どのような選択をするかでその後の生活を左右する「引越し」。著名人の方々は、どんな基準やこだわりを持って部屋探しをしているのでしょうか。連載「家愛遍歴」ではさまざまな方に、これまでの部屋選びや、そこでの暮らしについて伺います。
今回のゲストは人気お笑いコンビ・ハリセンボンの近藤春菜さん。「更新のたびに引越しをするタイプ」だと語る、春菜さんの部屋選びの軸とは?
ーー春菜さんは、実家での暮らしが長かったそうですね。
狛江市にある二世帯住宅の実家に、28歳まで住んでいました。家族と過ごす時間が私にとってオフになれる大切な時間だったので、家を出るのは遅いほうだったと思います。一人暮らしを始めるときも、実家と行き来するつもりでした。次の日の朝が早いときなど、寝るためだけに帰る前提で渋谷に部屋を借りたんです。
ーーご家族のことを大切にされているんですね。幼少期に「早く一人暮らしをして自分だけの空間が欲しい」と思うことはなかったのでしょうか?
一人になりたいときは自分の部屋にこもればよかったので、実家を出たいという願望はあまりなかったですね。
ーー初めての一人暮らしの場所に渋谷を選んだのはなぜでしょう?吉本の劇場がある新宿付近のほうが便利なのでは?
オン・オフをはっきりさせたかったので、仕事場である新宿は考えなかったですね。渋谷は仕事場に行きやすいのと、友達が近くに住んでいたので選びました。渋谷は人が多い街ですけど、ちょっと外れた道に入れば静かなところもあったので、意外と落ち着いて暮らせていたと思います。
ーー渋谷時代は、どんなお部屋に住んでいましたか?
正方形の1LDKで家具の配置がしやすかったですね。最初の一人暮らしとしては、理想のところに住めたかなと思います。ただ、当初は実家と行き来する予定だったので、収納はちょっと少なめでした。仕事が忙しくなり、だんだん実家に帰る頻度が落ちてしまったり、物が増えたりして、すぐ引越しを考えるようになりました。
ーー次の部屋が本当の一人暮らしの始まりということですね。物件はどのように探していたんですか?
それこそSUUMOも見ていましたし、友達に紹介してもらった不動産屋さんにも探してもらいました。条件はバストイレ別、2階以上、オートロック。そしてIHではなくガスコンロであること。当時は衣装部屋への憧れがあったので、間取りは2LDK。
エリアは特に決めていなかったんですけど、ちょうどいい物件があったのと、お散歩コースやごはん屋さんが充実していることから、池尻(大橋)に住みました。
ーー春菜さんはタワマンでの暮らしも経験されていたそうですね。
タワマンに憧れて住んでみたんですけど、「自分には合わないな」と思っちゃいました。自分の家ではなくホテルに帰っているような感覚で、リラックスできなかったんです。設備はすごかったですし、管理人さんもとてもよくしてくださったんですけど、ちょっと背伸びしすぎてたなと感じます。緑豊かな狛江で生まれ育ったので、「そんな高いところにいる人間じゃないな」と気がついて(笑)。
ーー実際に経験したからこそ、合わないとわかったわけですね。
実はその次の家もタワマンだったんです。けど、タワマンにこだわっていたわけではなく、友達が近くに住んでいたことが決め手でした。私の家探しは、「友達が近くに住んでいること」がすごく大事なんです。「価値観が合う友達が住んでいるということは、周りの環境も保証されている」と思っているので。友達と同じマンションに引越したこともあります。
ーーすごい!友達ありきの引越しなんですね。家が近いことで、交友関係が維持できている側面もあるのでしょうか。
私の食生活や健康面を心配してくれる友達が多いんですよね。友達も「見守りたいから引越して来なよ」って言ってくれるんです。
ーー素敵な関係ですね。友達が同じマンションに住んでいる暮らしはどうでしたか?
お互いの部屋があるので、プライバシーは守られつつも、近くにいる安心感があります。
一人暮らしでも寂しくないし、急に具合が悪くなったときもすぐに行けますし、すごく楽しかったですね。
お互いの部屋の鍵を持っていたので、家のお風呂が壊れたときに貸してもらったり、冷蔵庫に食材がないときに家主が不在の部屋で料理してごはんを食べさせてもらったりしていました。「家を自由に使っていいよ」というスタンスだったので、心強かったです。仕事の終わり時間を連絡して、帰るころにごはんを用意してくれることもありましたし、友達というより家族のような関係でした。
ーーそんなに仲良かったら、引越せなくなりそうですね。
友達と同じマンションに住むのは2回経験があるんですけど、いつも友達が先に出ちゃうんですよね(笑)。だから私も後に引越していく感じです。
ーー友達が引越して一人になったら、孤独を感じてしまいそうです。
その後、結局また友達の家に近い地域に住むんですよね。普段から友達とテレビ電話もよくするので、あまり寂しくはならないですね。めちゃくちゃ連絡取り合ってます。
ーー物件を探すときは、来客がある前提で考えていますか?
今の家は、人を呼ばずに一人で過ごす前提で住んでいます。タワマン時代は人に来てもらう前提で家具をそろえていたんですけど、「ホームパーティーは人の家でやるのがいい」と気づいたんです(笑)。料理が好きな子やおもてなしが上手な子が周りに多いので、「自分の家ではなく人の家に行こう」と。それから部屋や家具を選ぶ基準も変わりました。
ーータワマンのあとは豪徳寺に住まれていたそうですね。ブレイク後にちょっとローカルな街に住むのは、珍しいですよね。
豪徳寺で素敵な老夫婦にお会いしたことがきっかけで、「この街に引越したい!」と思ったんです。ちょうど友達が住んでいる豪徳寺のファミリーマンションの空きが出たので、そこに住み始めました。
ーー豪徳寺でも友達がいるところに住まわれたんですね。タワマンからの引越しだと、設備や収納もだいぶ変わりそうですね。
引越しのタイミングで断捨離はしていたんですけど、それでも自分だけだと踏ん切りがつかない物ってあるじゃないですか。引越しを手伝ってくれた友達に「こんなにお皿いる?」とか言われながら、引越し後にも物を減らしていました。自分一人だとなかなか片付けられなかったんですけど、定期的に友達に遊びに来てもらうことで、片付いています。
ーー「お友達が近所に住んでいる」以外に、ここは妥協できないなというポイントはありますか?
窓から見える景色とセキュリティーですね。あとは内装があまりにも自分の好みと合わなかったら、「ここは違うな」って思うかもしれないです。
内見時は、前の住人がどんな暮らし方をしていたかも気にします。たまに「どういう使い方したらこんなになるの?」という状態のときがあるんですよね。「クリーニング前なので、入居時にはキレイになります」と言われたとしても、その時点で嫌になっちゃいます。住むなら、愛されてきた部屋がいいんです。
ーー家を決める際、誰かにアドバイスをもらうことはありますか?
私は30代になっても家を決めるときに「ここに住んでも大丈夫かな」って親に相談してるんですよね。部屋数が増えて家賃が上がったというのもありますし、28歳から家賃という固定費が発生するようになったので、家賃がいくらだとしてもビビっちゃって。親に「いいと思う」と背中を押してもらうことで、引越しの決意を固めています。
ーー春菜さんの活躍ぶりだったらどこでも好きなところに住めると思いますが、それでも、一番大事な基準はやっぱり友達ですか?友達が近くに住んでいるけど、自分の望む条件の物件がなかったらどうしますか?
もしそうなったら、自分の条件を変えるかもしれないです。一人で知らない街に住むことはできないですね。例えば、旅先ですごく気に入った地域があったとしても、「旅行でまた来ればいいや」と思うので、移住はしないです。でも、そこに友達がいたら「ここに住みたい」ってなると思います。
ーー本当に友達第一なんですね。家を買いたいという願望はないんですか?
ないですね。今のところは、定期的に引越す暮らしを続けていくのかなと思っています。
ーー郊外などに部屋を借りて、二拠点生活をすることも考えないですか?
それだったら東京から離れたところに……とも思うんですけど、地方に家を持とうかなと言っている友達がいるので、そこに行けばいいかなと(笑)。私は東京に拠点を置きつつ、いろんな友達がいろんなところに住んだら、お互いに家を行き来する5~6拠点生活がしたいと思っています。
<取材・編集:小沢あや(ピース株式会社)>
<撮影 小原聡太>
<構成 伊藤美咲>