サウナブームにコロナ禍が重なり、自宅でゆっくり楽しめる「ホームサウナ」に注目が集まっています。しかし、いざ導入するとなるとコストや工事の手間、メンテナンスのことなど、分からないことだらけ。また、苦労して設置したものの、そのうち使わなくなり無用の長物と化してしまうのは避けたいところです。
そこで、2021年秋に別荘を購入し、念願のマイサウナを手に入れたお笑いコンビ「サバンナ」の高橋茂雄さんにお話を聞いてみました。現在、東京の自宅を合わせ3つのサウナを所有する高橋さん。導入にあたっての注意点や大変だったこと。また、それらの苦労を帳消しにしてくれるホームサウナの魅力とは?
――高橋さんは複数のホームサウナをお持ちだと伺いました。それぞれのサウナの特徴を教えてください。
自宅(本宅)に1つ、別荘に2つのサウナがあります。自宅のサウナは知人の音楽プロデューサーから譲ってもらったもの。電気式ヒーターを使うタイプで、スイッチを入れるだけで立ち上がり、15分で100℃くらいになります。朝とか、仕事に出かける前に入ることが多いですね。
別荘のほうは、薪ストーブを使った「バレルサウナ」と、自宅と同じ電気サウナです。どちらもサウナストーンに水をかける「ロウリュウ」で湿度を高めることができます。特に、バレルサウナは肌へのあたりがやさしいので15分くらいは無理なく入っていられますね。別荘のサウナは休みの日とか、仕事が早く終わったときなど、月に1~2回の頻度で使っています。その日はひたすらサウナ三昧という感じで。
――羨ましいサウナライフです。高橋さんは15年来のサウナーということですが、昔から自宅サウナを持ちたいと思っていたのでしょうか?
欲しい気持ちはありましたけど、まあ無理やろうと思っていました。お金もめちゃくちゃかかるやろうし、夢のまた夢やろうなと。でも、ここ数年のブームでサウナ施設がすごく賑わうようになって、落ち着いて入れないことも増えてきた時に、自分だけのサウナを持ちたい思いが膨らんでいったんです。そこで、知人を介して空き家を探してもらうところから始めました。
――わりと早い段階で、良い空き家が見つかったそうですね。
そうですね。ほんまに理想通りの空き家がたまたま見つかったので、ここを買って庭にサウナを作ろうと。
――特にどんなところが気に入りましたか?
まずは東京から車で2時間くらいという、程よい距離感。あとは、家の広さと庭の広さ。それから、なんと言っても目の前にめちゃくちゃ綺麗な川が流れているのが最高でした。外気浴の際のロケーションとしても完璧だし、水風呂代わりに川へ直接入ることもできるという。
別荘って、お金さえ出せばいくらでも良い物件は手に入るじゃないですか。でも、こういう自然と調和した場所に出会えるかどうかって、ほんまに運というか、巡り合わせやと思います。しかも、僕の場合は人との出会いにも恵まれていました。その地域で知り合った「たくちゃん」というDIYの達人が、空き家の改装や庭の整備も全てやってくれることになったんです。
――たくちゃんは高橋さんのYouTube「しげおチャンネル」にも度々登場して、圧倒的なDIYスキルを見せつけていますよね。
もう、めちゃくちゃお世話になってます。たくちゃん以外にも、庭に置くサウナについては、僕が大好きな「The Sauna」(長野県)の支配人である野田クラクションベベーくんに相談したところ「バレルサウナ」がいいんじゃないかと。そこで、「サウナ部長」として活動している友人のカワちゃんに調べてもらい、いろいろと検討した結果、エストニアのバレルサウナを輸入することになったんです。ほんまに色んな人に助けてもらって実現できたという感じですね。
――ちなみに、総額でいくらかかりましたか?
別荘の土地は借地なので建物代だけで500万円以下。バレルサウナは輸送費なども含めると200万円を超えるくらいですね。
――もちろん安い買い物ではありませんが、サウナ付きの別荘と考えると、思ったほどの金額ではないように感じます。
そうですよね。郊外の空き家であれば、そこまで高くはない。良い物件にさえ巡り合えば、1000万円くらいでめちゃくちゃ良い別荘サウナが作れると思います。
あと、サウナ自体も最近は国内メーカーのブランドが新しく立ち上がっています。例えば、「BARREL BASE(バレルベース)」という会社は国産のヒノキを使ったバレルサウナの製造・販売をしていて、120万円くらいでめっちゃ質がいい。庭に置くサウナとしては、圧倒的にオススメですね。
――本宅のホームサウナについてもお伺いしたのですが、ご自宅は賃貸物件ですか?
はい、普通の賃貸マンションです。正直、僕もはじめは賃貸物件にサウナなんてつくれるはずがないと思っていました。でも、2人用のサウナでも意外とコンパクトで、洋服の収納部屋を整理したら設置できてしまいましたね。電気の容量を変更するのと、専用回線の電源をつくるための配線工事が必要でしたが、さほど大掛かりなものではなかったです。管理会社に連絡したら「退去時に元に戻してくれるならOKです」と言われましたし、そんなに苦労はなかったように思います。ちなみに、譲ってもらうと決めてから2週間後には使えるようになりました。
――なかには、家庭用のコンセント(100V)に対応したサウナもあるようですしね。
ただ、それだと温度が十分に上がりきらないので、物足りないと感じる人もいると思います。手軽だからといって満足できないものを入れてしまうと、そのうち使わなくなって物置代わりになってしまうなんて話も聞くので、そこはちゃんと調べたほうがいいかと。できればショールームに行って、実際にそのサウナのパワーを体験してから決めるべきやと思います。
あと、もう一つホームサウナで注意したいのは、水風呂の温度問題ですね。サウナ施設のような冷たい水風呂にするには専用の機械が必要で、導入するとなると数百万円はかかってしまう。だから、僕は自宅サウナでは水風呂は諦めて、サウナ後は水シャワーを浴びてから脱衣所に置いた折りたたみ式の椅子で休憩するようにしています。
――自分がどこまでのものを求めるのか、ちゃんと理解した上で買わないと失敗しそうですね。
そう思います。僕はもうそういうもんやと割り切って、普段使いのサウナについては自宅のと施設の本格的なサウナを併用するようにしています。
ちなみに、別荘の周辺はめちゃくちゃ水の質がよくて、真夏でもサウナ施設の水風呂より冷たい水が出てきます。サウナ目的で別荘を買うなら、その地域の水のことは調べておいたほうがいいと思いますね。やっぱりサウナの満足度って、水風呂の良し悪しによって全然変わってくるので。
――ホームサウナの不安要素として、日々の掃除やメンテナンスが大変そうなイメージがありますが、そのあたりはいかがですか?
使い方さえ間違わんかったら、そこまで大変なこともないかなと思いますね。例えば、木が朽ちないように毎回タオルやサウナマットを敷いて入ったり、サウナストーブが壊れないように自宅ではロウリュウをやらないようにしています。もちろん、まだ導入して一年しか経ってへんからこれから不具合がでてくるかもしれませんけど、基本的に大事に使っていれば、さほど神経質にならなくても大丈夫な気がします。
それより、意外と大変だったのは別荘の「運用」のほうですね。特に悩ましいのが洗濯問題です。
――洗濯問題、というと?
別荘の場合は後輩とかも来るので、常に洗濯したタオルを用意しておかなアカンわけです。これが、めっちゃ面倒くさい。せめて乾燥の手間を減らそうと思って「乾太くん」っていう強力な乾燥機を導入したんですけど、7人くらいで集まると、たまに使用済みのタオルを提出し忘れるやつがおるんですよ。みんなのポンチョやタオルをまとめて洗濯して乾燥まで終わったあとに、「このタオルどうしたらいいですか?」って言ってくる。また回さなアカンやないか!って。あれはめっちゃ嫌ですね。だから、最近は使い捨ての紙パンツなどを用意して、なるべく洗濯物を減らすようにしています。
あと、薪の調達や別荘そのものの管理なんかも地味に大変やと思います。僕の場合は、たくちゃんが近くにおって連絡すれば薪を持ってきてくれるし、掃除も業者さんにお願いしていて、寝具なんかも常に新しいものを用意してくれるから快適なんですけど、それってたまたま奇跡的に恵まれた環境だっただけな気がします。
――別荘の場合は、そういった周辺環境も含めて事前にリサーチしておいたほうがよさそうですね。
そうですね。やっぱり別荘は管理がめちゃくちゃ大変っていうじゃないですか。買ったはいいけど、なかなか足を運べないからどんどん荒れていってしまう。だから、別荘の近くに掃除をお願いできる業者だったり、薪の調達ルートがあるかどうかは調べておいたほうがいいと思います。
――最後に改めて、ホームサウナならではの魅力を教えてください。
やっぱり、施設のサウナではでけへん体験が可能なことじゃないですかね。例えば、施設のサウナ室で流れている音楽って、だいたいヒーリング系とかじゃないですか。ホームサウナなら、自分の好きな音楽をかけ放題です。僕も別荘では高音に強いスピーカーを使って、「ミスチルサウナ」や「サザンサウナ」「ユーミンサウナ」を楽しんでます。あとは、外気浴も時間を気にせずベンチを独占して、好きなだけゆっくりできる。サ飯(サウナ後の食事)だって、自分が食べたいものを食べられる。一番の魅力は、そうした自由度じゃないですかね。
あとは、家にサウナがあると心の安定につながる気がします。でかめの保険に入っている感覚というか。どんなにしんどいことがあっても「俺にはサウナがあるから最終的には(この辛さから)解放される。だから大丈夫や」と思えるんですよね。
これまでは近所のサウナにそれを求めていました。自宅から15分くらいのところに行きつけのサウナがあって、心の拠り所だった。じつは、そのサウナが今日(取材日)でなくなってしまうんですよ……。
――それは……悲しいですね。
もう、めちゃくちゃショックで。すごく大きいものを失う感覚です。それでも何とか心が折れずに済んでいるのは、家にサウナがあるから。あの素晴らしい場所がなくなるのはマジで最悪やけど、ギリギリ踏みとどまれています。逆に、自宅サウナがなかったらと思うとゾッとしますね。