、同じ年収の独身者より年間で1500円減税されています。
夫(年収300万円) | 妻(年収200万円) | |
---|---|---|
額面給料 | 25万円 | 16万6667円 |
厚生年金保険料 | 2万3790円 | 1万5555円 |
健康保険料 | 1万2974円 | 8483円 |
雇用保険料 | 1500円 | 1000円 |
所得税 | 4378円 | 2248円 |
住民税 | 1万7924円 | 1万913円 |
月の手取り額 | 18万9434円 | 12万8468円 |
二人分の手取り | 31万7902円 |
家賃の目安に明確な定義はありませんが、一般的には手取りの3割が目安といわれています。先ほどのシミュレーションに照らし合わせると、年収500万円・世帯年収500万円の手取り額は月31万円~32万円なので、約9万円~10万円が家賃の目安といえます。
住まい選びで大切なのは、家賃の負担が家計を圧迫しすぎないように配慮することです。住む地域によって家賃の相場も違うので、家計に余裕があればワンランク上の部屋を、余裕がない場合は家賃の安いエリア・物件を中心に探すなどの工夫も必要です。
年収・世帯年収額 | 家賃目安 |
---|---|
200万円 | 3.85万円 |
250万円 | 4.75万円 |
300万円 | 5.68万円 |
350万円 | 6.61万円 |
400万円 | 7.54万円 |
450万円 | 8.45万円 |
500万円 | 9.37万円 |
550万円 | 10.19万円 |
600万円 | 11.10万円 |
650万円 | 12.01万円 |
700万円 | 12.73万円 |
750万円 | 13.54万円 |
800万円 | 14.31万円 |
850万円 | 15.17万円 |
900万円 | 16.00万円 |
950万円 | 16.83万円 |
1000万円 | 17.66万円 |
住まいを選ぶ際には、通勤・通学をしやすいなどの交通の利便性や、買い物をする場所や病院が近いなどの生活の利便性、そのほかにも周辺環境の快適性や安全性など、さまざまなポイントがあります。そこで参考にしたいのがSUUMOの住みたい街ランキング。人気のあるエリアには、“街”としてさまざまな魅力があふれています。ぜひ、住まい探しの参考にチェックしてください。
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単身者が東京都23区内を中心に住まいを探す場合、想定される主な間取りは1Kや1DKなどです。23区内の家賃相場はマンションタイプだと最も安い江戸川区で7万円、人気が高いエリアでは渋谷区が10.5万円、千代田区が10.7万円で、最も家賃相場が高かったのが港区で11.2万円でした。
年収500万円の単身者の家賃目安は約9万円~10万円なので、1Kや1DKなら23区内の一部を除きどのエリアでも選べます。通勤に便利なエリアを中心に、お気に入りの住まいを探してみるといいかもしれません。ただ、家賃の目安が10万円だからといって、上限額いっぱいの家賃にすればいいというわけではありません。ちょっと安めの物件・エリアで部屋を探して、浮いたお金を貯蓄にあてるという選択肢もあれば、予算の範囲内でちょっと広めの1LDKを探してみるという選択肢もあります。
順位 | エリア | 家賃相場 |
---|---|---|
1位 | 江戸川区 | 7.0万円 |
2位 | 足立区 | 7.2万円 |
2位 | 葛飾区 | 7.2万円 |
4位 | 練馬区 | 7.4万円 |
5位 | 板橋区 | 7.6万円 |
6位 | 大田区 | 8.0万円 |
6位 | 杉並区 | 8.0万円 |
6位 | 荒川区 | 8.0万円 |
9位 | 北区 | 8.1万円 |
10位 | 中野区 | 8.5万円 |
10位 | 豊島区 | 8.5万円 |
12位 | 世田谷区 | 8.6万円 |
13位 | 文京区 | 8.8万円 |
13位 | 墨田区 | 8.8万円 |
15位 | 品川区 | 9.0万円 |
16位 | 江東区 | 9.2万円 |
17位 | 台東区 | 9.7万円 |
17位 | 目黒区 | 9.7万円 |
19位 | 新宿区 | 9.8万円 |
20位 | 中央区 | 10.2万円 |
21位 | 渋谷区 | 10.5万円 |
22位 | 千代田区 | 10.7万円 |
23位 | 港区 | 11.2万円 |
二人暮らしでは、1LDKや2K、2DKなどが主な選択肢になります。東京都23区内のマンションタイプの家賃相場は、最も安い葛飾区が8.4万円、足立区が8.8万円、江戸川区が8.9万円です。人気が高いエリアでは千代田区が18.5万円、渋谷区が19.0万円で、最も家賃相場が高かったのが港区で21.4万円でした。
世帯年収500万円の二人世帯の家賃目安は約9万円~10万円です。板橋区(家賃相場10.4万円)・練馬区(同10.7万円))なども視野に入ってくるので、それぞれが通勤しやすいエリアを中心に、部屋を探すといいかもしれません。
もしも、それぞれの職場から家賃補助が受けられる場合には、もう少し人気があるエリアで部屋を探すこともできますし、家賃を安く抑えて浮いたお金を将来のためにためておくこともできます。価値観はそれぞれ違うので、二人で話し合って決めるといいでしょう。
順位 | エリア | 家賃相場 |
---|---|---|
1位 | 葛飾区 | 8.4万円 |
2位 | 足立区 | 8.8万円 |
3位 | 江戸川区 | 8.9万円 |
4位 | 板橋区 | 10.4万円 |
5位 | 練馬区 | 10.7万円 |
6位 | 荒川区 | 11.5万円 |
7位 | 北区 | 11.8万円 |
8位 | 大田区 | 11.9万円 |
9位 | 杉並区 | 12.6万円 |
10位 | 江東区 | 13.0万円 |
10位 | 中野区 | 13.0万円 |
12位 | 豊島区 | 13.3万円 |
13位 | 世田谷区 | 13.8万円 |
14位 | 墨田区 | 13.9万円 |
15位 | 台東区 | 14.6万円 |
16位 | 品川区 | 15.2万円 |
17位 | 文京区 | 15.5万円 |
18位 | 目黒区 | 15.9万円 |
19位 | 新宿区 | 16.0万円 |
20位 | 中央区 | 17.7万円 |
21位 | 千代田区 | 18.5万円 |
22位 | 渋谷区 | 19.0万円 |
23位 | 港区 | 21.4万円 |
アパート・マンションの部屋探しでは、家賃だけでなく最寄り駅までの距離、周辺の環境、通勤通学に便利な沿線のエリアなど妥協できないことがあります。どうしてもエリアにこだわりたいという場合には、以下のようなポイントに注目して、相場より安い物件を探してみるといいでしょう。
年収450万円、年収550万円の家賃相場も見てみよう
→年収450万円の家賃相場はいくら?手取り額や年金・健康保険・税金の額をシミュレーション
→年収550万円の家賃相場はいくら?手取り額や年金・健康保険・税金の額をシミュレーション
年収500万円の家計を具体的にシミュレーションしてみましょう。支出金額は、総務省統計局発表の「家計調査 2023年」をもとに主な項目を抽出し、家賃は手取り額の3割を目安に計算しています。
単身世帯の1カ月の支出は19.66万円で、手取り額との差額11.57万円が手元に残ります。金銭的に余裕があるので、旅行などの趣味に対する支出を増やすことができるのではないでしょうか。
支出項目 | 金額 |
---|---|
手取り額 | 31.23万円 |
家賃 | 9.37万円 |
食費 | 4.20万円 |
水道光熱費 | 1.30万円 |
教養娯楽 | 1.88万円 |
通信費 | 0.66万円 |
交通費 | 0.45万円 |
衣類 | 0.44万円 |
家具・家事用品 | 0.58万円 |
習い事・教育費 | 0.04万円 |
保険・医療費 | 0.74万円 |
支出合計 | 19.66万円 |
貯金可能額 | 11.57万円 |
夫婦など二人暮らしの家計をシミュレーションしたところ、1カ月の支出額は26.83万円でした。大きく増えたのは食費で、光熱費なども増えています。黒字ではありますが、貯金額を1万円でも増やすため過度なぜいたくは控えた方がいいかもしれません。もしも会社からの家賃補助があれば、もうワンランク上の物件を探すこともできるでしょう。
支出項目 | 金額 |
---|---|
手取り額 | 31.79万円 |
家賃 | 9.54万円 |
食費 | 7.24万円 |
水道光熱費 | 2.16万円 |
教養娯楽 | 2.63万円 |
通信費 | 1.04万円 |
交通費 | 0.47万円 |
衣類 | 0.72万円 |
家具・家事用品 | 1.12万円 |
習い事・教育費 | 0.35万円 |
保険・医療費 | 1.56万円 |
支出合計 | 26.83万円 |
貯金可能額 | 4.96万円 |
年収500万円の世帯は、目安といわれている約9万~10万円の家賃の部屋を借りても、収入の範囲内で暮らしていくことができそうです。ただし、家族が増えると家計がひっ迫する可能性があるため、家賃が安いエリア・物件への住み替えも検討する必要が出てきます。今回紹介したシミュレーションを参考にして、無理なく暮らせる住まいを探しましょう。
家賃相場は手取り額の3割が目安といわれており、年収500万円・世帯年収500万円の世帯の家賃目安は約9万~10万円になる
家族が増えるなどして、収入の範囲で支払うのが難しい場合には、家賃が安いエリアや物件を中心に探すことも大切。木造の建物を選ぶなど、紹介したポイントに注目して探すといい
会社からの家賃補助があれば、年収500万円・世帯年収500万円の世帯は家計に余裕が出る場合もある。その際にはワンランク上の住まいを選んだり、将来に備えて貯蓄したりと、それぞれの価値観に合わせて使い道を考えるといい
保険や貯蓄、投資、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。株式やFX、不動産取引では、自身の投資経験と専門知識をもとに情報を発信