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建築基準法のほかにも断熱等級や耐震等級、長期優良住宅、ZEH、住宅性能表示制度など、住宅の省エネ性能や品質を示すさまざまな制度や基準があります。家を建てるときは、どんな制度や基準をクリアしなければならないのでしょうか。また、住宅の性能はどこまで上げればいいのでしょうか。一級建築士の関尾英隆さんにお話を伺い、制度や基準、重視すべきポイントについて解説。クリアすることで得られる補助金などのメリットについても紹介します。
断熱性や気密性の向上や、窓からの日射の遮蔽(しゃへい)、高効率給湯器などの住宅設備の導入で実現する省エネ性能の高い住宅。夏は涼しく冬は暖かい快適な住空間や光熱費の削減が叶います。それだけではなく、地球温暖化によるリスクを低減するため、世界共通の目標としてCO2排出実質ゼロを目指すカーボンニュートラル実現のためにも、住宅の省エネ性能の向上は欠かせません。
住宅を建てるときは法律に定められたさまざまなルールを守らなければなりません。建築基準法のほか、「建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)」では、建物の省エネ基準が設けられています。建築物省エネ法に基づく省エネ基準は1980年に設けられて以降、改正によって段階的に強化されています。
2025年4月から工事する住宅は新築住宅の省エネ基準適合が義務化され、家を建てる場合は以下の基準をクリアする必要があります。
断熱等級4は、どのような省エネ基準なのでしょうか。
断熱等級は現在、1から7までの等級があり、数字が大きいほど省エネ性能が高くなります。等級4は2022年3月までの最高等級でしたが、2022年4月に等級5、2022年10月に等級6、等級7が新設。2025年度以降は、等級4が家を建てるための最低基準となりました。なお、断熱等級4は【フラット35】を利用するための要件にもなっています。

一次エネルギー消費量等級とは、住宅が1年間に消費するエネルギーの効率を数値化した基準。2025年以降は等級4以上が義務化となっています。等級が上がるほど省エネ効率は高くなります。
家を建てるときの省エネ基準は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、今後も厳しくなります。2030年度には、断熱等性能「等級5(ZEH水準※)」が最低基準となることが決まっています。また、一次エネルギー消費量等級については、現在の最高等級でありZEH水準である「等級6」の上に、等級7、等級8の新設が予定されており、2030年までには「等級6」を「等級1」に再整理することが審議されています。
※ZEHとは:Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略。省エネと創エネで年間エネルギー消費量をゼロ以下にすることを目指す住宅
| 断熱等級 | 相当する他の省エネ基準 |
|---|---|
| 等級7 | HEAT20 G3 |
| 等級6 | HEAT20 G2 |
| 等級5 | ZEH 長期優良住宅 |
| 等級4 | 平成11年 次世代省エネ基準 |
| 等級3 | 平成4年 新省エネ基準 |
| 等級2 | 昭和55年 旧省エネ基準 |
| 等級1 | ― (昭和55年基準に満たないもの、無断熱) |
今、新築住宅を建てるなら、断熱等級4の省エネ性能があれば十分なのでしょうか?
「断熱等級4は家を建てるために必要な最低基準。断熱等級5以上に比べると寒さや暑さへの快適性能は低く、光熱費もかかります。2030年度以降は断熱等級5以上が義務化されますから、住宅としての価値が下がり売却もしにくくなります。また、将来的には断熱等級6以上が最低基準になる可能性もあるでしょう。ですから、断熱等級6を目指した家づくりが望ましいと考えています」(関尾さん、以下同)
断熱等級についてもっと詳しく読む
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耐震等級とは『住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)』が定める『住宅性能表示制度』での、住宅の品質にかかわる基準の一つ。住宅の耐震性能を等級1~3の3段階で示し、等級の数字が大きいほど耐震性能は上がります(下表参照)。審査を受けて耐震等級を取得する義務はありませんが、現行の建築基準法に沿って建てられた家は耐震等級1をクリアしていることになります。
| 等級 | どんな水準? | どれくらいの耐震性? |
|---|---|---|
| 耐震等級1 | 現行の建築基準法(2000年基準)を満たす水準 | 建築基準法×1倍 震度5程度までは軽微なヒビ程度にとどまり、震度6強でも即時に倒壊・崩壊しない ※最低限、命を守れる耐震性 |
| 耐震等級2 | 長期優良住宅認定基準 病院や学校など避難所に求められる水準 |
耐震等級1×1.25倍の耐震性 |
| 耐震等級3 | 現在の最高基準 消防署や警察署など防災拠点となる建物に求められる水準 |
耐震等級1×1.5倍の耐震性 |
建築基準法や耐震基準は、大きな地震が起こるごとに進化してきました。1995年の阪神・淡路大震災の際、新耐震基準で建てられた建物にも多くの被害が出てしまったことを背景に、2000年6月に改正された建築基準法では、木造住宅の耐震性が大幅に向上しています(2000年基準)。2000年6月以降に建築確認申請が行われた建物は、震度6強でもすぐには倒壊・崩壊しない耐震等級1の水準ということになります。
下のグラフは、2024年に起きた能登半島地震での木造建築物の被害状況。2000年以前に建てられた木造の建物に比べて、2000年基準(最低基準が耐震等級1)の建物は無被害の割合が大きくなっています。

では、耐震等級1の耐震性があれば安心なのでしょうか。
「耐震等級は基準であって、大きな地震があったときの実際の被害状況は地盤の強さによって異なります。強い地盤では無被害の耐震等級1の家でも、軟弱な地盤では被害を受けるかもしれません。地震が繰り返されると倒壊する可能性も考えられます。家族の命を守り、住み続けられる家にするためには耐震等級3をクリアすることが望ましいといえます」
家族の命や財産を守るためには大きな地震があっても住み続けられる耐震性能が重要。そして、今だけでなく、将来の省エネ水準もクリアしておくことも大切です。
耐震性は建築基準法に沿った耐震等級1、省エネ性は2025年度から最低基準となった断熱等級4をクリアしていれば家を建てることはできます。しかし、安心と快適を目指すなら選択したいのはもっと上の基準。
「施工もメンテナンスもしっかりした耐震等級3が命や財産を守れる家。断熱等級も快適性やランニングコストを、住まいの将来性を考えると等級6を目指したいところです」

断熱等級や耐震等級のほかにも、住宅の性能を示す基準や制度があります。ここでは、主な基準や表示制度をおさらいしておきましょう。補助金や節税などについても紹介します。
長期優良住宅とは、長期にわたって良好な状態で暮らせる家。長期優良住宅認定制度の基準をクリアし、認定を受けた家が「長期優良住宅(認定長期優良住宅)」と呼ばれます。新築一戸建ての場合は、耐震性、省エネルギー性、居住環境、維持保全計画、維持管理・更新の容易性、劣化対策、住戸面積、災害配慮に要件が設けられています。基準をクリアする家を建てるためには、早い時期に建築会社に相談することが必要です。
低炭素住宅とは二酸化炭素の排出を抑える仕組みや設備を採用した、環境への配慮が認められた住宅のこと。認定を受けることで「低炭素住宅(認定低炭素住宅)」とされます。
「低炭素住宅の床面積の要件は50m2以上。床面積が長期優良住宅の要件を満たさない新築住宅でも、低炭素住宅の認定を受けることで住宅ローン控除や補助金などのメリットを受けることが可能になります」
一般の省エネ住宅に比べて、長期優良住宅、低炭素住宅に認定されると、登録免許税の税率の軽減(2027年3月末までに登録の場合)が受けられます。また、長期優良住宅の場合は、不動産取得税の控除額の増額(2026年3月末までに取得の場合)、固定資産税の減税措置の適用期間の延長(2026年3月末までに新築の場合)の節税メリットがあります。
長期優良住宅、低炭素住宅は住宅ローン控除を受ける際、一般の住宅よりも所得税・住民税から控除される限度額が大きくなるメリットもあります。2025年入居の場合、子育て世帯・夫妻のいずれかが40歳未満の若者夫婦世帯は最大455万円、そのほかの世帯は最大409.5万円が13年間の合計額です。
また、住宅ローンを利用しない場合でも所得税の優遇措置(投資型減税)の対象になります。
【フラット35】では、借入金利が一定期間引き下げられる【フラット35】Sを利用することができます。長期優良住宅などの「環境配慮型住宅」に対して、金利優遇を適用する民間の金融機関も多くあります。
2025年の子育てグリーン住宅支援事業では、GX志向型住宅に対して160万円、長期優良住宅に対して80万円、ZEH水準住宅に対して40万円の補助金が得られます。2024年度に実施された「子育てエコホーム支援事業」では、補助金を受けることが出来たのは「子育て世帯」と「若夫婦世帯」だけでしたが、2025年度からは対象住宅に「GX志向型住宅」が加わり「すべての世帯」が対象となりました。
住宅性能表示制度とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」にもとづく制度。住宅の性能を第三者機関が耐震性や省エネ性、耐久性などの性能を評価し、等級や数値で表示します。評価は、設計段階での「設計住宅性能評価」と、工事中・工事完了後に評価される「建設住宅性能評価」があります。
住宅性能評価書(新築および既存)を取得すると、評価された耐震性能の等級に応じて地震保険料の割引を受けることができます。
【フラット35】では耐震性、省エネルギー性、バリアフリー性、耐久性:可変性のいずれかが所定の等級以上であれば借入金利が一定期間引き下げられる【フラット35】Sを利用することができます。また、住宅性能評価書を取得していれば物件検査の一部を省略できます。
設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書を取得した新築住宅・中古住宅は、建築会社などとトラブルになった場合に建築士や弁護士による電話相談や対面相談などが無料で受けられるほか、指定住宅紛争処理機関(全国の弁護士会)に紛争処理を申請することができます。紛争処理の手数料は1件1万円です。
BELSとは、国が定める省エネ性能表示制度に対応した制度の一つです。建物の一次エネルギー消費量などをもとに、第三者機関が客観的に評価・格付けを行います。評価は5段階の星マークで表示され、星の数が多いほど省エネ性能が高いことになります。BELSの評価を受けた住宅は、省エネ性能ラベルのほか、省エネ性能に関する詳細を記載した評価書が発行されます。
第三者機関が評価するBELSによる省エネ性能は信頼性が高く、省エネ性能ラベルや評価書の存在は、将来、家を売却する場合のアピールポイントになります。
借入金利が一定期間引き下げられる【フラット35】Sの、省エネルギー性の確認書類としてBELS評価書が認められています。また、2025年の子育てグリーン住宅支援事業の補助金対象を証明する書類としてもBELS評価書が認められています。

耐震性能や断熱性能を最低基準よりも高い性能にアップさせたり、さまざまな制度の認定を受けたりするためにはコストがかかります。お金をかけても、耐震性能や断熱性能はアップさせて、各種制度は認定を受けたほうがいいのでしょうか。
「耐震等級を3にする場合、等級1と比べてどれくらい費用がかかるかというと、建築費用が倍になるわけではありません。おそらく、一般的な規模の木造一戸建てで数十万円の差でしょう。断熱等級も等級4の家と比べると等級6の家は建築コストのアップは100万円程度。しかし、光熱費は年間7.5万円のコストダウンが見込めます。
住宅性能表示制度や長期優良住宅なども取得しておけば、住宅性能について第三者のお墨付きがあるということで、将来売却するときは有利になります。もちろん、補助金や減税などのメリットも受けられます」
| 断熱等級 | UA値 (W/m2k) |
断熱等級4の住宅とのコスト比較 | |
|---|---|---|---|
| 建築コスト | 光熱費コスト/年 | ||
| 等級7 | 0.26 | +300万円 | -12.5万円 |
| 等級6 | 0.46 | +100万円 | -7.5万円 |
| 等級5 | 0.6 | +50万円 | -2.5万円 |
| 等級4 | 0.87 | ー | ー |
断熱性能も耐震性能も設計上の要件をクリアするだけでなく、施工のクオリティーが重要。例えば、断熱性能は、断熱性だけでなく気密性が重要。隙間なく断熱をし、気密性を確保しなければせっかくの断熱材の性能を発揮できないばかりか壁体内結露が発生してしまい、構造部分を腐らせ、住まいの耐久性や耐震性を落としてしまいます。
では、家づくりのパートナーを選ぶとき、しっかりとした技術力のあるハウスメーカーや工務店はどうやって探せばいいのでしょう。
「ハウスメーカーにも工務店にも得意分野、不得意分野があります。『断熱等級6以上でしか施工しません』 といったアピールしている会社は、断熱性の高さの重要性を理解して施工に取り組んでいる会社です」
自社の施工現場をブログやSNSで公開している会社も自社の施工技術に自信を持っているといえます。
「『断熱材を入れているところを見せてもらえますか?』など、施工現場の見学を希望してみるといいでしょう。こころよく見せてくれるのは技術に自信がある会社です」
「新住協(新木造住宅技術研究協議会)やパッシブハウス・ジャパンなど、高性能な家づくりを研究し、普及に努めている団体に加入して、勉強を続けている会社かどうかもポイントです。重要なのは、会員になっているだけでなく、その団体での実績や認定があるかどうか。各団体のホームページで確認しておくといいでしょう」

2025年4月から新築建築物は省エネ基準の適合が義務化された
断熱性能は断熱等級4が最低基準。耐震性能は建築基準法の最低基準が等級1
将来の省エネ基準や大地震に備えるためには断熱等級6、耐震等級3を目指したい
住宅性能や品質をクリア、または認定を受けることで減税や金利引き下げ、補助金などのメリットがある
住宅の性能は施工力が重要。高性能な家づくりを目指すハウスメーカー、工務店を探そう