マンションで火災報知器の設置は義務?点検を断ったらどうなるの?誤作動した場合の止め方も解説

最終更新日 2025年09月28日

マンションで火災報知器の設置は義務?点検を断ったらどうなるの?誤作動した場合の止め方も解説

分譲マンションや賃貸マンションで設置されている火災報知器。設置や点検は義務なのでしょうか。また、誤作動などで鳴ってしまったときは、どうやって止めればいいのでしょうか。マンションで暮らす人や管理組合が防災のために知っておきたい情報を紹介します。甲種・乙種両方の消防設備士の資格をもつ、さくら事務所の土屋輝之さんに話を聞きました。

マンションの火災報知器は設置しなければならないもの?

火災報知器の設置は2006年から全ての住宅に義務付けられた

オフィスビルや病院などなど一定規模以上の建物には自動火災報知設備の設置が、消防法および各地方公共団体の定める火災予防条例等によって義務付けられています。住宅については、以前は床面積500m2以上のマンション(共同住宅)に自動火災報知設備の設置義務がありました。その後、消防法の改正によって、マンションのほか、中小規模アパート、戸建て、店舗併用住宅の住宅部分といった、全ての住宅が設置対象に。新築住宅は2006年6月から、既存住宅は経過措置が設けられ、2011年5月までに設置が義務となりました。

住宅用火災報知器の設置率は84.3%

現在、火災報知器はすべての住宅に設置されることになっていますが、設置の有無についての報告義務も、設置していない場合の罰則もありません。そのため、実際は全ての住宅に設置されているわけではなく、総務省消防庁の住宅用火災警報器の設置率等の調査結果では、2024年6月時点、一般住宅(戸建て、アパート、マンション)での設置率は84.5%です。

火災報知器は家族の命と財産を守り、近隣住民への被害防止に効果があるものです。消防庁の分析※では、住宅火災100件当たりの死者数は、住宅用火災警報器の設置がない場合は12.3人なのに対し、設置がある場合は6.2人。そのほか、住宅用火災警報器を設置している場合は、損害額は半減、焼損床面積は6割減。火災発生時のリスクが大きく減少していると報告されています。

※消防庁が2020年から2023年までの4年間における失火を原因とした住宅火災について、火災報告をもとに住宅用火災警報器の設置効果を分析。

2020年から2023年までの住宅火災100件当たりの死者数
住宅用火災警報器の設置効果を伝えるイラスト
住宅火災100件当たりの死者数は、住宅用火災警報器の設置がない場合は12.3人なのに対し、設置がある場合は6.2人とおよそ半分になっている。出典:総務省消防庁ホームページ(イラスト/つぼいひろき)

古いタイプのマンションだと火災報知器が設置されていないことがある?

マンションでは新築時に消防検査が行われるほか、半年に1度の消防設備点検と3年に1度の消防長または消防署長への報告義務があり、報告をしなかった場合や虚偽の報告をした場合の罰則規定もあります。

「マンションを新しく建てた場合、火災報知器が設置されていなければ、消防検査(消防用設備等の設置完了検査)に通りません。ですから、新築マンションや義務化になってから建てられたマンションには、火災報知器は設置されていると認識していいと思います」(さくら事務所、土屋さん。以下同)

では、古いタイプのマンションはどうでしょうか。

「消防法は一定の条件に当てはまる特定防火対象物については、過去の建物であっても現行の基準が適用されるという厳格な法律です。古い中古マンションや賃貸マンションであっても、基本的には火災報知器や非常警報設備などは設置されていると考えていただいていいでしょう」

マンションの火災報知器の点検は必ず必要なもの?

マンションの火災報知器。火災のときにはどう作動する?

マンションで設置されている火災報知器(厳密には自動火災報知設備といいますが、一般的に「火災報知器」と呼ばれることが多いため、この記事では火災報知器とします)。火災が発生したときには、どのような設備がどう作動するのでしょうか。

火災報知器は「感知器」「発信機(ボタン)」「受信機」「音響装置」で構成されている設備。火災が発生すると熱や煙などを住戸内や共用部分の天井などに設置される「感知器」が感知。または、火災に気付いた人がインターホンなどに付いている「発信機」のボタンを押します。感知器や発信機からの信号を「受信機」が受信し、非常ベルや非常放送が「音響装置」から流れます。

火災報知器の感知器を点検するイメージ
天井に設置された自動火災報知設備の感知器(画像/PIXTA)
火災報知器の発信機のイメージ
廊下やエレベータホールなどに設置されている表示灯と発信機。ボタンを押すことで火災を通報する(画像/PIXTA)

マンションの消防設備は定期的に点検する義務がある

火災報知器が設置されていてもきちんと機能しなければ火災の際のリスクが大きくなります。火災報知器のほか、消火器など消火活動に必要な設備、避難はしごなど避難に必要な設備、炎や煙や広がらないようにする防火シャッターなどが作動するかを定期的に点検し、報告する義務があります。

消防点検は6カ月に1度の機器点検と、年に1度の総合点検があり、住戸内の設備のチェックは総合点検のタイミングで行われます。

室内の消防設備点検を受けないのは大きなリスク

マンションの消防設備点検の義務を負うのはマンションの管理者。分譲マンションなら管理組合、賃貸マンションならオーナーということになります。実は、居住者個人には義務がないため、室内の消防設備点検を受けなくても罰則はありません。

しかし、消防設備点検を拒否するのは大きなリスクにつながります。

「点検を受けなければ火災報知器の故障に気付けません。もし、お部屋の感知器が故障していたり、感知したときに知らせる配線が断線していたりすれば、火災が発生したときに警報を出すことができません。その結果、自分の住戸だけでなく、周りにも大変な危険を及ぼしてしまうことになるのです」

不在を理由に点検を拒否したり、居留守を使ったりといったケースは多くあります。しかし、マンションでの安全、安心な暮らしを守るためには、消防設備点検にはぜひ協力したいもの。

なお、住戸内への立ち入りなしで点検を受けられるケースもあります。

「最近の新築マンションでは、各住戸の玄関に設置されるインターホンに自動火災報知器の点検機能が付いているのが主流。住戸内の感知器が熱によって作動するかは検査できないのですが、感知器が作動した際に火災を知らせる機能の確認はできます。検査としては十分ではありませんが、一定程度の確認は可能です」

マンションの火災報知器の誤作動はなぜ起こる?止め方は?

火災報知器の誤作動の原因は?

誤作動で火災報知器の非常ベルが鳴ることがあります。火災ではなかったことは幸いですが、誤報が度重なると非常ベルに慣れてしまって実際に火災が起きたときに初期消火や避難の遅れにつながります。

「最近の火災報知器は、感知器や発信機からの信号の状態をチェックし、本当の火災かどうかを見分ける機能が付いています。そのため、昔に比べると誤報は非常に少なくなりました。それでも非常ベルが鳴ってしまうこともあります。誤作動の原因で多いのは、感知器にものがぶつかったというケース。お子さんがふざけてボールを上に投げて当たった場合や、引越しや模様替えなどで背の高い家具を動かしてぶつかったときなどに作動します」

住戸内に設置される感知器は大きく分けて2種類。「熱感知器」と「煙感知器」です。設置の主流は「熱感知器」で、室温の急激な変化によって発報する差動式と、室温が一定の温度になったら発報する「定温式」。煙感知器はマンションで設置されているケースは少なく、設置されている場合はメゾネットタイプの階段の上や、専有面積が100m2を超える住戸で火災の際に住戸内の防火扉を作動させるための設備として付けられています。

「熱感知器でも煙感知器でも誤作動はありますが、特に誤作動が起きやすいのが煙感知器。煙感知器は『煙』を感知するというより、感知器の内部に空気以外の異物が入ってきたことを察知する仕組みです。そのため、強い風や虫やホコリ、結露などでも誤作動を起こすことがあります。なお、料理中に出る煙や湯気で火災報知器が鳴ったという声を聞くことがありますが、熱感知器の場合は煙や湯気では作動しません。警報が鳴ったとしたら、ガス漏れ警報器が作動した可能性が高いです」

誤作動を防ぐには、感知器にものがぶつからないよう注意することはもちろん、感知器が故障していないかなどを点検する消防設備点検を受けることが大切です。

最近の火災報知器は誤作動が少なくなったとはいえ、古い火災報知器のままのマンションなどで誤作動が続く場合など、火災報知器を鳴らないようにできるものなのでしょうか。答えはNOです。物理的には可能であっても、消防設備の維持管理は消防法で定められている義務です。何より居住者の安全を守るためには、火災報知器を鳴らないようにするなど、あってはいけないことです。

火災報知器が鳴ったらどう行動する?

火災報知器が鳴ってすぐは、本当に火事が発生したのか、それとも誤作動なのか分かりません。では、非常ベルの音が聞こえたら、私たちはまず何をすればいいのでしょうか。

「火災報知器のベルがどこで鳴るのか、マンションの規模などによって異なります。比較的規模の小さなマンションでは、どこかで火災が発生すると建物の全ての非常ベルが鳴る全館鳴動方式が多いです。一方、規模の大きなマンションで多いのは、火災が起こった階とその上階で鳴る出火階直上階鳴動方式です。暮らしているマンションがどちらの方式なのかを知っておくこと。それによって、非常ベルが鳴ったときにどう行動すればいいかが違ってきます」

マンションの規模が小さく、全館鳴動方式の場合には玄関のドアを開けて、またはバルコニーに出て外の様子を見ます。自分の住戸のすぐそばで火災が起こっている可能性があるかないかの確認が第一。マンションの規模が大きく、出火階直上階鳴動方式の場合、非常ベルが聞こえたら自分の階のベルかどうかを確認しましょう。

「ベルが鳴り始めると、管理員さんがいる場合は本当の火災なのか誤作動なのかを確認後、火災であれば非常放送設備で『何階で出火しました。何階以上の方はエレベーターを使わずに非常階段を使って避難してください』といったお知らせをします」

管理員がいない時間帯の場合は、慌てずに消防訓練・避難訓練の通りに火災発生の確認や初期消火、避難を実施するようにしましょう。

誤報だった場合、火災報知器はどうやって止める?

「誤作動で非常ベルが鳴った場合、管理員さんがいらっしゃる場合は、実際の火災かどうかを確認後、火災でなければ管理員さんが管理人室にある火災報知器の受信機の停止ボタンでベルを止めます」

夜間や土日など管理員が駐在していないときに火災報知器が鳴った場合は、どうすればいいのでしょうか。

「管理組合員が管理室に行き、火災報知器の受信機を確認しましょう。受信機を見ると何階からの警報なのか、機種によってはどの住戸からの警報なのかが分かります。次にベルは鳴らしたまま現場へ行き、火事が発生しているか、誤作動かの確認をします。感知器が作動した住戸の人が『火事ではない』と否定しても、実は中で慌てて火を消そうとしている、ということもありますから、住戸内を確認することが大切。誤報だと確認できたら管理人室の停止ボタンでベルを止め、受信機にある火災復旧ボタンを押します」

火災報知器が鳴ったときに備えて、管理組合でするべきこと

火災報知器が鳴って、どこからの警報なのか確認をしたり、誤作動だったのでベルを止めたりするためには、受信機を操作する必要があります。しかし、受信機が施錠されている管理人室にある場合、管理組合員が鍵の開け方を知らなければ、ベルは鳴り続け、誤報だとしても消防車が駆け付けることにもなりかねません。24時間有人管理ではない場合、マンションに住む居住者が管理人室に入り行動できるよう、手順を知っておく必要があります。

「受信機の基本的な操作の仕方、受信機のベルを止める前にやらなければいけないこと、そのほか、屋内消火栓の使い方などを学べるように、管理組合で消防訓練、避難訓練をしっかり行うことが大切です。また、非常ベルが鳴ったときの行動が書かれたアクションカードを作成し、管理人室の分かりやすい場所に設置しておくといいでしょう」

火災報知器が鳴った時の行動についてのイラスト
(イラスト/つぼいひろき)

住まい探しで気を付けたいポイントは?

賃貸マンション、中古マンションなら不動産仲介会社に確認してもらう

これから新築マンションを購入する場合、火災報知器は設置されているものと考えていいでしょう。火災報知器が鳴ったときの行動について学んだり、消防訓練をしっかり行ったりするなど、防災に関する取り組みは管理組合の活動に積極的に参加することで整備していくことができます。

では、中古マンションや賃貸マンションの場合はどこをチェックすればいいのでしょうか。

「消防訓練や消防点検をきちんとやっているか、防火管理者を選任しているかなどを、不動産仲介会社に調べてもらいましょう。管轄の消防署に問い合わせてもらえれば、消防点検や消防訓練を行っているか、設備に関する是正勧告は受けていないかなどを知ることができます」

すべての住宅で火災報知器の設置が義務化されていますが、それだけでは安心とはいえません。大切なのは防災設備がきちんと機能するように維持管理されているか、万が一の火災発生の際に適切な行動ができるよう居住者が学んでいるか。火災報知器とそれを活用することの大切さを知って、安心できる暮らしを手に入れましょう。

まとめ

マンションの火災報知器の設置や消防設備の点検は消防法等に基づいた義務

火災報知器はものがぶつかったり、故障したりしていることで誤作動を起こすことがある

火災報知器が鳴ったらどこから出火したかを確認し、非常用階段で避難

火災報知器が誤作動をした場合は、受信機のボタンを押して非常ベルを止める

火災報知器の設置だけでなく、万が一の際、どう行動するかを日頃の消防訓練などで身に付けておくことが大切

SUUMOコンテンツスタッフ
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