趣のある古民家や古い家での暮らしに憧れる方は多いでしょう。リフォーム・リノベーションすれば、今でも快適に過ごすことができます。この記事では、「平屋の古民家(古い家)」を中心に、古民家・古い家をリフォーム・リノベーションする場合のポイントについて解説します。「おしゃれに、快適に暮らすためには何に注意すればいい?」「そもそも平屋のメリット・デメリットは?」そんな平屋の古民家リフォーム・リノベーションにまつわるさまざまな疑問を、 生活デザイン設計室サンクの古屋茂子さんに教えてもらいました。リフォームの工事内容別の費用相場や、すてきな古民家リフォーム・リノベーションの施工事例もあわせて紹介します。

記事の目次
平屋の古民家(古い家)をリフォーム・リノベーションする魅力とは
まずは平屋の古民家をリフォーム・リノベーションする魅力をおさらいしておきましょう。
古き良き趣と現代の快適性の融合

太い梁や柱、土壁、深い軒を備えた古民家や、昭和のたたずまいを備えた古い住宅には、独特の風情があります。こうした趣は新築の住宅では決して再現できない大きな魅力です。
そんな古民家をリノベーションすることで、古民家独特の風情に、現代の暮らしに不可欠な快適性を融合させることができます。
例えば、耐震性。まずは耐震診断を行った上で、必要な箇所に耐力壁を追加したり、屋根材を瓦から軽量なガルバリウムに変えたりすることで、現在の耐震基準まで高めることができます。
同様に断熱性も、壁や床に断熱材を充填したり、複層ガラスのサッシに交換したりすれば、現在の断熱基準まで向上できます。
さらにシステムキッチンやユニットバス、トイレなど最新の水まわり設備を導入すれば、毎日の家事も格段に楽になります。古民家の持つ「趣」と、新築同様の「快適性」を両立できることこそが、古民家リノベーションの神髄と言えるでしょう。
平屋ならではの機能性と快適性
平屋は、一般的なマンションの住戸のように、ワンフロアで生活のすべてが完結する点が大きな利点です。生活動線がシンプルになり、掃除や移動の負担が軽減されます。特に階段がないので、高齢になっても安心して暮らせるバリアフリーな住まいを検討する際には、平屋は理想的な選択肢となります。
また、階段がなく、廊下もマンションのように最小限で済みます。ですから有効面積を広く取ることができます。
さらに、梁を見せて天井高を高くしたり、勾配天井にして開放的な空間を創出したりといった間取りの自由度が高いのも平屋の魅力です。
そのほかにも、平屋はデザイン的にぬれ縁(家の外壁よりも外側に張り出した、雨ざらしになる縁側)や、くれ縁(家の内側にある縁側)、深い軒などが作りやすい住宅です。そのため、内と外をゆるやかにつなぐ空間づくりも実現しやすいでしょう。

新築に比べて総費用を抑えやすい
平屋の古民家をリフォーム・リノベーションする場合、新築に比べて総費用を抑えられる可能性があります。特に、建物の状態が良好な場合は、躯体(くたい)(基礎や柱・梁など)を活かすことで、解体費用や基礎工事の費用を大幅に削減できます。
ただし、古民家のリノベーションは、解体してみないと建物の傷み具合が分からないというリスクも伴います。シロアリ被害や構造材の腐食などが発見され、追加の修繕が必要になるケースも少なくありません。そのため、リノベーションを計画する際は、余裕を持った予算組みと、古民家の知識が豊富な専門家による事前のホームインスペクション(建物診断)が重要です。
平屋の古民家(古い家)をリフォーム・リノベーションする際の費用
平屋の古民家をリフォーム・リノベーションするには、どれくらい費用が必要でしょうか。確認しておきましょう。
フルリフォームする場合の費用の目安
平屋の古民家をリフォーム・リノベーションする費用は、工事内容により異なります。また工事内容は、建物の状態や、施主の意向によって違います。
そのため、一概にいくらかかるとは言えませんが、まずは基礎と骨組みを残して、耐震・断熱工事や間取り変更など行うフルリフォームをする場合、どれくらいかかるか? その費用の目安を紹介します。
| 建物の広さ(建坪) | フルリフォーム費用の目安 |
|---|---|
| 〜20坪 | 1000万円〜1500万円 |
| 20坪〜30坪 | 1200万円〜1600万円 |
| 30坪〜40坪 | 1300万円〜1800万円 |
| 40坪 | 1600万円〜2100万円 |
平屋の古民家リフォームの主な内容別費用
古民家を現代の家のように快適にするためには、さまざまな部位のリフォームが必要になることがあります。耐震・断熱工事も含め、下記に工事内容別のリフォーム費用の目安を紹介しますので、参考にしてみてください。
| 工事内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 内装のリフォーム |
|
| 水まわり設備のリフォーム |
|
| 間取り変更 | リビング(居間)横の和室を取り込んでリビングを広くする場合 約250万〜350万円 |
| 断熱リフォーム | 約90万〜300万円 |
| 耐震リフォーム | 約140万〜350万円 |
| 外壁リフォーム | 約90万〜420万円 |
| 屋根リフォーム | 約70万〜350万円 |
| 目隠しフェンス設置 | 5m設置で約20万〜60万円 |
| バリアフリーリフォーム | 手すりを備える 約2万円〜15万円/1カ所 クサビ型の板で段差解消 約3万円〜7万円/1カ所 下地から床をやり直す 約20万〜40万円/6畳 |
| 単独処理浄化槽から合弁処理浄化槽へ(※) | 約90万〜150万円 |
平屋の古民家(古い家)のリフォーム費用を左右する要素
平屋の古民家(古い家)をリフォームする費用は、工事内容によって費用が大きく異なります。どんな場合に費用が増えがちになるのか、確認しておきましょう。
耐震・断熱工事の有無

古民家のリフォーム・リノベーションで、特に費用がかさむのは「耐震工事」と「断熱工事」です。これらは壁を壊すなど大がかりな工事が必要になるからです。
とはいえ、古民家の場合、現在の耐震基準や断熱基準と比べると、劣っている可能性が高いので、ぜひ行うことをおすすめします。
耐震工事については、必要な箇所に耐震補強を行います。建物の状態次第で必要な工事は異なります。
また、断熱工事に関しても、建物の状態に合わせて、壁や天井、床などに断熱材を追加したり、窓を二重窓にするなどして断熱性を高めます。
例えばどこを耐震補強するのかといった工事内容を決めるためにも、事前に耐震診断や断熱診断を受けるようにしましょう。リフォーム会社で行ってくれる場合もありますし、ホームインスペクション(住宅診断)に依頼する方法もあります。それらを踏まえた上で、どんな耐震工事や断熱工事を行うか検討するようにしてください。
なお、どちらも壁や床を剥がして行う作業が発生するので、別々にやるよりは同時にやったほうが費用を抑えやすくなります。
建物の状態
予算を組む上で注意したいのが建物の状態です。土台や重要な柱が腐食していたり、蟻害が発生しているなど、構造体の状態が悪ければ費用が増えるからです。
とはいえ、構造体の腐食状態は、一度壁や床を剥がしてみないとわからないことが多々あります。リフォーム会社による現地調査や、ホームインスペクションで建物の状態を把握してから、リフォーム・リノベーションの計画を立てるようにしましょう。

段差が多い
昔の家は、それぞれの部屋を異なる目的で使っていました。例えば、座敷は客間として少し高めの位置にあり、台所や土間は水回りや作業スペースとして、床を低くしていました。このため、部屋と部屋の間に段差が生まれます。
将来を見据えてバリアフリー化する場合は、こうした段差の解消が必要になります。下地からやり直してフローリングを敷く場合、6畳で約20万〜40万円といったところです。
コンセントの位置や契約アンペア数
古民家を含む古い家の場合、コンセントの位置や契約アンペア数などにも注意が必要です。現代と違い、電気をあまり使わない時代だったがゆえに、コンセントの数や位置に不足感があるかもしれません。また昔の契約アンペア数は30Aが一般的だったため、現在のように家電を揃えるとすぐにブレーカーが落ちたりします。
一部の部屋のコンセントを増やすだけなら、3万円前後で済みますが、家全体の配線をやり直す場合、壁を剥がす作業や、分電盤の交換も伴うので、場合によっては100万円以上することもあります。
古民家(古い家)リフォームに活用できる補助金や移住支援制度
古民家のリフォーム・リノベーションには、国や地方自治体が提供するさまざまな補助金・助成金制度を活用できる可能性があります。特に、地方への移住を検討している方にとっては、リフォーム費用を大きく軽減できる可能性があります。
補助金制度
多くの自治体が、地域の空き家対策や住環境の改善を目的として、空き家や古民家の改修費用を補助する制度を設けています。補助金の多くは、特定の改修工事に適用されます。
■活用できる主な補助金制度
・耐震改修補助金
旧耐震基準で建てられた古民家の耐震補強工事に対して、自治体から補助金が出ます。
例えば千葉県鴨川市の場合、昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅で、耐震診断の結果、総合評点が1.0未満だった住宅の耐震改修工事費の5分の4、上限100万円の補助金が交付されます。
・省エネ・断熱リフォーム補助金
窓や壁の断熱改修、高効率な給湯器の設置などに対し、国や自治体によってさまざまな補助金制度があります。
国の補助金制度には下記のものがあります。
| 補助金制度 | 主な内容 | 補助金の上限 |
|---|---|---|
| 先進的窓リノベ2025事業 | 住宅の窓の断熱改修に特化した補助金制度です。古い窓を高断熱窓に交換したり、既存の窓の内側にもう一つ窓を設置し、断熱性能を高める場合に利用できます。 | 最大200万円/戸 |
| 既存住宅の断熱リフォーム支援事業 | 高性能な断熱材、窓、ガラス、玄関ドアなどを用いた断熱リフォーム工事が補助の対象となります。同時に電気ヒートポンプ式給湯機(エコキュートなど)を設置する場合も補助金の対象となります。 | 最大120万円/戸 |
| 子育てグリーン住宅支援事業 | 子育て世帯や若者夫婦世帯による、高い省エネ性能を有する住宅の取得や、省エネ改修を支援する制度です。一定の省エネ改修工事を行う場合に補助金の対象となります。あわせて子育て層には便利な、ビルトイン食器洗機や掃除しやすいレンジフード、浴室乾燥機の設置なども補助金の対象となります。 | 最大60万円/戸 |
| 給湯省エネ2025事業 | 省エネ性能の高い高効率給湯器(エコキュート、エネファーム、ハイブリッド給湯器など)に交換することを支援する事業です。 | ヒートポンプ給湯機(エコキュート)が6万円/台、ハイブリッド給湯機が8万円/台、家庭用燃料電池(エネファーム)が16万円/台 |
・バリアフリー改修補助金
手すりの設置や段差解消など、バリアフリー化を目的としたリフォームには介護保険の住宅改修費支給制度が利用できます。
介護保険の住宅改修費支給制度の場合、最大18万円まで補助してくれます。ただし利用は要支援または要介護認定を受けている場合に限られます。また工事前に申請しなければなりません。
要支援または要介護認定がなくても、転倒の予防など安心した老後を送るためにバリアフリーリフォームをするなら、上記の「子育てグリーン住宅支援事業」を利用することもできます。また、自治体によっては介護予防を目的とした補助金制度を設けている場合があるので、確認してみましょう。
移住支援制度
最近は地方創生の一環として、古民家を取得して移住する人々を支援する制度を設けている自治体が増えています。
- 移住支度金を支給してくれる場合
- 住宅の購入や改修費を補助してくれる場合
- 就業・起業のための支援金を支給してくれる場合
例えば、長野市では「長野市移住者空き家改修等補助金」として、空き家バンクの物件リフォームに対し、最大100万円の補助金が用意されています。
地方の平屋古民家をリフォーム・リノベーションして移住を検討しているなら、移住先の自治体の移住支援制度を調べてみましょう。
平屋の古民家をリフォーム・リノベーションした施工事例
古い平屋を、一人暮らしに合わせた快適な住まいへ



両親から築50年の平屋を受け継いだEさん。当初は減築も考えたというほど、一人暮らしには広すぎる間取りと、老朽化した設備が課題でした。
そこでリフォームでは、従来の広さをそのまま活かしつつ、シングルライフを満喫できる、ゆとりある間取りへと一新することに。具体的には細かく仕切られていた4Kの間取りを、広々とした1LDKへと変更しました。また、16畳もの大容量のウォークインクローゼットを新設。寝室からクローゼットを抜けて洗面室に入れるので、身支度もスムーズです。


デザインは、落ち着いたダークトーンを基調に、木の温もりや異なる素材を組み合わせることで、クールながらぬくもりを感じる空間を演出。さらに、窓の配置を工夫して光や風を取り込むなど、快適性を高める工夫も随所に施されました。
断熱・耐震工事も行い、設備も入れ変えることで快適な家に生まれ変わった、築50年の平屋。施主さまは休日にリビングで一日中くつろぐことができ、以前よりも疲れが取れるようになったそうです。
【DATA】
リフォーム費用:1350万円
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、寝室、玄関、洗面所・脱衣所、トイレ
リフォーム面積:97m2
住宅種別:一戸建て
築年数:50年
設計・施工:フレッシュハウス
※表示されている価格は施工当時のもので、現在とは異なる場合があります。
築80年の古民家平屋を、旅館のような落ち着きある住宅へ再生



海に近く、歴史を感じる鎌倉エリアで、落ち着きのある和の住まいを求めていた施主さま。見つけたのは、築80年の平屋でした。家の中に初めて入ったときに、縁側や畳敷きの部屋にほっと心が落ち着き、購入を決意したそうです。
リフォームはLDKと水まわりが中心。水まわり設備を一新するなど、現代の生活に合わせた機能性と快適性を確保しました。また3DK+Sだった間取りは2LDK+Sへと、より広々とした使いやすい空間へと変更。


一方で、リビングの梁を現しにしたり、京壁や格子障子は既存を活かして趣を残すなど、鎌倉の街並みに溶け込む、古民家風デザインにまとめられました。「和室はまるで旅館のようです。その日の気分によって、好きな場所に布団を敷いて寝ています」とOさんは大満足しています。
【DATA】
リフォーム費用:914万円
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、和室、浴室、洗面所、トイレ、納戸、廊下、玄関、収納、外壁・屋根、他
リフォーム面積:71.62m2
住宅種別:一戸建て
築年数:80年
設計・施工:東京ガスリノベーション
※表示されている価格は施工当時のもので、現在とは異なる場合があります。
平屋のメリット・デメリット
古民家に限らず、平屋という住宅形式そのものが持つメリット・デメリットを理解しておくことも、後悔しないリフォーム・リノベーションには不可欠です。
平屋のメリット
平屋のメリットには、上記「平屋ならではの機能性と快適性」で述べた以外にも、主に下記の3点があります。
・2階建てより耐震性は有利
平屋には、上に重いものが載らないため、一般的に2階建てよりも揺れにくく、耐震性に優れるというメリットがあります。
・家族のコミュニケーションがとりやすい
ワンフロアで家族みんなが過ごすため、家全体が家族の気配を感じやすい空間になります。ですから、平屋は家族のコミュニケーションを育みやすいと言えます。
・2階がないのでメンテナンス時の費用を抑えやすい
2階がないので、屋根・外壁のメンテナンス時に、足場の費用を抑えやすくなります。
平屋のデメリット
平屋のデメリットとしては、主に3点があります。
・周囲からの目隠しや、防犯対策が必要
同じ床面積の2階建てと比べて、平屋は1階の窓の数が多くなるので、外から覗かれる範囲や、窃盗犯にとっての進入口(窓)が増えます。そのため周囲からの目隠しや、防犯対策が必要です。

・災害時に2階への垂直避難ができない
昨今増えている、急な豪雨による浸水被害では、「避難所に行くのが困難になったら2階の、なるべく山から離れたところに避難するように」と言われています。
しかし平屋には逃げるべき2階がありません。そのため、大雨情報は常に確認して、万が一の場合は周囲の人より早めに、明るいうちに、指定されている避難所へ避難する必要があります。
・プライバシーの確保を工夫する必要がある
上記のメリットで挙げた「家族のコミュニケーションがとりやすい」は、一方で個人の時間や空間を大切にしたい時には、デメリットに感じられるでしょう。
その場合は、リビングやダイニングなどをパブリックゾーンに、寝室や書斎など個人の空間をプライベートゾーンにするなど、明確にゾーニングする工夫が必要になります。
平屋の古民家(古い家)をおしゃれにリフォーム・リノベーションする方法
古民家や古い家には、現代の住宅にはない独自の魅力があります。これらを活かすことで、唯一無二のおしゃれな空間が生まれます。
古い梁や柱など、木材を活かす
古民家をおしゃれにまとめるための一番のポイントは、木材を活かすことです。本物の立派な木材を使っていることが、古民家が持つビンテージとしての価値を象徴しているからです。
その意味では、古民家の天井裏に隠された立派な梁(はり)や、部屋の真ん中にある太い柱をあえて見せる「現(あらわ)し」という手法は、古民家リノベーションの醍醐味です。力強く美しい木材が、空間に重厚感と温かみをもたらします。
土間を活かす
昔の土間をそのまま残したり、床を張り替えてモダンな土間空間として再生したりすることで、内と外を繋ぐ開放的なスペースが生まれます。趣味のスペースや、家族や友人が集まるコミュニケーションスペースとしても活用できます。
縁側や建具を活かす
縁側や障子、襖(ふすま)といった和の要素は、古民家の雰囲気を高める重要な要素です。これらを丁寧に修繕したり、現代的なデザインにアレンジしたりすることで、懐かしさと新しさが融合した空間になります。

和モダンなテイストでまとめる
古民家の和の雰囲気と、シンプルで機能的なモダンデザインを組み合わせるスタイルです。例えば、無垢材の床と漆喰の塗り壁に、北欧風の家具を置いたり、間接照明で柔らかな光を演出したりすると、落ち着きのあるおしゃれな空間が生まれます。

自然素材を活用する
木、土、和紙といった自然素材は、古民家と相性が抜群です。また調湿効果のある無垢材の床や、珪藻土や漆喰の壁は、快適な室内環境を保つのにも役立ちます。
平屋の古民家(古い家)をリフォーム・リノベーションする際の注意点
古民家リフォームの魅力は、その独特の雰囲気や歴史を活かしつつ、現代の快適さを加える点にあります。しかし、安易にリフォームを計画すると、想定外の費用がかさみ、最終的に建て替えと大差ない金額になってしまうことがあります。
リフォーム内容によっては費用が建て替えとあまり変わらないことも
比較的費用が必要になる耐震・断熱工事はもちろん、想定外の費用で特に注意したいのが構造体の腐食(木部の腐朽)です。
長年の雨漏りや床下の湿気、結露などにより、柱や梁、土台といった木部の構造体が腐食している場合があります。腐朽が広範囲に及んでいる場合、腐った木材を撤去し、新しい木材に交換する大規模な工事が必要になります。これは、建物の強度を保つために不可欠な作業です。
また、蟻害(シロアリ被害)にも注意が必要です。古民家は、防蟻処理が施されていないことも多いため、シロアリの被害を受けているケースがあります。シロアリは木材内部を食い荒らすため、表面からは被害が分かりにくいのが特徴です。被害が進行すると、柱や梁がスカスカになり、建物の耐久性が著しく低下します。この場合、被害箇所の交換だけでなく、建物全体の防蟻処理も必要となります。
これらの問題は「古民家特有のリスク」とも言えるでしょう。
構造体の腐食や蟻害が深刻であれば、場合によっては建物を一度解体して大規模な補強工事を行う必要が生じます。そうなると、リフォームの費用が建て替えの費用とあまり変わらなくなってしまいます。
そういった「想定外」を防ぐためにも、まずはリフォーム会社やホームインスペクターに建物の状態を調査してもらい、それからリフォーム計画を立てるようにしましょう。
知識のあるリフォーム会社に依頼することが重要
古民家リフォームは、キッチンの入れ替えなどの工事と違い、専門知識や技術が必要な場合が多々あります。
例えば古民家特有の工法や構造を理解して、必要な補強工事を正確に見極めることだったり、歴史ある古材を活かす方法や、古民家ならではの風情を最大限に引き出す方法を熟知している等々。
古民家のリフォーム・リノベーションを依頼する際は、必ずリフォーム会社の施工実績をホームページ等で確認して、できれば数社に見積もりを依頼し、費用だけでなく工事内容の違いも比べて依頼先を判断するようにしてください。
まとめ
平屋の古民家をリフォーム・リノベーションすることは、その歴史や風情を大切にしながら、現代的な暮らしの快適性や安全性を手に入れる、価値ある選択肢です。ただし、新築にはない注意点や、専門的な知識が必要な工事も多いため、古民家リノベーションの実績が豊富なリフォーム会社や専門家を見つけることが成功の鍵となります。
「平屋のメリット・デメリット」「リフォーム・リノベーションにかかる費用の目安」「利用できる補助金制度」をしっかりと把握し、計画的に進めることで、平屋の古民家でしか味わえない、豊かな暮らしを実現してください。
監修/一級建築士事務所 生活デザイン設計室 サンク 古屋茂子
雑誌「カーセンサー」編集部を経てフリーライターに。中古車からカーシェアリング、電気自動車までクルマにまつわる諸々の記事執筆を手がける。最近は住宅雑誌の記事も執筆していて、自分が何屋なのかますます分からなくなってきた。