長期優良住宅とは?認定基準や条件は? 申請するとどんなメリットがあるの?

最終更新日 2024年09月30日
長期優良住宅とは?認定基準や条件は? 申請するとどんなメリットがあるの?

住宅の広告などで「長期優良住宅」という言葉を見たことがあるだろう。これは、長期にわたって安心・快適に住み続けられる家。住宅ローンの金利や税制面でのメリットも多い。長期優良住宅のメリットだけでなくデメリットやそのほかにも知っておきたいポイントを、建築家の佐川旭さんに聞いた。

長期優良住宅とは?

長期優良住宅認定制度の基準をクリアした家

長期優良住宅は、長く安心・快適に暮らせる家。平成21年(2009年)にスタートした「長期優良住宅認定制度」の基準をクリアし、認定を受けている家が「長期優良住宅」と呼ばれている。新築一戸建ての場合、下のイラストにある項目が主な認定基準だ。

長期優良住宅認定基準(新築一戸建ての場合のイメージ図)
イラスト

・耐震性
極めてまれに発生する地震に対し、継続して住むための改修の容易化を図るため、損傷レベルの低減を図ること(耐震等級2以上または免震建築物など)
(耐震等級2は建築基準法の耐震等級1の1.25倍)

・省エネルギー性
次世代省エネルギー基準に適合するために必要な断熱性能などを確保していること(省エネルギー対策等級4以上)
(等級4は平成4年基準の等級より1.5~2.3倍程度断熱性能がアップ)

・居住環境
良好な景観の形成や、地域おける居住環境の維持・向上に配慮されていること

・維持保全計画
定期的な点検、補修等に関する計画が策定されていること

・維持管理・更新の容易性
構造躯体に比べて耐用年数が短い内装や設備について、維持管理を容易に行うために必要な措置が講じられていること

・劣化対策
数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること(床下空間330mm以上確保、劣化対策等級3相当)

・住戸面積
一戸建ては75m2以上、少なくとも一つのフロアの床面積が40m2以上あること

税制にはどんなメリットがあるの?

住宅ローン控除の控除額が13年間で最大455万円に

長期優良住宅は住宅ローン控除や税金にもメリットがある。住宅ローンを借りて新築住宅を建てたり買ったりした場合に、年末ローン残高の0.7%が13年間、所得税と住民税から控除される住宅ローン控除(住宅ローン減税)。長期優良住宅の場合、控除限度額の13年間の合計額は最大455万円にもなる。住宅ローン控除の対象住宅の中では最も高い金額だ。

※最大額455万円は、子育て世帯(子の年齢19歳未満)と、夫・妻のいずれかが40歳未満の夫婦世帯が対象。その他の世帯は409.5万円

・税制について詳しくはこちら
・住宅ローン控除の情報について詳しくはこちら

登録免許税や不動産取得税、固定資産税などの税金にもメリットがある

長期優良住宅は、住宅ローン控除をはじめ登録免許税や不動産取得税、固定資産税などの税金でも軽減が受けられる。下の表を見てみよう。

一般住宅と長期優良住宅の税の特例措置(新築住宅の場合)

・所得税(住宅ローン控除)<長期優良住宅は限度額が引き上げられる>

住宅の種類 控除対象になる年末ローン残高の最大限度額※ 13年間の控除限度額の合計
省エネ基準適合住宅 4000万円 409.5万円
長期優良住宅 5000万円 455万円

※子育て世帯(子の年齢19歳未満)と、夫・妻のいずれかが40歳未満の夫婦世帯が、2024年1月1日~2024年12月31日に住宅を取得し、入居する場合の最大限度額。その他の世帯は省エネ基準住宅3000万円・長期優良住宅4500万円で、その分13年間の合計額も少なくなる。
※控除限度額(最大限度額x控除率0 7%)がその年の所得税等を超える場合は、所得税等の額が控除額となる。

・所得税(投資型減税)<長期優良住宅が利用できる>

住宅の種類 特例措置の内容
長期優良住宅 長期優良住宅の認定を受けるための標準的な性能強化費用相当額(上限650万円)の10%を、その年の所得税から控除

※2025年12月31日までに入居した場合。住宅ローン控除との併用はできない

・登録免許税<長期優良住宅は税率がさらに引き下げられる>

住宅の種類 税率
一般住宅 保存登記 0.15%
移転登記 一戸建て 0.3%
     マンション 0.3%
長期優良住宅 保存登記 0.1%
移転登記 一戸建て 0.2%
     マンション 0.1%

※2027年3月31日までに登録した場合

・不動産取得税<長期優良住宅は課税標準から控除される金額が増える>

住宅の種類 控除額
一般住宅 1200万円
長期優良住宅 1300万円

※2026年3月31日までに取得した場合

・固定資産税<長期優良住宅は税額が1/2に減額される減税措置の適用期間が延長される>

住宅の種類 減税措置の適用期間
一般住宅 一戸建て 3年間
マンション 5年間
長期優良住宅 一戸建て 5年間
マンション 7年間

※2026年3月31日までに新築した場合

長期優良住宅は住宅ローンが低金利で借りられるって本当?

【フラット35】Sで金利が当初5年間引き下げられる

住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して貸し出す【フラット35】。良質な住宅なら、さらに低い金利が一定期間適用される【フラット35】Sと、維持管理などに配慮した住宅に適用される【フラット35】維持保全型が併用でき、当初5年間0 75%の金利引下げが受けられる。

一般住宅と長期優良住宅、毎月返済額はどう違う?

・借入額4500万円(融資率9割以下)、35年返済、元利均等返済、ボーナス返済なし、2024年3月の最多金利で試算、新機構団信付き

一般住宅 【フラット35】 長期優良住宅【フラット35】S(金利Aプラン)
借入金利 全期間 1.84% 当初5年間 1.09%
6年目以降 1.84%
毎月返済額 14万5400万円 当初5年間 12万8925万円
6年目以降 14万3123円
総返済額 約6107万円 約5926万円

【フラット50】の利用や地震保険料が割引されることも

また、長期優良住宅は【フラット50】が利用可能。これは、返済期間最長50年で、将来、住宅を売却することになった場合、購入者に住宅ローンを引き継ぐことができるもの。そのほか、高い耐震性をクリアしているため、地震保険料では耐震等級に応じた割引率が適用になるメリットもある。

長期優良住宅の認定を受けるデメリットはある?

着工前の申請や完成後の点検などさまざまな手間がかかる

メリットも多い長期優良住宅だが、認定を受けるためには、施主か建築会社などが着工前に申請を行う必要がある。家が完成してからも10年以内ごとに30年以上の間、点検や必要に応じた修繕、改良をし、その記録を作成・保存することになる。長期優良住宅は認定を受けたあとも、住宅の維持保全のためのいろいろな手間がかかるのだ。

長期優良住宅認定手続きの仕組み
イラスト
上の図は、長期使用構造等確認をあらかじめ登録住宅性能評価機関に依頼する場合。長期優良住宅の認定を受けるための申請は着工前までに行う必要があるため、申請に関する詳細は建築会社や市役所や所管行政庁に早めに問合せを。

長期優良住宅の認定を受けるために費用がかかる

コストもかかる。認定を受けるために長期使用構造等確認や認定手数料で5万~6万円程度が目安。さらに、耐震性や断熱性能を向上させるためのコストも必要になる。
「建築会社によって標準仕様は違うため、いくらかかるかは一概にはいえませんが、一般的には長期優良住宅の認定基準を満たすために建築費は1.2~1.3倍程度になると考えられます」

長期優良住宅の認定を受けていない住宅はだいじょうぶ?

気になる耐震性や省エネ性。最近の住宅は安心なケースが多い

長期優良住宅認定制度が普及してくると、心配なのは認定を受けていない住宅の安全性や快適性だ。
「近年、大手ハウスメーカーはコンプライアンスを守るために、性能の良い住宅づくりに力を注いでいます。設計事務所や建築家、工務店も、長期優良住宅の認定を受ける受けないにかかわらず、耐震性、バリアフリー性、省エネ性に配慮した家づくりをしているところが多いといえます。また、屋根材や外壁材の軽量化で耐震性がアップするなど、建材の進化が住宅の質を向上させています」

つまり、長期優良住宅の認定を受けていなくても安全・快適な家は実現できる。ただし、重要なのは完成後のメンテナンスだ。
「家づくりは建てて終わりではありません。定期的な点検や間取りの変更、設備更新などが重要。また、居心地の良さを保つには家族構成や暮らし方の変化に応じて間取りを変えやすいことも大切といえます」

一般住宅も良質な今、長期優良住宅を選ぶポイントは?

手間もコストもかかる長期優良住宅。十分に性能の良い一般住宅が多い今、何をポイントに長期優良住宅を選ぶかを決めればいいのだろう。
「今後、その家に何年住むことになるかを考えてみましょう。若いうちに建てて40年、50年住む、または子どもや孫に引き継いでもらうなら、長期優良住宅で暮らすのが安心。しかし、自分たちの代だけで取り壊しや建て替えになるならコストをかけてまで認定を受けなくてもいいかもしれません」

住宅の質や税制面でメリットの多い長期優良住宅だが、認定を受けていない一般住宅も最近は質が高い家が多い。注文住宅を建てるときは、メリットだけでなく手間やコストも知ったうえで認定を受けるかを検討しよう。

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取材・文/田方みき イラスト/平澤南
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