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近年の新築マンションの価格高騰もあり、中古マンション購入&リノベーションは今や住宅購入のスタンダードの一つになっています。その平均価格や購入者の年代、間取りのトレンドは実際どうなっているのでしょう。気になる最新事情について、ワンストップリノベーションサービス「リノベる。」の齋藤高央さんと本多史弥さんに聞きました。
新築分譲マンションの高騰が続き、東京都心の平均価格は1億円超えに。用地取得の難しさなどにより供給戸数も減少しています。一方、中古マンションは2018年度以来、首都圏において新築マンションを上回る成約件数が続き、特に2025年1~3月は前年比25.5%増の活況を呈しています。
ワンストップリノベーションサービス「リノベる。」の2022~24年度の実績を集計したユーザーレポートによると、2024年は新築と中古を並行して検討する層が前年の67%から40%に減り、中古一択というユーザーが増えました。
成約物件については、マンションが大量に供給された時代に建てられた築21~30年の物件の成約数が増加。一方で、成約件数の約6割は築31年以上という結果になりました。

「やはり安心できる物件を買いたいというお客さまが多いので、1981年以降に建てられた新耐震基準の物件を希望される方が多いです。“新”耐震とはいえ、およそ築40年以降の物件が該当するため、選択肢自体は増えているかと思います。ただ、中古物件の需要の高まりもあって“いい物件”はすぐに売れてしまうので、競争率は高まっている印象です」(齋藤さん、以下同)
人気の高い “いい物件”とは? 「リノベる。」でカウンセリングと物件探しを担当する齋藤さんによると、将来に渡って資産価値を担保できるかどうかが重要な判断基準になるのだそう。

「管理状態や修繕積立金の状況は健全か、長期修繕計画がしっかり検討されているか、『重要事項説明書』で確認することが大事です。築古物件であれば建て替えの話が出ていないかなど、管理組合の総会議事録もチェックを。また総戸数も重要で、少なすぎると管理費や修繕積立金の負担が重くなりやすい傾向にあります。鉄骨造よりも丈夫な鉄筋コンクリートであることもポイントになるでしょう」
地方公共団体が適正な管理運営のマンションを認定する「マンション管理計画認定制度」も実施されていますが、登録数はまだ限定的。管理状態は自分でもしっかり確認することが大事ですが、不動産会社やリノベーション会社など、信頼できるプロにサポートしてもらうのがおすすめです。
また、リノベーションの若年化が進んでいるのも現在の傾向です。「リノベる。」ユーザーのうち、20~30代前半の割合が2022年から2年連続で増加。家族構成は「夫婦&パートナー世帯」が2022年の35.4%から2024年は42%に増加しました。


以前は結婚後に子どもが生まれて自宅が手狭になったタイミングでのマイホーム購入がスタンダードでしたが、今はそのタイミングが前倒しされ、結婚と同時にご自宅購入を検討し、その選択肢のひとつとしてリノベーションを考える方が増えているのだそう。
若い世代のユーザーが増えている要因には、SNSで同世代のマイホーム購入に触れた影響も考えられますが、やはり共働きが多数派になり世帯収入が増えたことが大きいといいます。首都圏では、物件価格の高騰もあり共働き世帯でないと予算的に厳しい物件も多く、夫婦でローンを分けた方が世帯として受けられる住宅ローン控除額が増えることもあり、齋藤さんの印象では共働き世帯のユーザーの8割以上がペアローンで購入しているのだそう。
消費行動の新潮流として、価格に明確な理由を求め、高くてもそこに根拠があるものが売れる“ロジカル消費※”が注目される今。「利用頻度の低いマイカーは持たなくていいけれど、毎日利用する家は購入しておきたい」というふうに、若年層の経済感覚が変わったことも影響していると齋藤さんは考えています。
※ロジカル消費とは…物価高で「安物買いの銭失い」をしたくない消費者が、価格に明確な理由を求めること
家賃を払い続けても手元に何も残らないけれど、毎月同じくらいの金額を払うのであれば、物件という資産を得たり、リノベーションで自分らしい暮らしをかなえたりしたい─。そんな考えを持つユーザーが増えているのだそう。家賃が上がることをきっかけに物件購入を決めたというユーザーも多く、最近の賃貸価格の高騰や値上げの影響も考えられます。
また終身雇用がなくなった今は転職に伴い住む場所が変わることも多く、マイホーム=終の棲家という感覚を持たない人も増加。資産価値の高いマンションが人気なのは、将来的に売却したり貸したりしやすい要素もあるようです。

同調査によると、首都圏ユーザーの65%が東京都の物件を購入。平均面積は66.8m2で、新築の平均面積62.6m2よりやや広い結果となっています。
気になるリノベーション費用については、2024年は平均1570万円。2022年の平均1290万円から20%アップしました。資材や人件費の上昇幅を差し引いても上がっていることから、リノベーション内容にこだわって予算をかける方が増えているそうです。

リノベーション費用が増えているのは、設備まわりや内装にこだわって予算をかける人が増えているからだそう。
「キッチンにこだわって腰壁やカウンターを造作したり、設備のグレードを上げたり。廊下やリビングなどに洗面を設置する人が増えた影響もあり、デザインにこだわった造作洗面も人気。モールテックスやタイルなどの素材にこだわる方も増えています」
また『子育てグリーン住宅支援事業』などの補助制度の後押しもあって、二重窓(内窓)や断熱材などの省エネ性能向上に予算をかけるリノベユーザーも増えています。「リノベる。」での2024年の二重窓採用は2021年に比べ3.4倍になっています。

リノベーションといえば、天井の梁などの駆体を現しにするようなインダストリアルテイストがおなじみでしたが、近年はそのトレンドにも変化が見られます。
以前はリノベならではのテイストを希望するユーザーが大多数だったそうですが、今は家づくりの選択肢の一つとして間取りの自由度や価格面でリノベが選ばれているため、ユーザーの好みも拡大。リノベっぽくない空間が求められる傾向にあります。
キーワードは“脱・リノベ感”。そんな今のリノベーションのデザイントレンドについて、「リノベる。」デザイナーの本多史弥さんに聞きました。
「ここ1~2年ほどの傾向としては、シンプルで洗練されたテイストが好まれるようになっています」(本多さん、以下同)

シンプルで洗練されたテイストが好まれる傾向は、何をきっかけに生まれたのでしょうか。
「ファッションのトレンドである“Quiet Luxury(静かなぜいたく)”という、派手な装飾を抑えたミニマルなデザインテイストがインテリアにも波及していることが考えられます。また数年前から注目されている海外発のリノベーションホテルのデザインの影響もあるかもしれません」
また、リノベーションの強みである間取り変更については常識や固定概念にとらわれずいっそう自由に。ここ最近の消費トレンドである“タイパ”や“スペパ”、手間やコストをキャンセルできる“キャンセル消費”に合致するとも考えられています。
「洗面台を脱衣所ではなく廊下やリビングに設える事例は定番化しつつあります。キャンセル消費とも関連しますが、特に単身世帯では浴槽を設置しない方もいらっしゃいます。また寝室を狭くしてリビングを広くとるのは以前からの定番ですが、さらに進んでワンルームにする方も。リビングにベッドを置いてカーテンなどで仕切るなど、見られてもいいようなベッドまわりにされていますね」
“タイパ”のいい「回遊動線」の間取りは以前から人気でしたが、今は間取りを考えるうえでの標準に。
「以前はキッチンを中心に水まわりの回遊動線を作って家事ラクを図るのが主流でしたが、今はさらに広がって、帰宅後に洗面→WIC→脱衣室→浴室という動線を叶えたり、朝お弁当を作りながら身支度ができるようにキッチン横に洗面を設けたりと、事例が増えたことで回遊のバリエーションが充実。さまざまな事例を見てご自身のライフスタイルに合う手法を取り入れることが可能になっています」




家づくりにおいて中古物件のリノベーションが当たり前になった今。スタイルも多様化し、事例や情報が充実するあまりに、何がいいのか迷ってしまう人もいるでしょう。そんな今だからこそ「リノベる」では “未来志向”のカウンセリングを重視しているのだそう。
「最も重視すべきは、リノベーションをした後にご自身やご家族がどんな暮らしをしたいか、ということです。平米数や駅徒歩◯分などの条件に囚われすぎず、暮らしのイメージに合う物件をおすすめしたり。SNSで気になった画像をたくさん保存している方には、それらを俯瞰して好みのテイストを言語化したり。カウンセリングを通して、お客さまそれぞれの判断軸を見出すお手伝いをしています」(齋藤さん)
リノベーションの成熟期に入りバリエーションが増える今、改めて“どんな暮らしをするためにリノベーションを行うのか”に立ち返り、明確化しておくことが、家づくりの成功には不可欠のようです。
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