リビングや玄関など明るく開放的な空間にしてくれる「吹抜け」。何となく憧れてはいるものの、具体的なメリットやデメリットはわからないという人も多いはず。そこで、吹抜けのプランにはどのようなものがあるのか、おしゃれな空間にするためのポイント、吹抜けにする際に注意すべきポイントをTAU設計工房 一級建築士事務所の小宮さんが解説。ぜひ家づくりの参考にしてほしい。
吹抜けとは、1階部分の天井・2階部分の床を抜いた空間のことで、縦空間を2層分に広げることができる。主にリビングや玄関、階段スペース部分に設けられることが多い。
「都市部などは、土地が狭く隣家との間隔も近くなることが多く、採光をとるために吹抜けを採用するケースが多いですね」(小宮さん、以下同)
吹抜けにすることによって、空間が縦に広がり、開放感を演出することが可能に。
「通風・採光面でのメリットが大きいですね。窓が高い位置に設置できるので、太陽の光をしっかり1階まで取り込むことができるようになります。また、吹抜け上部に熱が上がるので、空気が循環することで風通しも良くなります。また、吹抜けで1階と2階の空間のつながりができることから、家全体のコミュニケーションが円滑になります」
一方、デメリットとしては、吹抜けにする場合は2階部分の床面積が狭くなることが挙げられる。また、上下階の空間のつながる分、音が筒抜けになることや、料理などのニオイが気になるということも。
「大きな吹抜けをつくる場合は、断熱性や気密性をしっかり担保しておかないと、冷暖房の負荷が高くなり、光熱費の負担がかかるケースも」
まず、吹抜けを取り入れる際に大切なことは、吹抜けにする目的を明らかにするということ。コミュニケーションを円滑にしたいのか、採光・通風面を重視したいのか、開放感のある空間にしたいのかなど、優先順位をしっかりつけてプランニングをしよう。
「吹抜けにすることで2階の床面積が狭くなるため、その分吹抜けにする目的をしっかり持ってプランニングしましょう。また、吹抜けでいろいろな空間とのつながりが生まれるので、プライバシーを確保したい場合は、個室もきちんと確保してしておくことが大切です。2階に個室を設けて最小限のスペースにすることが多いですね。家族でシェアするスペースとプライベートスペースを上手に両立させましょう」
吹抜けにすることで縦空間が広くなるため、住宅の断熱性・気密性を高くすることは大前提だ。また、吹抜けの上部にはエアコン、シーリングファンを設置して、上部に溜まった空気を循環させる仕組みをつくろう。その際には吹抜けの方位を見極めて配置しよう。エアコンはメンテナンスできる場所に取り付けるように注意を。
「例えば、キャットウォークのように2階を回廊にしておけば、メンテナンスしやすいですよ」
そして、風通しと採光が取れるよう高い位置に窓をつけることもポイントだ。
「窓は電動式で開閉できるようにすると便利。日差しを遮るためのブラインドやシャッターを取り付ける際も同様ですね。窓は庇を長くつくっておけばメンテナンスもそこまで必要ではありません」
「吹抜けによって2階部分の床面積が狭くなってしまいますが、吹抜け+リビング階段にして階段部分をスキップフロアにすれば、空間を広々と有効に使うことができるのでオススメです」
スキップフロアにすることで、LDKと緩やかにつながりながらゾーニングもでき、家族と円滑なコミュニケーションが取れる。
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それでは、吹抜けのメリットを活かした効果的なプランをいくつかご紹介していこう。
「1階に吹抜けをつくる場合は、同時にリビング階段を取り入れるとプランの相性は◎。家族とのコミュニケーションを図るという目的にもぴったり。リビング階段にしておくことで家族が帰宅した様子がわかるのも安心ですね。元々階段は上下階をつなぐ役割なので、吹抜けのようなもの。一緒にしてしまうことでスペースの有効活用になることも。リビング階段を上がったところにオープンなファミリーコーナーをつくると上下階が緩やかにつながり、会話も弾みますよ」
また、リビング階段と絡めて、スキップフロアにするという方法もある。2階上部の床面積がなくなる分、有効に使える空間が広がる。
「リビング階段の幅を広げて、階段に沿って本棚をつくってライブラリーとして利用するというアイデアも。階段を上り下りする移動場所としてだけでなく、過ごす場所として有効利用できます。階段の壁面を収納にできるので、収納スペースの課題もクリアするので一石二鳥です」
吹抜け上部にある子ども部屋や寝室などの個室に小さな窓を設けて、その窓を開ければ、1階にいる家族と顔を合わせることができるプラン。
「全てをオープンにしないことで、緩やかにつながることが可能になります。個室はきちんとつくりたいけど、家族とのつながりも持ちたいというケースにオススメですね」
キッチンとバスルームが上下階に分かれるときは、家事効率をアップさせるために吹抜けが効果的。例えば、キッチンが1階、ランドリースペースが2階にある場合には、洗濯機のアラーム音が1階にしっかり伝わるようにLDKを吹抜けをつくることで家事をスムーズにすることができる。また、2階のフリースペースはランドリースペースとして使用するケースも。
「一部天井を高くして絵や写真など趣味のアイテムを飾ってギャラリーにすることもあります。ディスプレーコーナーをつくる場合、通常のフロアに壁に飾ってしまうと圧迫感が出てしまうので、吹抜けにして少し視線を上にズラすことで抜け感が出るんです。みんなが集まるところに飾る楽しみもかなえられます」
「敷地の都合上採光を取るためや、3階建てなどの場合には2階リビングにすることも。家族のコミュニケーションを大事にしたい子育て世代であれば、玄関を吹抜けにして玄関の出入りの気配がわかるようにするアイデアも。玄関も明るく気持ちいい空間になります」
吹抜けは照明の選び方でグッとおしゃれな空間を演出することができる。
「意匠的におしゃれなのは上からつり下げるペンダントライト。ただ、大きな地震が発生したときには揺れるので注意が必要ですね。また、梁を利用したダウンライトは上を照らして間接照明にすると雰囲気たっぷりですよ。絵やアート作品などを吹抜け部分に飾りたいという場合は、ディスプレーしたものに照明が当たるように配置するとミュージアムのような佇まいを演出できます」
また、シーリングファンもインテリアに合わせてカラーやデザインをセレクトすると空間全体がコーディネートされて統一感が出る。照明とのバランスも考慮して選ぼう。
また、吹抜けにリビング階段を組み合わせる場合はリビング階段のデザインや壁面を利用してディスプレーコーナーをつくるとインテリアの幅が広がる。
吹抜けにする際に剥き出しになる梁を利用するアイデアも。お気に入りのアイテムをディスプレーしたり、アスレチックの要素を取り入れたりと、さまざまな楽しみ方ができる。
「また、吹抜けには薪ストーブも相性がいいですね。最近は薪を使わないエタノール暖炉などもありますが、吹抜けの抜け感との相性のいい設備ですね」
このように、吹抜けのメリットとデメリットやプランニングのポイントを押さえておけば、失敗することなく開放的な吹抜けを取り入れた住まいづくりができる。敷地条件などの課題の解決方法としてや、思い描いているライフスタイルが実現できるプランがあれば、吹抜けを取り入れてみよう!
吹抜けとは、1階部分の天井・2階部分の床を抜いた空間のことで、主にリビングや玄関、階段スペース部分に設けられることが多い
吹抜けは、開放的な空間を演出できる、通風・採光が取れる、家族のコミュニケーションが円滑になるというメリットがある
吹抜けのデメリットは、2階部分の床面積が狭くなることや、音やニオイが気になる場合も。また、断熱性・気密性の担保が必要
リビング階段やスキップフロア、玄関を吹抜けにして土間空間にするなど、さまざまな目的に合わせて吹抜けプランを取り入れられる
吹抜けを取り入れる際は、目的を明らかにして、気密性・断熱性や通風・採光面をしっかり考慮しよう