ヒロシ50歳 目標は「死んでから片付けにくい部屋づくり」。終活を意識しながらも挑戦する家【家愛遍歴】

公開日 2022年07月20日
ヒロシ50歳 目標は「死んでから片付けにくい部屋づくり」。終活を意識しながらも挑戦する家

人生の節目にもなる「引越し」。住み慣れた街を離れ、新天地でのスタートを気持ちよく切るためにも、部屋探しは重要です。著名人の方々は、どのような観点で家を選び、今の暮らしに落ち着いたのでしょうか?本連載「家愛遍歴」ではさまざまな方に、これまで住んだ思い入れのある家、そこでの暮らしについて伺います。

今回登場いただくのは、お笑い芸人のヒロシさん。芸人としてのデビュー前、住む家がない、過酷な経験をされたこともあるそう。中古住宅を購入し、リノベーションを楽しみながら暮らす現在に至るまでの「引越し遍歴」と、暮らしの価値観の変化を伺いました。

お金も保証もなく、部屋も借りられなくなった下積み時代

ヒロシさん

ーーヒロシさんが26歳で福岡から上京し、最初に暮らしたのはどんな部屋だったのでしょうか?

ヒロシさん(以下、ヒロシ):まずは芸人仲間が住んでいた新井薬師前のアパートに、そのまま転がり込みました。しばらくして「ひとり暮らしの部屋を借りよう」と思って、駅前の不動産屋に行ったんです。張り紙を見ると「家賃2万円」って書いてあったので、「2万円の物件って、どこですか?」と聞いたんですね。すると「これは駐車場だよ!」って言われて。

約25年前はネットもなかったので、東京の家賃相場や住みやすい街の情報も分からなかったんです。九州の感覚でいたから、「風呂を諦めたら、2万円の部屋もあるだろう」と思い込んでいたんですよね。その後、なんとか家賃2万円の4畳のアパートを見つけて契約しました。

ーー都内で2万円4畳の部屋って、当時の物価でも珍しいですよね。

ヒロシ:部屋は狭くて、隣の部屋の声が聞こえるくらい壁も薄かったです。収納もないので、洋服はパッと床に脱いで、それを着る感じでした。本当にお金がなかったから、部屋を工夫する余裕もなく、ただ我慢するしかできなかったんです。

ーー上京したばかりで頼れる友人も少ない中での苦しい生活は、すんなりと受け入れられたのでしょうか?

ヒロシ:もともと、僕は実家も貧しかったし、大学で福岡にいた時も、2万円の6畳の部屋に住んでいました。お風呂場にヒルがいたり、粗大ゴミの中から冷蔵庫を拾って来たりする生活。ずっと貧乏暮らしが当たり前だったんです。だから、上京後の生活も、特別にしんどいとは考えていなかったんです。

ただ、その後色々と辛い思いをして……「こんなみじめな思いをしないためにも、お金を稼いで広い部屋に住みたい」って考えるようになったわけですよ。

ヒロシさん

ーー芸人としてデビュー前には、ホストとして働いていた時代もありましたよね。その時期も、4畳の部屋に住んでいたのでしょうか。

ヒロシ:そうですね。だけど、ホストで稼げるわけもなく、ついに部屋を借りられなくなったんです。ホストの客引きの間で、道行く人に「今日、泊めてくれない?」と頼む日々でした。その日、自分に帰る家がない生活、想像できますか? そんな日々が2年続いたけど、本当にキツかったです。

ーーもしかして「ヒロシです……」の自虐ネタは、そんな極限状態の中で生まれたのですか?

ヒロシ:生活の中で出てきた愚痴の影響が大きかったかもしれないですね。俺にとっては当たり前なんだけど、ひどい生活をしていたので。だからこそ、普通の人が「えっ」って思うことをサラっとネタにできたのかもしれないね。

ブレイクで変わった、部屋に求める条件

ーーその後、ブレイクを経験されて、環境も大きく変わったそうですね。

ヒロシ:ブレイクの兆しが見えた頃に「これはもう大丈夫だ」と思って、お風呂と駐車場付き2LDK、家賃14万円の初台のマンションに引越しました。やっと普通の生活になったんですが、今度は家が広すぎて落ち着かなくなったんです。

ーーヒロシさんは、もともと広い部屋が苦手だったのでしょうか?

ヒロシ:4畳だったら行動範囲が決まっているけど、広いとあっちこっちに目がいってしまうんですよ。前に仕事で、ホテルのスイートルームに泊まったことがあるんです。「せっかくだから何かやらなきゃ」と思って、夜中にうろちょろしちゃって、すごく疲れました。もともと、ネタを書く作業もずっと4畳の部屋でやっていたし、俺的には4畳がベストだったのかもしれないですね。

ヒロシさん

ーー広い部屋が苦手とわかってから、4畳の部屋に戻る選択肢はなかったのでしょうか?

ヒロシ:4畳に住んでいる時は、「とにかく金が欲しい」と思っていたので、色んなことを我慢できました。それが、一度2LDKの部屋に住んでみると、身体が慣れてしまい、もう昔の生活には戻れないんですよ。

悩んだ結果、作業用に4畳の部屋を借りて、2拠点生活をしたこともあります。けど、基本的に売れてからはずっと2LDKに住んでいましたね。

ーーちなみに、今までヒロシさんが住んだ中で、一番高い家賃はいくらですか?

ヒロシ:一気に家賃を上げたのが、目黒の家賃48万円のマンションと、その次に住んだ港区のマンションです。目黒の間取りは、リビング、寝室、作業部屋の2LDK。売れてから車を買ったので、駐車場は必須でしたね。パパラッチ対策で、地下駐車場から部屋までエレベーターで上がれる物件を選びました。

ーー収入がガツンと上がった後は、どんな条件で家を選んでいましたか?

ヒロシ:大金が入ってきても、風呂と駐車場さえあれば、特にこだわりはなかったです。俺が芸人を始めた頃は「芸人たるもの借金した方がいい」という考えがあって、借金しないと周りの芸人から怒られてたんですよ。だけど、両親から「借金だけはするな」と言われていたので、それだけはずっと守っていました。

ーーローンは組まなかったんですね。当時のヒロシさんだと、現金で土地を買って、家を建てることもできると思うのですが……。

ヒロシ:いや、建てるのは面倒くさい。いちいち「壁はこの色でお願いします」とか言わないといけないでしょう? それに、他と似たような家も嫌なんですよ。

ヒロシさん

ヒロシ:人と同じじゃつまらないから、今いる事務所も、壁に好きな色を塗って、雰囲気を変えました。こんなもん、タレントの事務所じゃないでしょ(笑)? 内装を変えてしまったから、原状回復費を多くとられる可能性もあるので、ずっと出ていかないつもりです。

ーー退去時の話が出ましたが、ヒロシさんは大家さんとの交渉も工夫されているのでしょうか

ヒロシ:俺もタレントだからあんまり強く言えないけど、長期で借りる時はきちんと話し合います。前に住んでいた家が30万円の敷金を預けていたのに、出る時に「50万円払って」と言われて。それは流石におかしいと思って、双方納得して20万円に減額してもらいました。

部屋づくりの意識を変えた、美輪明宏さんの一言

ヒロシさん

ーーヒロシさんは最近、中古一軒家を購入して、YouTube『ヒロシちゃんねる』で、フルリノベーションをする様子を公開されていますね。今の家はどんな間取りなのでしょうか?

ヒロシ:1階は全部ガレージで、2階はリビングキッチンと事務所っぽい部屋と物置、3階は和室です。寝室に上がるまで階段がきつくて、「歳とって住める家じゃねぇ!」と、しばらく住んでからやっと気づきました。

リノベーションも芸人仲間に協力してもらいながら、なんとかやっています。一軒家ライフを始めてみたはいいものの、熱帯魚を飼ったり、壁を直したりと、やることが多すぎて、やっぱり落ち着かない。

ーーマイホームでも落ち着かないんですね(笑)。

ヒロシ:広い空間だと、普通に住んでいるだけでもあちこち手入れしなきゃいけないので、掃除が大変なんですよ。しかも長時間の撮影のキャンプの仕事が入ると、しばらく家に帰れない。そして、さらに気持ちが焦ってしまうんです。

ヒロシさん

ーー今は色んなことを楽しむヒロシさんですが、20年後くらいには、物を持たない「シンプルな暮らし」に戻っていそうな気もします。

ヒロシ:僕はもう50歳なので、一応「終活」のことも考えています。老後はきっと老人ホームに入るから、4畳くらいの部屋に戻るってことでしょう? その中で死んでいくと思うと、今持っているものは最終的に全部失うわけで。「今、何のために買ってるのかな?」って思うことはありますね。

ーー自分の死後の部屋のことも、考えているんですね。

ヒロシ:考えますよ、そりゃ。だけど、貧乏時代に美輪明宏さんから「あんたの死後、片付けにくい部屋をつくりなさい。そこから文化が生まれてくるから」って言われたことがあるんです。

それまでは何もない部屋に住んでいたんですけど、美輪さんの一言がきっかけで、植物を育てたり、アンティークを買い集めたりして、しっちゃかめっちゃかした部屋に住むようになりました。

部屋に欲しいものは、少しずつ増やす

ヒロシさん

ーーモノへの価値観が変わったのは美輪明宏さんからの影響が大きかったようですが、マイホームを手に入れてから気がついたことなどはありますか?

ヒロシ:「人は欲しいものを手にしたら、落ち着かなくなる」ってことに気がつきました。収入が増えたからと言って、欲しいものを一気に全て手にいれるのではなく、少しずつ増やしていくことをオススメします。

ーー色んなものを一気に手に入れたからこそ、たどり着いた価値観ですね。

ヒロシ:まあ、俺もきっと20年くらいしたら死ぬので、稼いだお金は最後まで使い切りたいと思いますよ。貧乏性で、なかなか使い切れないけど、コロナが明けたら旅行に行って、もうバンバン使うつもりです。自分のお金は、誰にも渡したくない。

ーーこれから住まいを探す人に向けて、ヒロシさんが伝えたいことは?

ヒロシ:やっぱり、身の丈にあった住まいを選ぶのがいいと思います。「いい家に住んだから稼がなきゃ!」と思っても、本当に成功する人たちなんて微々たるものなので。俺も「芸人だから借金した方がいい」の言葉を信じて借金していたらきっと地獄を見ていたので。何事も、無理せず住まい探しを楽しんでください。

<取材・編集 小沢あや(ピース株式会社)
<撮影 小原聡太>
<構成 吉野舞>

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