玄関ドアがスムーズに開かない、室内ドアを閉めるときにきしむ音がするなど、ドアのちょっとした不具合を感じている人はいませんか?この記事では、自分で直せる「軽度な不具合」と、プロに任せるべき「危険なサイン」の見極め方を解説。自分でDIYをして修理する方法、業者に依頼する場合の費用目安や賢い頼み方などについて、ホームインスペクション(住宅診断)を行うさくら事務所のプロホームインスペクター、印南俊祐さんに教えていただきました。

記事の目次
このドアの不具合、放置は危険?まずは症状をチェック
賃貸か持ち家かで不具合の対処方法は異なる
一日に何度も開け閉めする玄関ドアや室内ドアががたついたり、嫌な音がしたりするとそのたびに気になるものです。ちょっとした不具合なら自分で修理しようと考えるかもしれませんが、賃貸住宅に住んでいるなら、まずは管理会社か大家さんに相談しましょう。
「持ち家なら自分の所有物なので、自由に修理して問題ありません。しかし、賃貸住宅の場合、自己判断で修理すると、たとえ上手くいっても責任問題になる可能性があります。
というのも、賃貸住宅は契約時に床や壁紙、ドアなどの修繕に関する負担区分などのルールを定めています。ルールは物件により違うので、まずは賃貸借契約書を確認することをおすすめします。
賃貸借契約書に特に記載がなくても、勝手に修理せず、まずは管理会社や大家さんに話をして指示に従いましょう。管理会社や大家さんから修理してよいと言われても、立ち会ってもらい作業するほうがよいと思います」(さくら事務所 印南俊祐さん。以下同)

玄関ドアの不具合はプロに相談してすぐに対処を
ひとくちに不具合といってもさまざまな状態がありますが、玄関ドアの場合は安全や防犯に関わるため、小さな不具合でもプロに相談してすぐに対処してもらうほうがよいでしょう。
「玄関ドアは、室内ドアと比べると本体価格はもちろん鍵や金具などの部品価格も高額なので、自分で修理して失敗し、壊してしまうのは避けたいところです。
例えば、鍵が挿さったまま抜けなくなったり、鍵穴に異物が入り鍵が挿せなくなったりする不具合が起きたとしても、ペンチなどを使って無理に直そうとせず、すぐに鍵の専門業者に依頼しましょう。このような状況では鍵自体の交換が必要になるケースが多く、交換費用は2~4万円程度が目安です。
特に鍵やハンドルに関する不具合は急に故障して慌てないように、調子が悪いと感じたらすぐにプロに相談したほうがいいでしょう。自分で修理するのは、ドアガードががたつくときにネジを締めなおす程度にしたほうが無難です」

室内ドアの軽微な不具合なら修理に挑戦しても
高価で不具合が防犯面に直結する玄関ドアと違い、室内ドアの不具合は自分で対処できるケースが多いようです。
「持ち家で、目で見て原因が分かる程度の軽い不具合なら、修理に挑戦してみるのもよいかもしれません。例えば、ドアの開閉時に異音がするなら蝶番(ちょうつがい)に専用の潤滑油をスプレーする、ドアノブががたつくならネジを締め直すなどは簡単にできます。
ただ、ドアを閉めても隙間が空いたり、閉まっているのにぐらついたりするときは、建物のゆがみが原因かもしれません。自分で修理せずにプロに相談するほうがよいと思います」

【症状別】自分でできる!ドア修理DIYマニュアル
ここからは、軽度な不具合に関する修理方法を症状別に紹介します。
前述したように、持ち家の場合は自己責任でいろいろとDIYができますが、賃貸住宅の場合は管理会社や大家さんに了承を得たうえで、できれば立会いのもとに修理してください。
「自分で修理をする場合、まずはドアの製造メーカーを確認して、その会社のホームページをチェックしてみましょう。メーカーによりますが、修理やメンテナンスの方法が紹介されていたり、交換用部品が販売されていたりすることがあります。読んで分からないことは、メールや電話で問い合わせができる会社もあります」
症状:ドアが「きしむ」「キーキー鳴る」
ドアの開閉時にキーキーときしむ音が鳴る場合は、蝶番のオイルが切れていてスムーズに動いていない可能性があります。
「ホームセンターやネット通販などで売られているシリコンスプレーなどの潤滑油を購入し、蝶番にスプレーしてみましょう。潤滑油にはいろいろな種類があるので、必ず『蝶番用』と書かれた物を購入してください。
作業のコツはスプレーを少しずつ行うことです。少しだけスプレーして動きがよくなるか、音がしなくなるかなど様子を見ながら作業してください。音がしなくなったら余分な油をふき取っておきましょう」

症状:ドアが「がたつく」「スムーズに閉まらない」
ドアががたついたり、スムーズに閉まらなかったりする原因は大きく2つあります。
1つは、蝶番の緩みが原因のケースです。ドアをスムーズに閉められる位置に扉を固定して、蝶番のネジを少しずつ締めてみましょう。
「上下と前後の2方向を同時にチェックしながら扉を固定して、蝶番のネジを締める作業を行います。平面的な調整であれば簡単かもしれませんが、2方向の調整はかなり難しいので、2人で作業したほうがよいかもしれません」
もう1つは、ドアノブのハンドルの部分にあるラッチボルトが原因のケースです。ラッチボルトは扉のハンドル側面についている先端が三角形になっている金具で、枠側にある穴に入ることで閉めたドアを固定しています。対処法としては、ラッチボルトの動きが悪いなら潤滑油を差す、ネジが緩んでいたら少しずつ締め直す、枠側の穴にほこりがたまっていたら掃除をする、などがあります。

「蝶番やラッチボルトを調整しても症状が変わらないなら、建物のゆがみによってドア枠もゆがみ、ドアがスムーズに閉まらなくなっている可能性があります。これはドア単体の問題ではないので、プロに対処してもらうようにしてください」
症状:ドアノブ・レバーハンドルが「ぐらつく」「緩んでいる」
長い間使っていると、ドアノブやレバーハンドルがぐらついたり、緩んでしまったりするケースがあります。
「室内ドアなら、ドアノブやレバーハンドルの金具のネジが緩んでいないかチェックしましょう。もし緩んでいたら、ドアノブやレバーハンドルを正しい位置に戻して、ネジを少しずつ締めてみてください。あまりきつく締めすぎると、ドアノブやレバーハンドルの動きが固くなり過ぎるので注意してください」
玄関ドアで多くみられる、プッシュプル錠のような複雑な構造のドアノブの場合、自分で修理するのは難しいかもしれません。防犯面の懸念もあるので、不具合を感じたら早めにプロに相談することをおすすめします。

症状:ドアの「へこみ」や「穴開き」
ドアにうっかりと硬いものをぶつけてしまい、へこませたり、穴を開けてしまったりしたときの対処法は、ドアの素材によって変わります。
「木製や木調シートを張ったドアなら、市販の補修キットを活用すればある程度は見栄えが良くなるように修繕できます。補修キットにはさまざまな種類がありますが、補修材を練ったり熱で溶かしたりして凹んだ部分に埋め込み、サンドペーパーで仕上げるタイプが一般的です」
もし、凹みが深かったり、開いている穴が大きかったりするなら、補修シートを張ったほうが対処しやすいかもしれません。凹みや穴の部分をパテで埋める、ベニヤ板で下地をつくるなどで調整した上に補修シートを張るようにしましょう。

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「金属性のドアの場合、DIY用の補修材や補修キッドは市販されていないようです。穴や凹みから錆が生じると見た目も悪くなりますし、穴の大きさによっては防犯面の不安もあるので、早めにプロに相談したほうがよいと思います」
症状:鍵穴に「鍵を出し入れしにくい」「鍵がスムーズに回らない」
玄関ドアの鍵穴(シリンダー)に鍵を出し入れしにくい、鍵を入れたもののスムーズに回りにくいなど、鍵穴の不具合は比較的多いかもしれません。
不具合の原因は、鍵や鍵穴が変形している、鍵穴にゴミやほこりが詰まっている、鍵を回したときに扉側面から出るデッドボルトと受け座となるストライクの位置がずれている、などが考えられます。

「鍵の滑りをよくしようと、いきなりシリンダーにサラダ油や市販の防錆用の潤滑剤を差す人がいますが、油分がホコリやゴミを呼び寄せてしまい、結果的にシリンダーの交換が必要になることがあります。これらは絶対に使用しないでください。
まずは掃除機やエアダスターなどを使って、鍵穴のほこりやゴミをきれいに取り除きます。鍵穴専用の潤滑剤を少しだけスプレーして、そのあと鍵を挿し込んだり回したりして滑りがよくなるか試してみましょう。また、自宅にBや2B、4Bなどの鉛筆があれば、鉛筆の芯を鍵に塗ることで潤滑剤と同じような効果が得られます。
潤滑剤を差してもスムーズに回らないなら、鍵や鍵穴が変形している可能性があるのでプロに相談したほうがよいでしょう」
デッドボルトとストライクの位置がずれているかは、目視である程度分かります。ネジの緩みによる位置のずれているなら、少しずつネジを締め直して調整してみましょう。ネジが緩んでいない場合はドア枠のゆがみなど他の原因かもしれないので、プロに相談することをおすすめします。
症状:ドアが「バタンとしまる」「強く引かないと閉まらない」
ゆっくりと閉まっていたドアがバタンと速く閉まったり、強く引かないと閉められなかったりするときは、ドア上部に取り付けられているドアクローザーの不調かもしれません。
「ドアクローザーの本体の中にはオイルが入っていて、油圧でドアの開閉スピードを調整しています。耐用年数を超えると部品が劣化して中のオイルが漏れてくるケースがありますが、こうなると修理は難しいのでドアクローザー本体を交換することになります。
オイルが漏れていなければ、ドアクローザーをドアやドア枠に固定しているネジが緩んでいないか確認します。ネジに緩みがなければ、ドアクローザー本体にある速度調整ネジを調整してみましょう。どのネジを締めれば速く・遅くなるかはネジのまわりに書いてあるので、様子を見ながら少しずつ調整してください」
※注意:調整ネジは絶対に緩めすぎないでください。ネジを抜き取ると内部の油が漏れて元に戻せなくなります。

「難しいかも」と感じたら無理な修理は禁物
ここまで解説してきたように、 ドアの不具合はちょっとした調整で直ることもあります。ただし、自己流で直そうとして、部品を破損してしまったりネジ山を潰してしまったりとなると、かえって修理費用が高くついてしまうことも。ここまでの説明を読んで「難しそう」と感じたら、無理をせずプロの業者に見積もりを依頼することをおすすめします。複数の業者から見積もりを取ることで、適正価格で修理を依頼することができます。
【業者に依頼する場合】修理費用の相場と優良業者の選び方
修理内容ごとの費用相場
自分で修理する時間がなかったり、難しそうだと感じたりする方は、修理業者に相談してみましょう。気になる修理費用は、修理に用いる道具や交換する部品の価格によって変わります。下記に修理内容別の費用相場を紹介するので参考にしてください。
| 内容 | 玄関ドア | 室内ドア |
|---|---|---|
| 蝶番の調整・修理 | 2万~4万円 | 2万~4万円 |
| 蝶番の交換 | 7万~10万円 | 3万~5万円 |
| ドアノブの調整・修理 | 2万~4万円 | 2万~4万円 |
| ドアノブの交換 | 3万~9万円 | 3万~5万円 |
| ドアクローザーの調整・修理 | 2万~4万円 | 2万~4万円 |
| ドアクローザーの交換 | 5万~7万円 | 3万~5万円 |
| 穴・傷の補修 | 3万~6万円 | 3万~6万円 |
どこに頼む?修理業者の種類
ドアの修理業者には、工務店やリフォーム会社、鍵の便利屋などがありますが、どこに相談すればよいのか迷う方は多いかもしれません。
「鍵を鍵穴に挿したまま折れた、トイレのドアが壊れて中に入れないなど、緊急の場合は24時間対応してくれる『鍵の便利屋』などの緊急駆けつけサービスを利用するのも一つの手です。 ただし、ネット広告などで『数千円~』と安価な料金を表示していても、現場で高額な請求をされるトラブルも起きています。依頼する際は、電話口で『出張費』『キャンセル料』『作業費の概算』を必ず確認し、納得したうえで依頼するようにしましょう。
ここまで緊急性が高くない場合の修理なら、新築で家を買った人や注文住宅を建てた人は、家を建ててくれた施工会社さんに相談してみるとよいでしょう。ドアのメーカーや品番が分かっているのでスムーズに対応してくれると思います。
中古住宅を購入した人は、修理したいドアの扉や枠に記載されているメーカーや品番を確認して、そのメーカーのホームページを確認してみましょう。ホームページに電話やメールでの相談窓口や、修理受付フォームが用意されているケースが多いので、連絡をとってみてください」

ドアを丸ごと交換したいときは、地元の工務店やリフォーム会社に相談するのがおすすめです。
「小さな工務店やリフォーム会社は大手の下請け工事が中心なので、個人のお客様は大事にしたいと思っています。とはいえ、鍵やドアノブのちょっとした調整では費用を発生させるのが難しいため、対応ができないケースがあるようです。その点、ドア本体の交換なら商品代や工事費などが発生するので、商品の特徴や選び方のアドバイスなど丁寧に対応してくれるはずです」
自分で業者を探すのは大変そうと感じるなら、SUUMOカウンターリフォームでは、お住まいの地域で対応できるリフォーム会社を複数探し、無料で比較することができます。複数社を比較することで、適正価格や担当者の対応力も見極められます。業者探しに困っている方は、ぜひご活用ください。
失敗しない!信頼できる業者選びの3つのポイント
ドアの修理や交換は家の中に入って作業してもらいますし、交換する場合にはそれなりに金額も発生するので、信頼できる業者に依頼したいもの。ここでは、業者を選ぶときのポイントを3つご紹介しましょう。

ポイント1:複数の業者に見積もりを依頼する
修理や交換が緊急ではなく、ある程度時間をかけられるときは、複数の業者に見積もりを依頼しましょう。
「ちょっとした調整や部品交換を希望するなら、気になる業者に電話して『事前に知りたいので大体いくらぐらいか教えてください』と聞いてみましょう。そのときに『他の業者にも聞いているので、お願いするときはまた連絡します』と伝えるとよいでしょう。3社程度に電話すれば金額の相場がわかりますし、電話口の対応からその業者や担当者の雰囲気もつかめると思います」
ドアを丸ごと交換するならそれなりに費用がかかるので、口頭ではなく、書面での見積もり作成を依頼しましょう。
「ドアに限りませんが、住宅設備や建材は業者によって仕入れ価格は違います。同じ商品でも業者によって見積もり金額が全然違うケースは多いので、最低でも3社に見積もりを依頼して、比較してみることをおすすめします」
ポイント2:見積もり内容をチェックする
提示された見積もりの内容をチェックして、不明点がないか確認しましょう。
「見積もりが安い業者を選びがちですが、安すぎると工事項目が抜けていたり、追加工事が発生したりするかもしれません。見積もりに工事一式でいくらと書かれている業者よりも、商品価格、作業費、古いドアの処分費など細かく書かれている業者のほうが安心です。
特に玄関ドアを交換する場合、枠ごと交換する方法と、枠は既存の物を活かし扉だけ交換する方法があるので、どちらの方法で工事するのか確認したうえで、見積もり内容の説明を受けるようにしたいですね」

ポイント3:実績や口コミを確認しておく
見積もりを取った業者の評判を知りたいなら、リフォーム会社紹介サイトやGoogleマップなどのクチコミを、参考までにチェックしておくとよいかもしれません。
SUUMOリフォームでは、お住まいの地域に対応できるリフォーム会社の施工実績やクチコミ情報をチェックできます。気になる会社があればネットで問い合わせもできるので、業者を探している方は上手にご活用ください。
不具合の内容次第では、DIYせずにプロに依頼を
ここまで、ドアの不具合を自分でDIYする方法や、プロに依頼する場合の費用相場、業者選びのポイントなどをご紹介しました。
ちょっとした不具合を自分でDIYするなら、ご紹介した方法を参考にして、安全に注意して作業することが大事です。作業の前にドアの製造メーカーを確認してホームページをチェックすれば、修理方法を学べたり、交換用部品を購入できたりできるのでおすすめです。
不具合の内容にもよりますが、玄関ドアの場合、自分で修理せずプロにお任せしたほうが防犯面や安全面を考えるとよいかもしれません。3社程度から見積もりを取り、金額や応対の良さなどを比較したうえで、信頼できる業者を選ぶようにしてください。
まとめ
- ドアの不具合は、持ち家なら自由に修繕してよいが、賃貸住宅なら管理会社か大家さんに状況を伝えて指示に従うこと
- 自分で修理するなら、まずは製造メーカーのホームページを見て修理方法や交換用部品が販売されているか確認を。不明点があればメールや電話で問い合わせができる会社もある
- 業者に修理を依頼するなら、緊急性が高くない場合は3社程度に見積もりを取り、金額や対応を比較して選択しよう
取材協力/さくら事務所 プロホームインスペクター 印南俊祐さん
取材・文/山南アオ