公租公課、耳慣れない言葉ですが、住宅を売ったり買ったりするときにかかわってくるものです。この記事では、公租公課とは何か、租税公課との違い、起算日による分担金の違いなどを解説します。
公租公課(こうそこうか)とは、税金など国や地方自治体、地方公共団体に納める公共的な金銭負担のこと。「公租」とは固定資産税等や不動産取得税など一部の国税や地方税などの税金、「公課」とは国や地方公共団体に納める会費、組合費などの負担金を指しています。この「公租」と「公課」を合わせた勘定科目(複式簿記の仕訳や財務諸費用などに使用する表示金額の内容を示す名称のこと)が「公租公課」と呼ばれています。
公租公課は、租税公課ともいわれています。
「公租公課」も「租税公課(そぜいこうか)」も、日常会話のなかではあまり耳にしない言葉です。でも実は、私たちの生活に密着したもの。次に、不動産売買のときにもかかわってくる公租公課(租税公課)について解説しましょう。
不動産売買の場面で関係する公租公課は「固定資産税」「都市計画税」です。まずは、それぞれについての基本を知っておきましょう。
固定資産税は土地や建物などの「固定資産」を所有していると毎年納めることになる税金です。毎年、1月1日時点に固定資産課税台帳に所有者として登録されている人が納税義務者となります。毎年、4~6月ごろに納税通知書が届き、土地や建物のある市区町村(東京都23区の場合は都)に納税します。納付時期は一般的には年4回に分かれていますが、自治体によっては定められた期限内に一括納付も可能です。
固定資産税の計算方法
課税標準※1×1.4%(標準税率)※2=固定資産税額
市街化区域内にある土地や建物には固定資産税のほかに都市計画税も課税されます。都市計画税は固定資産税の納税通知書に合算されて届きますから、合わせて納税することになります。納税義務者は固定資産税と同様、毎年、1月1日時点に固定資産課税台帳に所有者として登録されている人です。
都市計画税の計算方法
課税標準※1×0.3%(制限税率)※2=都市計画税額
固定資産税と都市計画税の課税標準(※1)とは、固定資産課税台帳に登録されている価額のこと。固定資産税、都市計画税はこの課税標準に税率をかけて計算されます。上の計算方法にある税率(※2)は標準的な数値で、全国一律ではありません。各市区町村や東京都が条例で税率を決定します。都市計画税の税率は、0.3%が上限となる制限税率です。
不動産売買にかかわる公租公課の「固定資産税+都市計画税」(以下、固定資産税等とまとめて表記)。1月1日時点での土地や建物の所有者が、その年の4月1日からの年度分の納税義務者です。ここで気になるのが、年度の途中で不動産売買をした際のこと。売買の時期によっては、売主は固定資産税等の全額、または一部をすでに納税してしまっているでしょう。でも、売却で自分の所有ではなくなった月日の分も、土地や建物の固定資産税等を納めるなんて、なんだか不公平な気がします。
税制上は、所有していても、売却していても、1月1日時点での所有者に納税義務があります。しかし、不動産売買の実務としては、不動産の引き渡し日以降の税額を日割り計算して、買主が売主に税額分を支払うことで精算をします(納税は売主が行うのが一般的です)。
年の途中で売買が行われた場合の固定資産税等の精算は、365日の日割り計算。その場合、何月何日を365日の1日目、つまり「起算日」にするかによって、同じ引き渡し日でも負担割合が違ってきます。起算日をいつにするかという法律等のルールはなく、一般的にはその地域の商習慣で決まってきます。一般的に、関東では1月1日、関西では4月1日になることが多いといわれます。
まずは、関東などで多いケースの起算日1月1日の場合の売主、買主それぞれの固定資産税等負担を見ていきましょう。
1月1日時点での所有者である売主に課税されている固定資産税等が12万円だったとします。これは本来、その年の4月1日~翌年3月31日までの年度分の固定資産税等です。しかし、起算日が1月1日の場合、税額12万円は、1月1日から12月31日までの365日を、引き渡し日7月1日をもとに按分します。
すると、売主が負担するのは1月1日から6月30日までの181日分、買主が負担するのは7月1日から12月31日までの184日分となり、売主の負担額は5万9507円、買主の負担額は6万493円となります。12月31日以降分も買主が変わっていなければ、買主の負担となります。
次に関西などで多い起算日4月1日の場合の売主、買主それぞれの固定資産税等負担を見ていきましょう。
起算日が4月1日の場合、税額12万円は、4月1日から翌年3月31日までの365日を、引き渡し日7月1日をもとに按分します。
すると、売主が負担するのは4月1日から6月30日までの91日分、買主が負担するのは7月1日から翌年3月31日までの274日分となり、売主の負担額は2万9918円、買主の負担額は9万82円となります。
納税通知書は4月~6月ごろに届きます。届くのは1月1日時点での所有者。つまり、所有者が変わる引き渡し日が1月2日以降、納税通知書が届くまでの間だった場合、元の所有者のところに売却した家の固定資産税等の納税通知書が届くということに。この場合、固定資産税等の精算は、納税通知書が届いて税額が明確になってから行うか、前年度の税額で精算するか、概算で精算をしておいて後日調整するかになるでしょう。
また、買主と売主の住んでいるエリアが離れていて、起算日の商習慣が違うケースもあるでしょう。どちらの起算日に合わせるかなどの調整が必要です。
企業などの法人が所有している自社ビルや店舗、資材置場や駐車場にしている土地などは、事業を継続するために使われる財産として、それにかかる固定資産税等は経費に計上することができます。
個人事業主の場合も、事業の継続のために所有している建物や土地があれば、確定申告の際に経費として計上することが可能。確定申告書類にある「収支内訳書」の経費の欄に「租税公課」という項目がありますから、そこに事業で所有している分の税額を記入しましょう。
不動産の売買の際に、買主が購入したのが事業に必要な不動産の場合、固定資産税等分として精算した金額のうち、事業にかかわる分は経費として計上することが可能です。
なお、不動産を相続した場合にかかる相続税は経費としては計上できませんが、「3000万円 +( 600万円 × 法定相続人の数 )」までは相続税がかからない基礎控除や、要件を満たせば相続財産が1億6000万円(または法定相続分の範囲内)まで非課税になる配偶者控除などがあります。
不動産売買の前に渡される不動産売買契約書には、物件や付帯設備にかかわることや、物件の成約価格や支払い方法、支払日、所有権の移転と引き渡し時期など、取り引きにかかわるさまざまなことが盛り込まれています。後のトラブルを回避するためにもきちんと読み、わからないことは不動産会社の担当者に問い合わせることが必要です。公租公課の分担についても記載されているはずですから、起算日はいつか、日割り計算が合っているかなどを確認しましょう。
不動産売買契約書は、専門用語も多くボリュームもあるため短時間で読み込み、理解するのは大変ですから、契約日に初めて読むのではなく、事前に受け取ってよく読んでおきましょう。
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不動産契約書に固定資産税等の負担について明記されているかを確認することが重要