夫婦間贈与、ローン返済額でかかるケースは?特例や注意点、おしどり贈与についても解説

公開日 2025年08月01日

夫婦間贈与、ローン返済額でかかるケースは?特例や注意点、おしどり贈与についても解説

住宅購入やリフォームを検討する際、夫婦間の資金の動きには注意が必要です。特に、夫名義の不動産を購入する際に、妻が住宅ローンの返済を肩代わりしたり、妻名義でローンを組んだものの実際には夫が支払っている場合、意外にも贈与税が課される可能性があることをご存じでしょうか?

それっておかしくない?と思う方もいるかもしれませんが、本記事では、夫婦間での不動産取引において贈与税がどのように影響するのか、特例や非課税の条件、さらには繰り上げ返済の際の注意点について詳しく解説します。「いくら」までが非課税なのか、贈与にあたるケースとは何かを知ることで、賢い資金計画を立てる手助けになりますのでぜひ参考にしてください。

はじめに:夫婦間にも実はかかる贈与税ってなに?

ある人が誰かにお金や物などの財産をタダであげることを「贈与」といいます。贈与がなされると、財産をもらった人が「贈与税」の納税義務者となり、もらった財産の金額に応じて税金がかかります。

誰かから贈与を受けた場合、もらった人はその年の1月1日から12月31日までの贈与された財産の金額をまとめて税務署に申告し、贈与税を納税しなければなりません。

「誰か」とは自分以外のすべての人なので、配偶者や親、子も含まれます。そのため、夫婦間で贈与があった場合も、原則として贈与税の課税対象となるのです。

夫婦間の贈与で特に注意が必要なのが住宅ローンです。例えば夫名義で借りた住宅ローンを妻の収入から返済すると、妻から夫への贈与とみなされて贈与税がかかるケースがあります。

住宅の模型を見ながら電卓をたたく夫婦
住宅を買う場合は夫婦間の贈与に注意が必要(画像/PIXTA)

夫婦間で贈与税がかからない、非課税となるケース

住宅にまつわる贈与は非課税にならない

夫婦間の贈与であっても、贈与税がかからないケースもあります。代表的なものは生活費や教育費で、例えば夫の収入から専業主婦である妻の生活費を支払っても、その生活費については贈与税は非課税です。これは共働きの場合も同様で、例えば夫婦で共同の預金口座をつくり、生活費や教育費をまかなっていたとしても贈与税はかからないのです。

ただし、前述のように住宅ローンの返済については夫婦間でも贈与税の課税対象になります。住宅は金額の大きな財産なので、住宅にまつわる贈与は非課税とはされず、税務署による厳格なチェックが行われるからです。

年間110万円を超える金額に課税される

なお、贈与税には基礎控除があり、年間110万円までの贈与には贈与税がかかりません。とはいえ、1年の間に複数の贈与を受けた場合、その合計額が110万円を超えると贈与税がかかります。例えば同じ年に配偶者から100万円、自分の父親から50万円をもらった場合は贈与額が150万円となり、基礎控除の110万円を差し引いた40万円が贈与税の課税対象となるのです。

年間の贈与額と基礎控除の図
年間に贈与を受けた額の合計から110万円の基礎控除を差し引いた額に贈与税がかかる(図作成/SUUMO編集部)

夫婦間で贈与税がかかる見落としがちなケース

高額なプレゼントは課税対象になる

夫婦間の贈与で贈与税がかかるケースとしては、前述した住宅ローンに関連する贈与があります。住宅ローンの返済だけでなく、後述するように住宅を購入するときの頭金なども贈与税の課税対象となる場合があるので注意が必要です。

このほか、夫婦間で高額なプレゼントを行った場合も、基礎控除の110万円を超える分が贈与税の課税対象になります。例えば夫がお金を出して自動車を購入し、妻名義にすると夫から妻への贈与として贈与税がかかるケースがあるのです。

プレゼントを渡している写真
夫婦間の高額なプレゼントは贈与税の課税対象になる(画像/PIXTA)

住宅ローンと夫婦間の贈与について詳しく解説

ここでは住宅ローン関連で気をつけなければならない夫婦間贈与の具体的な事例について見ていきましょう。

配偶者の住宅ローンを返済すると贈与になる

一つ目は前述のように夫婦のどちらかが配偶者名義の住宅ローンを返済する場合です。例えば妻名義で借りた住宅ローンを夫の収入から返済すると、夫から妻への贈与とみなされて贈与税の課税対象となります。ただし返済額が年間110万円以内であり、ほかに贈与額がなければ基礎控除の範囲内となるので贈与税はかかりません。

住宅を購入するときの頭金と住宅の名義の関係も注意が必要です。例えば妻が頭金の一部を負担したにもかかわらず、住宅の名義を夫だけにしてしまうと、妻から夫への贈与とみなされて贈与税がかかるのです。

妻の親からの援助を夫名義にすると妻からの贈与に

気をつけたいのが、妻が自分の親から住宅購入資金として贈与を受けたケースです。親子間の贈与も贈与税の課税対象となりますが、住宅購入資金については最大1000万円まで贈与税がかからない「住宅取得資金贈与の特例」が受けられます。この特例の範囲内で贈与を受ければ親から妻への贈与には贈与税がかかりませんが、住宅の名義を夫の単独名義にしてしまうと妻から夫への贈与となってしまうのです

頭金と住宅ローンの出資額に応じて名義を分ける

このように住宅を購入する場合は贈与とみなされないよう、夫婦それぞれの頭金と住宅ローンを含めた出資額に応じて名義を分けなければなりません。最近は夫婦のペアローンで住宅を購入するケースが多いため、なおさら注意が必要です。

例えば夫が頭金を1000万円出して住宅ローンを2000万円借り、妻が頭金を500万円出して住宅ローンを1500万円借りて、夫婦ペアローンで5000万円の住宅を購入したとします。この場合、夫の出資額は頭金と住宅ローンの合計額3000万円、妻の出資額は同様に2000万円です。そのため、このケースでは住宅の名義を夫3:妻2の共有名義とすれば夫婦間の贈与があったとはみなされず、贈与税はかかりません。

夫婦で家を買うときの名義の分け方
住宅の名義は夫と妻それぞれの出資額に応じて分けるのが正解(図作成/SUUMO編集部)

住宅ローンで発生する夫婦間の贈与のその他の事例

妻が買った土地は妻の名義にする

住宅ローン関連で夫婦間の贈与が発生する事例としては、購入代金のうち土地代金だけを妻が支払うケースなども考えられます。土地代金を妻が支払い、その土地に夫が住宅ローンを借りて家を建てた場合、土地を妻名義、建物を夫名義とすれば夫婦間の贈与とはみなされず、贈与税もかかりません。しかし、土地・建物ともすべて夫名義とすると、土地の代金は妻から夫への贈与とみなされて贈与税の課税対象となるのです。

夫婦の連帯債務では借入額を収入比率で分ける

このほか、妻名義で借りた住宅ローンを夫が返済したり、繰り上げ返済費用を夫が支払ったりすると、夫から妻への贈与とみなされて贈与税の課税対象となります。その反対に夫名義の住宅ローンを妻が返済するケースでも同様です。

また、共働き世帯が住宅ローンを借りる場合、どちらか一方の収入だけで返済できるのであれば返済する人だけの単独名義としても贈与とはなりません。しかし、夫婦の連帯債務とした場合は共同で返済しているとみなされるため、二人の収入の比率に応じて住宅ローン借入額の比率を分け、住宅を共有名義とする必要があります。

なお、夫婦のどちらかが一方の住宅ローン返済を肩代わりした場合でも、年間110万円以内であれば基礎控除の範囲内なので贈与税はかかりません。

住宅ローンの資料を眺める夫婦
夫婦ペアローンでは名義の分け方に注意が必要(画像/PIXTA)

夫婦間で贈与が発生したときの申告について

人から財産をもらった場合は、もらった人がもらった翌年に税務署に贈与税の申告をする必要があります。申告期間は2月1日から3月15日で、納税期限も同じです。

もらった財産が基礎控除の110万円を超えなければ申告の必要はありませんが、超える場合は申告しなければなりません。税務署は金融機関での資金移動や通帳の履歴なども細かくチェックするので、「申告しなくてもわからないだろう」と申告を怠るのはNGです。

申告期限までに申告しなかった場合や、実際にもらった額より少ない額で申告した場合には、本来の贈与税のほかに加算税が課せられます。また、納税が期限に間に合わなかった場合は、遅れた税額に対して延滞税がかかるので注意が必要です。

ちなみに夫婦間で年間110万円を超える贈与を行った場合でも、同じ年のうちに全額を返済すれば贈与がなかったとみなされて贈与税はかかりません。

ATMの前で預金通帳を開いている
年間110万円を超える贈与がある場合は申告が必要(画像/PIXTA)

自宅の贈与では配偶者控除(おしどり贈与)の特例が使える

夫婦間で自宅(居住用不動産)またはその購入費を贈与した場合、一定の要件を満たせば2000万円まで贈与税が非課税になる配偶者控除の特例が利用できます。この特例が、いわゆる「おしどり贈与」と呼ばれるものです。この特例は基礎控除とも併用できるので、合計で2110万円まで贈与税がかかりません。

配偶者控除(おしどり贈与)の特例の適用条件

配偶者控除の特例の適用を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 結婚して20年を超えた夫婦間での贈与であること。
  • 配偶者から贈与された財産が、居住用不動産またはその取得費用であること。
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与を受けた人がその居住用不動産に住み、その後も引き続き住む見込みであること。
  • 国内にある居住用不動産であること。

なお、この配偶者控除の特例は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。

配偶者控除(おしどり贈与)の特例の申告の仕方

配偶者控除の特例を受けるには、贈与を受けた翌年に、贈与税の申告書に次の書類を添付して申告する必要があります。

  • 贈与を受けた人の戸籍の謄本または抄本
  • 贈与を受けた人の戸籍の附票の写し
  • 居住用不動産の登記事項証明書など、贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証明するもの
  • 居住用不動産の評価明細書などの書類

居住用不動産を贈与したときにかかる税金

ちなみに、居住用不動産を贈与した場合は、以下のように不動産取得税と登録免許税がかかります。このうち不動産取得税については一定の要件を満たせば軽減措置が受けられます

  • 不動産取得税:固定資産税評価額×税率3%
  • 登録免許税:固定資産税評価額×税率2%

このほか、申告時に提出する必要はありませんが、夫婦間で贈与をした場合は贈与契約書を書面として残しておくと、後々のトラブルを防ぐのにも有効なのでオススメです。

担当者の話を聞く高齢者夫婦
結婚20年を超えた夫婦間での自宅の贈与は非課税に(画像/PIXTA)

たとえ夫婦間であっても、財産を贈与した場合は贈与税の課税対象になります。特に住宅購入など大きな金額が動く場合には、頭金や住宅ローンと名義の関係によっては贈与とみなされる場合も少なくありません。

自分でも気づかないうちに贈与とみなされて多額の贈与税がかかってしまうことのないよう、制度の仕組みをよく理解しておく必要があります。また、結婚して20年を超えた夫婦間で自宅の名義や購入費を贈与した場合は、2000万円まで贈与税が非課税になる特例を受けられるので、特例を受けるための要件なども確認しておきましょう。

まとめ

夫婦間でも財産を贈与した場合は贈与税の課税対象になる

住宅を買うときの頭金や住宅ローンの組み方で贈与税がかかるケースも

年間110万円を超える贈与を受けたら贈与税の申告が必要

結婚20年を超える夫婦間で自宅を贈与した場合は2000万円まで非課税に

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