テラス付きマンションとは 『庭付き一戸建て』感覚を楽しめる使い方やメリット・デメリット

最終更新日 2024年05月21日
テラス付きマンションとは 『庭付き一戸建て』感覚を楽しめる使い方やメリット・デメリット

マンションの部屋を選ぶときに、「一階だから」という理由でテラス付き物件を排除してはいませんか?そもそも、テラスは意味はどのようなものなのでしょうか。また、マンションの中でも、限られた戸数しかない貴重なテラス付き住戸の魅力や、実際にテラスがあればどんな暮らしができるかを、ハコリノベのチーフコーディネーター 小西昌子さんに教えていただきました。

マンションの「テラス」とはどんな場所?庭付きマンションとの違いは?

ベランダやバルコニー、ルーフバルコニーとの違いとは

よく似た印象を受ける名称ですが、一般的には以下のように分類されます。

●テラス
石やコンクリートブロックを敷いて地面よりも一段高くした屋外スペースのこと。屋根の有無は関係ないが、2階のベランダの床が屋根になっていることが多い。掃き出し窓や扉をはさんで室内と、庭があれば庭とつながり、屋内と屋外をつなぐ中間的スペースとなっている。傾斜地に建てられた階段状のマンションの場合は、1階以外にも存在することがある。

●ベランダ
住戸の外壁から外にせり出していて、ある程度の雨風をしのげる屋根や庇(ひさし)があるスペースのこと。一般的なマンションの屋外スペースの多くがベランダにあたる。

●バルコニー
屋根や庇(ひさし)がないベランダのこと。屋根がない分、ベランダよりも日当たりがよく開放感がある。形状により、「ルーフバルコニー」や、物干しや家事空間として利用される比較的小さい面積の「サービスバルコニー」などの種類がある。

●ルーフバルコニー
バルコニーのうち、下階の屋根(ルーフ)を床として利用したもの。最上階に、通常のベランダやバルコニーよりも広く造られることが多い。

ただし、ベランダもバルコニーも法的に定義された言葉ではありません。「ベランダよりもバルコニーの方がおしゃれなイメージがする」といった理由で、一般的にはベランダに当たるスペースをバルコニーと呼ぶ場合もあります。図面だけで判断せず、必ず現地で実際の形状を確認しておきましょう。

マンションの屋外空間にはさまざまなタイプがある
テラス、ベランダ、バルコニー、ルーフバルコニー、屋上テラスの図
それぞれに使い勝手や快適さが異なるので、どのタイプに当たるのか必ず現地や建物全体の図面で確認しよう

庭付きマンションの「専用庭」とはどう違う?

マンションの専用庭とは、その住戸の居住者だけが使える小さな庭のこと。主に1階住戸に付いています。使えるのはその部屋の居住者だけですが、基本的には共用部分になるので、管理規約で定められた使い方しかできません。管理費とは別に専用庭使用料がかかる場合がほとんどです。

その専用庭と室内との間の、上階のベランダの床が屋根になるあたりに、石やタイルやブロックを敷いて、庭より一段高くしたスペースがテラスになります。

リビング→テラス→専用庭へとつながる「テラス付きマンション」
テラス付きマンションの実例写真
大半のテラスは、上階のベランダが屋根となる部分につくられている(画像提供/PIXTA)

マンションの「テラス」でできること・できないこと

テラス付きマンションでできること。どんな暮らしができる?

テラス付き住戸の一番の特長は、「庭とつながっていること」。また、リビングやダイニングの窓から出入りできるようになっている場合が多く、窓を開ければ、部屋の床がそのまま延長したような広がりと開放感が得られます。テラスは上階ベランダの床が屋根となっている場合が多く、多少の雨や強い日差しも防げます。一般的な住戸であれば、ベランダでザバザバと水を使って掃除やガーデニングはできませんが、下階のないテラス付き住戸ならそれが可能。ベランダよりももっと自由でのびのびとした暮らし方が可能です。ほかにも、たとえばこのようなことができます。

・土いじり、お砂場遊びなど、「庭のある暮らし」ができる

・外気や日差しを浴びながら、お茶や軽食が楽しめる

・本格的なガーデニングや家庭菜園ができる

・水撒きやプール遊びも、思う存分楽しめる

・ペットの軽い運動ができる(※ペット可のマンションの場合)

・大きめの収納を置いて、室内の空間を広く使うことができる

・真上からの日差しを受けながら、ふとんや洗濯物を干せる

・大規模修繕の際に、テラスに置いているものを庭で保管できる

「『ちょっと外に出る』ことで得られる開放感は思った以上に大きい……コロナ禍の際にそう気づかれた方も多いのではないでしょうか。人は、地面に近い方が落ち着きを感じられるものですし、小さな子どもさんには、家庭で安全に『土遊び』ができることで情操教育上も利点があるはず。親にとっては、子どもの足音などで余計なストレスを感じずに暮らせるというメリットも大きいでしょう。規約次第ですが、テラスにペットを出すこともできます。1階限定でマンションを探される、子どもやペットのいるご家族は多いですよ」(小西さん)

テラスと専用庭があれば、本格的なガーデニングや家庭菜園が楽しめる
テラスでガーデニングを楽しむイメージ写真
ベランダやバルコニーでもプランター等を使ってガーデニングや家庭菜園は楽しめるが、専用庭とテラスがあれば、できることは格段にレベルアップする(画像提供/PIXTA)

テラス付きマンションでできないことはなに?

テラスと専用庭の使い方は各マンションの規約によって定められているため、禁止事項も物件ごとに異なります。よくある禁止事項にはたとえばこのようなものがあります。

・もともとの形状を変える

・BBQや喫煙で煙・ニオイを発生させる

・大人数や大声で歓談する

・裸になる
など。

「庭があればBBQができる!」と思い込んで購入し、入居後に「実はできない」ことが分かってがっかりすることもあります。契約前に規約をしっかり確認しておきましょう。

「ガーデニングができるといっても低木や草花に限定され、大きな木を植えることはできない、といったケースがほとんど。基本的に『もともとの形状を変える』ことは禁止されているので、マンションの外観イメージを変えるような大きな木を植えたり、簡単に取り外せないコンクリートのテラスを増設したりといったことはできないでしょう。規約内容はマンションによってかなり異なります。事前にしっかり確認しておくことが大切です」(小西さん)

テラス付きマンションのメリットは?

アクティブで充実した毎日が送れそうなテラス付きマンション。自分たちの暮らし方に合うかどうか判断するためにも、メリットとデメリットのどちらも押さえておきましょう。

基本的には1階住戸になるテラス付きマンション。1階だからこそのメリットや、テラスや庭があることによるメリットがたくさん。上で述べた「できること」のほかにもこのようなものがあります。

●小さい子どもやペットが転落する危険がなく安心

●赤ちゃんや高齢者でも気軽に外気に触れられる

●下階に騒音で迷惑をかける心配がない

●バリアフリーで暮らせて、共用部分や敷地外へのアクセスもスムーズ

●エレベーターを待たずに外出でき、ベビーカー等での外出も楽

●中高層階よりも価格が抑えられているケースが多い

●物件数が限られているので、希少価値がある

「室内の専有面積以外に、自分たちだけで使える大きな屋外空間が得られる、という点が一番のメリットといえるでしょう。テラスから、専用ガレージや門扉にそのままつながるようなマンションもあり、その場合はより一戸建て感覚の暮らしが可能です。また、テラス付きマンションは数が限定されるので、それだけ希少価値もあります」(小西さん)

テラスと専用庭があれば、子ども用プールもゆったりと楽しめる
ベランダでプール遊びをする子どもの写真
最近人気の大型のビニールプールも、テラス付き住戸なら使いやすく、水の処理も簡単。日当たりのいい場所を選んで水遊びができる(画像提供/PIXTA)

テラス付きマンションのデメリットは?

メリットがあればもちろんデメリットもあります。入居後に慌てないために、テラス付き住戸のデメリットについてもしっかり検証しておきましょう。

●公道や隣戸の視線が気になる

公道や隣戸に面している場合は、通行人や隣人の視線が届く可能性があります。道路との間に植栽や塀で対策されている場合が多いので、実際の見え方を確認しておきましょう。

●専用庭の手入れと、毎月の使用料が必要になる

地面があれば当然雑草が生えてきます。ガーデニングをしなくても、草むしり等の作業は必要になるでしょう。また、数百円程度の少額である場合がほとんどですが、管理費のほかにも毎月「専用庭使用料」が発生します。

●防犯面で高層階に劣る場合がある

外部からの侵入しやすさという点では、中高層階より不利だと言えるでしょう。しかし、それだけに防犯カメラ等のセキュリティ設備が十分に用意されている場合が多く、人目があることで侵入の機会が減るということもあります。

●見晴らしがいい物件は少ない

よほど周囲が開けた立地でない限り、1階なので基本的には眺望は期待できません。また、建物が隣接している場合は、庭があっても日当たりがそれほど得られない場合もあります。

●害虫の被害を受けやすい

地面や植栽に近い分、蚊や蟻、クモや害虫が侵入しやすくなります。どうしても虫の侵入を避けたい場合は中高層階を選んでおく方が無難かもしれません。

●水害のリスクが上がる

マンションが浸水・冠水すると、停電や断水、豪雨によるトイレの逆流などの被害を受ける可能性があります。自治体が公表している洪水ハザードマップや過去の水害記録を確認しておきましょう。

などが考えられます。これらのデメリットが、自分たちの快適な暮らしにどの程度影響するか、考えておきたいですね。

「道路を歩いている人や、隣や上階の人の人目が気になることはあると思います。また、隣も同じようなテラス付き住戸の場合は、そちらからの視線や、コミュニケーションをどの程度取るか、といった問題もあります。ただ、庭があればそれだけ道路から距離ができるので、室内が丸見えになる可能性は低くなるはずです」(小西さん)

周囲からの視線がどれだけ気になるかで、住み心地も変わる
テラス付きマンションの外観写真
公道からの視線が届かないように植栽等で工夫を凝らしているマンションも多い。できる限り現地で「周囲からの見え方」を確認しておこう(画像提供/PIXTA)

テラス付きマンションの購入時にはここに気を付けておこう

メリット・デメリットを知った上で「テラス付き住戸に住みたい!」となったときには、どんな点に気を付けて物件を選べばいいでしょうか?

「庭もテラスも『広ければ広いほどいい』と思う人がいるかもしれませんが、広くなるほど手入れが大変になりますし、専用庭の使用料も高くなります。庭やテラスでできることはたくさんあり、そういったことが好きで使いこなせる人にはとても魅力的な物件。しかし、苦手な人にとっては億劫なこと。手つかずのまま放置されているケースも見られます。庭もテラスも『手がかかる場所』ではあるのです。
『自分はこのスペースをどのように活用したいか』を考えて、そのために必要な広さと、やりたいことができる規約かどうかをしっかり確認するようにしましょう」(小西さん)

テラス付きマンションの専用庭を使いこなす家族のイラスト
専用庭は使いこなせれば魅力的な場所だが、使わなければ手入れなどの作業が面倒なだけの場所になる可能性も

テラスがあれば毎日がこんなに充実!実際の暮らしをご紹介

流通量が少ないだけに、実際に暮らしている方の話を聞くことも少ないのがテラス付き住戸。「どんな間取りをどんな風に使って暮らしているのか」について、ハコリノベでリフォームした事例をご紹介します。

愛犬との快適な暮らしのために選んだのは、庭とテラスのあるマンション
(東京都K邸)

大型犬2匹と暮らすKさんが、「愛犬にやさしい住まい」を探して見つけたのが、自然豊かな環境に建つテラス付きマンション。リビングの前に明るいテラスが広がる間取りが気に入り、リフォーム前提で購入されました。愛犬たちが安全に自由に走り回れるように、空間全体をゆるく仕切る間取りに変え、メインの床材は滑りにくい塗装で仕上げて、床暖房も再設置。1階だから、愛犬たちが走り回っても足音を気にする必要はありません。リビングのワイドサッシを開けると、気軽に出られるテラスと、一段上がった先には緑がいっぱいの庭が広がり、愛犬といっしょにのびのびと心地よい暮らしを満喫されています。

テラスがあれば、犬が大好きな外の空間がすぐ近くで楽しめる
テラス付きマンションで愛犬と暮らす東京都Kさんの実例写真
寝室で2匹揃って気持ちよくお昼寝しているところをLDKからもこっそり覗けるように、リビングの一角に木製ガラス入りパーテーションを造作。愛犬のための住まいづくりが完成した(画像提供/ハコリノベ)

リビングから大きな庭へつながるテラスで、緑に囲まれた暮らしを楽しむ 
(京都府Nさん)

桜並木が眺められる広い専用庭があるのに、庭への出入りはキッチンや和室からしかできず、毎日の暮らしには採り入れにくい間取りでした。そこで、リビングを庭側に移すことをハコリノベが提案。専用庭を望む窓側にモルタル左官仕上げの土間のようなインナーバルコニーも用意し、リビングから屋外へと緑がつながる、開放感いっぱいの住まいを誕生させました。以前から室内で観葉植物を育てるのが趣味だったというNさんは、水をこぼしても平気なインナーバルコニーや広い庭で、緑豊かな日々を楽しんでおられます。

リフォームでつくったインナーバルコニーからテラス、庭へと空間が広がる
テラス付きマンションをリフォームして広い庭を眺めながら暮らす京都府Nさんの実例写真
春には桜並木が望めるという庭の眺めを、リビングから取り込めるようにリフォーム。日々開放感を楽しめる住まいになった(画像提供/ハコリノベ)

高い天井と、明るく広がるテラスで、床面積以上の開放感を創出
(大阪府I邸)

空間の広がりにこだわるIさんが購入したのは、3LDKのテラス付きマンション。リビングの天井材を取り払ったところ2900mmという想像以上の高さがあったため、木製ルーバーで仕上げて奥行きを見せ、開放感を演出。ワイドサッシから、明るいテラスと庭の空間も取り入れることで、ゆったりとした広がりを感じさせる空間を手に入れられました。

リフォームで天井高を上げ、テラスと合わせて開放的な空間で暮らす大阪府Iさんの実例写真
天井に設けた杉の木製ルーバーと、明るい日差しが差し込むテラスの存在が、部屋に実際の面積以上の奥行きを与えてくれる(画像提供/ハコリノベ)

「限定で」探す人も多いほど、魅力にあふれたテラス付きマンション。上手に使いこなして、マンションライフをワンランクアップさせてみませんか?

まとめ

テラスは屋内と屋外をつなぐ空間。上階のベランダの床が屋根になっていることが多い。

自分たちだけで使える屋外空間が加わることが一番のメリット

専用庭へとそのままつながることが多いので、一般的なベランダよりも広々と使える

専用庭と合わせてガーデニングやプールなど、「何ができるか」はそのマンションの規約次第

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取材・文/伊東美佳 イラスト/もり谷ゆみ
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