BELS（ベルス）とは？評価書を取得済の新築マンションを選ぶメリットや評価基準などを解説

新築マンションの購入を検討するときに「省エネ性能を重視したい｣と考える人も多いのではないでしょうか。マンションを含む住宅の省エネ性能を示す制度の一つに「BELS（ベルス）」があり、近年「BELS取得済」をうたい売り出されるマンションも増えています。

この記事ではBELSとはどのようなものなのか、評価書はどんな建物に発行されるのかなどを、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会の中山拓郎さんに伺い解説します。評価レベルや基準、ZEHとの違い、BELSの省エネ性能ラベルの項目や内容も詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

BELSとは？

BELSとは「建築物省エネルギー性能表示制度（Building-Housing Energy-efficiency Labeling System）」を略した言葉で「ベルス」と読みます。BELSは国が定める省エネ性能表示制度に対応した制度の一つです。

BELSは一般社団法人 住宅性能評価・表示協会が運営しており、同協会に登録しているBELS評価機関が評価する第三者評価です。

省エネ性能表示制度とは

2022年6月に改正された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律（改正建築物省エネ法）」の施行により、2025年4月以降、新築される全ての建築物において、国の定める省エネ基準に適合していることが求められるようになります。

それに先駆け、2024年4月から、「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度（以下、省エネ性能表示制度）」の努力義務が強化されました。省エネ性能表示制度とは、建築物の販売・賃貸の際に、事業者が省エネルギー性能を表示しなければならないとする制度です。これは消費者が建築物を購入したり賃貸したりするときに、省エネ性能を比較しやすくすることが目的です。新築建築物の販売時に省エネ性能を表示しなければ勧告対象となることから、今後はほぼ全ての新築マンションで省エネ性能が表示されると考えられます。

「省エネ性能表示制度では、事業者は新築建築物を販売する際の広告等に、その建築物の省エネ性能を記載したラベルを表示しなければなりません。実際に住んでみないとわかりづらいエネルギー消費性能や断熱性能が、星や家マークの数で確認できるため、専門知識がなくても省エネルギー性能が一目でわかります。そのため購入を検討している新築マンションを、省エネ性能の観点からも比較検討しやすくなりました」（中山さん／以下同）

省エネ性能がマークで表示されていると、マンションの省エネ性能を把握・比較しやすくなる（イラスト／いぢちひろゆき）

第三者評価とは

省エネ性能を表示するためには、事前に省エネ性能を評価しなければなりません。事業者が自ら省エネ性能を評価することを「自己評価」といい、他者に依頼し評価を受けることを「第三者評価」といいます。

「省エネ性能表示制度の第三者評価は、現在のところBELSに限られます。BELSによる評価を受けた住宅は、省エネ性能ラベルに『第三者評価 BELS』と表示されますので、ラベルを見れば、自己評価か第三者評価かを確認できます」

BELSの評価書とは？BELSとZEH-M（ゼッチマンション）はどう違う？

住宅の省エネ性能と聞いたときにZEH（ゼッチ）を思い浮かべ、BELSと混乱する人も多いようです。 BELSは第三者が評価した省エネ性能を、視覚的にわかりやすく表示する制度であるのに対し、ZEHは以下のように定義されています。

なお、一棟全体がZEH基準に達したマンションは、ZEH-M（ゼッチマンション）と呼ばれます。

「BELSの評価を受けた住宅には、省エネ性能を表示したラベルに加えて、より詳細な内容を記載した評価書が発行されます。BELSの評価書は、省エネ性能に関する『通知簿』のようなものと考えていただくとよいと思います。

例えば、エネルギー消費性能は星マークにより、断熱性能は家マークにより表示されますが、そのマークが多いほどそれぞれの性能が優れていることがわかります。ちなみに、エネルギー消費性能が星マーク3つ、断熱性能が家マーク5つ以上となる場合は、ZEH水準に達したと判断されて、ラベルや評価書にもその旨が表示されます」

BELS取得済の新築マンションを購入するメリットは？

BELSを取得している新築マンションを購入することには、どのようなメリットがあるのかを解説します。

第三者評価なので信頼性が高い

省エネ性能表示制度では、事業者による自己評価も認められています。しかし自己評価は、事業者自らが販売・賃貸するマンションの省エネ性能を評価するため、なんとなく信頼性が低いと感じる人もいるかもしれません。そういったときには、BELSによる第三者評価を受けたマンションを選択するとよいでしょう。

BELSは第三者機関による評価であるため、客観的な評価を確認できる（イラスト／いぢちひろゆき）

第三者評価による省エネ性能を確認してマンションや住戸を選べる

第三者評価による省エネ性能を確認したうえでマンションを購入できることが、BELSを取得している新築マンションを選ぶメリットです。省エネ性能表示制度では、商談・契約・引き渡しの際に、事業者から顧客に評価書を使用して省エネ性能を説明することが望ましいとされていますので、事業者から省エネ性能について説明があった際には、評価書がBELSによるものかどうか注目してみるのもおすすめです。

BELSはマンションの建物全体としての評価（住棟評価）、もしくは住戸ごとに個別の評価（住戸評価）を受けることができ、どちらを（あるいは両方）を選ぶかはデベロッパーの判断によって異なります。住戸ごとに評価を受けている場合、同じマンション内でより省エネ性能が高い部屋を選んで購入する、といったことも可能です。

「BELSの住棟評価はマンション間の、住戸評価は同じマンション内の住戸選びの比較・検討材料として活用いただけます。省エネ性能をどれだけ重視するかは人によって異なると思いますが、同程度の立地・購入価格のマンションならば、BELSのラベル・評価書を参考に省エネ性能の高いマンション・住戸を選んでいただくことがおすすめです」

売却時に省エネ性能を確認できる

BELSを取得しているマンションを購入すれば、売却するときにそのマンションが新築時にどのような省エネ性能が備わっていたのかを確認できます。

近年、住宅の省エネ性能を重視する人が増えていることを考えると、BELSによる第三者評価を受けているマンションは、売却しやすくなる可能性があるでしょう。BELS評価書を購入時に受け取った場合は、紛失しないよう大切に保管しておきましょう。

「BELS評価書は購入者に提供されるケースもありますが、提供は義務ではありません。販売・賃貸事業者は、建築物の省エネ性能を広告等で表示するにあたり、省エネ性能の根拠となる関連資料を保管しておく必要がありますので、評価内容を確認されたい場合は事業者に相談するのも一案です」

【フラット３５】Ｓや補助金制度の利用時に省エネ性能を確認できる

BELSは省エネ性能を確認する書類として利用できます。

例えば【フラット３５】Ｓ（高い省エネルギー性や耐震性などを備えた住宅に対する、【フラット３５】の金利引き下げメニュー）では、省エネルギー性の確認書類としてBELS評価書を認めています。なかでもZEHマンションを対象とした【フラット３５】Ｓ（ZEH）では、原則、BELS評価書（住棟評価）の提出が求められます。

ほかにも子どもエコホーム支援事業（ZEHレベルの新築分譲住宅などを購入する場合、一定の条件を満たすことで1戸あたり100万円が補助される事業）で補助金を受けるときにも、ZEHレベルである確認書類としてBELS評価書の利用が可能です。

BELSの省エネ性能ラベルの表示項目や内容は？

広告などで目にする機会が多いBELSの省エネ性能ラベルには、何が記載されているのかを紹介します。

BELSにより評価された場合、左下に「第三者評価BELS」と表示される（画像出典／国土交通省ウェブサイト）

①評価対象の住宅の種類：マンション全体の場合は、「住宅（住棟）」と明記

②エネルギー消費性能：国が定める省エネ基準から、どの程度消費エネルギーが削減できているかを星マークの数で表示

③断熱性能：「建物からの熱の逃げやすさ」と「冷房期の建物への熱の入りやすさ」から、断熱性能を家マークの数で表示

④目安光熱費：年間の光熱費の目安。評価対象がマンション全体（住棟）の場合は非表示。また任意項目のため、記載がない場合もある

⑤自己評価・第三者評価：BELSによる第三者評価である場合、ここにBELSと明記

⑥建物名称：評価対象である物件名が表示。マンションの住戸の場合、部屋番号も記載

⑦再エネ設備のあり／なし：再生可能エネルギー利用設備（太陽光発電・太陽熱利用・バイオマス発電など）の有無を表示

⑧ZEH水準：エネルギー消費性能が星マーク3つ、断熱性能が家マーク5つ以上で、ZEHの水準に達したことを示すチェックマークがつく

⑨ネット・ゼロ・エネルギー（ZEH）：ZEH水準の達成に加え、太陽光発電の売電分も含めて、年間のエネルギー収支がゼロ以下になった場合にチェックマークがつき、ZEHの種類も表示される。この項目は、BELSによる第三者評価にのみ表示され、自己評価では表示されない

⑩評価日：BELS評価機関が評価した日が表示

BELSの評価レベルや評価基準は？

BELSでは、エネルギー消費性能と断熱性能の2つを評価します。また評価基準は、再生可能エネルギー利用設備（太陽光発電設備）の有無によって異なります。具体的に見てみましょう。

エネルギー消費性能の評価レベルと基準

エネルギー消費性能は、国が定める省エネ基準から、どの程度消費エネルギーを削減できているかを示すBEIと呼ばれる指標で評価します。

削減率に応じて、再生可能エネルギー利用設備（太陽光発電設備）がない住宅は星0～4の5段階、再生可能エネルギー利用設備があるマンションは星マーク0～6の7段階評価となり、星マークの数が多いほど省エネ性能が高いことがわかります。

エネルギー消費性能は、再生可能エネルギー利用設備の有無によって評価方法が異なる（イラスト／いぢちひろゆき）

断熱性能の評価レベルと基準

断熱性能については、「建物からの熱の逃げやすさ」と「冷房期の建物への熱の入りやすさ」の二つの指標のうち、いずれか低いほうで評価します。断熱性能はレベル1～7までの7段階で評価され、家マークの数と数字で表し、この数字が多い（レベルが高い）ほど、断熱性能は高くなります。

なお、BELSでは断熱性能を品確法（住宅の品質確保の促進等に関する法律）の断熱等性能等級の基準で判定するため、例えばBELSにおける断熱性能のレベル5は、断熱等性能等級5に相当します。

断熱性能は、家マークの数と数字でレベルを表示している（イラスト／いぢちひろゆき）

BELSで客観的評価をチェック！　マンション選びに役立てよう

最後に改めて中山さんに、新築マンションの購入を検討している人に向けてアドバイスをいただきました。

「省エネ性能が高いマンションを購入すれば、日々の光熱費を削減できるのはもちろん、外気温の影響を抑えて快適に暮らせるようになります。また省エネ性能が高いマンションは、国が2050年の実現を目指すカーボンニュートラル（温室効果ガスの排出を実質的にゼロとすること）の実現にも寄与するため、社会貢献にもなるでしょう。

省エネ性能の高いマンション選びに、ぜひBELSをお役立ていただければと思います」