マンションの階段、4階5階は上り下りが大変。共用階段と室内階段、安全な寸法や幅は?

最終更新日 2025年07月23日
マンションの階段、上り下りが大変そう。共用階段と室内階段、安全な寸法や幅は?

4階~5階に住戸があっても、エレベーターがないマンションでは、階段で上り下りすることになります。また、メゾネットタイプの間取りで、室内に階段があるマンションも。物件選びの際は、階段のメリットやデメリットを知っておきましょう。また、安心して上り下りできる寸法や幅、物件選びのポイントを一級建築士のYuu(尾間紫)さんに聞きました。

エレベーターのないマンション。メリット・デメリットをまとめてみた

マンションでのエレベーターの設置基準

マンションにはエレベーター設置されているイメージがありますが、実は、すべてのマンションにエレベーターが付いているわけではありません。建築基準法でエレベーターの設置が義務づけられているのは、一般的なマンションの場合、7~10階建て以上に相当する「高さ31mを超える建物」。

また、国土交通省の「長寿社会対応住宅設計指針」(第3の5)」(1995年策定)では、「6階以上の高層住宅にはエレベーターを設置するとともに、できる限り3~5階の中層住宅等にもエレベーターを設ける」とされているため、実際には多くのマンションでエレベーターが設置されています。ただし、4~5階建てのマンション、特に1995年以前に建てられた中古マンションなどではエレベーターがない場合もあります。

エレベーターがないマンションのメリット

階段で上り下りするマンションはなんだか不便そうですが、実はメリットもあります。

物件価格や管理費が安め

エレベーターには新築時の設置コストや、定期的なメンテナンス費用、電気代などがかかります。それらが不要なエレベーターのないマンションは、物件価格や管理費が抑えられるメリットがあります。

物件探しの選択肢が増える

エレベーターの有無を条件から外すことで、家探しの選択肢が増えます。

運動不足解消になる

階段の上り下りで消費できるカロリーはそれほど多くはありませんが、太ももやふくらはぎの筋肉に負荷がかかることでトレーニングになります。

エレベーター待ちをせずにエントランスへ

物件にもよりますが、住戸数の多い高層マンションなどでは、朝の通勤時間帯に「なかなかエレベーターが来ない」「来ても乗れない」ということがあります。階段を使うマンションなら、エレベーター待ちのストレスがありません。

マンションの共用階段のイメージ
階段の上り下りは毎日続ければトレーニングになるメリットも(画像/PIXTA)

エレベーターがないマンションのデメリット

エレベーターがないマンションでは、体調が悪いときや大きな荷物があるときは、やはり毎日の階段の上り下りが大変です。それ以外にもデメリットがありますから知っておきましょう。

転落のリスクがある

急いで駆け下りたときや、大きな荷物があって足元がよく見えないとき、雨で靴底が濡れているときなど、階段からの転落でケガをしてしまう心配があります。

ベビーカーや自転車を持っての上り下りが大変

ベビーカーや三輪車を使う子育て世帯や、自転車を外に置きたくない人は、これらをもって階段を上り下りすることになります。荷物があればさらに大変です。

車椅子を使用することになったとき、出入りが大変

車椅子を使うのは高齢になったときだけではありません。ケガをして一時的に車椅子を使うケースもあります。階段でしか出入りできないマンションの場合、日常生活がとても不便になります。

階段で騒ぐ音がうるさい

1階から最上階まで吹抜け状に空間がつながるため、階段で大きな声を出して騒ぐ人がいると、広い範囲で音が響きます。

引越しのやリフォームの際、コストアップする

引越しやリフォーム、大きな家具を購入した際など、エレベーターがない場合は搬入や搬出に割り増し料金がかかることがあります。

売却しにくい

「エレベーターは必須」「エレベーターがないよりは、あったほうがいい」と考える人のほうが多いため、購入希望者がなかなか見つからない可能性があります。

セキュリティや衝突の不安がある

エントランスがオートロックになっていない場合、死角の多い階段は侵入者が隠れやすいため注意が必要です。また、マンションで「階段は左側通行」などのルールを決めておかないと、踊り場で曲がったときに、向かいから来る人が見えずに衝突する危険もあります。

階段の死角部分からあらわれた人とぶつかりそうになった人のイラスト
階段には死角部分ができがち

エレベーター階から階段を利用するマンション住戸のメリット、デメリット

エレベーターが全ての階に停止しないマンションもあります。エレベーターが停止しない階の居住者は、エレベーターを降りてから自分の住戸に向かうときや、住戸からエレベーターを利用するときに、階段を上り下りすることになります。

エレベーター階から階段を使う住戸のメリット

エレベーターを利用するたびに階段を使うのは少し面倒ですが、メリットもあります。

価格が安い

エレベーターを使う際の不便さがあるため、エレベーター階の住戸よりも安めの価格が設定されているケースが多くあります。

玄関の外が静か

エレベーターに近い住戸はドアの開閉音や、エレベーターホールでの話し声が気になることが。エレベーターが停止しない階はその心配がありません。

エレベーター階から階段を使う住戸のデメリット

階段の上り下りが大変

体調がよくないときや高齢になったとき、ケガをしているときなどは特に、エレベーターを利用するたびに階段を上り下りするのが大変に感じます。

荷物があるときに大変

ベビーカーや自転車、買い物帰りでたくさんの荷物があるときは、1階分の階段の上り下りでも面倒なものです。

エレベーターを下りて、階段へ向かう荷物をたくさんもった家族
エレベーターが停止しない階に住んでいる家族。荷物が多い日や子どもが小さいうちは面倒に感じることも

室内に階段があるメゾネットタイプは戸建て感覚?メリット・デメリットは

メゾネットタイプのマンション。階段の種類は?

マンションはワンフロアになっている間取りプランが多いのですが、物件によっては住戸内が上階と下階の2層になっているメゾネットタイプもあります。

上階と下階をつなぐ階段には、いくつかの種類がありますので、簡単に紹介しましょう。

直階段

途中で曲がらずに、まっすぐに上り下りする階段。住宅などでは高さ4メートル以下ごとに踊り場をつくる必要があります。

かね折れ階段

階段の途中に設けられた踊り場で、方向が90度曲がる階段。踊り場があるため、いっきに下まで転落するのを防ぎます。

回り階段

向きを変える際に三角形の段板(踏み板。階段の足を乗せる板部分のこと)を使う階段。大きな家具の搬入や搬出が難しい場合があるので注意。

折返し階段

向きを変える位置が踊り場になっている階段。途中でひと休みできるので、上り下りが比較的ラクなメリットがあります。大きな家具の搬入・搬出が難しいことがあるのは回り階段と同様です。

らせん階段

らせん状に回りながら上り下りする階段。最も少ない床面積で設置することができます。すべての段板が三角形になるため、子どもと手をつないでなど、二人並んでの上り下りがしにくい点がデメリットです。

階段の主な種類
戸建てやマンションの室内階段の主な種類
階段は種類によって設置に必要な床面積や、上り下りのしやすさが異なる

室内に階段がある住戸のメリット

家の中に階段があると、1階と2階に分かれた戸建てのような感覚が得られます。室内に階段のあるメゾネットタイプのマンションにはさまざまなメリットがあります。

ゾーニングしやすい

ワンフロアの間取りでは住戸に一体感がありますが、メゾネットタイプの場合は、空間を用途や目的別にゾーニングがしやすくなります。例えば、下階は来客を通したり、家族団らんをしたりなど人が集まるフロア、上階はそれぞれの個室があるプライベートなフロアというように使い分けがしやすくなります。

子どもの足音での気兼ねが軽減される

小さな子どもが走り回ったり、飛び跳ねたりするときの足音。上階を子どもが遊ぶフロアにすれば、真下もわが家ですから音への気兼ねが軽減されます。ただし、足音はマンションの躯体から伝わる固体伝播音。真下以外の住戸にも伝わることは知っておきましょう。

親との同居がしやすい

ひとりになった親を引き取っての同居は、親と子ども世帯の生活時間のずれが気になるもの。住空間が2層に分かれているメゾネットなら、親と子どもの生活フロアを分けることで、生活時間のずれを気にせずに生活できます。

玄関に階段があるマンションのイメージ
玄関に階段があるプランなら、下階と上階の独立性が高まる(画像/PIXTA)

室内に階段がある住戸のデメリット

階段の上り下りが大変

体調が悪いときや高齢になったときだけでなく、掃除機をもって毎日上り下りするのは億劫なもの。寝室とトイレが上下で離れている場合、夜、寝ぼけた状態で階段の上り下りをするのも心配です。

冷暖房費がかかりがち

上階と下階が区切られているため、エアコン1台で家中の温度調整をするのが難しいため、複数台数のエアコンの稼働で冷暖房費がかかることも。

使える床面積が小さくなる

階段を設置する分、使える床面積が減ってしまう点はデメリット。ただし、階段下を収納スペースにして有効利用している間取りもあります。また、フロアが分かれている分、視線が奥まで抜けないため、奥行き感が感じられず、手狭に感じることがあります。

メゾネットタイプのマンションにある室内の階段
階段があるスペースは、背の高い家具は置けないなど自由度が下がる(画像/PIXTA)

安心して使える階段の寸法や幅は?物件探しやリフォームでの注意点は?

階段のパーツの名前を知っておこう

階段には建築基準法で定められた寸法や、上り下りしやすい寸法があります。それを説明する前に、まずは、階段のパーツをあらわす用語を整理しておきましょう。

(1)踏み面(ふみづら)

足を乗せる段の上部分。奥行きのことも指します。

(2)蹴上げ(けあげ)

階段の1段分の高さのこと。

(3)踊り場(おどりば)

階段の途中に設けられる広い段板。

(4)段鼻(だんばな)

段板の先端部分のこと。滑り止めになるよう、溝を入れたり滑り止めを付けたりします。

(5)蹴込み(けこみ)

段鼻から下の蹴込み板までの寸法

(6)蹴込み板(けこみ板)

段板と段板の間に付けられる材料のこと。蹴込み板がない階段もあります。

(7)段板(だんいた)

踏み面に使われる板のこと。踏み板ともいいます。

階段のパーツをあらわす用語
階段のパーツをあらわす用語を示す図
さまざまなパーツからできている階段。建築基準法で寸法が決められているのは階段と踊り場の幅、踏み面、蹴上げ、踊り場の位置

上り下りしやすい階段の寸法は?

建築基準法で定められた階段の寸法は下の表のとおり。

例えば、住宅の場合は階段の段板と段板の高さの差(蹴上げ)が230mm以下、足をのせる面(踏み面)の長さが150mm以上あれば、建築基準法をクリアしていることになります。でも、例えば、蹴上げを230mm、踏み面を150mmの階段をつくると、その勾配や約56度。とても急な階段になります。

階段のパーツと建築基準法の数字
建築基準法では、蹴上げが230mm以下、踏み面の長さが150mm以上であることと定められている

「建築基準法は最低限のルール。その最低限の寸法でつくった階段は使いにくいものです。階段の快適寸法は、暮らす人によって異なりますが、蹴上げ約18cm、踏み面約25cmが昇降しやすい目安です。建築基準法の最低ラインよりも、蹴上げは小さく、踏み面は大きくしてゆるやかな勾配にすることがポイントです。マンションの共用階段の場合、古いマンションは勾配が急なことがあります。自分の目と足で確認するのがいいでしょう」(Yuuさん、以下同)

建築基準法上の階段の寸法
住宅 共用階段
階段・踊り場の幅 750mm以上 750mm以上
蹴上げ 230mm以下 220mm以下
踏み面 150mm以上 210mm以上
踊り場の位置 高さ4m以内ごと 高さ4m以内ごと

物件探しやリフォームの際に知っておきたいこと

踊り場の有無などを自分の目と足でチェック

新築マンション、中古マンションを探す際には、共用階段や、メゾネットタイプなら室内階段もきちんとチェックしましょう。

「上り下りの途中で落下したときのことを考えると、踊り場があるほうが安全です。また、足元が暗くないか、段差がわかりやすいか、共用階段の場合は雨の日に滑りにくいようになっているかを、自分の目と足で確認しましょう」

マンションの室内階段はリフォーム可能?

メゾネットタイプの室内階段の位置や向きを変えるなど、リフォームは可能なのでしょうか。

「マンションの室内階段は、構造に関係することが多いため架け替えは難しいことが多くなっています。上から板やカーペット、コルクなどを張って見た目を変えるリフォームは可能なことが多いので、まずはマンションの管理規約を確認してみましょう。階段をカーペットやコルクにすると、すべりにくいだけでなく、万が一、すべって転がり落ちても体への当たりをやわらげることができます。カーペットには防ダニ効果をもつタイプもあり、ハウスダストをキャッチしてホコリが舞いにくくなる効果もあります」

リフォームで階段に手すりを後付けすることも可能です。
「手すりには全体重をかけてもだいじょうぶなように、下地の補強、または壁表面に下地を付けることが重要です。DIYも可能ですが、安全性を重視して工務店などに施工してもらうのがいいですね。高さは80cmが目安ですが、暮らす人の使いやすい高さに合わせることが大切です」

階段に付けた手すりのイメージ
階段の手すりはにぎりやすい太さのものが安心。また、手すりの先端部分に洋服が引っかからないかにも注意。写真の手すりは、握った手の袖口がひっかかり転倒するおそれがある(画像/PIXTA)

マンションの共用階段や室内階段。家探しの際は上り下りしやすい寸法なども考えながら、物件選びをするようにしましょう。

まとめ

4~5階建てのマンションでもエレベーターがなく階段で上り下りする物件がある

階段だけのマンションは物件価格や管理費が安いなどのメリットがある

室内に階段があるメゾネットタイプのマンションでは、戸建て感覚が味わえる

上り下りしやすい階段の快適寸法は、蹴上げ約18cm、踏み面約25cmが目安

物件探しの際は、自分にとって上り下りしやすい階段か、快適性と安全性をチェック

室内階段はリフォームで手すりを設置、カーペットやコルクを張るなどで安全性がアップできる

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取材・文/田方みき イラスト/つぼいひろき
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