西向きマンションの住み心地は? 後悔しないためのメリット・デメリット、最適な日当たり対策は?

最終更新日 2025年10月16日

西向きマンションの住み心地は? 後悔しないためのメリット・デメリット、最適な日当たり対策は?

マンションを選ぶ際に「部屋の向き」について気になる方は多いでしょう。一般的に日照時間が長い南向きが良いとされており、西向きは「夏になると暑い」「西日がきつい」などのイメージを持たれがちです。しかし、実際に西向きのマンションはどのような住み心地なのでしょうか?

そこでこの記事では、マンションブランド「イニシア」シリーズを展開するコスモスイニシアに、西向きマンションや西向きの部屋のメリット・デメリット、どのような方に向いているのかなどを取材しました。面積(m2)の広い部屋に住みたいものの、南向き物件だと価格の高さが気になる、西日対策も知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

西向きのマンションは後悔する? 最近は向きにこだわらない人も多い

マンションを探すときに、日当たりを重視する人は多いのではないでしょうか。そこで気になるのが部屋の向きです。開口部(バルコニー)がどの方角に向いているかによって、日当たりに差が出るからです。

一番人気は、南向きです。日照時間が長いので日中はずっと明るく、洗濯物がよく乾く、冬でも暖かく過ごしやすいなどが人気の理由です。二番人気は、朝日が入る東向きです。残念ながら、西向きはあまり人気がありません。

「西向きが好まれないのは、西日が嫌われているからです」とコスモスイニシア レジデンシャル本部 統括部分譲事業推進課の辻井正人さん。「西向きの住まいは、午後から日没までよく日が当たり、太陽の位置が低くなると部屋の奥まで日が差し込みます。そのため夏はかなり暑くなり、建具や家具が日焼けしてしまうなど、マイナスイメージが強いのです」

マンションに差し込む西日
西向きの住まいは午後明るい半面、暑さや家具の日焼けなどの問題がある(写真/PIXTA)

そもそも日本人が南向きの家を好むのには、気候が関係しています。日本は季節ごとの気温差が激しく、特に夏は高温多湿な環境です。そのため、木造の在来工法では南に大きな開口部を設けた、日当たりと風通しの良い家が多くつくられてきました。一戸建てに比べて開口部の少ないマンションでは、より南向きが好まれる傾向がありました。

南西向きと北西向きも西日が入るのが特徴ですが、より人気があるのは、日中も日が当たる南西向きです。夕方しか日が当たらない北西向きは、あまり人気がありません。

「しかし、昔に比べると“家は南向き”という考え方が薄れてきています。近年は、部屋を選ぶ際に向きよりプランや眺望、空間の工夫を重視するお客さまが多く、向きが悪いからという理由で売れ行きに影響することはほとんどありません」(辻井さん)

部屋の向きにこだわらなければ、住まいの選択肢は広がります。しかし、気に入った部屋が西向きだった場合、「住み心地はどうだろう?」と気になる人もいるかもしれません。ここで西向きのメリットとデメリットを整理しておきましょう。

西向きの部屋のメリットとは?

西日のマイナスイメージが強い西向きの部屋ですが、メリットも多くあります。

●午後はよく日が当たる

日が当たるのは正午以降になりますが、日没までたっぷり日差しが入ります。昼過ぎに洗濯物を干してもよく乾き、夕方暗くなる時間が比較的遅いので電気代の節約にもなるでしょう。

●冬は暖かい

午後からの強い日差しで部屋の温度が上がり、冬は暖かく過ごせます。日没後も夜まで暖かさが続くので、暖房費を節約できます。

西向きのリビング・ダイニングのイメージ
西向きのリビングは冬でも暖かいことが多い

●どの部屋にも日が当たる

「西向きの部屋は、バルコニーと反対側の東に居室を配置するプランが比較的多めです。東向きの寝室や子ども部屋は朝日が入って明るく、午前中も日当たりを確保できます」(辻井さん)

ちなみに、南向きの部屋は居室が北側になるプランが多く、日の当たらない部屋ができてしまうこともあるそう。

●夕日がきれい

ロケーションによっては、夕暮れ時のきれいな景色を眺められます。茜色に染まる夕焼けや夕日を眺めながら過ごす時間は、西向きならではの贅沢です。

●南向きに比べて価格が安い

人気の南向きに比べると、価格は低め。競争率が高くないのもメリットです。

西向きの部屋のデメリットとは?

西向きの部屋に住んでみるとさまざまなメリットを感じられますが、その一方でデメリットに感じてしまう部分もあります。ここで、西向きの部屋のデメリットについても把握しておきましょう。

●夏の暑さ

西向きの部屋では、午後から夕方にかけて強い日差しが差し込むため、室内が高温になりやすい傾向があります。特に、夏は暑さによってエアコンの使用頻度が高くなり、結果として電気代の増加につながることも。

さらに、西向きの部屋は熱がこもりやすく、夜間も室温が下がりにくいので、寝苦しさを感じる日が他の向き(方角)に比べて多いといえます。

●日焼けのリスク

西向きの部屋に住む場合、日焼けのリスクが高まる点にも注意が必要です。西日を長時間浴びることで、皮膚への紫外線ダメージが蓄積しやすくなります。特に夏場は、午後3時ごろから日没まで強い紫外線にさらされる時間が長くなるため、カーテンやブラインドを使用するなどといった紫外線対策が欠かせません。また、家具やカーテン自体も日焼けし、色あせなどが起こりやすくなります。

●価格への影響

一般的に、西向きの部屋は日差しなどの問題から南向きの部屋と比べて価格が安くなる傾向があります。これは賃貸の場合も同様で、家賃が他の向きの部屋よりも安くなることもあるでしょう。将来的に転売や賃貸に出すことを考えている場合、こうした価格への影響に気を配る必要があります。

西向きの部屋で快適に過ごすための日当たり対策

西向きの部屋に住むデメリットに、西日による温度上昇や日焼けのリスクなどが挙がっていました。しかし、西日のきつさはさまざまな工夫で対策を講じることも可能です。西日への対策方法を解説していきましょう。

西日対策1 カーテンやブラインドを工夫する

カーテンやブラインドは、遮光や遮熱の機能のあるものを選ぶと熱を抑えられます。最近のカーテンやブラインドは機能が優秀で種類も豊富。西日を遮りながらインテリアも楽しめます。

窓の外にグリーンカーテンを設けておしゃれに日よけをアレンジするのもオススメです。グリーンカーテンとは、つる性の植物を絡ませて仕立てた緑のカーテンのこと。窓辺を緑で覆うことで日影ができ、室内の温度を下げる効果が期待できます。
管理組合によってはバルコニーの使用方法が制限されている場合がありますので、必ず管理組合に確認してから設置してください。

グリーンカーテンのイメージ
グリーンカーテン(写真/PIXTA)

カーテン・ブラインドを含む窓まわりのアイテムの選び方についてもっと詳しく→
カーテン? それともブラインド? 窓まわりのアイテムの選び方とは

西日対策2 窓ガラスに断熱フィルムを貼る

断熱フィルムを窓ガラスに貼ると、太陽の光を反射吸収し、室内に入る熱を減らすことができます。商品によっては紫外線をカットし、家具やフローリング、壁紙などの日焼けを防止する効果もあります。

窓用フィルムの断熱タイプ・遮熱タイプについてもっと詳しく→
省エネで需要増大の窓用フィルム、 冬場は断熱タイプと遮熱タイプどちらがいいの?

西日対策3 Low-e複層ガラスを採用したマンションを選ぶ

「窓にLow-e複層ガラスを採用していると、高い断熱性と遮熱性が期待できます。一戸建てではスタンダードな設備で、マンションでも採用するケースがあります」(辻井さん)

複層ガラスとは、二重にしたガラスの間に空気層を挟み、断熱性を高めた構造のことで近年はマンションでも採用が進み、スタンダードになりつつあります。さらに、片方のガラス表面を特殊な金属膜でコーティングし、より断熱性、遮熱性を高めたのがLow-e複層ガラスです。西向きの部屋を検討するなら、窓ガラスの性能は要チェックです。

「そもそもマンションは一戸建てに比べて断熱性が高いので、窓からの自然の影響にどう対処するかがポイント。それさえやれば、どの向きでも快適に過ごすことができます」(コスモスイニシア 執行役員 分譲事業部 分譲事業部長の生田武司さん)

方角(向き)による価格差はある? 西向きの部屋と他の向きを比較

メリットに挙げたように、西向きの部屋は南向きの部屋に比べて価格が低い傾向です。

「マンションの価格は、その立地条件で最もメリットを享受できる部屋を基準に考えます。日当たりも価格を左右する要素のひとつで、南向きの日当たりの良い部屋は価格が高めに設定されます。

仮に間取りも眺望もまったく同じ部屋があったとすると、南向きが一番高く、西向きと東向きはそれより3~5%程度、北向きは8%程度安くなります。ただし、眺望やプランが南向きより優れていると、この価格差は小さくなります」(辻井さん)

また、同じ西方面でも、南西向きは南向きとの価格差が小さく高め、北西向きはより価格差があり安くなる傾向です。

購入価格を抑えたい人や、予算内でより良い間取りを手に入れたい人は、西向きを検討する価値があります。

西向きの部屋はどんな人に向いている?

ここまで西向きマンションのメリット・デメリットや方角による価格差などを紹介してきましたが、結局西向きの部屋はどのような人に向いているのでしょうか?ここで、西向きの部屋がオススメの人を解説します。

午後から活動する「夜型」の人

西向きの部屋は、午前中よりも午後になると徐々に日差しが強くなるのが大きな特徴です。午前中でも日差しは入りますが、西日に比べて弱く、部屋の中が暗いと感じてしまう傾向にあります。こうした理由から、午後から活動をスタートさせる「夜型」の人には西向きの部屋がオススメです。

例えば、夜型の人が東向きや南向きの物件を選んでしまうと、まだ寝ている時間帯に強い日差しが入ってきてしまい、そのまぶしさから起こされる可能性があります。しかし、西向きの部屋であれば日差しによって起こされてしまうことも回避することが可能です。また、起床後に洗濯をした場合、西向きの部屋なら強い西日の影響で洗濯物も乾きやすくなります。

寒がりな人・冬の寒さが苦手な人

午後以降から強い日差しが部屋の中に入ってくる西向きの部屋は、寒がりな人や冬の寒さが苦手な人にも向いています。なぜなら、強い日差しの影響で部屋の温度が暖まりやすいからです。一般的には一番温度が高い昼間から夕方にかけて、徐々に温度が下がっていくものですが、西向きの部屋は夕方も日差しによって部屋が暖まりやすくなります。場合によっては暖房に頼らなくても過ごせるケースもあるため、寒さに弱い人には西向きの部屋がオススメです。

西日の影響で部屋の温度が暖まりやすい半面、午前中は寒くなりやすい傾向にあります。ただし、日中は仕事などで外出する場合だと、結局寒い外に出なくてはならないことから、午前中の寒さはあまり気にならなくなるでしょう。

日中は外出しているシングル・DINKS

日中はあまり家にいないシングルやDINKSの方にも、西向きの部屋がオススメです。午後からはどうしても強い日差しが部屋の中に入ってしまい、快適に生活できない可能性もあります。しかし、その時間帯に外出していることが多い場合は日差しによるデメリットもあまり関係ありません。

例えば仕事や学校で日中は家を不在にしているケースや、家にいたとしても日差しにあまり関係ない部屋で作業していて、昼間リビングにいることが少ない場合は西向きの部屋でも問題なく、快適に過ごせるでしょう。また、休日も家の中にいるよりも外出することが多かったり、アウトドアが好きだったりする場合は、西向きの部屋がオススメです。

一方で、西向きの部屋は夏の午後は受けた強い日差しの熱が室内にこもりやすく、夜になっても冷えにくいという特徴があります。そのため、帰宅後の時間帯に暑さが残っている可能性がある点には注意が必要です。

まとめ

西向きの部屋は夏が暑いけれど、冬は暖かい

西日のデメリットは窓への工夫で解消できる

南向きに比べて価格が安い傾向にある

人気の向き、不人気の向きがありますが、どちらにもメリットとデメリットがあります。ライフスタイルによってはデメリットがメリットになることも。向きにこだわりすぎず視野を広くして、自分たちのライフスタイルに合う住まいを見つけましょう。

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取材・文/SUUMO編集部 イラスト/峰村友美
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