
種類が多く、デザインや機能も多彩な窓。色や形状によってインテリアの雰囲気ばかりか外観のイメージも大きく変わる。用途に合わせて、美しい窓を選ぼう。
■窓の基礎知識
サッシとガラスの性能、デザインに多様性
窓はサッシとガラスで構成され、窓を選ぶときはサッシとガラスをそれぞれ選ぶことになる。外部との接点となるため、熱の出入りを少なくする断熱性能、不審者の侵入を防ぐ防犯性能が不可欠だ。また、室内の雰囲気や外観のイメージを左右する部材でもある。デザインも多彩で輸入部材も数多い。部屋の用途を十分見極めて選択したい。
【選び方のポイント1】用途やデザインに合わせて適切な形状を選ぶ
窓を考えるときは、まずサッシを選ぶ。サッシには多くの形状やデザインがあるが、下は開き方で分類したものだ。
●引いて開けるタイプ
引いて開けるタイプには、横に引くものと縦に引くものがあり、開閉のためのスペースがいらないので室内が機能的に使える。
上げ下げ窓
上がフィックスで、下のガラス戸を上下にスライドさせて開閉。場所を取らずに開閉したい窓に適している

引き違い窓
2枚のガラス戸が動き、左右どちらにも開けられる。開口幅が調節しやすく清掃も容易

片引き窓
一方がフィックスで、片方のガラス戸だけが左右に動いて開閉。フィックスの面で眺望を取り入れることも

●押し引きして開けるタイプ
押し引きして開けるタイプは、欧米スタイルの住宅で多く使われている。上下、左右、内外など開く方向がいろいろあり、デザイン性にも富む。これを採用するときは、開く方向にガラス戸が飛び出すので開閉時のスペースをきちんと確保しておきたい。
内倒し窓
ガラス戸の下枠を軸に上側が室内側に倒れて開く。上部から換気するので、暖かい空気が逃げ効率よく風が入る

滑り出し窓
ガラス戸を押すと、窓枠に沿ってガラス戸が外側に滑り出すことで開き、引くと閉まる。ハンドルで操作

たて滑り出し窓
開閉するとき開き部分が内または外に飛び出す。開き角度が調整できるカムラッチハンドル付き

●そのほかのタイプ
出窓
壁から張り出す形で台形出窓、ボウウインドウ、三角出窓などの種類がある。室内を広く感じさせる効果も人気

オーニング窓
ハンドル操作で開閉する庇状のルーバーを組み合わせた窓

ガラスルーバー
細長形状のガラスを組み合わせた窓。ハンドル操作で開閉

フィックス窓
採光や眺望を目的にガラスを窓枠にはめ込んだ開閉しない窓

サッシの素材や色も選択のポイントになる。一般的なアルミのほか樹脂や木を採用したサッシもある。また、アルミを室外側に、室内側には断熱性に優れた木や樹脂を組み合わせたサッシも。部屋の用途やインテリアも考慮して大きさやデザイン、取りつける位置を決めよう。
また、窓は外観デザインの面でも大きな役割を果たす。デザインや形状、配置などによって外観イメージが異なるからだ。さらに、ショールームなどでは希望すればCGなどを使って、外観イメージや内部のインテリアとの調和を確かめることも可能。採光や通風のほか、視界の広がり、外からの見栄えなど、目的やデザイン性も併せて適切な形状を選びたい。
【選び方のポイント2】サッシの選び方で断熱性が変わる
サッシの選び方で断熱性に差が出る。サッシの材質にはアルミ、樹脂、木製、異なる素材を組み合わせた複合サッシがある。アルミではサッシの室外側と室内側に断熱材を挟み、アルミの欠点を補ったものも。室外側にアルミ、室内側に樹脂や木を使った複合サッシも断熱性が高い。サッシを二重に設けて室内の断熱性を高めるのが内窓。共用部分を変更できないマンションのリフォーム時にも有効。
【選び方のポイント3】ガラスの種類、性能によって大きく変わる機能に注目
ガラスはその種類や組み合わせによって断熱性や防音性、防火性などの性能が変わってくる。
窓ガラスは大きく一般ガラスと高機能ガラスに分けられる。一般ガラスは、かつての住宅に使われていた何も加工をしていない1枚のガラスのため、安価だが断熱・防犯などの機能は期待できない。ほかに網入り板ガラスや凹凸のある型板ガラスも一般ガラスに入る。
高機能ガラスは文字通り機能を高めたガラス。複層ガラスのほか、ガラスの室内側にLow-E膜をコーティングした高断熱複層ガラス、室外側に同様な処置を施した遮熱複層ガラスがある。合わせガラスや強化ガラスもこのカテゴリーに分類される。
複層ガラス
ガラスの間に封入した乾燥空気によって断熱性を高める。1枚ガラスの2倍の断熱性をもち、結露も防ぐことができる
高断熱複層ガラス
室内側にコーティングしたLow-E膜が、日射熱を取り入れつつ室内の暖房エネルギーを反射。断熱効果がより高い
遮熱複層ガラス
室外側にLow- E膜を施し、夏の強い太陽熱をカット。冬は高断熱タイプと同様、室内の暖かさを逃さず、省エネに
最近は住宅の高気密・高断熱化が進み、開口部にも断熱性能が求められるようになってLow-E複層ガラスを標準仕様として採用する住宅メーカーも多い。高機能ガラスのもつ機能や性能を活かすことで快適性は高まるので、用途に合わせて選びたい。
【選び方のポイント4】断熱・防犯など目的を明確にして
窓を選ぶときは、断熱性能を高めたいのか、防犯性能を高めたいのか、目的を明確にすることが大切だ。断熱性をより高めるには空気層を多くとった厚めの複層ガラスになるためサッシとの組み合わせも重要なポイントになる。価格はサッシとガラスの機能が上がるほど高くなる。防犯面では、1階や2階の人が入れそうな大きな窓には、打ち破ろうとしても時間のかかる防犯ガラスを施したい。
■雨戸・シャッターの基礎知識
窓まわりは美観+防犯性能なども求められる
雨戸の機能は防雨、防風、防犯、断熱、防音、プライバシーの確保など。防犯意識が高まっている昨今、雨戸の役割は重要だ。従来の引き込み雨戸に代わって、増えているのがシャッターだ。使わないときは、上部のシャッターケースに収めておけるので、すっきりとした外観が保てるのも人気。閉めたまま通風・採光できるタイプもある。
【選び方のポイント1】雨戸は引き込みかシャッターか。それぞれの長所短所を検討して
従来の引き込みタイプにするかシャッター方式にするか。雨戸を選ぶときは、それぞのれの長所と短所を十分検討したい。
引き込み方式は、比較的安価というのがメリット。ただ、開閉するときは必ず室内の窓を開けなければならず、冬は冷たい風が入り込んで室温が一気に下がってしまうのがマイナス点だ。一方シャッターは、使わないときは上部のシャッターケースに収めてしまうと見た目もすっきり。手動と電動があり、電動の場合は価格は高めだが、窓を開けずに開閉できるので寒い冬も室温を下げずにすむ。
【選び方のポイント2】雨戸を閉めたまま通風・採光をしたいなら、ブラインドタイプを
シャッターにはさまざまな種類があるので、十分検討して選択したい。シャッターは基本的にアルミやスチールの羽根(スラットorルーバーともいう)を上下させて開閉するしくみ。全閉時に窓をぴったりと覆うタイプと羽根に通気口を設けて通風と彩光ができるタイプ、羽根の開閉を調節して通風・採光が可能なタイプ(ブラインドタイプ)などがある。手動のほか、リモコンやスイッチで操作する電動タイプがあり、価格は同じサイズなら一般的にスチールよりアルミ、手動よりも電動が高い。
住まいの設備を選ぶ本(2016年春 1月26日発行)掲載
文/香川喜久江、とがみ淳志