外装材は「住まいの顔」と言われ、家の印象を決める大切な素材。バランスに配慮して全体の調和もはかりたい。また、断熱材は、選び方次第で住まいのエネルギー効率を左右することもある。それぞれに種類があり、特徴もあるため、理解して適した素材を選びたい。
■外壁材の基礎知識
耐候性や遮音性、耐火性などの性能を併せもつ素材
建物の外観イメージに大きく影響する外壁材は文字通り外壁を覆う素材である。雨や風に強い耐候性、外部の騒音を防ぐ遮音性、延焼から住まいを守る耐火性などさまざまな性能が求められる。一年中太陽や雨風にさらされるためメンテナンス性にも配慮することが必要。このほか、デザイン性や機能性も併せて、トータルに考えて選びたい。
【選び方のポイント1】素材の種類は多様。特徴や価格を見極めて選ぶ
外壁材を選ぶときは、種類がたくさんあるので、まず素材の特徴を知ろう。
サイディングはボード状の外壁材で、窯業(ようぎょう)系、金属系、木質系がある。工場生産のため品質が均一で、比較的安価なことが特徴だ。
窯業系サイディングはセメント質と繊維質を主な原料に圧力釜で高温・高圧の養生をしたもので、素材そのままのものに加え、レンガ風、石積風など表情も多彩。金属系サイディングは、ガルバリウム鋼鈑とアルミ合金製が主流で、断熱性能を上げるため発泡樹脂で裏打ちしたものも。素材の耐候性が高く凍害にも強く、断熱性に優れている。木質系サイディングは木壁の板のことで耐候性のある木材を使用した場合はそのまま仕上げにすることも。
塗り壁は、種類も色も豊富で、仕上げ方の違いでいろいろな表情が生まれる。健康への関心の高まりから漆喰や珪藻土など自然素材の塗り壁も増えている。タイルは焼き方や吸水率の違いで、磁器質、せっ器質、陶器質に分類できる。価格は高いが汚れがつきにくくメンテナンス費用が少なくてすむ。耐候性や、コストなどを十分に比較・検討して、適切なものを選んでいきたい。
主な外壁材の種類と特徴
●サイディング
窯業系、金属系、木質系がある。窯業系はセメントなどを主原料に、繊維質の木片や無機物を混ぜて強化、プレス成形したもの。胴縁などに釘や金具で留めつけるだけと施工が簡単で品質も均一。耐熱性・耐火性・耐水性などに優れている。金属系は軽量で施工しやすく、木質系は自然の風合いが魅力
●モルタル+塗り材
セメントと砂を混ぜて水で練ったモルタル下地に、樹脂系の素材や漆喰、珪藻土などを塗装する方法。塗る素材や、仕上げ方によっていろいろな表情が生まれる。樹脂素材の吹き付けは最も一般的で、安価に施工できる。職人の手仕事による漆喰や珪藻土を使った塗り壁の独特な味わいも人気
●タイル
粘土を主原料に各種鉱物を混ぜて成形し、高温で焼き上げる。基本的に耐候性、耐火性などに優れている。湿式工法と乾式工法がある。後者はボードの凸部にタイルを引っ掛ける方法。施工が容易で剥離や落下の心配が少ない
●コンクリート
セメント・水・砂・砂利などの骨材を調合して練り混ぜたもの。セメントと水の化学反応によって硬化体となる。耐火性・耐水性などに優れている。シャープな直線や曲線、複雑な彫刻的造形まで自由なデザインが可能
●ALC
ALCは、珪石、セメント、生石灰などを主原料に鉄筋等の補強材を組んだ型枠に注入して高温高圧の養生釜でつくる軽量気泡コンクリート。多孔質で断熱性が高く、重さはコンクリートの約4分の1。無機質で耐火性にも優れている
【選び方のポイント2】美観を長持ちさせたいなら防汚性もよく調べて
排ガスや煤煙など都市独特の汚れは、長年の間に外壁にこびりつくようになる。いつまでも美しい外壁を保つために、現在ではさまざまな防汚技術が開発され、実用化されている。例えば、「ナノ親水マイクロガード」という技術は、塗膜を特殊シリカの超微粒子で覆うことで表面に超親水性の状態をつくり出し、雨とともに汚れが流れ落ちる仕組み。しかも、マイクロガード加工を採用している塗膜表面は、藻・カビの生育を抑制する効果がある。
また、光触媒技術「ハイドロテクト」を使った塗料を塗った外壁は、光が当たると表面に有機物分解性と超親水性を発生させる。この特性により、汚れを分解し雨で洗い流す効果を繰り返し、長期間美観を保つことができる。
さらに、親水性フッ素コートのセルフクリーニング機能を利用したサイディングも。カビや藻がつきにくく塗膜が保護されるので、サイディングでは最長期の20年保証も可能になった。防汚性を高める技術は各社それぞれなので、効果を十分確認、美観を保てる外壁材・仕上材を選びたい。
【選び方のポイント3】街並みとの調和を考慮してデザインや色を選択する
外壁材を選ぶときの、もう一つのポイントが街並みへの配慮だ。外壁材は面積が大きいため、素材の選び方で価格も変わる。そのため比較的安価な素材に高価な素材をポイントとしてデザインするテクニックも。重厚な厚いサイディングに安価な塗り壁を組み合わせたり、レンガやタイルを玄関まわりにアクセントとして使うのも手。異なる素材の組み合わせで、外観にさまざまな表情が加わる。周囲の建物や景観とのバランスを考えてデザインや色を選択したい。
【選び方のポイント4】価格は厚さや耐候性のレベルなどで決まってくる
外壁材の価格は、素材の種類や厚み、耐候性のレベルなどが左右する要因となる。窯業系サイディングの場合、厚みは12mm〜25mmのものも。厚いほど高価だが重厚感も高まる。割高なタイルの場合、色落ちの心配が少ないため長い目で見ると経済的。十分に考えて選択したい。
■断熱材の基礎知識
夏涼しく、冬暖かい住まいに欠かせない素材
断熱は冷気や熱が開口部や躯体などを伝わって出入りするのを抑え、暑さ寒さを防ぐのが目的。それに使われるのが断熱材だ。外部に面する床、壁、屋根などに充填断熱するか、またはすっぽりと家全体を覆う外張り断熱工法によって断熱する。ガラスを主原料とする無機繊維や無数の気泡をもつ発泡プラスチックなどでつくられ、含んだ空気などが熱の移動を抑える。
【選び方のポイント1】断熱材の種類もいろいろ。断熱効果とコストを考慮して
2013年10月に省エネルギー基準が改正。屋根や壁など家の外側だけでなく、冷暖房・換気・給湯・照明などの設備効率や、太陽光発電などの創エネ性能を含めた一次エネルギー消費量を指標とし、建物の性能が評価される。家全体としてより省エネルギー性を高めることが求められ、2020年には省エネルギー基準の適合が義務化される予定。設備の省・創エネ性を活かし、部屋間の温度差解消などで健康面への貢献も期待される断熱性能はより重視したい。
断熱材は大きく3種類。グラスウールはガラスを高温で溶かして繊維化したもの。断熱性・吸音性に優れ、安価で施工も容易なのが魅力。硬質ウレタンフォームやフェノールフォームは、樹脂を発泡させてボード状に成形したものや、現場吹き付け施工のものもあり、いずれも高性能な素材といえる。このほかにも多様な素材を使ったものがある。断熱効果とコストなどを考慮して選択しよう。
断熱材の種類
●無機繊維系(グラスウール、ロックウール)
木造住宅で一般的に使用され、充填断熱工法に多く使われる
●木質繊維系(セルロースファイバー、インシュレーションボード)
セルロースファイバーは、現場での吹き込みによる断熱施工
●発泡プラスチック系(硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム等)
ボード状と現場吹き付けの施工法があり、床・壁・屋根などに使用する
【選び方のポイント2】充填断熱か、外張り断熱か。断熱方法は早めに決めよう
断熱の方法は、充填断熱と外張り断熱(いわゆる外断熱)の2種類。家をつくるときはどちらかを選ぶことになる。コスト的には充填断熱の方が安いけれども、住宅の断熱性能はあくまでも断熱材の性能や厚さ、施工の精度による。家づくりに際しては、どの程度の断熱性能を求めるのかをまず決めることが先決。それによって断熱方法も決まってくる。
断熱の施工法
1)外張り断熱工法
柱の外側に断熱材を取りつける方法。柱も断熱材で覆うためその部分からの熱ロスが防げる

2)充填断熱工法
柱と柱の間に断熱材を入れる方法。手の届かない隅部まで充填が可能で隙間からの熱ロスを防ぎ、高い断熱・調湿・吸音性を発揮

■屋根材の基礎知識
住まいを風雨から守り、デザイン性を左右する素材
屋根は外壁と同じように住まいを外側から覆い、風雨や暑さ寒さから守ってくれる。外から見える瓦やスレート(石質の薄い板)などの仕上材だけでなく、その下には防水紙や下地材(野地板)、断熱材が施され、これらが仕上材と一体になって屋根としての機能を果たすことを知っておきたい。だがここでは、屋根材=仕上材としてその選び方を解説していこう。
【選び方のポイント1】屋根材の種類は5系統。耐候性を重視して
屋根材は、5系統。日本で最も多く見かけるのが、粘土系とスレート系だろう。
粘土系は、釉薬(ゆうやく)瓦と無釉(むゆう)瓦があるが、一般的なのは釉薬瓦。価格も手ごろで、多彩な色が出せるのが特徴だ。スレート系の代表格が化粧スレート。手ごろな価格で色やデザインのバリエーションが多い。薄くて軽く、耐候性に優れている。また独自の製法を用い吸水率・含水率を低くし基材に耐久性ももたせており、デザインにこだわった高グレード品もある。
このほか、モダンスタイルの住宅でよく見かけるのが金属系のガルバリウム鋼鈑。セメント系のコンクリート瓦は、ヨーロッパで伝統的な屋根材で、シングル系は、北米でポピュラーなもの。建物のデザインとともにメンテナンスやコストを確認して選びたい。
屋根材の特徴・性能
●粘土系
釉薬瓦(陶器瓦)と無釉瓦(いぶし瓦)に分かれる。瓦は焼き締めることで強くなる。一般的な陶器瓦は「和形」と洋風の「平形」があり、住まいの洋風化に伴い、スペイン瓦や波形など平形の種類が増えている
●スレート系
化粧スレートと天然スレートがある。化粧スレートは価格も手ごろで広く普及。粘土瓦より薄くて軽く、耐候性に優れる。とくに表面に無機系のトップコートを施した商品は耐候性がより増して、長く美しさを保てる
●金属系
ガルバリウム鋼鈑やカラートタンなど。軽量で加工性が良く、複雑な形状の屋根に最適な材料として知られる。最近ではシンプルモダンな住宅にも多く使われている。アルミなど非鉄金属は、サビに強く長持ち
●セメント系
プレスセメント瓦やコンクリート瓦がある。プレスセメント系は見た目の重量感が人気だが近年は軽量化が図られ、化粧スレートとほぼ変わらない軽さ。耐候性も高い。コンクリート瓦はヨーロッパでは伝統的な屋根材だ
●シングル系
シングル(Shingle)とは、英語で屋根材のこと。主に北米で使用され、グラスファイバーを芯材に上下にアスファルトを塗布、表面に彩色石を吹き付けた構造をもつ。軽量で耐震性・耐候性・防水性に優れている
【選び方のポイント2】価格は、素材と、屋根形状、勾配にも左右される
屋根材のコストは、材質だけでなく形状や勾配も影響する。例えば、シンプルな形状の切妻(きりづま)屋根の方が寄棟(よせむね)よりも割安に。寄棟は面が多いので手間がかかるし、工事面積も増えるからだ。同様に勾配がきつい、軒の出が深い、重なりが多いなどの形状もコストアップにつながる。ちなみに屋根勾配は30度などの角度ではなく、勾配で表される。屋根は面積が広いため少しの単価差が大きく価格に影響するので注意したい。
住まいの設備を選ぶ本(2016年春 1月26日発行)掲載
文/香川喜久江、とがみ淳志