北東向きマンション住戸はカビや日当たりで後悔しない？

北東向きのマンション住戸は、南向きのマンションに比べて日当たりが悪く暗い、カビや結露が出やすく後悔する、などのイメージはありませんか？確かに、南向きの住戸に比べると明るさの面では劣ります。でも、北側を向いた住戸には、南側にはないメリットもあります。北東向きマンションの良さや、資産性を判断するためのポイントを解説。マンション管理コンサルタントで不動産エージェントの山本直彌さん（さくら事務所、らくだ不動産）にお話を伺いました。

北東向きって、どんなマンション？

リビングの開口部が北東を向いているのが北東向き住戸

リビングやダイニングキッチンがあり、バルコニーが設けられている方向が北東を向いている間取りが、北東向き住戸です。太陽の光が入るのは南東、南、南西の方向から。そのため、北東向きマンションは南側を向いた住戸に比べると採光はよくありません。しかし、意外なメリットはいろいろあります。北東向きだからこそ得られる良さを紹介しましょう。

北東向きマンションのメリットは？

強い日差しが入らず、夏は涼しいのが北東向きマンション

「南向きの住戸の方が採光が良いため人気は高く、資産価値も高かったりしますが、暮らし心地はライフスタイルとの相性が大切。例えば、お子さんがいらっしゃらない共働きカップルで、昼間は家にいない場合、北東向きなど北側にある住戸の方が、夏でも室内が暑くならないため意外に快適に過ごせる、というケースもあります」（山本さん、以下同）

家族構成やライフスタイルによっては、北東向きが快適に暮らせることもあります。どのようなメリットがあるかを知っておきましょう。

・夏の室内が涼しい
お昼前から夕方にかけては、窓から日差しが入らないことは北東向き住戸のデメリット。しかし、直射日光で室温が極端に上がることがなく、夏は涼しいのがメリットです。南向きの部屋は、夜、仕事から帰ってきた時に室内がムッとするほど暑くなっていることがありますが、北向きは南向きに比べると涼しく感じられるはずです。

・冷房代が抑えられる
電気代やガス代が高騰している今、気になるのはエアコン代などの光熱費。南向き物件に比べると涼しい北東向きマンションは夏の冷房にかかるコストが抑えられます。

・朝は日差しが入り、気持ちよく１日をスタートさせられる
北東向きは、東から昇る朝日が入り朝は室内が明るい点がメリット。１日のスタートを気持ちよく過ごすことができます。

・部屋の明るさが大きく変化しないため落ち着いた空間になる
直射日光が入ってくる南向きや西向きに比べて、北東向きマンションの室内の明るさは朝から夕方まで大きく変化しません。採光が安定していると、１日を通して落ち着いた室内空間になります。

・南向きに比べて価格や安いことが多い
マンションでは南向きの方が人気は高く、その分、価格も高くなります。同じマンションで広さや階数などの条件が同等なら北向きは南向きや南東向き、南西向きに比べて10%程度安くなると言われています。

夏はあまり暑くならない北東向きのマンションは、暑さに弱い人やペットにとって快適（イラスト／いぢちひろゆき）

北東向きマンションのデメリットは？

日当たりが不利なことからカビや結露の問題が発生しやすい

北東向きのマンションでは、朝日が入るとはいえ、日中の採光については南側を向いた住戸に比べて劣ってしまいます。そのため、物件によってはいくつかのデメリットが生まれます。

・日当たりについては不利。部屋の中が暗くなりがち
南側を向いた住戸に比べて、採光は良いとはいえません。日中は仕事や学校で不在という世帯の場合は気にならないかもしれませんが、在宅時間が長い人で明るい部屋が好みという人にとっては北、東向きの住戸は快適とはいえないかもしれません。ただし、物件によっては北東向きでも暗さを感じない場合もあります。

「窓から直接日差しが差し込むわけではありませんが、窓の外に遮るものがないタワーマンションの北東向きの住戸や、窓が大きく視界が開けている住戸では、思ったより暗さを感じないものです」

また、明るい色の壁や床の住戸は、窓からの光を反射して室内が明るく感じられる効果もあります。オプションで選べるなら、できるだけ明るい色の内装にするといいでしょう。

・冬は寒い
「マンションは気密性が高いため、戸建て住宅と比較すると暖かいといえます。しかし、日当たりの異なる南側住戸と北側住戸では室温に差ができ、北側の方が体感で2～3度低いように感じます」

南向きに比べて室温が低い北東向き住戸は、夏は快適というメリットがありますが、冬は寒く、暖房費がかかる点がデメリットです。

・洗濯物が乾きにくい
お昼頃から日当たりが悪くなるため、バルコニーやリビングに干した洗濯物が乾きにくいのが北東向きのデメリット。朝の日差しが入る午前中に洗濯物を干す、乾燥機や浴室乾燥機を活用するなど暮らしに工夫。

・湿度が上がりカビや結露が発生することもある
雨の日や梅雨時期には湿度が上がりカビが発生したり、冬は外気と室温の温度差や加湿器などの影響で窓や北側の壁に結露が発生したりすることもあります。ただし、計画的な換気が行われていて、断熱性の高いマンションの場合、それほど気にならないケースも多いでしょう。大量の観葉植物は置かない、お湯を張った浴室のドアを開けっぱなしにしない、大量の洗濯物を室内干ししないなど湿度を上げない暮らし方を心がけることでカビや結露を防ぐこともできます。

夏は涼しく快適だが、冬は寒い場合がある北東向きのマンション（画像／PIXTA）

北東向きのマンションが向いているのはこんな人

朝型のライフスタイルで、日中は留守の人に向く北東向き住戸

日当たりが悪い北東向きマンションで、満足度が高い暮らしができるのは、どのような人でしょうか。

・朝型生活で、日中は仕事に出かける人
朝の日差しがLDKに入る北東向きマンションは、１日のスタートが早朝の人に向いています。朝早く起きて、仕事や学校に出かけるファミリーなら、日中の日当たりの悪さはそれほど気にならないでしょう。

・暑さに弱い人
直射日光が入らない北東向きの住戸は、夏の涼しさが大きなメリット。暑さに弱い人にはぴったりです。

・室内で作業をする人
日中、リビングのパソコンで仕事をしたり、ハンドメイドの作品をつくったり、仕事や趣味の作業をする人にとっては日差しの明るさが安定した北東向きの住戸は集中しやすいといえます。

・洗濯物は乾燥機派の人
室内干しよりも、乾燥機を使って乾かすのが習慣の人は、北東向き住戸の洗濯物が乾きにくい特徴もデメリットに感じないでしょう。

（イラスト／いぢちひろゆき）

北東向きのマンション、購入時に気をつけたいポイントは？

快適な住戸を選ぶため周辺環境をチェック

南を向いた住戸に比べると人気が劣ると言われる北東向きですが、日差しが入らなくても眺めがよく、通風も確保できれば快適に感じられるもの。

「北東向きは、新築時には南向きに比べると人気は落ちるのですが、窓から東京タワーや東京スカイツリーなどランドマークになるようなものが見える住戸はポイントが高く人気だったりします。自分は眺望に興味がなくても、将来、売却することを視野に入れるなら、多くの人に好まれそうな眺望などメリットのある物件を選ぶことがオススメです」

売却時には北東向き住戸の方が価格面でトクをすることも

マンションの価値は住戸の方角だけで決まるわけではありません。

「新築で販売されるときは、南向きに比べて北東向きや北西向きの住戸の方が安いのが普通です。しかし、窓からの眺望などによって南向きよりも人気があるケースもありますし、中古市場になると住戸ごとの評価になりますから、南向き住戸よリも高い価格上昇率で売れる場合もあります」

では、マンションはどのような視点から評価されるのでしょうか。

「不動産の資産価値は新築マンションの場合は、相場価格、居住快適性、持続可能性、流通可能性。中古マンションは立地、建物の仕様、管理状況、相場妥当性で評価できると考えています。さくら事務所の『FACTORS 4』というサービスでは、この4つを軸（下表参照）にマンションの資産性を評価しています」

これから子どもが生まれる予定、購入したマンションには長く住み続ける予定という人は南向きの住戸の方が暮らしの満足度は高くなりそうです。しかし、5年後、10年後に売却すること前提の場合は、安く購入できて住戸によっては高めに売れる可能性のある北東向き、北西向きの住戸も視野に入れた物件探しをするといいでしょう。

参考：さくら事務所ホームページ