10階建て程度の一般的なマンションでは中層階にあたる5階の住戸。6階、7階住戸と同様に、低層階よりも人気がある高さです。しかし、中層階なら心配ないと思ったゴキブリなどの虫が出たり、周辺環境によっては眺望や採光に難があったり。後悔しないよう物件選びのポイントを解説します。不動産仲介の経験も豊富な不動産エージェントの山本直彌さんに話を聞きました。
建物の低層階、中層階、高層階、という言葉には法的なルールや定義はありません。
「一般的には、建物の階数を3分割して上から3分の1を高層階、下から3分の1を低層階、その間を中層階とする傾向があります」(山本さん、以下同)
つまり、マンションの5階住戸は20階建てのタワーマンションなら低層階になりますが、10階建てのマンションなら中層階に当たります。
1~2階などの低層階に比べると眺望などが期待できそうなのが5階の住戸。マンションの5階は地面から何メートルくらいの高さにあるのでしょうか?
「マンションの場合、1フロア当たりの住戸の高さは平均3mです。5階の住戸の床面は地面から約12mの高さ。天井の高さは、上の階の床下のコンクリートの厚さがあるため14.5m~14.8mの高さになります」
6階の住戸の場合は、床は地面から約15m、天井は約15.5m~17.8m。7階の住戸は、床は地面から約18m、天井は約20.5m~20.8mということになります。
マンションは上層階になるほど分譲価格が高くなる傾向があります。
「新築分譲マンションの場合、例えば、『1階上がるごとに約50万円高くなる』という設定の場合、5階と7階では、5階の方が100万円安いというイメージです。ただし、賃貸マンションの場合は、分譲マンションのような差はあまり見られず、タワーマンションの20階と5階では5階の方が安くなりますが、5階と6階、7階では賃料に大きな差はない傾向にあります」
なお、1フロアごとの価格差は物件のグレードやエリア、立地条件などによって幅があり、なかには100万円以上の差がある場合もあります。
新築分譲マンションを購入する場合、10階、20階を選ぶよりも、5階を選ぶ方が同じ広さや方角でも安い価格で購入することができます。共用施設や管理サービスが充実したマンションでは、価格のおトク感をより感じることができます。
「上層階に比べて低い位置にある住戸の価格は安いですが、コワーキングスペースやキッズスペース、宅配ボックスや駐車場、コンシェルジュサービスなどの共用設備や共用施設、管理サービスなどは上層階と同じように利用することができます。これらのサービスや設備、施設は低層階に設けられているケースが多く、住戸から気軽に行けて使いやすいというメリットもあります」
階数 | 地面からの床の高さ | 5階との価格差 ※1フロア上がるごとに50万円増の場合 |
---|---|---|
5階 | 約12 m | ― |
6階 | 約15 m | 5階の価格に+50万円 |
7階 | 約18 m | 5階の価格に+100万円 |
8階 | 約21 m | 5階の価格に+150万円 |
9階 | 約24 m | 5階の価格に+200万円 |
10階 | 約27 m | 5階の価格に+250万円 |
11階 | 約30 m | 5階の価格に+300万円 |
12階 | 約33 m | 5階の価格に+350万円 |
13階 | 約36 m | 5階の価格に+400万円 |
14階 | 約39 m | 5階の価格に+450万円 |
15階 | 約42 m | 5階の価格に+500万円 |
16階 | 約45 m | 5階の価格に+550万円 |
17階 | 約48 m | 5階の価格に+600万円 |
18階 | 約51 m | 5階の価格に+650万円 |
19階 | 約54 m | 5階の価格に+700万円 |
20階 | 約57 m | 5階の価格に+750万円 |
「マンションの5階は地面から約12mの高さですが、エントランスホールの天井が高いデザインのマンションの場合は、住戸はさらに高い位置にあります。電線は約10mの高さにあることが多いため、4階住戸の場合は1階のエントランスホールの天井の高さによって、窓から電線が見えるか見えないかが違ってきます。しかし、5階以上の高さになれば気にならないケースが大半でしょう」
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同じ広さ、同じ方角の上層階の住戸に比べると、割安な価格で購入できるのがマンションの5階住戸の良さ。人気の理由はそれだけではありません。5階には価格以外にもメリットとなる住み心地の良さがあります。
その一つが、人通りの多い道路に面していても、道路からの視線や人の気配が気にならないこと。5階や6、7階のバルコニーや窓を下から見上げたときに、どのように見えるものなのか、検討中のマンションがあれば現地へ行って自分の目で確かめてみることをおすすめします。バルコニーに面した部屋は突き出しているバルコニー部分やフェンスが目隠しになり、バルコニーのある部屋はカーテンがかかっていなくても部屋の中まではあまり見えないものです。
ただし、周辺に同じような高さや、もっと高層のマンションやビルが立っている場合、距離によっては視線が気になるため、カーテンなどで遮る必要があります。
周囲にどれくらいの高さの建物があるか、その建物とはどれくらい距離が離れているかなどによりますが、1階や2階の住戸に比べると、窓からの眺望や彩光、通風などの良さが期待できます。
地震や火災などの災害時、マンションのエレベーターは停止するため階段を使って避難をすることになります。5階~7階の住戸は居住者の体力や健康状態によりますが、上層階にくらべれば避難がしやすい高さといえそうです。ただし、小さな子どもや高齢の方、体の不自由な方がいる場合、避難するにはサポートがあるほうが安心です。
多くのマンションは、オートロックや防犯カメラ、管理員による監視などによるセキュリティに守られています。5階~7階の高さなら、窓やバルコニーからの侵入犯に狙われる可能性も低層階より低く、防犯面での安心感が高いといえます。
とはいえ、マンションには居住者以外にもさまざまな人が出入りします。大規模なマンションの場合、居住者同士でも面識がない場合が多く、普段見かけない人が棟内にいても、不審に感じることがなかったりします。居住者が出入りするタイミングで侵入犯がマンション内に入り込む可能性もありますから、中層階、上層階であっても注意は必要です。ゴミ出しやポストの確認など、短時間の外出でも必ず施錠をするようにしましょう。
マンションは気密性が高く、1階の住戸でも玄関と外の間にエントランスや廊下があるため、木造一戸建てに比べると虫は入ってこないイメージがあります。特に、5階や6階、7階の高さになれば、虫の心配は不要なのでは?と期待してしまいます。
しかし、残念ながらマンションでも虫は入ってきます。
「専用庭や敷地内に植えられた植栽が近い1階住戸や、外壁を登ってくる虫や窓から飛んでくる虫がいる2~3階住戸に比べると、4~5階以上の高さの住戸では虫は格段に減ります。しかし、虫が入ってこないわけではありません。窓から飛んでくる虫もいますし、排水管を伝ってきたり、エレベーターに乗ってきたり。外から帰ってきた人の洋服や荷物にくっついて侵入する虫もいます。タワーマンションの高層階であっても虫の侵入はゼロではありませんから、5階、6階、7階の住戸でも虫は入ってくるものと思っていたほうが良いでしょう」
マンションの購入や、賃貸で借りる際に確認しておきたいのが地震の時の揺れや津波のリスク。
「マンションでは高層階ほど揺れるといわれますが、それはあくまでも一般的な傾向です。1階住戸に比べた場合の5階~7階の実際の揺れは、建物が耐震構造、制震構造、免震構造のどれなのか、地盤の硬さはどうなのかによって異なります。揺れを伝えない免震構造でも地盤によっては揺れを感じることがあります」
物件選びの際にはモデルルームの担当者や不動産仲介会社に耐震性能を確認すること、また、各自治体が公表しているハザードマップを確認することが大切。ハザードマップでは、最大規模の降雨の場合の浸水想定区域や浸水の深さ、津波が起きた場合に想定される高さ、揺れやすい地盤かどうかなどを調べることができます。
5~7階の住戸は10階、20階といった上層階の住戸に比べて価格が安いメリットがあります。また、1~4階に比べると価格は高めでも防犯面での安心感や虫が入ってきにくいこと、電線が気にならないなど眺望の点でのメリットもあります。将来、売却する可能性があるなら、これらのメリットをアピールできる物件を選ぶこと。つまり、将来、同じ棟内の高層階が同時に売り出されても価格差をつけて売り出すことができる住戸、割安な低層階が売り出されても5~7階ならではの眺望や採光、通風の良さを活かせる住戸を選ぶことが大切です。
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マンションを購入する場合、借りる場合は、必ず現地へ足を運び、実際の建物や部屋を確認することが重要です。新築マンションはまだ建物ができていないこともありますが、それでも周辺環境のチェックは大切。
例えば、眺望や採光、通風の良さが期待できる5階や6階、7階ですが、実は周辺の環境によっては日影になる時間帯が長かったり、あまり通風が良くなかったりということがあります。それを確認できるのが現地での周辺環境のチェック。
「5階建てやそれ以上の高さのマンションがあるエリアには、近隣に同様の高さ、それ以上のマンションやビルが建っている、これから建てられる可能性があるということです。採光や通風は周辺の建物の位置や距離が影響します。距離が大きく離れていれば心配はないのですが、高層の建物が近接している場合は部屋の中が暗い、風通しが悪いなど住み心地に影響する問題点が出てくることがあります」
また、夏に物件見学をした時には室内は明るかったのに、住み始めて冬が来たら日差しが入らず、家の中もジメジメする…というケースも。
「太陽が通る高さは季節によって異なります。夏は空の高いところを通るため日差しが入っても、冬になると空の低い位置からの日差しが近隣の建物に遮られてしまうことがあります。新築でも、中古でも、周辺の建物の位置や距離を現地で確認することが必要。新築でまだ建物ができていない場合も、現地の様子を見て、モデルルームの担当者や不動産仲介会社に確認をとるといいでしょう」
採光の良さが夏の暑さというデメリットになることもあります。タワーマンションが多いエリアでは、物件や住戸によっては強すぎる日差しを遮る遮熱シートが窓に貼られていることがあります。低層階でも、強い西日が入る西向きの部屋でカーテンやブラインドを閉めっぱなしというケースも。近隣に太陽の熱を防ぎながら暮らしている住戸を見つけたら、検討しているマンションの窓の外の環境と比較しておきましょう。
幹線道路沿いのマンションで気になるのが排気ガス。ニオイが部屋まで入ってきたり、外干しをした洗濯物に黒い汚れがついたりするのは嫌なもの。
「排気ガスの影響は上層階にいくにしたがって少なくなります。しかし、5階あたりの高さの住戸では影響を受けることも。中古マンションなら外壁や24時間換気の換気口周辺に黒ずみ汚れがないかを見ておきましょう。新築マンションの場合は、周辺の建物の外壁を見て排気ガスの影響を受けていないかを確認するといいでしょう」
マンションの5階の床の高さは約12m。窓からの眺望で電線が気にならない高さ
5階建てやそれ以上の高さの建物が近くになければ眺望や採光、通風が期待できる
上層階よりも価格が割安で、上層階同様に共用設備などが利用できるコスパの良さが人気
5階、6階、7階でもゴキブリや蟻、蚊など虫の侵入はゼロではない
住み心地は周辺環境にも左右されるので必ず現地で確認をしよう
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