マンション管理とは?管理会社だけに任せず、管理組合でマンションの価値を維持するには?

最終更新日 2025年10月16日

マンション管理とは?管理会社だけに任せず、管理組合でマンションの価値を維持するには?

マンションを購入した人は管理組合に入ります。管理組合とはどのようなもので、管理会社とは何が違うのでしょうか?管理組合の役割と管理会社の業務について、マンションの購入者として知っておきたい基礎知識をまとめます。また、2020年に法改正が行われたマンション管理適正化法についても触れます。

管理組合は何をする組織?管理会社に任せてしまってはダメなの?

マンションの維持・管理は管理組合が担う

マンションは、ひとつの建物の中に複数の所有者がいます。マンションの住戸を購入し所有している人を「区分所有者」といいます。
住戸内(専有部分)の管理は、区分所有者がそれぞれ行うことになります。例えば、古くなった給湯器を交換したり、汚れた壁紙を張り替えたりなどは、その住戸の所有者が自分で費用を出して、リフォーム会社などに直接依頼します。

では、マンションの建物内の住戸以外の部分は誰の所有になるのでしょうか。建物の躯体そのものや、エントランスや廊下などの空間、エレベーターや給水ポンプ、廊下などの照明器具といった設備機器は区分所有者みんなで「共有」していることになります。これらの共有部分についても、誰かが管理をしなければ法律上必要な点検が行われなかったり、設備が故障したまま放置されてしまったりなど、マンションの居住者の生活に影響が出てしまいます。そこで、マンション全体の管理を担うのが区分所有者によって構成された管理組合という組織です。

マンションを購入したら管理組合の一員になる

管理組合には必ず入らなければならないのでしょうか?理事などの役員になったり、理事会に出席したりなど、大変なことも多そうです。

マンションの管理組合は、「建物の区分所有等に関する法律」に規定されており、区分所有者は管理組合の構成員になることが定められています。そのため、所有者は必ず組合に入らなければなりません。

管理組合の仕事はマンションの維持・管理にかかわること

分譲マンションの管理組合の役割は、マンションの維持・管理。建物の性能を維持し、住みよい環境を整えるためにさまざまなことを担います。

マンションを維持、管理するためには主に以下のようなことが必要です

  • マンションのルールにあたる管理規約の制定・改正
  • 管理費や修繕積立金の徴収や管理
  • 大規模修繕工事の計画・実施
  • 共用部分や共用施設の清掃やメンテナンス
  • 住民同士の交流などコミュニティの形成

具体的な業務は管理会社に委託するのが一般的

マンションは所有者みんなで管理をしていくもの。しかし、定期点検は次にように期間が決められていたり、マンションの維持や管理には、専門知識が必要とされる項目が多くあります。

定期点検の例
消防設備:半年に1度(消防法)
受水槽の清掃と槽内消毒:年に1度(水道法)

また、管理費や修繕積立金の徴収や管理も大変です。

そこで、管理組合の活動をサポートするのが管理会社。管理組合は管理会社と管理委託契約を結び、具体的な業務を代行してもらうのが一般的です。その際、契約内容の参考にすべきものが国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」です。

マンションの管理組合と管理会社の業務委託の仕組み
マンションの管理組合は管理会社と管理委託契約を締結。その契約内容に沿って、管理会社は管理組合をサポートする(図作成/SUUMO編集部)

マンション管理の主体は管理組合

管理会社が具体的な業務の代行や管理のサポートを行ってくれるとはいえ、管理の主体はあくまでも管理組合。つまり、マンションの区分所有者全員です。管理会社に任せっきりにせず、自分たちの財産であるマンションの維持・管理に務める必要があります。

とはいえ、すべてを管理組合で背負い込む必要はありません。管理会社には管理委託契約書の内容の範囲であれば、さまざまな相談をすることができますから、専門的なことなどはどんどんサポートしてもらいましょう。住宅設備の故障やリフォームのことなど、専有部分である住戸内のことについても相談にのってもらえる管理会社も多くあります。管理委託契約の内容についても確認しておくと安心です。

管理組合の活動をイメージさせる管理組合の定期総会のお知らせ
マンションは管理組合が積極的に活動することで住み良い環境が育ちやすい(画像/PIXTA)

管理費とは?修繕積立金とは?何のためのお金でいくらくらいが相場なの?

管理費は日常的なマンションの維持・管理のために集められるお金

マンション購入後は、毎月、管理費と修繕積立金がかかります。区分所有者から集められた管理費と修繕積立金は、何に使われるのでしょうか。まずは、管理費について説明しましょう。

管理費はマンションの共用部の日常的な維持や管理のための費用に充てられます。共用部の電気代や水道代といった光熱費のほか、管理会社への委託料(管理員の人件費を含む)、共用部の清掃費、植栽のメンテナンス費用、エレベーターや消防設備、電気設備などの点検費用といったさまざまな費用が管理費からまかなわれています。

管理費でまかなわれる主な項目

  • 共用部分や共用設備にかかる光熱費
  • 共用部分や共用設備の清掃・定期点検費
  • 共用設備が故障した場合の修繕費(自動ドアや駐車場のシャッター、防犯カメラなど)
  • 共用部分で使用する消耗品(掃除用具、照明器具、備品など)
  • 防犯カメラやAEDのレンタル料(設置している場合)
  • 管理員の人件費
  • 管理会社への委託費
  • 税金(駐車場を外貸ししている場合など収益事業収入がある場合)

修繕積立金は計画的な修繕を行うために積み立てていくお金

共用部にかかる日々の出費をまかなうのが管理費なのに対して、修繕積立金は主に12~15年おきに実施される大規模修繕工事に充てられるお金です。マンションの大規模修繕工事とは、年月がたつにつれて劣化していく建物を定期的に修繕し、建物としての機能や資産価値を維持するための工事。外壁のひび割れの補修、外壁の再塗装、屋上の防水補修、共用廊下やエントランス、階段などのクリーニング、エレベーターの改装や交換、給排水管の交換、バルコニーのフェンスや階段の手すりなどの鉄部の塗装など、さまざまな修繕・補修内容があり、必要な工事を大規模修繕時にまとめて行います。この工事のための費用になるのが修繕積立金です。

そのほか、敷地内にスロープを設けたり、耐震工事を行ったりなどの共用部分の大がかりなリフォームや、水漏れなどの突発的な事故が起きた場合に対応する費用なども修繕積立金からまかなわれます。

修繕積立金でまかなわれる主な項目

  • 定期的、計画的に行われる大規模修繕
  • 不測の事故やその他特別の自由により必要となる修繕
  • バリアフリー工事や耐震工事など、敷地や共用部分の変更
大規模修繕をきちんと行っているマンションのイメージ
マンションの快適性や耐久性を維持するため、適切な大規模修繕を計画的に行うことが大切(画像/PIXTA)

管理費と修繕積立金、毎月いくらくらいかかるもの?

管理費も修繕積立金も、マンションの日々の管理や、長期的な維持に欠かせない費用です。とはいえ、マンション購入後は住宅ローンの返済や固定資産税・都市計画税などの出費がかさみます。管理費や修繕積立金がいくらくらいかかるのかは気になるところです。

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」を見ると、管理費(駐車場や専用庭などの使用料からの充当額を含む)は専有面積1m2当たり平均230円、修繕積立金(同)は専有面積1m2当たり平均187円となっています。70m2のマンションなら管理費が毎月1万6100円、修繕積立金は1万3090円。合計で2万9190円が毎月かかる管理費と修繕積立金の目安といえそうです。

※出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」〈2.管理組合向け調査の結果176・203ページ〉より全体の平均額(1円未満は四捨五入)

ただし、上の金額はあくまでも目安。管理費も修繕積立金も実際の金額は物件によって異なります。
例えば、共用設備が多く、コンシェルジュサービスなども受けられるマンションは管理費が高くなる傾向にあります。また、管理費も修繕積立金も、必要なコストを住戸数で按分するため総戸数が多いほど割安になるといえます。また、管理費も修繕積立金も、住戸の専有面積によって異なり、面積が大きいほど金額も高くなります。

安すぎても将来困る。管理費、修繕積立金は値上げされることが多い

管理費や修繕積立金が安ければ、毎月の出費が抑えられます。でも、管理費が安すぎるマンションは、日常の清掃や故障箇所の修繕などのメンテナンスが行き届いていないかもしれません。修繕積立金が少なければ、将来の大規模修繕の際に資金が足りず、区分所有者からまとまったお金を集めることになるかもしれません。管理費も修繕積立金も、適切な金額が設定され、適切に使用されることが必要なのです。

もう一つ、知っておきたいのは管理費や修繕積立金は、将来は値上がりすることが多いということ。管理費は日常の管理業務がまかなえていれば基本的には値上げはありません。しかし、最近は人件費が増加傾向にあるほか、火災保険料も上昇。さまざまなコストアップが重なれば、管理費も値上げの必要が出てくるでしょう。

そして、多くのマンションで段階的な値上げが実施されているのが修繕積立金です。建築資材や設備機器、人件費のコストアップなどで、マンションが新築されたころよりも大規模修繕工事にかかる金額は増加しています。今後の大規模修繕に備えて、修繕積立金は改訂していく必要があると考えておきましょう。

なお、大規模修繕の周期や修繕内容が適切なのか、修繕積立金は十分なのかを判断する指標となる、「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン・コメント」「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が国土交通省から公表されています。このガイドラインを活用し、管理会社からのサポートも受けながら、マンションの価値を維持する大規模修繕を実施していくことが大切です。

長期修繕計画や修繕積立金に関するガイドラインについて詳しく読む
あなたのマンションは大丈夫? 国交省が長期修繕計画、修繕積立金に関するガイドラインを改定

国土交通省の「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン・コメント」「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」はここからダウンロード

マンションと管理費や修繕積立金のイメージ
適切な管理費、修繕積立金がマンションの資産価値や住環境の維持につながる(画像/PIXTA)

マンション管理適正化法とは?管理計画認定マンションのメリットは?

2000年にできたマンション管理適正化法

マンションには1962年に制定された「区分所有法(正式名称:建物の区分所有等に関する法律)」や2002年制定の「マンション建替え等円滑化法(正式名称:マンションの建替えの円滑化等に関する法律)」など、さまざまな法律がかかわっています。そのうちのひとつが2000年に公布され、2001年に施行された「マンション管理適正化法(正式名称 マンションの管理の適正化の推進に関する法律)」です。

マンション管理適正化法は、マンションの管理にかかわる問題が多くなったことを背景に施行された法律です。この法律によって、管理の主体は区分所有者と管理組合であることが明確化されました。また、管理組合のサポートをすることができるマンション管理士という国家資格がつくられたほか、それまでは誰でも請け負うことができた管理業務を、マンション管理業者の登録と管理業務主任者を一定数置くことの義務付けによって国が規制することができるようになりました。

つまり、マンション管理は誰が担うかをはっきりさせつつ、専門知識をもった有資格者のコンサルタントや専門業者のサポートで適正な管理体制が築けるように後押ししたのです。

2020年に法改正。管理規約や長期修繕計画の作成などに行政が助言できるように

2000年にマンション管理適正化法が制定されてから20年後、建物の老朽化や管理組合の高齢化によって、管理不全に陥るマンションが増えてきました。管理状態が行き届かないマンションは、例えば荒れた敷地に侵入者が入りやすくなる、外壁タイルの落下など事故の可能性が高まるなど、周辺地域にも影響する問題を抱えがちです。

そこで、法改正により、2022年から「マンション管理計画認定制度」がスタートしました。この制度は、管理や修繕に関する一定基準を満たしたマンションを、自治体が「管理計画認定マンション」として認定する制度です。

管理計画認定マンションは、管理や修繕などについて自治体からの助言が受けられるほか、大規模修繕のための公的な積立債券や共用部分リフォーム融資の金利優遇が受けられます。また、マンションの区分所有者にも税金面でのメリットがあります。一定要件を満たす大規模修繕を行った場合、翌年の建物分の固定資産税が引き下げられる「マンション長寿命化促進税制」が受けられるのです。

マンション購入者にとっても、管理状況がチェックしやすいのはメリットの一つです。加えて、全期間固定型住宅ローン【フラット35】の金利が一定期間引下げられる制度も用意されています。

一方、自治体は管理計画認定をしたマンションに対して、管理に関する報告を求めたり、助言や指導を行うことができます。2021年には助言や指導、勧告に関するガイドラインも策定されました。例えば、行政は管理規約が存在していなかったり、修繕積立金が積み立てられていないなどの場合、管理組合に「マンション標準管理規約の内容に準拠した管理規約の設定」「国交省の長期修繕計画作成ガイドラインを参照しながら長期修繕計画を作成または見直しすること」を求めるなど、具体的な措置についてガイドラインで触れています。管理組合は、マンションの管理状態をよくするための具体的な指標を得ることができたといえます。

大規模修繕工事が行われているマンション
長期修繕計画の作成も管理組合の大切な役割(画像/PIXTA)

管理不全マンションには強制措置も。法改正で管理制度はどう変わる?

管理不全のマンションや住戸には裁判所から「管理命令」が下される

2025年5月23日、マンションの管理や修繕・建て替えをスムーズに進めることを目的に、区分所有法をはじめマンション管理・再生関連の法改正が成立しました(※)。改正法は2026年4月1日から施行されます

このうち区分所有法の改正では、マンションの管理や区分所有者の責任について大きな変化がありました。老朽化や不完全な管理のために外壁の剥落(はくらく)など危険が生じる恐れが高いマンションに対し、裁判所が専任した「管理人」を選任して共用部分の管理を行わせる「管理不全共用部分管理制度」が新設されたのです。管理人には、弁護士や司法書士、マンション管理士などの専門家が選任されることになります。

管理不全マンションであることを裁判所に申し立てるのは「利害関係人」とされ、管理者や区分所有者のほか近隣住民、道路等を管理する自治体などが想定されています。つまり、周辺に危険を及ぼす可能性があるマンションについて自治体が裁判所に申し立て、管理命令を出すという流れが可能になるのです。

また、いわゆる「ゴミ住戸」のような、専有部分の放置が原因で他の住民の生活や権利に悪影響を及ぼす場合は、「管理不全専有部分管理制度」により対応が可能となります。今後は、管理がおろそかなマンションや住戸に対して、裁判所が強制的に対応をとる可能性もあるのです。

新築も「マンション管理計画認定制度」の対象に

先に紹介した「マンション管理計画認定制度」も今回の改正で大きく拡充され、2026年4月以降は新築マンションも対象となります。

管理計画認定マンションは、これまでは中古(既存)のみ対象でしたが、一般的な管理組合で法定の基準を満たす管理体制をつくるのは難しい面もありました。

新築マンションが管理計画認定を受ける場合は、デベロッパー等が管理計画を作成し、自治体の認定を受けてから分譲し、その後所定の期間内に、その内容をマンションの購入者に丁寧に説明し、管理組合に引きつぐ流れになります。

このほか、最近増えている「管理業者管理者方式」への対応も法制化されます。管理業者管理者方式は、マンション管理会社が管理事務を受託している管理組合の管理者(理事等)などに選任される方式で、例えば、マンションの清掃や修繕などの外注業務を自分の会社に頼むなど利益相反が発生する恐れがあるとされています。

今回の改正では、管理業者が管理組合の管理者を兼ねる場合について利益相反がおきないよう、区分所有者に十分な説明を行うことなどを定めました。なお、今回の改正に伴い、「標準管理規約」をはじめ、管理組合と管理会社が結ぶ「マンション標準管理委託契約書」などのひな型やガイドラインも見直される予定です。

このように、マンション管理をサポートする国や自治体の体制が整えられ、デベロッパーや管理会社による管理メニューも豊富になっています。しかし、最終的にマンション管理の責任を持つのは区分所有者一人一人であることに変わりはありません。

マンションの資産価値を維持するには、自分が購入して所有している住戸内だけでなく、マンション全体の維持・管理が必要です。そのためにも管理組合の活動はとても重要。これからマンションを購入するなら、きちんと管理組合活動についても知っておきましょう。

※本文中の法律名は略称。以下の→が正式名称です。
・(略称)区分所有法→建物の区分所有等に関する法律
・(略称/旧法)マンション建替え円滑化法→マンションの建替え等の円滑化に関する法律
・(略称/新法)マンション再生法→マンションの再生等の円滑化に関する法律
なお、同改正では、マンション管理について定めた「マンション管理法(マンションの管理の適正化の推進に関する法律)」も改正されました。

まとめ

マンションを購入した区分所有者は管理組合の一員。管理組合はマンションの維持・管理を担う

適正な管理費、修繕積立金はマンションの維持・管理に欠かせない

管理費は日常的な共用部分のメンテナンスや修繕の費用をまかなう

修繕積立金は10数年に1度行う大規模修繕の費用に充てられる

2020年・2025年にマンション管理適正化法が改正された

法改正によってマンションの管理に行政が関与しやすくなるほか、管理組合にとっては具体的な指標ができた

SUUMOコンテンツスタッフ
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