お風呂・浴室を増築(新設)リフォーム。ユニットバスと在来工法の違いや費用の相場、工期を一級建築士に聞いた

増築やリフォーム、リノベーションの際の浴室リフォームで知っておきたいポイントや費用について、一級建築士のYuu(尾間紫)さんに話を伺いました。「お風呂をもっと広くしたい」「二世帯住宅にするので浴室を2階にもつくりたい」といった場合の参考にしてください。

増築して広くなったユニットバスのイメージ画像

(画像提供/山商リフォームサービス)

記事の目次

1216のユニットバスは狭い?お風呂の最適な広さってどれくらい?

1216などの数字で表記されるユニットバスのサイズ

ユニットバス(システムバス)のカタログや水回り設備のショールームの展示を見ると、「1216」「1616」といった数字が表示されています。これはユニットバスのサイズをあらわすもの。最初の2ケタと最後の2ケタがそれぞれ浴室の内寸(壁の内側から内側までの距離)をあらわしています。

例えば、「1216」サイズのユニットバスなら、浴室内の内寸が1200㎜(1.2メートル)と1600㎜(1.6メートル)です。

1216サイズのユニットバスを説明する図

1216サイズのユニットバス。短辺が1200mm、長辺が1600mm(イラスト/長岡伸行)

1坪タイプなど、坪数でも表記される

浴室のサイズは4ケタの数字のほか、坪数で表記されることもあります。マンションの広告などで「浴室は1坪タイプ」などの言葉を聞いたことがあるでしょう。1坪(3.3m2)のスペースにおさまるサイズのユニットバスを「1坪タイプ」と呼んでいます。浴室サイズの表記と浴室の内寸、坪表記は下の表を参考にしてください。

浴室サイズ 浴室の内寸 坪表記
1216 1200mm×1600mm 0.75坪
1317 1300mm×1700mm 0.75坪
1418 1400mm×1800mm 0.75坪
1616 1600mm×1600mm 1坪
1618 1600mm×1800mm 1.25坪
1620 1600mm×2000mm 1.25坪
1624 1600mm×2400mm 1.5坪
1818 1800mm×1800mm 1.5坪
(表作成/SUUMO編集部)

最近の浴室サイズの主流は?

では、最近の浴室サイズの主流はどうなのでしょうか?

「一戸建ては一昔前までは0.75坪のユニットバス(システムバス)が見られましたが、現在は1坪以上の浴室が一般的で、多いのは1616(1600mm×1600mm) の正方形の1坪タイプです。

マンションの場合は、効率よく間取りをつくるために、間口が少し狭くて奥行きが深い1317や1418が見られます。これは1坪とは表記されていませんが、1418なら実質面積は2.52m2。一戸建てで主流の1616の実質面積2.56m2とサイズ的には同じくらいです」(Yuuさん、以下同)

1216のユニットバスは狭い。そう感じる理由は?

「リフォームで0.75坪の浴室を1坪にしたいという依頼はとても多いです」とYuuさん。0.75坪タイプの1216の浴室は浴槽の長辺が1200mm。平均的な体型の大人の男性の場合、浴槽の中では足を屈めてつかる必要があり、どうしても狭く感じてしまいます。

「浴槽には足を伸ばして入れた方がリラックスできます。そこで長さのある浴槽が入る1坪タイプのユニットバスがよく選ばれています」

また、お風呂の役割が昔と今では変わってきていることも、広い浴室が求められる理由のひとつ。

「かつてはお風呂は体を洗うための場所でした。でも今は、お風呂は疲れをとり、リラックをする場所。ゆっくりお肌の手入れをしたり、リラックスできる体勢でお湯につかったりといったリラクゼーションルーム、癒しの空間としての役割が求められています。そのためには、やはり広さも求められるのです」

お風呂の最適な広さは?

温泉旅館などで入る広いお風呂はいいものです。大きな浴槽は手足を伸ばしてリラックスできますし、広い洗い場でも開放感を味わうことができます。とはいえ、自宅のお風呂は広ければ広いほどよい、というわけではありません。

「広い浴室は快適ですが、広すぎる場合には3つのデメリットがあります。1つは掃除が大変なこと。2つ目は浴槽が大きいと光熱費と水道代がかさむこと。そして、しっかり断熱されていないと寒い。この3点を考えると、浴室の適切な広さは1坪から1.25坪くらいといえます」

広すぎる浴室は光熱費や水道代がかかりすぎてデメリットになるというイラスト

(イラスト/森越ハム)

増築でお風呂を広く。基礎工事は必要になる?注意点を解説

浴室リフォームの主流はユニットバス(システムバス)

現在、新築の一戸建てもマンションも浴室は、工場でつくられた床や壁を現場で組み立てるユニットバスが主流です。しかし、以前の一戸建てでは在来工法の浴室もよく見られました。

「一戸建ての浴室は、昔はモルタルとタイルで仕上げていく在来工法が多く見られました。デザインの自由度が高いのがメリットでしたが、手間と工期がかかり、水漏れのリスクがあるというデメリットがありました。そこで現在の主流になっているのが、工期が短く、水漏れの不安が少ないユニットバス(システムバス)です」

システムバスは既製品ですから限られたデザインの中から選ぶことにはなりますが、色や機能など各社からさまざまなバリエーションが出ています。浴室リフォームを検討するなら、ショールームに足を運んで、最近のユニットバスの進化を自分の目で確かめるのがおすすめです。

0.75坪から1坪の浴室へ。どれくらいの増築が必要?

要望が多いという0.75坪から1坪の浴室へのリフォーム。家の外側に張り出すように増築する場合で考えてみましょう。

1216(0.75坪)の浴室だった場所に、1616(1坪)のユニットバスが入るように増築をするとします。「1200mm×1600mm」から「1600mm×1600mm」への変更になり、浴室の横幅部分を広げることになります。

「1216や1616は浴室の内寸。壁の中心からの寸法で考えると横幅を約45cm、外側に拡張することになります」

増築する場合、基礎工事は必要?

1階で増築する場合、建物の土台である基礎部分を新たにつくる基礎工事が必要になります。その後、給排水管の工事、電気工事などを行い、浴室を設置します。

増築で浴室を広くできないケースはある?

建ぺい率と容積率の問題で、増築そのものができないケースがあります。建ぺい率とは敷地面積に占める建築面積(建物を真上から見た時の面積)。容積率とは敷地面積に占める建物の延床面積。どちらも用途地域や敷地の条件、地域の条例などによって制限されています。既存の家が建ぺい率いっぱいの建築面積の場合、1階の増築はできません。また隣地境界線への距離にも制限がありますので注意が必要です。

浴室の壁が建物を支える耐力壁の場合、その壁を動かすことができません。
「浴室は家の角に配置されていて、周囲の壁が耐力壁になっていることが多いのです。耐力壁を変更するには家全体の構造の再検討が必要になります。その場合は、例えばLDKを一体化するなど間取りを見直して家全体の面積効率を上げ、増築しなくても浴室を広げる方法を検討するといいでしょう。その際には、水回りの動線計画を改めて見直してみると、家事効率も上げることができます。リフォームの範囲は広がりますが、今の生活スタイルに合う暮らしやすい家にできるよい機会になると思います」

2階にお風呂を増設することはできる?

二世帯住宅にリフォームする場合、2階の間取りを変更したり、2階を増築したりして浴室を増設することは可能です。

「浴室は水が入る分、重量があります。そのため構造の確認や補強が必要。音の問題もあります。1階の浴室リフォームに比べれば少しハードルは上がりますが、補強と給排水の配管経路をしっかり検討すれば可能です。理想の配置は1階に壁があり、配管経路が取りやすい場所。1階の水回りの上なら音の響きも気になりにくいですし、おすすめです」

マンションのユニットバスを広くすることはできる?

マンションのリフォームは構造と管理規約によって、浴室の拡張が制限されることがあります。

住戸内の壁で建物を支えている壁式構造のマンションで、浴室をコンクリートの壁が囲んでいる場合、その壁を動かすことはできません。柱や梁(はり)で建物を支えるラーメン構造のマンションの場合は、簡易な間仕切りで浴室が仕切られているなら、浴室を広げることが可能です。

「ただし、排水管は傾斜をつける必要がありますから、床下の空間がどの程度あって、排水勾配がどれくらい取れるかによって、浴室をどの程度広げられるか、または移動できるかが決まります。年数が古いマンションは、浴室がコンクリートブロックで囲まれていることがあります。これは撤去できることが多いのですが、事前の確認が必要です。マンションでの浴室リフォームは、どの場合においてもマンションの管理規約を確認し、許可を取った上で行うことが必要です」

広くて新しいユニットバスでリラックスしているイラスト

(イラスト/森越ハム)

お風呂を増築する費用相場はいくらくらい?工期の目安は?

費用相場は増築工事費+ユニットバスの設置費用

増築工事費とユニットバスの設置費用の合計が、お風呂の増築にかかる費用の目安。

「既存の浴室の外側に張り出す形で増築を行うと工事費が50万円〜。ユニットバスの設置に100万円〜が目安です」

ただし、浴室の位置を大きく変更したり、グレードの高いユニットバスを選んだ場合は、費用はアップします。

工期は2週間〜1カ月程度

一戸建てで浴室の増築をする場合、どのような工事が必要になるかで工期は異なります。既存の浴室を外側に拡張する増築なら短めの工期で済みますが、離れた場所に浴室を増築する場合は給排水管の引き込みや、場合によって基礎工事の前に地盤改良が必要なことも。浴室をもう1カ所増やす場合は工事中ももともとあるお風呂が使えますが、既存の浴室を撤去してしまう場合は、工事が完了するまで自宅のお風呂には入れず、銭湯などを利用する必要が出てきます。不便な期間になりますから、工期がどれくらいになりそうかをリフォーム会社に確認しておきましょう。

ユニットバスの交換だけなら費用相場は100万円〜

一戸建てでもマンションでも、ユニットバスの交換だけなら費用相場は100万円〜。

工期は一戸建てでは3〜4日くらい、マンションでは2日くらいが目安です。一戸建ての場合、窓の位置が変更になると工期はもう少し長くなります。

浴室を増築する費用の見積もりのイメージ

浴室を増築やリフォームする場合は、複数のリフォーム会社に見積もりを取るのがおすすめ。工期も確認しよう(画像/PIXTA)※写真はイメージ

お風呂を広く快適にしたリフォームの実例を紹介!

二世帯住宅へのリフォーム。増築で1620の広い浴室に

二世帯での同居をきっかけに、築35年の日本家屋を「和から北欧テイストへの転換」をテーマにリフォーム。1階の6部屋のうち、ダイニングキッチンと和室を一体化。白を基調に明るい色の床材を採用した、北欧テイストの子世帯LDKを実現しました。その際、対面式キッチンをつくるために建物を増築。キッチンの隣にプレイルームも設け、家事をしながらお子様を見守れるように配慮。また、共用の浴室は建物を増築することで1620のゆったりとした広さを実現しています。

増築で広くした浴室の画像

浴室は増築することで広々とした空間に。増築によって洗面室も広くなっている(画像提供/山商リフォームサービス)

子世帯のLDKの画像

親世帯が使っていたダイニング・キッチンと和室の2部屋を統合して、子世帯のLDKに。キッチンと、その奥のプレイルームは増築で広くなっている(画像提供/山商リフォームサービス)

増築で対面式キッチンになったキッチンの画像

対面式キッチンにするために増築。背面の棚部分は増築をしたことでゆとりあるスペースになった(画像提供/山商リフォームサービス)

リフォーム前の間取り図

リフォーム前の間取図。凝ったつくりの重厚な日本家屋だった(画像提供/山商リフォームサービス)

リフォーム後の間取り図

リフォーム後の間取図。キッチンやプレイルーム、洗面室、浴室を増築して、さらにゆとりのある住空間になった(画像提供/山商リフォームサービス)

【DATA】
リフォーム費用:1694万円(住宅全体のリフォーム費用)
工期:3カ月
[ Before ] その他 → [ After ] その他
リフォーム面積:121.30m2
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン、子供部屋、浴室・バス、洗面所、トイレ、バルコニー・エクステリア、ほか
築年数:35年
住宅の種別:一戸建て
設計・施工:山商リフォームサービス
※リフォーム内容は契約時のもの。費用は概算。建物の状態や契約時期によって費用は変動します。掲載した費用、工事内容などはあくまでも参考としてください。

浴室の増築で建築確認申請は必要?

浴室を増築すると建築確認申請は必要?

既存の住宅内で床面積は増やさずに浴室を広くするリフォームの場合は、建築確認申請は不要です。しかし、床面積が増える増築の場合は申請が必要になることもあります。申請の要・不要は家が建っている地域と増築面積によります。

家が防火・準防火地域にある場合は、増築面積にかかわらず建築確認申請が必要です。そのため、増築で浴室を広くしたり、増やしたりした場合は申請を行いましょう。

防火・準防火地域外なら増築面積が10m2を超えた場合に建築確認申請が必要になります。10m2は約6畳の広さですから、浴室部分だけを広げる場合は申請は不要かもしれません。しかし、家全体を見直すリフォームや平屋を2階建てにする増築と併せて浴室も広くするなど、増築面積が10m2を超えた場合は申請が必要です。

家のある場所が防火地域・準防火地域内なのか地域外なのかは、自治体(市区町村)ホームページの都市計画情報をチェックしましょう。WEB上で公開されていない場合は、役場の建築指導課などに問い合わせるとわかります。

増築の場合の住宅の立地による建築確認申請
増築をする住宅の立地 建築確認申請
防火・準防火地域外 増築面積が10m2超なら申請が必要
防火・準防火地域 増築面積にかかわらず申請が必要
(表作成/SUUMO編集部)

建築確認申請に必要な図面のイメージ

浴室の増築の場合、家のある地域や増築面積によっては建築確認申請が必要(画像/PIXTA) ※画像はイメージ

既存不適格建築物になっていないかを確認

増築を検討するなら、今の家が既存不適格建築物になっていないかを確認しておきましょう。

既存不適格建築物とは、新築当時は法令に適合していたけれど、その後、法令などが改正されたことで現在の法令に適合しなくなった建物のこと。法令に適合していないからといって今の家が違法建築(違反建築物)というわけではありません。しかし、増築をする場合に建築確認申請を行うと、原則として既存部分を含めた建物全体を現行法規に適合させる必要があります。

例えば、建てた当時は防火地域ではなかったのに、後から防火地域に指定された場合。その家をそのまま使用するのであれば問題はありません。しかし、増築をする場合には、併せて現在の防火の規制に適合させる工事が必要になります。なお、一定の条件下では緩和措置が受けられる場合もあります。リフォーム会社や建築士に相談するといいでしょう。

取材協力/Yuuさん(本名:尾間紫)

取材・文/田方みき 

イラスト/森越ハム

Yuuさん

●取材協力
尾間 紫(Yuu)さん

一級建築士事務所Office Yuu代表。 長年リフォーム業界の第一線で数多くの相談、設計、工事に携わってきた。その経験を活かし、住宅リフォームコンサルタントとして幸せなリフォームを実現するためのノウハウを自身のwebサイト「リフォームのホント・裏話」で発信するほか、セミナー講演や執筆、人材育成研修などで活躍中

執筆・取材/田方 みき
広告制作プロダクション勤務後、フリーランスのコピーライターに。現在は主に、住宅ローンや税金など住宅にかかわるお金や、住まいづくりのノウハウについての取材、記事制作・書籍編集にたずさわる。