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2025年8月、大田区を代表するターミナル、JR・東急蒲田駅と京急蒲田駅を接続する「新空港線」(蒲蒲線)の“速達性向上計画”が、関係事業者によって国土交通省に申請されました。この申請が国から認定を取得することで、新空港線整備が本格的に動き出すことになります(現状の整備開始予定年月は2025年10月。詳しくは後述)。
現在、この2つの駅は約800m離れており、移動に徒歩10分ほどを要します。その不便さが解消されるとなれば、大田区のエリア価値にプラスのインパクトをもたらし、ひいては区内のマンション市場が活性化することにも期待できます。開業予定は令和20年代の前半とまだ先の話ではありますが、将来性を見据えれば、マンション購入は今から検討しておくべきなのでしょうか? 東京カンテイ 市場調査部 上席主任研究員の髙橋雅之さんに取材しました。
まずは計画の概要から見ていきましょう。整備は第一期・第二期に分かれています。
第一期では、東急多摩川線矢口渡駅と蒲田駅の間から多摩川線を地下化し、JR・東急蒲田駅の地下~京急蒲田駅の地下までを接続して直通運転を実現します。第二期では、京急蒲田駅の地下から空港線糀谷駅と大鳥居駅の間までを地下化し、東急多摩川線が京急空港線に乗り入れる構想です。


現時点で事業内容が公表されているのは第一期整備のみ。スケジュールは次のとおりです。
整備開始予定年月:2025年10月
運行開始時期:令和20年代前半
整備終了予定年月:2042年(令和24年)3月(残工事期間含む)
大田区作成の動画によれば、JR・東急蒲田駅と京急蒲田駅は新空港線によって2分の近さに。列車の本数は、朝の最も混雑する通勤・通学の時間帯で1時間当たり20本程度と計画されており、3分に1本程度の運行を予定。かなり高い利便性が期待できます。また、一部の列車については、東急東横線からの乗り入れを計画。東急多摩川線の始発・多摩川駅、同じく多摩川線の下丸子駅のプラットホーム整備も併せて行う予定とのことです。
新空港線整備、運営などを担う羽田エアポートライン、東急電鉄の発表によると、東横線乗り入れで中目黒駅~京急蒲田駅(新空港線開業で新設される地下の新駅)は現在の約36分から約23分に、自由が丘駅~京急蒲田駅(同)は、現在の約37分から約15分にそれぞれ短縮される予定です。もちろん、この2駅にとどまらず、東横線の始発である渋谷駅までも直通となる上、東横線が乗り入れている地下鉄の副都心線を使えば、明治神宮前(原宿)駅や新宿三丁目駅、池袋駅なども、京急蒲田駅から直通で結ばれることになります。

ちなみに第二期整備が完了して羽田空港まで直通となった場合、中目黒駅~羽田空港第1・第2ターミナル駅が約50分から約42分に、自由が丘駅~羽田空港第1・第2ターミナル駅が約51分から約34分にそれぞれ短縮される予定です。
予想される整備効果として例示されている駅は、中目黒、自由が丘でいずれも目黒区内です。しかし、その両駅に多摩川線でつながる大田区内の各駅にも、新空港線開業によるアクセス利便性の向上は確実にもたらされると言えます。
一般的に、鉄道の新線・新駅が開業すると、それに伴って沿駅の駅前再開発や生活利便施設の拡充が進みます。また、相互乗り入れや直通運転の開始で既存駅周辺の交通利便性が改善し、新たな層の来街者や居住者を呼び込むきっかけも生まれます。
そうした意味では、新空港線計画によって区内の代表的なターミナルが結ばれる大田区のマンション市場が今後どうなるのか、大いに気になるところです。現時点の供給数を、東京カンテイ 市場調査部上席主任研究員の髙橋雅之さんに解説いただきました。(以下コメントはすべて髙橋さん)
「2024年のデータによると、大田区は23区内で江東区、世田谷区に次いで3番目にマンションの多いエリアです。築年帯別のストック比率はあまり偏りがなく、築古から築浅まで選択肢が広いことも特徴です。
戸数が多い割に、マンション化率(地域の総世帯数に占める分譲マンション戸数の割合)が低いのは、区内に古くからの住宅地が集まっており、一戸建てや賃貸マンション、アパートの供給も多いことが理由と考えられます。田園調布や大森駅近くの山王、大岡山、洗足などハイクラスな住宅地が区全体の地価平均を引き上げてはいるものの、それでも23区城南エリアの中では、マンション価格は手ごろと言えます」

また、大田区は住環境も魅力のエリアです。23区で最大の面積の中に、田園調布、山王などのハイクラスな住宅街から庶民的な商店街、水と緑豊かな多摩川、東京湾に面した23区内でも最大級の海浜公園などさまざまな顔があります。特にオートキャンプやバーベキューもできる希少な城南島海浜公園や、入江や干潟を持ち、フットサル、ビーチバレー、多目的スポーツ場なども備える大森ふるさとの浜辺公園などは23区でも屈指の充実度を誇る公園です。
さらに、JR京浜東北線、京急本線が南北を走り、品川駅をはじめとする都心のターミナル駅、横浜駅、京急蒲田駅からは羽田空港と多方面へのアクセスに優れていることも特筆すべきメリットです。
新築、中古ともに高騰を続ける23区城南エリアのマンション市場において、比較的手が届きやすい上に、仕事や子育ての面でも魅力ある住環境が整う大田区。ファミリーをはじめとする幅広い層にとって、検討しやすいエリアと言えそうです。
では、新空港線の開業効果を得やすいのはどの沿線なのかを見ていきましょう。
やはり、最もダイレクトに恩恵を受けるのは、新空港線、東急東横線と双方向に乗り入れることになる東急多摩川線でしょう。現状、多摩川駅で東横線に乗り換える際は2フロア上らなければなりませんが、それが解消されればアクセシビリティーは確実に向上します。
また、羽田空港への移動もスムーズになります。京急蒲田駅の地下に建設される新駅から、地上にある現在の京急蒲田駅に垂直移動して京急空港線に乗り換えなければならないものの、現状、JR・東急蒲田駅~京急蒲田駅を徒歩移動、あるいはJR・東急蒲田駅からバス、タクシーなどで空港に向かう手間は省くことができます。もちろん、(現時点で時期は未定ですが)第二期工事が終了すれば、一切の乗り換えなしで羽田空港まで直通となります。
東急多摩川線と同じく、JR・東急蒲田駅を始発・終着駅とする東急池上線と、同駅に連絡する京浜東北線は、多摩川線のように直接乗り入れとはなりませんが、現在の駅から、地下の新駅に下りれば新線に乗り換えられ、羽田空港方面への移動の利便性は大きく向上します。加えて、京急蒲田駅に連絡する京急本線は、JR・東急蒲田駅へのアクセス向上が期待できます。

第二期工事終了後に、東急多摩川線と相互乗り入れが予定されている京急空港線は、自由が丘、渋谷方面に直通となり、利便性向上が期待できます。ただし、現時点では第二期工事が検討段階にあることから、効果はまだ見通せないと言えるでしょう。また、大田区内のほかの沿線は、JR・東急と京急の両蒲田駅に連絡していないことから、新空港線の開業効果は限定的と考えられます。
髙橋さんによれば、「新線・新駅の開業といわば“パッケージ”で周辺駅の開発が行われることが、住宅価格や街のポテンシャル向上には不可欠です。過去の事例では、新線・新駅開業のみではマンション価格の上昇につながらないケースも見られます」とのこと。
この点で、JR・東急蒲田駅とその周辺で構想されている再開発プロジェクトは“追い風”になることが期待できます。
大田区は、平成25年(2013年)に「蒲田駅周辺再編プロジェクト」を策定。それから10年余りが経過し、新空港線整備で羽田空港との結びつきが強化されることに合わせ、令和7年度にこのプロジェクトの改定を予定しています。
実現すれば、JR・東急蒲田駅と周辺の価値は向上し、新空港線開業との相乗効果を生むと考えられます。新たに蒲田を訪れる人が増え、街が活性化することによって、将来的にJR・東急蒲田駅周辺の住宅開発などにつながるかもしれません。

新空港線開業が“起爆剤”となって、大田区のマンションは“買い”になるのか? 髙橋さんに、今後どう考えていくべきかを聞きました。
「一般的に、新線、新駅の計画は、まず開業するエリア周辺の地価に反映され、その後、最寄り駅のマンション価格に波及していく傾向があります。そうした動きが目に見えて現れるのは、具体的にどのあたりに新駅が開業するのか、どのエリアを新線が通るのかが明確になってからです」
新空港線の場合、新線は地下化され、地下の新駅に接続する計画が公表されています。ただ、JR・東急蒲田駅と京急蒲田駅が接続される予定時期は令和20年代前半。今から13~18年ほど先の話であり、現時点で地価の上昇などは認められていません。
髙橋さんは「“快速列車”などが設定されるかどうか」がひとつのポイントでは、と話します。
「仮に、多摩川線沿線駅の近くにマンションを購入しても、その駅に各駅しか停車しなかったとしたら、京急蒲田駅到着までに要する移動時間には差が生じることになります。そうした事態を避けて、快速停車駅の最寄りマンションを狙うなら、まずは、快速、各駅の停車駅や運行本数を示すダイヤの内容が明らかになってから検討すべきだと思います」
新線の具体的な運行情報が、いつ明らかになるかはまだ見通せません。ただし、大田区は、多様な住環境や優れたアクセス利便性を備え、なおかつJR・東急蒲田駅と周辺再開発計画も進むなど高いポテンシャルを持っています。にもかかわらず、23区城南エリアにおいて値ごろ感のあるマンションが、築古~築浅の多様な築年帯で豊富に供給されているのは、大田区の揺るがないアドバンテージです。
資産性が上昇する時期や上がり幅などは、まだ予測が難しいと言えます。それでも、新空港線効果が最も高いと予想できる東急多摩川線、さらに、1回の乗り換えで新線にアクセスできる東急池上線、京浜東北線、京急本線を軸にしたエリアは、購入の検討に値するのではないでしょうか。

一般的に鉄道新線の開業計画は、地域の価値を押し上げ、マンション市場にもプラスの効果をもたらす
23区トップクラスのマンション供給地・大田区を代表する2つのターミナルが接続する「新空港線」(蒲蒲線)プロジェクトは大きな話題に
新空港線効果が最も高いと予測される、東急多摩川線を軸に、東急池上線、京浜東北線、京急本線の沿線は、特にマンション購入を検討する価値あり