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「マンションを購入するなら、より資産価値の高い物件がいい」という声はよく聞きます。家族の形や生活スタイルが変われば、住まいも変えるという考え方が広がり始め、住み替えを意識して売却時に値下がりしない物件を探したいというニーズの変化が広まってきたためです。
では、資産価値の高いマンション、10年、20年、30年と住み続けても資産価値の落ちないマンションのポイントはあるのでしょうか?住宅評論家の櫻井幸雄氏にお話を伺い、詳しく解説します。
マンションの資産価値が注目されるようになった理由は、2つあります。
1つは住宅の流動性が高まり、住み替えという考え方が定着しつつあることです。
かつて不動産は「一生に一度の買い物」といわれていた時代がありました。若いうちは賃貸住宅や社宅に住み、そのあと生涯住み続けることを前提にマイホームを購入するという流れが一般的でした。しかし、子どもの独立などで家族が増減したり、リタイア後の生活では通勤の必要がなくなったりと、家族の形や生活スタイルは変化します。現在はライフステージに合わせて、住み替えを考える方が増えています。住み替えの場合、「今住んでいるマンションがいくらで売れるか?」が、住み替えを成功に導く大きなカギとなるため、資産価値に注目が集まっているのです。
もう1つは、マンション購入を資産形成としてとらえる見方が広まりつつあることです。リクルートSUUMOリサーチセンターが行った「2023年首都圏新築マンション契約者動向調査」によれば、マンションの購入理由として「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」を挙げた人は32%にのぼり、2003年の調査開始以来、年を追うごとに増え続けています。住宅の購入では、住宅ローン減税や各種控除を受けることができるため、現金や預貯金に加えて資産形成の一環として不動産を持つという考え方があります。また、不動産を購入しておけば、将来賃貸に出すことも可能です。例えば、一時的に転勤で住まいを離れるといった場合、空いた部屋を人に貸すことで収入を得るという選択肢もあります。

それでは、マンションの資産価値とはどんな点で判断できるのでしょうか。マンションの価格を決める要素は、「立地条件」「築年数」「住み心地」など、さまざまですが、一番の決め手になるポイントを住宅評論家の櫻井幸雄さんに伺いました。
「新築の分譲マンションの場合、一般的に当然資産価値が高いマンションは、分譲価格も高くなります。その価格を決める一番の要素は立地です」(櫻井さん、以下同)
「新築マンションの場合は、分譲価格を決めるのは土地の仕入れ価格と建物の建設費です。中でも大きく分譲価格に直結するのが土地価格です。人気のあるエリアでは土地価格が高く、分譲価格はそれなりに高くなりますが、中古マンションとして売り出すときにも価値が下がりにくいといえます」
なぜ下がりにくいのかを深堀りして考えていきましょう。分譲価格は土地価格+建物の価格で決まります。建物の価格は築年数に比例して下がります。一方で継続的に人口の流入が見込める人気のあるエリアならば地価は下がりません。したがって、経年により建物の価格が下がったとしても、需要が高い立地であれば一定の価値を維持できるのです。誰もが住んでみたいと考える人気のエリアなら、地価の上昇により購入時よりもむしろ売却価格が上回り、リセールバリューを期待することもできます。
逆に人気のないエリアは、将来的にさらに地価が下がる可能性があります。そうなると売却時にも買い手がつきにくく、売却できたとしても価格は低くなります。
地価の下落リスクを避けるためにぜひチェックしておきたいのがハザードマップです。水害時の浸水や地震による液状化などが発生すれば、地価の下落は避けられません。ハザードマップは各自治体が公表しているので、マンションの購入前に必ず確認しておくことをオススメします。

どのエリアに住むかを決めたら、次に重要なのが交通の利便性です。「具体的には、駅から徒歩7分以内に立地するマンションが、多くの人が理想として望む立地だといわれています」
例えば、SUUMOで新築マンション購入を検討しているユーザー(首都圏)を分析すると、全体の72.6%が駅徒歩10分以内を希望。そのうち、約30%が駅徒歩7分を検索しています。また、東京カンテイが発表した、首都圏で発売された「新築マンションの徒歩時間別供給シェア」によると徒歩4~7分が35.5%で最も多く、次いで徒歩8~11分の27.9%、3分以内が19.8%と、駅徒歩7分以内が55.3%を占めており、駅近ニーズの強さを反映した結果になっています。

マンションを賃貸物件として貸す場合を考えてみても、「借り手がつきやすいマンション」の最も重要な条件は、立地です。賃貸物件は、仮住まいとしての要素が大きく、職場や駅へのアクセスが良い物件が選ばれることが多いといえます。立地条件に恵まれたマンションは、収益物件としても価値が高いのです。
資産価値に最も影響するのは「立地」ですが、そのほかに資産価値に関わる要素としては、「広さ」、「間取り」、「階数」、「眺望」、「日当たり」、「部屋の方角」などがあります。
将来売却を考えるなら、「広さ」や「間取り」は周辺エリアのニーズをおさえて決定すべきです。広さは価格に直結するので、例えば単身者のニーズが高いエリアにファミリータイプのマンションを買ったところで、価格が高すぎて買い手・借り手に敬遠されることになります。
では、「階数」、「眺望」、「日当たり」、「部屋の方角」などはどう考えるべきでしょうか。
「これらの要素を端的に表すと、住み心地です。立地や広さや間取りほど売却価格に影響は与えませんが、買い手にとっては部屋を選ぶ重要な要素です。住み心地のいいマンションは買い手がつきやすいため、査定価格も高くなりやすいといえます」
ただし注意しておくべきなのは、住み心地に関わる要素には、将来変わる可能性のあるものがあること。例えば眺望や日当たりは、隣に新しい建物ができれば変わる可能性があります。その点で公園などに隣接し、将来にわたって眺望が約束されている立地は、売却時のアピールポイントとなるため資産価値の面で有利といえます。
また、高さ制限のある地域に立つ低層マンション、共用施設が充実したマンションなど、特色を持ったマンションもほかの物件と差別化できるため、資産価値の面で有利です。

・新築マンションの資産価値を決めるのは立地
・駅徒歩10分が、ニーズの多寡を分けるポイントに
・広さや間取りは、周辺エリアのニーズをおさえて決めよう
・日当たりや眺望は変わることもある
新築マンションと同じく、中古マンションの価格も「立地」が一番の決め手となります。
中古マンションの大きな特徴は、築年数が価格に反映されることです。
多くのマンションは鉄筋コンクリート(RC)や鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)と呼ばれる躯体構造で建てられます。国土交通省住宅局の調査研究によると、鉄筋コンクリート構造の共同住宅の寿命は50年から100年以上とされています。一方、会計上では、新築から使用し始めて年月が経過すればするほど価値は低下していきます。財務省の定める法定耐用年数によれば、RC造・SRC造の建物は47年で耐用年数を迎え価値がゼロになります。故に、築20年、30年程度のマンションであれば、古さは感じるものの、問題なく住み続けることは可能です。
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鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)の耐用年数とは?メリット・デメリットを解説
しかし、前述のとおり立地の良いマンションでは、建物分の価格が減価しても、地価の高さがそれを補います。
つまり価格の下落が緩やかなので、同程度の築年数のマンションと比べても価格は高くなるのです。
例えば、「広さ」「築年数」が同じ築20年の物件をエリアで比較してみた場合はどうなるでしょうか。
下のデータは、東京都(23区)と神奈川県横浜市・川崎市の中古マンションのm2単価と、それを70m2に換算したものです。
| m2単価 | 70m2に換算した価格 | |
|---|---|---|
| 東京都(23区) | 118.95万円 | 8326.5万円 |
| 神奈川県横浜市・川崎市 | 64.02万円 | 4481.4万円 |
実際にはアクセスの良さや物件の状態などさまざまな条件により価格は上下しますが、一般的には中古マンション価格に立地が大きく影響していることがわかります。
かつてマンションブームの時代は、都心部の駅から近い徒歩圏内での住宅開発は、マンションが中心でした。そのため、立地のいい中古マンションは、新築マンションより物件数も多く、その利便性で、高い資産価値=販売価格を維持しているマンションも少なくありません。
近年の建築費の高騰を受けて、最近の新築マンションは10年から20年、さらには30年以上前に売り出された物件に比べて専有面積は狭くなっているので、新築マンションでは希望の広さを見つけられないこともあるため、中古マンションのほうが、希望の間取りにかなうケースもあります。

また、再開発によって土地価格が大きく上昇することにより、居住中に購買時より資産価値が上がることもあります。いずれにしても立地選びが、資産価値に大きく響くことは間違いありません。
中古マンションを選ぶ場合、築年数が古くなればなるほど価格も低くなりますが、築5年未満のマンションでは、新築と比べて住宅設備においても性能に変わりなく、価格もあまり減価しません。「東京カンテイ」の調査でも、首都圏では築5年以内の中古価格は新築分譲価格とあまり変わらないものの、築11年を過ぎると価格が落ち、築21年ではさらに下落していることがわかります。ただし、築21~30年のマンションと築30年超のマンションはそれほど価格の開きはありません。
⇒画像、もしくはコチラをクリックするとPDFでご覧いただけます。
それでは、資産価値の視点でオススメの築年数はいつなのでしょうか?
「すべてのマンションに当てはまるわけではありませんが、傾向として築10年で売却価格が下がるので、新築5年以内で買うよりも築10年で購入したほうが物件の価格は下がるでしょう」
「安く買い、高く売る」ことを重視するなら、価格が落ち切るのは築20年以降ですがそうすると今度はマンションの性能面をチェックしたいところです。
なぜなら、マンションはだいたい築15年以上20年程度で大規模補修の時期が迫り、外壁・設備等の劣化が進行します。また給湯器やキッチン、風呂設備などの更新時期に当たることから、購入費用のほかに費用がかかる可能性も出てきます。大規模修繕計画は築30年までで計画されていることが多く、築30年を迎えると計画が見直されます。
「資産価値を重視して中古マンションを購入する場合、価格的にも築10年から20年、できれば15年までの物件が、ねらい目といえるでしょう。ただし都心部や再開発エリアなどの人気エリアは、古い物件でも価格はあまり下がりません」
「マンションは管理を見て買う」といわれますが、大規模な建築物であるマンションの価値を維持していくためには、日常の適切な管理が不可欠です。適切に管理されているか、こまめに修繕されているかによって、同じ築年数のマンションでも建物の状態がまったく違ってきます。
マンション購入時には、実際の部屋を内見して判断しますが、特に中古マンションの場合、住戸内の間取りや設備を見るのはもちろん、よく見ておきたいのが共用部分です。
エントランスやエレベーターホールなどの共用部分の状態でそのマンションの管理状況がわかります。
など、管理の質を確認してください。
また、空き部屋比率や住人の年齢層にも注意が必要です。
マンションの築年数に比例して修繕積立金の額は高くなる傾向にありますが、年金暮らしの高齢者層が多いマンションの場合は、修繕積立金の値上げや一時金の徴収に抵抗感が強い住人も多い傾向があり、将来の修繕計画に影響が出て、空き部屋になるリスクもあります。
マンションの管理は資産価値に大きく影響するため、購入前によく確かめておくことが後悔しないポイントといえます。いくら築年数が少なくても、管理の状態が悪ければ資産価値は低下する可能性が高いでしょう。逆に築20年、30年のマンションであっても、しっかりと管理が行き届いていて、適正に修繕がされていれば、資産価値を保つこともできます。
分譲マンションの管理は、区分所有者(住人)による管理組合によって運営されています。建物や設備の維持管理に必要な資金も、住人が毎月積み立てる管理費や修繕積立金から計画的に支出されます。
管理組合が適正に運営されていれば、大規模補修や日常の補修・メンテナンス時に資金不足になることもなく、長く資産としての価値が維持されます。
中古マンションの販売時、仲介を行う不動産会社には管理会社からマンション管理に関する「重要事項報告書」が資料として提示されます。
ここには、修繕積立金の総額や、長期修繕計画の概要が記されています。購入を検討する際には、仲介会社を通じて、これらを開示してもらうことは可能です。
管理組合の資産状況をはじめ活動状況や実態をチェックすることも大切です。

・中古マンションでも立地選びが最大のポイント
・築年数と価格はおおむね比例するが、土地価格の向上によって資産価値が上がることがある
・経年劣化と価格のバランスが良いのは、築10~20年のマンション
・中古マンション購入時は、管理状態を必ずチェックしよう
さて、マンションの資産価値は、立地、築年数、広さなどの住み心地、管理状態などさまざまな要素によって決定されるということを説明してきました。
「しかし、立地に恵まれ、資産価値が高く維持されているマンションは、そもそも販売価格が高いのも現実です」
一方で、一般的に資産価値の高い物件に求められるニーズとは異なる価値観を持つ人もいます。
例えば、コロナ禍を経て、日本では新しい生活スタイルが生まれました。リモートワークなどで個室の必要性が増す場合には、少し駅から離れた、土地に余裕がある郊外のマンションのほうが、居住空間を広くとれます。一方、通勤時間の短縮や生活の利便性を重視するなら、都心や駅近のマンションを選ぶほうが生活の満足度は上がるでしょう。

これからは、資産価値を重視して「都心」「駅近」を選ぶか、暮らしやすさを重視して「広さ」「部屋数」「自然」などを選ぶか、ライフスタイルや価値観によって住まい選びがより多様化する時代になるのかもしれません。
加えて、マンションを自分の好みに合わせてリノベーションする人が増えていることから、あえて築年数が古いマンションを購入したいというニーズも高まっています。前述のとおり鉄筋コンクリート構造の共同住宅の寿命は50年から100年以上とされています。築20年、30年のマンションはまだまだ十分居住することが可能です。マンションの管理状態にもよりますが、新築や築浅のマンションを購入するよりも、古いマンションをリフォーム・リノベーションしたほうが購入費を安くおさえられるでしょう。
特に内装をまるごと作り変えるリノベーションをすれば、室内の見た目や住み心地は快適になるでしょう。自分好みの間取りや内装、設備を取り入れることができるため、築30年以上のマンションであっても一定の需要は期待できます。ただし、マンションの外観や共有部は自分でリノベーションできないため、管理の状態に左右されます。
経済状況が不透明化する今、住宅ローンに関してもより賢い利用の仕方が求められています。
「低金利で大きな住宅ローン控除も含めれば、購入しやすい時期ではあります。しかし日本経済を考えると、将来不安がないわけではない。住宅ローンは低金利の今のうちに最大限に活用し、返済で余った資金を貯蓄し、35年住宅ローンを返済し続けていくのではなく、10年後に一括繰り上げ返済するとか。将来リスクを回避する賢い利用の仕方を考えてみてください」
住宅評論家 櫻井幸雄氏は最後にこうも話されました。
「マンションを選ぶ基準として、資産価値の視点は重要ですが、これからはそれだけではありません。少々交通の利便性が低くても、広い部屋で日常生活の満足感を高めたい。住んで幸せを感じるマンションを選びたい。つまり、資産価値より現実の生活満足度を重視する。そんなマンション選びの時代が来るかもしれません」
資産価値は立地が決め手となる
マンションの資産価値は年数で減価する
中古マンションは建築後10年から15年がねらい目
ただし、物件の管理状態が良ければあえて築30年を選ぶという選択肢も
マンションは管理も資産価値に直結する
資産価値を超えた生活満足度でマンションを選ぶ