土地先行融資のメリット・デメリットは?つなぎ融資とどっちを選ぶ?注文住宅検討中なら必読

公開日 2025年09月16日

土地先行融資のメリット・デメリットは?つなぎ融資とどっちを選ぶ?注文住宅検討中なら必読

土地先行融資は、土地を買って注文住宅を建てるときに利用できる住宅ローン。つなぎ融資や一般的な住宅ローンとは何が違うのでしょうか?土地先行融資のメリット・デメリット、利用するときの注意点などについて解説します。

土地を買って注文住宅を建てる。いつ、どんな支払いがある?

土地購入から家が完成するまでの流れは?

建売一戸建てやマンションのように土地と建物がセットで販売される物件とは異なり、注文住宅ではまず、土地を取得し、その後に住宅を建てます。

土地を購入して家を完成させるまで、どのタイミングで、どんなお金がかかるのでしょうか。

まず必要なのは、土地を購入するためのお金です。売買契約時に手付金を支払い、引き渡し時に残りの代金を支払うのが一般的です。建物の工事費用も複数回に分けて支払うケースがほとんどです。しかし、住宅ローンが実行(借入金が金融機関から借り入れた人の口座に振り込まれる)されるのは、建物が完成した後。数百万~数千万円という土地の代金はどうやって調達すればいいのでしょうか。

注文住宅建築の流れと支払うお金
土地や工事費用の支払いのタイミングと回数、支払う割合は、土地は売主や不動産会社、建物は建築会社によって異なる。いつ、いくらの支払いが必要か、必ず契約前に確認を(イラスト/いぢちひろゆき)

土地だけ先に買う場合、ローンは使える?

住宅ローンは土地と建物をセットで担保とするため、土地だけの購入の場合は原則利用することができません。

自己資金に余裕があれば土地を現金で購入する、という方法はありますが、資金が足りない場合は、家が完成して住宅ローンが実行されるまでの間、一時的に借りる「つなぎ融資」や、土地購入費用を住宅ローンの一部として借りる「土地先行融資」の利用が検討されます。

土地先行融資とは?つなぎ融資との違いは?

土地先行融資とは

土地先行融資とは、その土地に住宅を建てることを前提に、土地の購入費用分を前倒しで借りられる住宅ローンのこと。建物分の融資は、建物が完成してから実行されます。

つなぎ融資とは

つなぎ融資とは、住宅完成後に住宅ローンが実行される前に必要な土地購入費用や、着工金、中間金などに利用できる融資。建物が完成して住宅ローンを借りるまでは利息のみを支払うのが一般的です。住宅ローンの融資が実行されたらつなぎ融資を完済します。

土地先行融資の支払いはいつから?

土地先行融資の返済は、土地分の融資実行後からスタートします。利息と元金も返済が始まるため(利息のみの場合もある)、建物が完成するまでの間の負担は、利息のみを返済するつなぎ融資よりも大きくなります。

建物が完成し、建物分の融資が実行されると、土地と建物の返済を合わせた金額での返済が始まります。

土地先行融資とつなぎ融資の仕組み
家が完成する前に支払う契約金や着工金、中間金などはつなぎ融資で借り入れるのが一般的。金融機関によっては、土地分のほか着工金や中間金の融資にも対応する分割融資を取り扱っている(イラスト/いぢちひろゆき)

土地先行融資は住宅ローン控除を利用できる?

住宅ローン控除とは? 

土地先行融資を利用した場合でも、住宅ローン控除の対象になります。

住宅ローン控除とは、返済期間10年以上などの要件を満たしたローンを利用して住宅を取得すると、年末ローン残高の0.7%相当額が所得税・住民税から一定期間控除される制度です。例えば、省エネ基準適合住宅を新築した子育て世帯の場合、年末ローン残高が4000万円なら、確定申告をすることで年間最大28万円の税金が戻ってきます(納税額が控除上限)。

なお、つなぎ融資は住宅ローンが実行されるまでの間に、短期的に利用する融資のため住宅ローン控除の対象外。ただし、家が完成した後に実行される住宅ローンは、住宅ローン控除の対象です。

住宅ローン控除の概要
ローン残高の上限 控除期間
控除率
子育て世帯・若者夫婦世帯※1 左記以外
新築住宅・買取再販 ①認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 5000万円 4500万円 13年
0.7%
②ZEH水準省エネ住宅 4500万円 3500万円
③省エネ基準適合住宅 4000万円 3000万円
そのほかの住宅 0円※2 10年
0.7%
既存住宅※3 ①②③ 3000万円
そのほかの住宅 2000万円
2025年入居の場合/控除率:0.7%/所得要件:2000万円以下/床面積要件:50m2以上(ただし、2025年までに建築確認を受け、所得1000万円以下の場合の新築住宅は40m2以上)/住民税からの控除:所得税額から控除しきれない額を所得税の課税所得金額等の5%(上限9万7500円)の範囲で住民税から控除
※1 子育て世帯は19歳未満の子を有する世帯。若者夫婦世帯は夫婦のいずれかが40歳未満の世帯
※2 2023年までに建築確認を受けた新築住宅は2000万円
※3既存住宅の築年数要件は「1982年以降に建築された住宅」(新耐震基準適合住宅)
(表作成/SUUMO編集部)

住宅ローン控除利用の要件は?

住宅ローン控除はマイホームの新築、取得、増改築などが対象。土地を取得しただけでは対象外です。建物やローンなどについて主に下のような要件を満たす必要があります。

■住宅ローン控除利用の要件(建物)
  • ローンの返済期間は10年以上
  • ローンを借りた人の合計所得金額2000万円以下
  • 住宅の引き渡しまたは工事完了から6カ月以内に入居し、その年の年末まで引き続き住んでいること
  • 床面積50m2以上(2025年末までに建築確認申請を受けた新築住宅で、合計所得金額1000万円以下は40m2以上)
  • 2024年以降に建築確認を受けた新築住宅は一定の省エネ基準を満たしていること
■住宅ローン控除利用の要件(土地)
  • 住宅を建てる予定の土地のローンに、住宅取得を目的とする抵当権が設定されていること
  • 住宅は、その土地の取得の日から2年以内に完成していること

土地を取得してから2年以内の住宅の完成や、引き渡しから6カ月以内の入居といった要件を満たしていなければ住宅ローン控除は受けられないので注意しましょう。

土地先行融資でも利用できる住宅ローン控除について説明するイラスト
(イラスト/いぢちひろゆき)

土地先行融資のメリットは?

土地先行融資の主なメリットを紹介しましょう。

低金利で借りられる

土地先行融資は、住宅ローンの一部を土地購入費用として借り入れるため、金利も一般的な住宅ローン並み。つなぎ融資に比べると金利が低い点がメリットです。

土地の購入費用を事前に調達できる

住宅ローンは通常、家が完成してから融資が実行されます。土地先行融資を使えば、土地分の融資を先に受けられることになり、自己資金が足りない場合でも土地を確保することができます。

住宅ローン控除が適用される

一定の要件を満たせば、土地先行融資は住宅ローン控除の対象となります。

土地先行融資のデメリット

土地先行融資には知っておきたいデメリットもあります。

期限内に家を完成させる必要がある

土地先行融資は「土地の融資実行から1年以内に着工、2年以内に竣工」といった期限が設定されています。期限などの条件は金融機関ごとに決められています。

土地分のローン返済と家賃の支払いが重なる可能性がある

土地先行融資は、土地分の融資が実行されると返済が始まるのが一般的です。ただし、金融機関によっては、建物分の返済が始まるまでは利息のみの支払いというケースもあります。賃貸住宅に住んでいる場合、家が完成して入居するまでは、土地分のローン返済と家賃の支払いが重なることになります。

抵当権設定や事務手数料などが多くかかる

金融機関にもよりますが、土地先行融資は土地と建物で別々に融資を受けるため、抵当権設定費用、ローン事務手数料、契約書に貼る印紙代、司法書士報酬などの費用が複数回発生することがあります。

土地先行融資を利用する際の注意点

建築プランは早めに決めておく

土地先行融資はマイホームを建てることを前提にした融資です。土地だけでなく、建物についても審査した上で融資が決定されるため、融資審査を申し込む段階で建築プランが決まっている必要があります(審査後、建築プランが変更になると再審査になるのが一般的)。購入したい土地を決めてから、建築の依頼先やプランを考え始めると、他の人に土地を購入されてしまう可能性もあります。
建築会社選びやプランの検討は早めに進めておき、希望のプランに合う土地を建築会社に相談しながら探すようにするのがスムーズです。

土地先行融資を利用するなら、家のプランは早めに決めておくことが大切というイラスト
(イラスト/いぢちひろゆき)

すべての銀行で取り扱っているわけではない

土地先行融資は、メガバンクでは三井住友銀行やりそな銀行、みずほ銀行(分割融資)、ネット銀行では住信SBIネット銀行、そのほかイオン銀行などで取り扱っています。また、土地代と建物代に分ける融資実行を個別対応で行う金融機関もあります。金融機関のホームページでは、土地先行融資に対応しているのかわからないケースもありますから、融資窓口などで直接相談してみるといいでしょう。

複数の金融機関を比較検討する

土地先行融資の融資条件や契約内容は、金融機関によって異なります。分割可能な融資回数や、建物の着工や竣工の期限、土地分の返済のスタート時期など、自分が利用しやすいローンに出合えるよう、複数の金融機関を比較検討することが大切です。

つなぎ融資と土地先行融資のどちらがよい?

土地の融資を受ける際、つなぎ融資と土地先行融資のどっちがいいのかはケースバイケース。建物のプランがどれくらい進んでいるのか、手続きを簡単にしたいのか、など、借りる人の事情や希望によってどちらが向いているのかが見えてきます。

土地を早く押さえたいならつなぎ融資

つなぎ融資は、土地先行融資のように抵当権を設定する必要がなく、審査もゆるやか。金利は高めですが、手間なく借りてしまいたい人に向いている融資です。また、土地先行融資では建物のプランも審査の対象ですが、つなぎ融資は大まかなプランで借りられることも多いため、土地を早く押さえてしまいたいという場合に向いているといえます。

金利負担を抑えたいなら土地先行融資

土地先行融資は融資を受けるために、建物のプラン提出や抵当権設定などの手間がかかります。しかし、つなぎ融資に比べて金利が低いため、土地購入から家の完成まで時間がかかりそうな人や、できるだけ金利負担を抑えたい人に向いているといえるでしょう。

土地先行融資とつなぎ融資の違い

土地先行融資もつなぎ融資も、土地を買って家を建てるケースで利用できる融資です。しかし、それぞれに特徴が異なるため、下の表を参考に違いを知っておきましょう。

土地先行融資とつなぎ融資の違い
土地先行融資 つなぎ融資
ローンの種類 住宅ローンの一部として融資 住宅ローンとは別の独立した融資
金利 低金利(住宅ローンと同水準) 高金利(一般的に2~4%程度)
返済スタート時期 土地分の融資実行後から
(元金+利息。金融機関によっては建物分の融資実行まで利息のみの支払いのケースもある)
最終的な住宅ローン実行時に一括返済が基本
(途中は利息のみの支払いが多い)
住宅ローン控除 対象になる 対象外
担保 土地と建物に抵当権を設定 不要(保証会社による保証が一般的)
審査 住宅ローンと同じく、建物プランも含めて厳格 比較的簡易
(表作成/SUUMO編集部)
まとめ

土地先行融資とは、土地の購入費用分を前倒しで借りられる住宅ローン

土地先行融資はつなぎ融資に比べて金利が低いメリットがある

土地先行融資は住宅ローン控除を利用することができる

土地の融資実行後に土地分の返済がスタートするため、無理のない資金計画を立てておくことが大切

金融機関によって土地先行融資の取り扱いの有無や融資条件が異なるので複数の金融機関をチェックしよう

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