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同じ物件でも、価格が高いマンションの最上階。住んでみたいという憧れはあっても、価格に見合う価値が本当にあるのか、高い買い物だけに、そのメリット・デメリットはきちんと知っておきたいと思うものです。今回はマンション最上階のメリット・デメリットについて、新築マンションの販売企画・ブランディングに豊富な経験を持つ澄川誠治さんに教えてもらいました。
同じマンションで、同じ広さの住戸であっても、販売価格が異なることはあります。広さ以外にも、価格を左右する要因があるわけですが、その一つが住戸位置です。低層階より高層階の方が価格は高くなり、最上階住戸の価格が一番高いというのが一般的です。
同じマンションでも住戸位置によって価格が異なるのは、同じ物件の購入検討者のニーズを、価格によって分散させたいという意図が背景にあります。もちろん、同じ価格であっても、高層階よりも低層階を希望するという人もいるでしょう。しかし、同じ価格であれば眺望のいい高層階を希望する人が多くなるのが必然と言えるでしょう。したがって、需要のある高層階は価格が高くなり、低層階は低くなることが多いということになるわけです。
人気も価格も高いことが多い最上階住戸。価格が高くても住みたいと思われるということは、やはりほかの住戸にはないメリットがあります。
「最上階住戸は数が限られており、価格を高く設定する分、付加価値をつけた住戸を用意することが少なくありません。ほかの階よりも住戸数を少なくして角住戸比率を高めたり、設備や仕様をグレードの高いものにしたり、メゾネットやルーフバルコニーなど特殊な間取りが採用されていることもあります」(澄川さん、以下同)
そもそも、価格が高い住戸に住むということは、ある程度の収入があるということの証明にもなります。希少性やプレミアム感に加え、価格の高さによるステータス感や優越感を感じられるというのは、最上階住戸に住む醍醐味(だいごみ)ともいえるでしょう。
また、人気があり、希少性が高いということは、住まいの売却を考える際に、その住戸が最上階であることが強みになることもあります。ただし、スピーディーに高く売りやすくなる可能性はある一方で、最上階住戸だから資産価値が高いとは言い切れません。
「人気があるという意味において、資産価値は落ちづらいと考えられる一方、元々の価格が高いということも事実です。最上階住戸だから、買った時よりも高く売れるというわけではないので、ケースバイケースと考えておきましょう」

「高層マンションか、低層マンションか、あるいは立地などによっても異なりますが、最上階住戸は周囲の建物の影響を受けにくく、ほかの階に比べれば、開けた眺望を得られたり、日当たりが良かったり、風通しが良かったりと、開放感のある住戸であることが多いでしょう」
最上階住戸だからといって、必ず眺望や日当たり、通風がいいということではありませんが、同じ建物の低層階と比較すれば、いずれの点でもアドバンテージがあります。また、高層マンションの最上階で、周囲に高い建物がないような環境であれば、周りからの視線をあまり気にすることなく生活することができます。開放感がありながらプライバシー性も担保できるというのもうれしいポイントです。
ただし、最上階住戸に限ったことではありませんが、タワーマンションなどの場合、窓が開閉しないFIX窓の場合が少なくありません。その場合は窓を開けることができないので、眺望や日当たりといった点には期待できても、通風というメリットは享受することはできません。
マンションの場合、ほかの住戸からの生活音がトラブルの原因になることもあります。特に上階の住戸の足音や掃除機をかける音などは、生活リズムなどが異なると気になってしまうということもあるようです。しかし、最上階であれば、自分の住戸の上に住む人がいないので、上階の生活音などに悩まされることはありません。
「居住階にしか停止できないセキュリティを備えたエレベーターに加え、最上階だけエレベーターホールにもう一つセキュリティが確保されていることもあります」
価格が高い最上階には、特別仕様として厳重なセキュリティが設けられていることもあり、その場合はプライバシー性もほかの住戸よりも高くなると言えるでしょう。
なお、最上階は屋上から近いため、住戸に侵入されるリスクが低いわけではないと言われますが、一戸建てと比べると、マンションは各住戸のほかに共同エントランスやエレベーターなど複数のセキュリティが確保されています。高層マンションであれば特に屋上までのアクセスも困難です。

憧れの最上階住戸であっても、最上階ならではのデメリットもあります。
冒頭でも言及した通り、最上階住戸は価格が高く、その価格の高さがステータスにつながる要素ではあります。しかし、やはり価格が高いということはデメリットと感じる人もいるでしょう。ある人には価格が高くても住みたいと思うような魅力がある一方で、得られるメリットに対して住戸価格が高すぎると感じる人にとっては、価格は最上階住戸の大きなデメリットと言えるでしょう。
最上階は上に住戸がないというのが音の面ではメリットである一方、屋根からの熱が伝わりやすいため、ほかの住戸よりも夏暑く感じるという可能性があります。また、プレミアム感を出すため、最上階住戸は開口部を大きくとっていることがありますが、遮熱性の高いガラスを採用していないような築年数の古いマンションの場合は、直射日光が気になるということもあります。
大規模マンションなどはエレベーターが複数設置されていることが多いものですが、エレベーターの数が少ない場合は、移動が面倒に感じられることもあります。
「十分な台数のエレベーターが設置されていれば、ほかの階に比べて時間がかかるという心配はないと思いますが、マンションの規模に対してエレベーターの数が少ないと、最上階住戸は移動時間や待ち時間がストレスになる可能性もあります。
また、高層マンションの場合、最上階住戸に住む人はエレベーターを使わざるをえません。上り下りに必ずエレベーターを使う必要があるので、その点がデメリットと感じる人もいるでしょう。
ただし、エレベーターでの移動に関しては、最上階にはメリットもあります。最上階はエレベーターの“始発”階でもあるので、朝の混雑するタイミングなどは、エレベーターが混雑していて乗れないという事態を回避することができます」
最上階は地震の揺れを感じやすく、エレベーターが止まると移動も難しくなります。
「マンションが高層か低層かで、最上階住戸での揺れの感じ方は違いますが、やはり低層階よりも最上階のほうが揺れは感じやすいものです。ただし、最近のタワーマンションなどでは免震構造を採用することが多く、免震構造であれば耐震構造や制震構造よりも揺れは感じにくくなります。
また、災害時に停電になった場合はエレベーターが使用できなくなります。低層マンションの最上階住戸の場合はさほど問題ないかもしれませんが、高層マンションの最上階の場合は、階段での避難や移動に不便を感じることも考えられます」

最上階と一口にいっても、高層マンションと低層マンションではメリット・デメリットの両面で、住み心地には違いがありそうです。エレベーターでの移動や災害時の揺れに関しては低層マンションの場合よりも、高層マンションのケースに当てはまりますし、一方で、低層マンションの場合は、タワーマンションほどの眺望や開放感を得るのは難しいでしょう。
自分にとって価格に見合った価値を見出せるのなら、最上階住戸という選択肢も検討してみるのもいいかもしれません。
マンションの最上階は需要があるので販売価格が高く設定される
ステータス感を得られ、売る時も最上階であることがアドバンテージになることがある
高層マンションの最上階の場合は、地震の揺れを感じやすかったり、エレベーターの移動を不便に感じることもある