マンションは換気口が原因で冬、寒い?!24時間換気は止めずに寒さ対策をしよう

最終更新日 2025年12月05日

マンションは換気口が原因で冬、寒い?!24時間換気は止めずに寒さ対策をしよう

気密性の高い現代のマンションで欠かせないのが24時間換気。でも、常に換気口から外の空気が入ってくるため、特に冬は寒さを感じてしまうことも。24時間換気は止めてはいけないのでしょうか?換気口の寒さを防ぐ対策はあるのでしょうか?一級建築士の鈴木哲夫さんに話を聞きました。

24時間換気とは何?

室内を一日中換気する仕組みのこと

住宅では24時間換気が義務化されている、と耳にしたことがあるでしょう。では、24時間換気とはどういう状態のことをいうのでしょうか?

24時間換気とは、室内の換気を一日中行い、常に空気の入れ替えがされる仕組みのことをいいます。24時間換気が義務化されたのは2003年の建築基準法改正。すべての建築物で24時間換気システムの設置が義務化されました。「すべての建築物」には、戸建てやマンションも含まれています。

24時間換気システムは3種類

設置が義務付けられている24時間換気システムは、大きく分けて3つの種類があります。簡単に説明しましょう。

第一種換気
外の空気を取り入れる給気口と、室内の空気を外に出す排気口のどちらにも換気扇を設けて、室内の空気を入れ替える仕組みです。空気の流れを機械で効率的に制御できますが、設置費用や電気代がかかります。外の空気を取り込む際に、室内と住戸外の温度差を調整する熱交換システムを使用することができます。

第二種換気
給気口にだけ換気扇を設置して、強制的に外の空気を取り入れる仕組みです。排気は、外から入ってきた空気に押し出される形で行われます。

第三種換気
マンションなど住宅で多く採用されている仕組み。排気口のみに換気扇を設置して、空気の入れ替えが行われる方法です。給気は各部屋に設置された給気口から行われます。

マンションで24時間換気を止めてはいけない理由は?メリットはある?

住宅の高気密化が24時間換気の義務化の背景

24時間換気はなぜ義務化されたのでしょうか?その背景には、近年の住宅の高気密化があります。昔の住宅は、外気が出入りしてしまう隙間が多く、冬になると隙間風が入ってきて寒いという難点がありました。しかし、建築技術が進歩し、隙間が極めて少ない高気密な家の登場によって、暖房や冷房の効率が上がり、住宅の快適性は高まりました。しかし、高気密化によって外から空気が入りにくく、中の空気が排出されにくい住まいになったことで新たな問題が懸念され、24時間換気の義務化につながっていきます。

シックハウス対策として24時間換気が規定された

室内と室外の空気の移動が少ない高気密な住まいは、夏は冷房で冷やした空気が、冬は暖房で暖めた空気が逃げにくく、冷暖房効率は良くなります。しかし、室内で発生したホコリや化学物質がたまりやすく、人が集まったり生活したりすることで発生する湿気が排出されず結露やカビが発生しやすくなるなどの問題もあります。

「住宅の気密性の高まりによって隙間風による自然な換気がなくなったことで、室内環境の化学物質の濃度が高くなりました。化学物質は建材に含まれているものだけでなく、新居に入居する際に買いそろえた新しい家具などにも含まれています。化学物質は5年もすれば抜け切るといわれていますが、締め切って換気をしていない住戸の場合は化学物質が抜け切れないこともあり、いつ抜け切るのかははっきりしません。化学物質によってアレルギー症状などが出ることが多くなったことを受け、シックハウス対策として改正建築基準法で24時間換気の設置を規定しました」(鈴木さん、以下同)

なお、化学物質の発散がある建材を使用しない場合でも、家具からの発散が見込まれるため、原則としてすべての建築物に機械換気設備の設置が義務付けられているのです。

咳をする女性の画像
住居に由来するさまざまな健康障害の総称がシックハウス症候群。化学物質による住まいの空気汚染も原因の一つ(画像/PIXTA)

1時間で部屋の空気の半分が入れ替わる

24時間換気は建築基準法で、下のように換気設備の技術的基準が規定されています。

住宅等の居室は0.5回換気/h

つまり、マンションの場合、1時間で部屋の空気が半分入れ替わるルールになります。

24時間換気を稼働させないのは法律違反ではないが、稼働のメリットは大きい

建築基準法では、換気設備の設置や技術基準は定めていますが、実は稼働させることまでは規定していません。そのため、換気設備を設置していなかったり、住宅であれば0.5回換気/hを下回ったりする設備の場合は法律違反ですが、24時間換気を絶対に止めてはいけないというわけではありません。とはいえ、シックハウス対策として義務付けられた24時間換気設備のため、稼働させるメリットはさまざまです。

24時間換気のメリット
化学物質やホコリを室内から排出する

24時間換気システムは、シックハウス対策として導入された背景があります。
つまり、きちんと稼働させることで化学物質(ホルムアルデヒド)の濃度を下げる対策につながります。

カビや結露、ダニの発生を抑える
換気がされず空気が室内で滞留すると、湿度が上昇。カビや結露、ダニの発生の原因となります。
換気をすることはアレルギー源にもなるこれらの発生を抑えるためにも大切です。

室内のニオイを抑える
カビの発生や化学物質の滞留を抑えることで不快な室内のニオイの解消にもつながります。
また、24時間換気で空気が入れ替わるため、部屋にこもる生活臭対策にもなるでしょう。

住まいを長持ちさせる
湿気がたまり、カビや結露が発生すると建物の構造部分にも影響します。
24時間換気で空気の滞留を防ぐことが住まいの耐久性アップにつながるといえるでしょう。

給気口を開けておくことが24時間換気に必要だと示すイラスト
(イラスト/つぼいひろき)

換気口(給気口)が寒い? 24時間換気を止めずに部屋を暖かくするには?

24時間換気をつけているとなぜ寒い?

住戸の外の空気を常に取り入れる24時間換気システム。冬になると寒いと感じて、稼働させずに過ごす人もいます。しかし、シックハウス対策になり、室内の結露やカビを抑える効果もあるため、24時間換気は止めないことが望ましいといえます。

では、なぜ24時間換気システムで、室内が寒くなるのでしょうか?

「一般的にマンションの24時間換気システムは第三種換気です。排気は機械で行いますが、新鮮な空気の取り入れは換気口(給気口)から機械を使わない自然給気。換気口から入ってくる冷たい空気は重いため床付近にたまりやすく、室内にいる人は足元から寒く感じるのです」

全熱交換器が設置されている場合はどうでしょう。全熱交換器は「熱は高温側から低温側に移動する」という熱の性質を利用しています。室内の暖かい空気を排気する際に、屋外の冷たい空気と全熱交換器内で交差することで、室内の暖かい空気の熱が、外からの空気に移動します。そのため、室内には冷たさがやわらいだ空気が給気されることになります。とはいえ、熱が移動する際にロスが出るため室内の空気の温度そのままで給気ができるわけではなく、換気口周辺は快適な室温にはなりにくい場合があるでしょう。

換気口(給気口)の中の吸音材が寒さの原因?

幹線道路沿いや線路沿いのマンション、周囲がにぎやかな場所にあるマンションの場合、換気口に吸音材を入れているケースが最近多くなっているとか。

「下の写真は、換気口のカバーを外し、中から吸音材を取り出したところです。吸音材は厚さ25mmの円筒形。開口穴の直径が75mmの換気口の場合、給気をするための実質開口穴の直径は25mm程度、直径100mmの換気口の場合は実質開口穴の直径は50mmになります。

1時間で部屋の空気が半分入れ替わる能力で排気をした場合、換気口を通る空気のスピードは直径が細いほど速くなります。すると、室内で換気口近くにいる人には、風の当たり方が強くなり、寒いと感じやすくなるのです」

換気口(給気口)の外壁側のカバーを外し、吸音材を取り出した写真
換気口の外壁側のカバーを外し、吸音材を取り出したところ(画像提供/鈴木哲夫さん)

換気口からの寒さを防ぎながら部屋を暖かくするには?

24時間換気の良さを活かしながら、換気口からの寒さが気にならないように過ごすにはどうすればいいのでしょうか?

「冷たい空気は下にたまり、暖房で暖められた空気は上に上ります。暖房中は、サーキュレーターで室内の空気を撹拌(かくはん)して、天井付近が高温に、床付近が低温にならないようにするといいでしょう。サーキュレーターがなければ扇風機を使ってもよいと思います」

サーキュレーターや扇風機で室内の空気の温度を平均化し、空気の移動で室内のよどみをなくすことで、寒さ対策のほか、結露やカビを抑える効果も期待できます。

換気口周辺の寒さへの対策にサーキュレーターを使用するアイデアのイラスト
サーキュレーターで換気口から入ってきた冷たい空気を上に、暖められた空気を下に撹拌することで、空気の温度が平均化する(イラスト/つぼいひろき)

24時間換気の効果を得るために換気口の清掃を

24時間換気システムは、実は換気口のメンテナンスが大切。定期的に掃除をしましょう。カバーと、中に吸音材が入っている場合はそれも取り外すと、奥にフィルターがセットされています。取り外したフィルターのホコリを掃除機やブラシで取り除きます。フィルターは繊細なつくりなので、力を入れすぎないように注意。換気口は天井高の1/2より下の床に近い場所に設けられていることが多いのですが、もしも高い位置に設置されている場合は、踏み台からの落下などに気をつけて行ってください。

換気口の中のフィルターの画像
外部側のカバーを外し、吸音材を取り出した状態。奥に見えるのがフィルター。手前下はたまっているホコリ(画像提供/鈴木哲夫さん)

換気口からベッドを離すのは有効? マンションでも寒さを感じる人がいる?

暖かく過ごすため家具の位置も気をつけたほうがいい?

外の空気が換気口からそのまま入ってくる場合や、全熱交換器で室温に近づけられた空気が入ってくる場合でも、やはり換気口の近くは寒く感じる、という人もいるでしょう。少しでも冬を暖かく過ごすため、例えば、ベッドやソファなど長時間を過ごす家具を換気口のそばに置かないのは有効なのでしょうか?

「有効ではありますが、部屋の床面付近に冷たい空気がたまっている状況下では、効果は小さいと思われます。室内の空気がよどまないよう、まんべんなく動かし、空気の入れ替えを適切に行うことが大切です」

マンションは高気密・高断熱。それでも寒さを感じることはある?

断熱性も気密性も高いため外気温の影響を受けにくく、冷暖房器具を上手に使えば年間を通して快適に過ごしやすいのがマンションの良さ。しかし、マンションでも室内の寒さを感じるという人は意外に多いものです。

「最近は、生まれたときから快適な温熱環境で育った人が多く、少しの温度差で寒い、暑いと感じ取ってしまう傾向が大きいように感じます。暖かい環境が維持されている室内に、換気口から冷たい空気が入り込めば寒さを感じることがあるでしょう。でもそれは、室内の空気が入れ替わっている証拠です」

室内の温度むらがどれくらいあるのか、天井付近、天井と床の中間付近、床付近の温度を測ってみて、温度差がある場合は、室内の空気をサーキュレーターで循環させることを試してみるといいでしょう。

まとめ

1時間に部屋の半分の空気が入れ替わるよう24時間換気システムの設置が義務付けられている

化学物質やホコリを室内から排出し、カビや結露を抑えるなど24時間換気のメリットは大きい

24時間換気を稼働させていると寒く感じるのは換気口からの冷たい空気が床にたまるため

冬はサーキュレーターや扇風機で室内の空気を撹拌し、温度を平均化させるといい

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取材・文/田方みき イラスト/つぼいひろき
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