ビーチリゾートのような開放感とリラックスできる雰囲気が魅力の西海岸インテリアは、日本の木造住宅とも相性が良く、取り入れたいと考える人も少なくありません。では、西海岸インテリアが似合う部屋にするには、どのようなポイントを押さえるべきなのでしょうか。
今回は、グローバルベイスマイリノの比嘉隆二郎さんにお話を伺い、西海岸インテリアの魅力や、新築・中古マンションで取り入れる際のポイントを紹介します。
そもそも西海岸インテリアとは具体的にどこをイメージしたもので、どんな特徴があるのでしょうか。
「西海岸インテリアにおける『西海岸』は、アメリカのカリフォルニア州を指すのが一般的です。なかでもベニスビーチやロングビーチなど多くのビーチリゾートを抱え、一年中温暖な気候のロサンゼルスをイメージすることが多いです」(比嘉さん/以下同)
西海岸インテリアは、砂浜と海・空をイメージさせる白と青を基調とし、木材やグリーンを加えてナチュラルに整えるのが特徴です。
「西海岸インテリアは、『古くていいもの』を大切に使うことも特徴です。潮風にさらされ風化した素朴な雰囲気を出すために、ファブリックであればヴィンテージ感のあるデニム、木材であれば無塗装の無垢(むく)材を使うイメージです」
夏の印象があるかもしれませんが、秋冬もファブリックの素材をニットやフランネルなど温かみのあるものを使用したり、キャンドルとあわせると素敵なインテリアになりそうですね。
西海岸インテリアはナチュラルな雰囲気が特徴となりますが、さらなる魅力として以下のポイントが挙げられます。
アメリカの西海岸エリアは、海沿いに都市が広がり、潮風や太陽の光を感じられるのが特徴です。住居面積も広く、開放的な空間でゆったりとした時間を過ごせます。そのため、西海岸インテリアを取り入れることで、開放感あふれるリラックス空間を演出することが可能です。
開放感を引き出すポイントとして、西海岸インテリアには自然素材が多く使われます。日本の木造住宅とも相性が良く、違和感なくなじむのも魅力の1つです。
さらに、西海岸インテリアに囲まれた空間は、心を癒やし、リラックスできる雰囲気を生み出します。仕事や家事で忙しい毎日を過ごしている人にもオススメのインテリアスタイルです。
西海岸インテリアを取り入れる際、カラーバランスは重要なポイントです。特に欠かせないのがブルーで、色の選び方によって空間の雰囲気が大きく変わります。例えば、透明感のあるターコイズブルーを使えば爽やかな印象に、デニムブルーを取り入れれば、肩の力を抜いてリラックスできる空間に仕上がります。
また、ブルーだけでなく、他のカラーとの組み合わせ次第で、さらにおしゃれな雰囲気を演出できます。ホワイトと組み合わせると、より爽やかな印象に。ブラウンやアッシュグレーを取り入れると、爽やかさの中に自然の温かみをプラスできます。
「西海岸風にそろえると画一的な印象になり、個性がなくなるのでは?」と心配する方もいるかもしれません。しかし、西海岸インテリアにはさまざまなスタイルがあり、工夫次第でオリジナリティを演出できます。
例えば、明るめのカラーを基調にし、壁にサーフボードを飾れば、ビーチハウスのような開放的な雰囲気に。また、ヴィンテージ家具を取り入れることで、落ち着きのあるレトロな空間に仕上げることも可能です。
このように、西海岸インテリアは選ぶ家具や小物次第で雰囲気を自在に変えられるのも大きな魅力です。
西海岸インテリアは、一歩間違えるとカジュアル感が強くなってしまうため、シンプルにまとめたいときのインテリアの選び方を伺いました。
「西海岸テイストにしたいときには、ファブリックと無垢材を素材とした家具を選びます。そのときファブリックはヴィンテージ感があるデニムを使うとラフな雰囲気を出せますが、カジュアルに寄ってしまいます。
高級感を出したい場合は、例えばソファを無垢材のアームや脚が付いた大きめのタイプを選ぶと、リッチさがプラスされるのでオススメです」
「ラグは毛足の長いタイプより、インド綿を織ったような素朴なものが西海岸インテリアには似合います。壁や床の差し色を控えめにしている場合は、青や、青と白のボーダーのラグを選ぶとアクセントになります。
より大人っぽくシンプルにまとめたい場合は、ベージュなどアースカラーのネイティブ柄を選んでもよいでしょう」
「窓には白い薄手のカーテンを選ぶと、南風を感じる軽やかなイメージになります。よりおしゃれで高級感がある雰囲気を出したいときには、ウッドブラインドもオススメです」
「近年マンションリフォームでも照明はダウンライトがメインとなっていますが、雰囲気を出すためにはペンダントライトやブラケットライト(壁に直接取り付けるタイプ)を併用するのがオススメです。
例えばキッチンカウンターやダイニングテーブルの上にガラス素材のペンダントライトを付ける、玄関にブラケットタイプのマリンライトを設置することなどが考えられます。天井を見せ梁にしている場合は、シーリングファンライトを取り付けてもよいでしょう」
「西海岸インテリアの部屋には、大型の観葉植物も欠かせません。フェニックスやアレカヤシなど、南国テイストのある植物を選ぶと、ナチュラルな雰囲気と高級感の両方を演出できます」
「横文字が入ったような小物類を配置すると、西海岸の明るいアメリカンな雰囲気を演出できます。しかしそういった小物をたくさん配置するとカジュアル感が強くなり、少し子どもっぽいイメージになってしまいます。
大人な雰囲気の西海岸インテリアの部屋にしたい場合は、おしゃれなポスターや写真をフレームに入れてさりげなく飾るなど、センスがいい小物を少量配置するのがオススメです」
西海岸インテリアを演出する際には、気をつけるべきポイントもあります。ここでは、注意すべき点を解説します。
西海岸インテリアでは、さまざまなカラーを組み合わせて理想の雰囲気を演出できます。しかし、多くの色を取り入れすぎると、統一感がなくなり、まとまりのない印象になってしまいます。色のバランスが取れていないと、おしゃれに見えにくく、部屋が雑然とした印象になるため注意が必要です。
特に、西海岸らしいカジュアルでストリート感のある雰囲気を出したい場合、ポップなカラーを取り入れたくなるかもしれません。しかし、差し色程度に抑え、全体のカラーバランスを意識することが大切です。
カラーコーディネートだけでなく、家具や床材の質感をそろえることも大切です。統一感がないと、全体の雰囲気がちぐはぐになってしまいます。
例えば、床材に色合いや木目が均一すぎるフローリングを選ぶと、ナチュラルな雰囲気が感じられず、家具を西海岸インテリアにそろえてもまとまりが出にくくなる可能性があります。
また、西海岸らしい爽やかな雰囲気を演出している空間に、1つだけヴィンテージ家具を置くと、その家具だけが浮いてしまうことも。アクセントとして機能する場合もありますが、統一感を重視するなら、家具や床材の質感もそろえたほうがよいでしょう。
統一感を持たせることで西海岸テイストを演出できますが、そろえすぎるとかえって不自然に感じられることもあります。例えば、同じシリーズの家具で統一するのは大切ですが、それだけでは単調になり、個性が出にくくなります。こだわりのある空間にするなら、アクセントとなる家具をあえて取り入れるのも1つの方法です。
ただし、統一感がなさすぎるとちぐはぐな印象になるため、部屋全体のバランスを見ながら、アクセントアイテムは1~2点程度に抑えるのが理想です。そうすることで、統一感を保ちつつ、程よく個性を演出できます。
西海岸インテリアの部屋を、大人に似合うかっこいい空間にするコツを伺いました。
「西海岸インテリアの似合う部屋にするには開放感が大切とはいえ、特に都心などではどうしても確保できる広さに限りがあります。そのためリビング・ダイニングを広く見せたいときには、目線を遮らない程度に背の低い家具を選ぶのも方法の1つです。
「なおマイリノでは、インテリアを楽しみたい人には、家具は造り付けにしてしまうより、好みの家具を選ぶことをオススメしています。造り付けにしてしまうと、レイアウトの変更が難しくなることが理由です」
「キッチンについては、リビングに向かって立つ対面キッチンにすることが多いです。その場合、腰壁を高くして手元が見えないようにすると、すっきり片付いて見えます。
キッチン本体は天板が木材のものを選んで造作すると、より西海岸の雰囲気に近づきます。ただ木材の天板は、日本の高温多湿の気候だとお手入れが大変難しく、取り扱っているメーカーも多くありません。そのため現実的には、白を基調とした人造大理石などの天板のキッチンを選ぶ方がほとんどです。その場合、立ち上がり部分やキッチンの背面に白いサブウェイタイルを張るとおしゃれです」
「寝室については、フレームやヘッドボードにマットな質感の無垢材が使われたベッドを選ぶとよいでしょう。またベッドにはつきもののクローゼットは、扉をルーバーにすると雰囲気が出るのはもちろん湿気対策にもなります。費用はかかりますが、検討してもよいでしょう」
「洗面所を西海岸インテリアにしたい場合は、無垢材やタイルを使ってカウンターを造作することを希望する方が多いです。造作したカウンターに大きめの洗面ボウルを置いたり埋め込んだりし、立ち上がり部分20cm程度にサブウェイタイルやモザイクタイルを張ります。さらにその上に同じく無垢材のフレームが付いた大きめの鏡を取り付けると、西海岸インテリア風になります」
「トイレでも西海岸インテリアを意識したい場合は、白をベースに無垢材をうまく取り入れるのがポイントだと思います。ちょっとした棚を無垢材でつくり小さな観葉植物を置くだけでも雰囲気を出せます。差し色として青を入れたい場合は、トイレは狭い空間なので、ごくごく控えめにすることがシンプルにまとめるポイントです」
「玄関については、近年は広いスペースを取られる方が増えてきました。西海岸インテリアを意識する場合も空間を広く取ると、開放感のある玄関になるだけでなく、ディスプレイを兼ねて自転車を保管できるなど実用的です。壁は白、床はモルタル、もしくはモルタル調のタイルを張ると。シンプルながらスタイリッシュに仕上がります。
靴の収納については、大人な雰囲気を目指すのであれば、オープンにするより扉を付けるのがオススメです」
西海岸インテリアをシンプルテイストにまとめるために、部屋にできる工夫にはどのようなものがあるのでしょうか?
「最近は新築マンションでも、建築前に売り出すタイプは建具や壁・床の色を選べるケースも増えています。西海岸インテリアが似合う部屋にしたい場合は、建具と壁は白を選び、床材にはオークなど明るい色を選ぶとナチュラルな雰囲気を演出しやすくなります」
中古マンションは新築マンションと異なり、フルリノベーションすることで、色だけでなく間取りや内装の素材まで自由に選べます。
「青い空と白い砂浜が広がる西海岸をイメージさせるためには、開放感を出すことがなによりも大切です。そのためには部屋を細かく区切らず、LDKは一体化させて広い空間を確保するのが基本です。目線が抜けるよう、室内窓を設ける方法もあります」
「天井については見せ梁(みせはり=天井を張らないスタイル)にすると高さを出せますが、防音や断熱との兼ね合いを考える必要があります。天井を張りたい場合は、白い天井にするのはもちろん、板張りにするのも西海岸インテリアの雰囲気が出るのでオススメです」
「西海岸インテリアでは、壁の色はマット調の白のペンキで塗装する、もしくはペンキ塗装調のクロスを張るのが基本です。差し色として青を使う場合は、目が覚めるようなブルーよりもくすみ系の青を選ぶと落ち着いた雰囲気になります。
またアクセントカラーの配分が多くなるほど、カジュアル感が強くなります。そのためシンプルテイストにまとめたいときは、アクセントカラーはカウンターキッチンの腰壁だけにするなど、配分を控えめにするとよいでしょう」
「床材はオークなど明るい色調のものが西海岸インテリアには合います。その際、ウレタン加工などがされていない、艶がないマットな質感の無垢材を選ぶと素朴感とナチュラル感を演出できます。
また床材は幅が細いものよりも、20cm程度の幅広のものを選ぶとよりラフな雰囲気を出せるのでオススメです。西海岸インテリアでも高級感を出したい場合は、床材をV字に張る『ヘリンボーン張り』にすることもあります」
最後にあらためて比嘉さんに、これからマンションを購入して西海岸インテリアが似合う部屋にしたいと考えている方に向けてのアドバイスを伺いました。
「おしゃれな西海岸インテリアの部屋にしたいときには、壁や造作家具など、あとから変更しにくい部分に西海岸のテイストを強く出し過ぎないことがポイントだと思います。
例えば壁や床はナチュラルテイストでまとめ、ラグやソファ、家具などで西海岸テイストに寄せるほうが、カジュアル感を抑えて大人っぽくなります。そうすることで、今後よりいろいろなスタイルを楽しめるのもメリットです。
例えば壁一面に青を入れる、家具を造り付けるなどしてしまうと、あとで好みが変わったときに対応するのが難しくなるためよく検討して決めましょう。今後も踏まえたリノベーションを提案してくれる会社を選び、ぜひ理想のお部屋づくりを楽しんでみてください」
西海岸インテリアとは、カリフォルニア州のビーチリゾートをイメージしたインテリアスタイルのこと
白と青を基調とし、木材やグリーンを加えてナチュラルに整えるのが西海岸インテリアの特徴
差し色とする青の配分を抑えると大人っぽくおしゃれな西海岸インテリアの部屋にできる