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マンション購入を検討する人にとって、何より気になる「今は買い時?」。
コロナ禍やオリンピックの延期など、社会情勢に大きな変動があった2020年、
マンション市場はどうなっている?これからは一体どうなるの?
今回は、不動産市場の調査・分析のプロ、東京カンテイの井出武さんに
マンション市場のあれこれと買い時の見極め方を教えてもらいます。
2020年の首都圏の新築マンションは、15年前よりも販売価格が坪単価約180万円から約330万円へと、150万円ほど値上がりしています。上昇曲線はこの15年間ゆるやかなカーブを描き続け、今も右肩上がりをキープ。その傾向は近畿、中部、福岡でもほぼ同じ。これだけ長く上昇を続けていると「いつかは下げ止まる、もしくは下がる日が来るのでは?」と購入を待ちたくなる気持ちにもなるもの。現在の市場が、どのような理由でこの状態を続けているのかを把握し、今後の動きを予測していきましょう。
「超低金利が続いたことで資金調達がラクになり、マンションを相続税対策や投資対象にする富裕層や投資家などが増えてきました。今の市場には、価格が上がっても影響を受けない、このような層がたくさんいます。2008年のリーマンショックのときでさえ、おおむね3割下がってすぐに2割戻し、結局1割上がった、というのが私の印象。その後はずっと上がっています。マンションの資産価値がそれだけ手堅いと思われている、ということでもあります」(井出さん)
リーマンショック前の2005年までは、マンションの供給が大量にあり、購入者のほとんどが一次取得者、つまり賃貸から初めて持ち家を買う人たちでした。しかし、リーマンショック後は、「自分が住むためのもの」よりも「資産として持っておくもの」として買われるようになった側面もあるようです。

新築マンションの価格が上がっている一方で、販売戸数自体は減少し続けています。建てても売れないから市場に出てこない、ということなのでしょうか?
「市場に出るマンションの戸数は各デベロッパーの計画のもと販売されています。近年、共働き世帯が増え、都心部の好立地に人気が集まる一方、マンション用地となるような土地は不足しており、供給自体が減少かつ都心化しているのが近年の高価格の要因になっています。購入希望者に対して新築のマンションの供給が追いつかない分、中古マンション物件が新築とあまり変わらない価格でも売れるようになりました。その結果、エリアによって差はありますが、2018年あたりから首都圏、関西圏では、築5年以内の築浅マンションの価格が新築と同じ動きをするように変化し、「新築マンション」「中古マンション」というくくりが無くなってきたのです。また、新築マンションが市場に多く出てこないと、今後は築浅中古も減り続けることになります。そうなると、築10年以内のマンションの注目度が高まり、今はまだ抑えられている価格が一気に上がる可能性も考えられます」(井出さん)
新築同然なのに割安感のあった築5年以内の築浅中古が、今では新築と近しい価格になり、手が届きにくい存在に。しかし、築5年以内と築10年の物件を比較すると割安感があり、在庫もまだ豊富。築10年の中古は今が狙い目かもしれません。




緊急事態宣言は解除されたものの、2020年9月現在まだ新型コロナ収束の気配は見えてきません。
「このタイミングでの将来予測は難しいですね。2月には販売戸数と価格がいったん下がったものの、どちらもすぐに戻っています。以前のように、モデルルームに集客して短期間で販売するという手法であれば、新型コロナウイルスの影響を受けやすかったと思いますが、今はネットで集客も販売もできるということもあります。
新型コロナウイルスの影響があるとすれば、インバウンド需要が激減したことで、ホテル用地が売りに出されたことでしょうか。駅近のマンションになりそうな用地は、以前はすべてホテル用地に奪われていましたから。いい土地が売り出されるようになったからといって、物件価格が安くなるわけではありませんが、ホテル用地になるほどの、利便性に恵まれた立地の新築物件が出てくる期待は持てそうですね。
景気の動きは「株価」で見ていきましょう。株価は景況感を表す大きな指標になります。市況が株価に与える影響力は昔ほど大きくはありませんが、良し悪しのどちらの方向に行っているかを見定めることはできます。株価とマンション価格は連動しているわけではありませんが、株もマンションも、余った資金が向かう先であるという構造が同じなので、ほぼ同じ動き方をするのです」(井出さん)
東日本不動産流通機構が公表している「都心3区中古マンション成約m2単価」と日経平均株価の推移を重ねると、中古マンションの成約価格は株価に連動するように動いていることがわかります。
オリンピックは現段階では1年延期が決定しています。オリンピックが中止された場合、無事開催された場合、どちらもマンション市場はどうなるでしょうか?
「オリンピックが延期になったことで、その影響も先送りになりました。確かに、オリンピックは重視されているので、中止になった場合は、経済活動が多少抑えられるかもしれません。
ただ、東京の開発はオリンピック一本で動いているわけではありません。港区や渋谷駅前のような、大型の再開発が次々と動いており、資材も人材も常に必要性が求められ、用意されています。オリンピックが無くなっても、実体経済への影響はそれほど大きくないはずです。
何よりも、今はデベロッパー側が非常に慎重かつタフになっています。リーマンショックのときにデベロッパーの数が半減し、大手だけで半分以上のシェアを占めるようになりました。また、どの企業も供給や値付けに慎重になった結果、多少の変動には負けない強さを身に付けたのです。価格を下げなければいけない一番の理由は『売り急ぐこと』。景気が悪くなってもしばらく手元に置き、ゆっくり売るだけの体力がデベロッパーにある以上、市況が多少変化したところで価格を下げるとは考えにくいでしょうね」(井出さん)
マンションの価格が変動しにくいということは、マンションを購入した人の資産が守られるということでもあります。「安くなってから買いたい、でも買った後は安くなられると困る」と慎重になることは大切ですが、市況だけにこだわっていると購入するタイミングの見極めはさらに難しくなりそうですね。

新築マンションが手の届きにくい存在になるにつれ、中古マンションへの注目度がどんどん高まっています。しかし、いくつかの住戸が同じタイミングで販売され、「定価」がはっきりしている新築マンションに比べて、一戸単位で世に出てくる中古マンションは「適正価格がいくらか」がわかりにくいのが難点です。ここでは、中古マンションの相場の知り方を、井出さんに教えていただきます。
一般的に、中古マンションの価格は「立地、面積、築年数」で決まると言われています。面積と築年数については、新しく広くなるほど価格が上がるのは当然。価格の差もわかりやすいはず。では、立地によって、価格はどれくらい違ってくるのでしょうか。
「『立地が占める割合が9割』という人もいるほど、中古マンションの価格は立地が大きな決定要素になります。『このマンションでどれだけ賃料を取れるか?』を考えてみてください。例えば駅徒歩1分と徒歩11分では、賃貸に出したときのライバルの出現率が圧倒的に違います。駅徒歩1分というと、駅から半径80mのごく狭い範囲。ライバルが出てくる可能性は非常に小さいですよね。『いくらで貸せるか』はわからなくても、駅に近いほど借り手がたくさん現れる有利さがあるのは確実。それだけ資産価値が高い=価格が高くなるのです」(井出さん)
立地によってマンション価格が大きく左右されるということは、予算に合ったマンションを探すには立地で調整するのが最も効果的だということ。駅徒歩8分では希望する物件が見つからないエリアでも、15分まで広げれば見つかるかもしれません。予算が折り合わないときは、物件検索サイトの条件を細かく調整して探してみませんか。

駅からの距離以外にも、街の人気度や利便性で価格は違ってきます。では、エリアごとの相場はどうすればわかるでしょうか。
「インターネットSUUMOのような不動産ポータルサイトを活用してみてください。物件を選ぶのに有効なエンジンであるだけではなく、出ている物件の数も種別も多く、とても充実した資料になっています。例えば同じ条件でエリアを変えたり、同じエリアでも駅からの距離を少しずつ変えたり。検索条件を変えることで、相場の違いがわかってきます。これを使わない手はありません」(井出さん)
物件をたくさん見ていくうちに相場感覚が養われるので、「エリアの相場から見て高すぎる」といった判断もできるようになるはず。ぜひ物件検索サイトを使いこなしてみましょう。
| エリア | 70m2未満 | 2DK,2LDK |
|---|---|---|
| 東京都都心部(千代田区,中央区,港区,新宿区,文京区,渋谷区) | 7093万円 | 8856万円 |
| 23区南部(品川区,目黒区,大田区,世田谷区) | 5361万円 | 4968万円 |
| 23区西部(中野区,杉並区,練馬区) | 4342万円 | 3752万円 |
| 23区北部(豊島区,北区,板橋区) | 4106万円 | 3575万円 |
| 23区東部(台東区,墨田区,江東区,荒川区,足立区,葛飾区,江戸川区) | 3657万円 | 3716万円 |
| 都下(八王子市,立川市,武蔵野市,三鷹市,府中市,調布市,町田市,多摩市) | 2799万円 | 3752万円 |
エリアごとの相場の違いは物件検索サイトでわかりますが、そこに出ているのはあくまでも販売価格。売り手が「この値段で売りたい」という言い値です。実際に取引が成立した価格は検索サイトだけではわかりません。
「当社が調べた結果では、中古マンションの販売価格と実際の取引価格の平均的な差は約7%。市況が悪くなった時には10%ほどになったり、景気がいい時には5%ほどになったりはしますが、おおむね7%で推移しています。『4500万円ぐらいで売りたいが、買い手との交渉の結果、最終的に4200万円で決着する』といった感じでしょうか。売り急いでいる場合はさらなる価格ダウンにつながることもありますし、売り出しが待たれている人気のビンテージマンションなどでは言い値がそのまま通ることも多いです」(井出さん)
そのマンションの人気度、売り手や買い手の気持ちなどで、中古マンションの販売価格と購入価格は違ってくるようです。予算を考えるときにはぜひ頭の隅に置いておきたいですね。

この先、急激な価格のアップダウンがないとすれば、マンションはいつ買っても同じ?お買い得なXデーはやってくるでしょうか?具体的に検証していきましょう。
「『下げ要因が見当たらない』のが、今のマンション市場。もし変化が起こるとすれば、9月に発表される基準地価が下がっていたとき。この基準地価は7月1日時点のものになるので、新型コロナウイルスの影響が反映されています。商業地では下降傾向、住宅地では横ばいという先行情報もすでに出ています。ただ、基準地価が下がったからといってすぐにマンション価格が下がることはありません。とはいえ、『地価が下がったから、マンション価格も下がるのでは』という雰囲気が世間に生まれると、それに押される可能性はあります。
また、秋以降には、大型物件や郊外型物件、価格を抑えた物件が新しく出てくると言われています。価格が抑えられると言っても、値下げではなく、あくまでも『戦略的な価格改定』です。タフになったマンション市場の体力を考えると、今後価格が下がる保証はどこにもありません。また、テレワークの働き方が浸透すれば、住まいに求める条件が変わり、それを反映した物件が出てくる可能性があります。例えば、『どんなに狭くてもテレワーク用に独立した1部屋が欲しい』『電車に乗らなくても充実した生活が送れる利便性を重視したい』などの需要が反映されていってもいいのではないかと思っています」(井出さん)
生活様式が変われば、住まいの形が変わるのは当然かもしれません。価格の動きだけでなく、どんな新しい提案が出てくるのかということにも注目していきたいですね。
マンションを買うと、20年、30年、40年と、長い間付きあうことになる住宅ローン。今の超低金利が当たり前と思っていると、万一金利が上がったときに慌てることになります。超低金利の今は、物件価格と総支払額の間にそれほど大きな違いは出てきません。しかし、金利がこれ以上下がることはないので、変化があるとすれば上がることだけ。そうすると、毎月返済額も総支払額も大きく変わってきます。買った後も、金利の動きには注意を払い続けたいですね。
| 金利が0.5%の場合 | 返済総額:54,512,740円 |
|---|---|
| 金利が1.5%の場合(35年固定タイプ) | 返済総額:64,298,491円 |
その差は978万5751円、実に1000万円近くの差に!
資産形成のために購入する人が多数存在するほど、マンションは「価値あるもの」として認められるようになりました。しかし、それだけ高額な買い物であり、市場の変化によって価値と価格が変わってくるものでもあります。「買い時がいつか」は後にならないと判断ができないため、様子見をしたくなるのも当然かもしれません。
しかし、マイホーム購入を先送りすれば、家賃の支払いはそれだけ増えてしまいます。また、子どもの成長やローンの年齢制限など、家族にとって大切なタイミングもあります。都心の新築には手が届かなくても、郊外の駅近物件や、都心でも駅から徒歩15分以上の物件、築10年以上の中古には、安くて魅力的な物件がたくさんあります。
市況を見ることは当然重要ですが、ムードだけに流されず、自分たちにとっての買い時、買い物件を見極めることが、今まで以上に大切になるのではないでしょうか。

資産家や富裕層の投資対象となる新築マンションは今後も高値が続きそう
新築マンションの戸数減少と同時に、築5年以内の中古マンションも高値に
新型コロナウイルスやオリンピックによるマンション市場への影響は少なそう
手ごろな新築、築浅、駅近物件は少ないが、築10年以上の中古や郊外物件は潤沢
変化が多い今の時期は、様子見をしつつ相場の勉強に充ててもいいかも