鉄骨造(S造)のマンションは話し声がうるさい?音漏れのデメリットについて専門家が解説

公開日 2023年09月29日
鉄骨造(S造)のマンションは話し声がうるさい?音漏れのデメリットについて専門家が解説

鉄骨造はマンションで採用されている構造の一つです。しかし、「話し声が聞こえて気になる……」という声もあり、入居後に後悔しないためにも構造の特徴について正しく理解しておいたほうがよいでしょう。さくら事務所の矢野雅稔さんにお話を伺い、鉄骨造マンションのメリットやデメリット、防音対策、後悔しないためのチェックポイントなどについて紹介します。

マンションの構造の主な種類は?

マンションで採用されている構造には、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄骨造(S造)、木造(W造)の4種類があります。それぞれの構造の特徴について解説します。

鉄筋コンクリート造(RC造)

鉄筋コンクリート造(RC造)は、鉄筋を組んでつくった型枠の中にコンクリートを流し込んで固める工法が特徴です。柱や梁、床、壁が鉄筋とコンクリートによって構成されています。日本の多くのマンションでは鉄筋コンクリート造が採用されています。

RC造のイメージ
RCとは「Reinforced Concrete Construction」の略。RC造はマンションの構造の中では最もポピュラー(イラスト/あべさん)

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)

鉄骨(S)と鉄筋コンクリート(RC)を組み合わせてつくられるのが、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)です。鉄骨の柱や梁の周りに鉄筋を組み立て、型枠工事をしてコンクリートを流し込む工法になります。ほかの構造よりも耐火性、耐震性、遮音性に優れています。

SRC造のイメージ
SRCとは「Steel Reinforced Concrete Construction」の略。SRC造は大型マンションで採用されることが多い(イラスト/あべさん)

鉄骨造(S造)

鉄骨造(S造)とは、柱や梁に鉄骨を用いた構造のことをいいます。鉄骨造は部材の厚みによって重量鉄骨造と軽量鉄骨造に分類されます。住宅のほかにも、ビル、倉庫、体育館など大規模な建築物にも用いられます。

S造のイメージ
SはSteelの頭文字。S造は重量鉄骨造と軽量鉄骨造の2種類の構造に分類され、それぞれ特徴が異なる(イラスト/あべさん)

木造(W造)

躯体(くたい)や床、壁に木材を使用した木造(W造)はマンションの構造としてはあまり一般的ではありませんでしたが、近年は脱炭素への取り組みを背景に注目が集まっています。鉄筋コンクリート造と比較すると環境負荷が低く工期が早いというメリットがあります。部材の調達やコスト面などで課題がありますが、木材加工技術の向上に伴い、今後は増えていくと予想されています。

木造建築のイメージ
WはWoodの頭文字。W造は一戸建ての建築に用いられることが多い(画像/PIXTA)

鉄骨造とは? メリット・デメリットも紹介

次に、鉄骨造の特徴やメリット、デメリットについて矢野さんのお話をもとに詳しく解説していきます。

鉄骨造の種類と特徴

鉄骨造には重量鉄骨造と軽量鉄骨造の2種類があります。
3階建て以上の大型のマンションやビルでは重量鉄骨造が採用され、小規模なアパートやマンション、一戸建て住宅、店舗などで軽量鉄骨造が採用されるのが一般的です。

「軽量鉄骨造は部材の厚さが6mm未満のものをいいます。重量鉄骨造に比べて工期が短く、建築コストを抑えることができます。また、部材が薄く軽いため耐震性にも優れています。
一方、重量鉄骨造は部材の厚みが6mm以上のものをいいます。軽量鉄骨造よりも重量鉄骨造のほうが部材に厚みがあり強度に優れています。マンションのほか、体育館やビルなど大規模な空間をつくるのに適した工法です」(矢野さん、以下同)

軽量鉄骨と重量鉄骨造の比較図
重量鉄骨造と軽量鉄骨造は部材の厚みに違いがある(イラスト/あべさん)

鉄骨造のメリット

工期が短い

「鉄筋コンクリート造と比較して圧倒的に工期が短いところが鉄骨造のメリットといえます。例えば3階建てのマンションをつくる場合、鉄筋コンクリート造は半年~1年ほど工期がかかりますが、鉄骨造であれば4~5カ月ほどで完成させることができます。

鉄筋コンクリート造の場合は、型枠にコンクリートを流して固まるのに約1カ月程度かかります。コンクリートが固まるまで上階の工事ができないため、建物の完成までにそれなりの時間が必要です。一方、鉄骨造の場合は工場でつくられた部材を建築現場で組み立てるだけなので工期が短く建築コストも抑えることができるのです。

間取りの自由度が高い

また、鉄筋コンクリート造に比べて間取りの自由度が高いことも鉄骨造のメリットといえます。広がりのある大規模な空間に適した構造なので、吹抜けのあるメゾネットの部屋などをつくりやすいのが特徴です」

鉄骨造には地震で揺れやすいという特徴がありますが、これはデメリットではなくメリットと捉えてよいでしょう。揺れることで地震のエネルギーを吸収し、その結果、建物が倒壊しにくくなるためです。

鉄骨造の倉庫
倉庫や体育館など大空間をつくるのに適している鉄骨造(画像/PIXTA)

鉄骨造のデメリット

音が伝わりやすい可能性がある

「鉄筋コンクリート造と比較すると、音が伝わりやすいことが鉄骨造のデメリットです。
鉄筋コンクリート造はコンクリートを流し込んでつくるため、壁と床が一体化し、音漏れがしにくい構造になっています。しかし鉄骨造は、鉄骨で骨組みをつくってから壁や天井をつける構造のため隙間ができやすいのです。
ただし、施工の精度によっては鉄筋コンクリート造マンションと同等の防音・遮音性をもつ鉄骨造マンションも建設可能です。丁寧につくられたグレードの高い鉄骨造マンションであれば、音漏れはあまり気にしなくてもよいでしょう」

屋外の熱が伝わりやすい

また、素材の特性上、鉄骨造には屋外の熱が伝わりやすいという弱点があります。

「鉄骨造は断熱材の隙間ができやすいという弱点があるため、丁寧な設計、施工が必要です。また、ベランダや外階段など鉄骨が露出している部分があると、外の熱が屋内に伝わりやすいことも特徴です。そのため、冬は寒く夏は暑くなってしまう可能性があります。冷気によって天井裏などで結露し、部材がサビてしまうことも。特に軽量鉄骨造は部材が薄いため一度サビると急速に劣化します。マンションの断熱性に不安がある場合は、インナーサッシで断熱性を高めるなど、対策することをおすすめします」

露した窓のイメージ
冬は断熱対策をしないと結露する可能性がある(画像/PIXTA)

鉄骨造マンションで話し声や音はどれくらい聞こえる?

鉄筋コンクリート造よりも音が漏れやすいという特性がある鉄骨造。実際にどれくらい話し声や音が聞こえるのかについて解説していきます。

鉄骨造マンションは音が伝わりやすく、生活音はほぼ聞こえる

音の伝わり方はマンションの構造ごとに異なるので注意が必要です。重量鉄骨造は足音やドアの開閉音などが聞こえる程度、軽量鉄骨造はドアの開閉音や家具の振動音、上階の足音など生活音がほぼ聞こえる程度といわれています。

なお、鉄筋コンクリート造は生活音がほぼ聞こえない程度、木造は生活音がほぼ聞こえる程度という基準になっています。この基準をもとに考えると、鉄骨造のマンションは木造マンションと比較すると音が伝わりにくいものの、鉄筋コンクリート造よりは話し声や生活音が聞こえやすいといえます。ただし、同じ構造であってもコンクリートの厚みなどによって音の伝わり方は異なるため、あくまでも目安になります。

建物の構造(一般的な目安として) 音の伝わり方
鉄骨鉄筋コンクリート造 物の落下音や走る音はかすかに聞こえる。生活音はほぼ聞こえない。最も音が伝わりにくい構造。
鉄筋コンクリート造 落下音や走る音など振動を伴う音は聞こえるが気にならない程度。生活音はほぼ聞こえない。
重量鉄骨造 落下音や大きな足音が聞こえる。ドアの開閉音やドライヤーなど大きな生活音も聞こえる。
軽量鉄骨造 テレビの音や話し声などの生活音は聞こえる。上階の足音が響く。木造よりは音が伝わりにくい。
木造 隣人の気配が分かるくらい音が聞こえる。テレビの音など生活音はほぼ聞こえるため、プライバシーの確保は難しい。

設計によっては鉄筋コンクリート造と同等の遮音性能・衝撃音性能を確保

「鉄骨造のマンションは音が伝わりやすく、隣人の生活音が聞こえるというイメージをもっている方が多いと思います。実際、建築基準法の最低限の基準を満たしただけの鉄骨造マンションの場合は音が伝わりやすいです。しかし設計の工夫によっては、鉄骨造であっても鉄筋コンクリート造に近い遮音性能や衝撃音性能をもたせることもできます。

例えば、壁を二重にしたり、コンクリートのパネルを間仕切りとして採用するなど、建築時にプラスアルファの工夫をすることにより音が伝わりにくくなります。ただし、こういった工夫をしている鉄骨造マンションには付加価値があり建物自体のグレードが高くなるため、物件価格や家賃も高めに設定される傾向にあります。

また、見えにくい部分ではありますが、屋根の下の空間で対策をしているかどうかも大切なポイントになります。生活音は壁や床だけではなく天井からも隣戸に伝わるため、屋根の下の空間に仕切りとなる壁があることが重要です」

天井裏の間仕切り壁のイメージ
屋根の下に仕切りを設けた2つの鉄骨造りマンションの例。屋根の下の空間に壁をつくり隣戸と仕切ることで音が伝わりにくくなる。丁寧に施工されていないと音漏れの原因になる(イラスト/あべさん)

購入前も購入後も! 鉄骨造マンションの音問題で後悔しないチェックポイント

鉄骨造マンションの音問題で後悔しないためのポイントについて、マンション購入前と購入後に分けて紹介します。

マンション購入前のポイント

マンションの構造を調べる

購入を検討しているマンションの構造を確認し、建物の音の伝わりやすさをある程度は予測することが可能です。建物の構造を知りたい場合は、建物登記簿謄本や宅地建物取引業法に基づく重要事項説明書、不動産取引の書類等で確認できます。不明な場合は購入前に不動産会社に聞いてみるとよいでしょう。

音問題が気になりにくい位置の部屋を選ぶ

接する隣戸が少ない角部屋や、上階の生活音を気にしなくてよい最上階の部屋を選ぶと鉄骨造マンションにおける音問題に悩まされる可能性が減ります。

「ただし、音問題が気になるため角部屋や最上階の部屋を選ぶ場合は注意点があります。外壁に面している角部屋は隣戸からの音を防ぐことができても屋外から音が入ってくる可能性があります。また、最上階の部屋は屋根が近いため暑い季節の熱の問題が懸念されます。断熱性能の低い建物だと熱問題が顕著なので住まい選びの際は注意しましょう」

また、小さな子どもがいる家庭など、自分たちの足音が下の階に響くことを懸念している場合は1階の部屋を選ぶとよいでしょう。

【音問題が気になりにくい部屋の例】
  • 最上階(下階の音に悩まされない)
  • 角部屋(隣戸の音に悩まされない)
  • 1階(自分の足音を気にせず生活できる)
音問題が気になりにくい部屋
音問題が気になる場合は、角部屋や最上階、1階を選ぶとよい(イラスト/あべさん)

周辺環境に注意する

繁華街に面していたり、近隣に工場などがある場合は建物の外から騒音が入ってくる可能性が考えられます。

「隣戸や上下階の音問題だけでなく、周辺環境の音問題にも意識を向けてマンションを選んだほうが快適に暮らすことができます。購入前に現地を訪れ、建物の周りに何があるのか、音の聞こえ方などをチェックしてみましょう」

マンション購入後のポイント

インナーサッシを設置する

音の多くは窓から出入りします。インナーサッシ(内窓)を設置することで遮音効果があります。また、遮音だけでなく家の断熱性を高めてくれる嬉しい効果も。ガラスの種類によっても遮音・断熱効果は異なるため希望に合ったものを選ぶとよいでしょう。

「インナーサッシを設けるのは音問題を気にする方におすすめの手法です。室内工事のみになるため、取り付けも比較的簡単で、DIYで設置することもできます。ただし、窓枠に奥行きがないと設置が難しい可能性もあるので注意してください」

インナーサッシ
インナーサッシによって遮音性だけでなく断熱効果もアップ(画像/PIXTA)

壁面に大型家具を置く

隣戸に音が伝わるのを防ぐために、壁面に大型家具を置くことも有効です。ベッドやクローゼット、本棚などは、マットレスや収納している衣類、本が吸音材の役割を担うため防音性に優れています。
また、話し声が隣戸に伝わらないようにするために、ソファやダイニングテーブルなどを壁から遠い場所に設置するのもよいでしょう。

防音カーテンを設置する

防音性の高いカーテンを設置すると、屋外から入ってくる音を遮る効果があります。周辺環境の音が気になる場合は試してみるとよいでしょう。

スリッパやラグで足音対策

自分の家の音が下の階に伝わらないようにするために、スリッパを履いたり、床にラグやクッションマットなどを敷くという選択肢もあります。

鉄骨造マンションの特徴を正しく理解しよう

「鉄骨造のマンションは木造の建築物と比較すると音が伝わりにくいものの、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションと比較すると音が伝わりやすいという特性があります。しかし、施工方法によって音が伝わりにくくすることは可能なため一概に『鉄骨造は音問題に弱い』とも言い切れません。音が伝わりにくい建築物にするためには丁寧な施工が前提となります。たとえ鉄筋コンクリート造であっても施工不良があれば音が漏れやすくなるおそれがあります。鉄骨造マンションの音問題で後悔したくないと考えている方は、検討中のマンションがどのような設計になっているかに意識を向けてみることをおすすめします」

鉄筋コンクリート造よりも工期が短いことや価格が安いことなど、鉄骨造ならではの強みもあります。遮音性と同時にそういった特徴も踏まえ、快適に暮らせる住まい探しをしましょう。

まとめ

鉄骨造は、木造と比較すると音が伝わりにくいものの、鉄筋コンクリート造よりは音が伝わりやすい

建築基準法の最低基準を満たしただけの軽量鉄骨造では、隣家や上下階の生活音はかなり聞こえる可能性がある

鉄骨造のマンションであっても設計の工夫次第で遮音性能や衝撃音性能を高められる

購入後もインナーサッシの設置や家具の配置によって音問題を緩和できる

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取材・文/佐藤 愛美(りんかく) イラスト/あべさん
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