【2025】中古マンション・リノベ市場に異変!「家賃払い続けるより買う」若年層が増加。”きれいめ”、”動線重視”など最新トレンド解説

公開日 2025年09月10日

【2025】中古マンション・リノベ市場に異変!「家賃払い続けるより買う」若年層が増加。”きれいめ”、”動線重視”など最新トレンド解説

近年の新築マンションの価格高騰もあり、中古マンション購入&リノベーションは今や住宅購入のスタンダードの一つになっています。その平均価格や購入者の年代、間取りのトレンドは実際どうなっているのでしょう。気になる最新事情について、ワンストップリノベーションサービス「リノベる。」の齋藤高央さんと本多史弥さんに聞きました。

増え続ける中古マンションの成約件数。人気は築40年未満の新耐震物件

新築との並行検討から、中古マンション一択へと変化

新築分譲マンションの高騰が続き、東京都心の平均価格は1億円超えに。用地取得の難しさなどにより供給戸数も減少しています。一方、中古マンションは2018年度以来、首都圏において新築マンションを上回る成約件数が続き、特に2025年1~3月は前年比25.5%増の活況を呈しています。

ワンストップリノベーションサービス「リノベる。」の2022~24年度の実績を集計したユーザーレポートによると、2024年は新築と中古を並行して検討する層が前年の67%から40%に減り、中古一択というユーザーが増えました。

成約物件については、マンションが大量に供給された時代に建てられた築21~30年の物件の成約数が増加。一方で、成約件数の約6割は築31年以上という結果になりました。

「リノベる。」の直営エリアにおける成約物件の築年数
「リノベる。」成約物件の築年数。築21~30年の物件が4%上昇
築21~30年の物件の成約件数が4%上昇(出典/リノベる。ユーザーレポート2022年4月~2025年3月)

いい物件とは? 資産価値の下がりにくい中古物件の見極めが重要に

「やはり安心できる物件を買いたいというお客さまが多いので、1981年以降に建てられた新耐震基準の物件を希望される方が多いです。“新”耐震とはいえ、およそ築40年以降の物件が該当するため、選択肢自体は増えているかと思います。ただ、中古物件の需要の高まりもあって“いい物件”はすぐに売れてしまうので、競争率は高まっている印象です」(齋藤さん、以下同)

人気の高い “いい物件”とは? 「リノベる。」でカウンセリングと物件探しを担当する齋藤さんによると、将来に渡って資産価値を担保できるかどうかが重要な判断基準になるのだそう。

重要事項説明書のイメージ
重要事項説明書や長期修繕計画書などのチェックが大切(画像/PIXTA)

信頼できるプロとともに、必要書類をしっかりチェックしよう

「管理状態や修繕積立金の状況は健全か、長期修繕計画がしっかり検討されているか、『重要事項説明書』で確認することが大事です。築古物件であれば建て替えの話が出ていないかなど、管理組合の総会議事録もチェックを。また総戸数も重要で、少なすぎると管理費や修繕積立金の負担が重くなりやすい傾向にあります。鉄骨造よりも丈夫な鉄筋コンクリートであることもポイントになるでしょう」

地方公共団体が適正な管理運営のマンションを認定する「マンション管理計画認定制度」も実施されていますが、登録数はまだ限定的。管理状態は自分でもしっかり確認することが大事ですが、不動産会社やリノベーション会社など、信頼できるプロにサポートしてもらうのがおすすめです。

賃貸より分譲を選ぶ20~30代が増え、リノベーションユーザーも若年化

世代では20~30代前半、世帯は夫婦&パートナーの割合が増加

また、リノベーションの若年化が進んでいるのも現在の傾向です。「リノベる。」ユーザーのうち、20~30代前半の割合が2022年から2年連続で増加。家族構成は「夫婦&パートナー世帯」が2022年の35.4%から2024年は42%に増加しました。

「リノベる。」の直営エリアにおける年代
「リノベる。」ユーザーの年代。20~30代前半の割合がアップ
20~30代前半の割合がアップ(出典/リノベる。ユーザーレポート2022年4月~2025年3月)
「リノベる。」の直営エリアにおける家族構成割合
中古リノベユーザーの家族構成。夫婦・パートナー世帯が増加(リノベる。調べ)
夫婦・パートナー世帯が増加(出典/リノベる。ユーザーレポート2022年4月~2025年3月)

結婚と同時にマイホーム購入を検討する若年層が増えている

以前は結婚後に子どもが生まれて自宅が手狭になったタイミングでのマイホーム購入がスタンダードでしたが、今はそのタイミングが前倒しされ、結婚と同時にご自宅購入を検討し、その選択肢のひとつとしてリノベーションを考える方が増えているのだそう。

共働きで世帯収入が増え、ペアローンも当たり前に

若い世代のユーザーが増えている要因には、SNSで同世代のマイホーム購入に触れた影響も考えられますが、やはり共働きが多数派になり世帯収入が増えたことが大きいといいます。首都圏では、物件価格の高騰もあり共働き世帯でないと予算的に厳しい物件も多く、夫婦でローンを分けた方が世帯として受けられる住宅ローン控除額が増えることもあり、齋藤さんの印象では共働き世帯のユーザーの8割以上がペアローンで購入しているのだそう。

家賃の高騰がマイホーム購入の後押しになっている面も

消費行動の新潮流として、価格に明確な理由を求め、高くてもそこに根拠があるものが売れる“ロジカル消費※”が注目される今。「利用頻度の低いマイカーは持たなくていいけれど、毎日利用する家は購入しておきたい」というふうに、若年層の経済感覚が変わったことも影響していると齋藤さんは考えています。
※ロジカル消費とは…物価高で「安物買いの銭失い」をしたくない消費者が、価格に明確な理由を求めること

家賃を払い続けても手元に何も残らないけれど、毎月同じくらいの金額を払うのであれば、物件という資産を得たり、リノベーションで自分らしい暮らしをかなえたりしたい─。そんな考えを持つユーザーが増えているのだそう。家賃が上がることをきっかけに物件購入を決めたというユーザーも多く、最近の賃貸価格の高騰や値上げの影響も考えられます。

また終身雇用がなくなった今は転職に伴い住む場所が変わることも多く、マイホーム=終の棲家という感覚を持たない人も増加。資産価値の高いマンションが人気なのは、将来的に売却したり貸したりしやすい要素もあるようです。

マンション購入を検討する若年層のイメージ画像
将来的な売却の可能性を考慮して物件を選ぶ人も増加(画像/PIXTA)

リノベの費用は平均1570万円に。内装や省エネ性能への予算投入が進む

同調査によると、首都圏ユーザーの65%が東京都の物件を購入。平均面積は66.8m2で、新築の平均面積62.6m2よりやや広い結果となっています。

気になるリノベーション費用については、2024年は平均1570万円。2022年の平均1290万円から20%アップしました。資材や人件費の上昇幅を差し引いても上がっていることから、リノベーション内容にこだわって予算をかける方が増えているそうです。

「リノベる。」の直営エリアにおける平均リノベーション価格(税込)※ワンストップリノベーションの場合(平均面積68.4m2
「リノベる。」の2024年の平均リノベーション価格は1570万円
建築費の値上がり幅よりさらに上昇(出典/リノベる。ユーザーレポート2022年4月~2025年3月)

キッチンや造作洗面などの設備まわりにこだわる人が増加

リノベーション費用が増えているのは、設備まわりや内装にこだわって予算をかける人が増えているからだそう。

「キッチンにこだわって腰壁やカウンターを造作したり、設備のグレードを上げたり。廊下やリビングなどに洗面を設置する人が増えた影響もあり、デザインにこだわった造作洗面も人気。モールテックスやタイルなどの素材にこだわる方も増えています」

「リノベる。」のキッチンに予算をかけた事例の正面写真
「リノベる。」のキッチンに予算をかけた事例の背面からの写真
キッチンカウンターとテーブルをモールテックスで造作した事例(画像提供/リノベる)

補助金の後押しで、二重窓(内窓)など省エネ設備へのニーズも上昇

また『子育てグリーン住宅支援事業』などの補助制度の後押しもあって、二重窓(内窓)や断熱材などの省エネ性能向上に予算をかけるリノベユーザーも増えています。「リノベる。」での2024年の二重窓採用は2021年に比べ3.4倍になっています。

「リノベる。」での二重窓の採用戸数。2024年は2021年の3.4倍に
「リノベる。」ユーザーの二重窓の採用戸数(出典/リノベる。ユーザーレポート2022年4月~2025年3月)

リノベ感のないシンプルなデザインへトレンドが変化

駆体現しやダクトレールの採用が減り、天井や床がシンプルに

リノベーションといえば、天井の梁などの駆体を現しにするようなインダストリアルテイストがおなじみでしたが、近年はそのトレンドにも変化が見られます。

以前はリノベならではのテイストを希望するユーザーが大多数だったそうですが、今は家づくりの選択肢の一つとして間取りの自由度や価格面でリノベが選ばれているため、ユーザーの好みも拡大。リノベっぽくない空間が求められる傾向にあります。

キーワードは“脱・リノベ感”。そんな今のリノベーションのデザイントレンドについて、「リノベる。」デザイナーの本多史弥さんに聞きました。

「ここ1~2年ほどの傾向としては、シンプルで洗練されたテイストが好まれるようになっています」(本多さん、以下同)

  • 駆体現しではなく天井を設える
  • スポットライトやダクトレールを減らし、すっきりとした天井に
  • 節のあるフローリングではなく、家具が引き立つシンプルな木目のフローリングやフロアタイル(塩ビタイル)に
ダクトレールやダウンライトをなくしたすっきりした天井の事例
駆体現しにダクトレールではなく、すっきりした天井がトレンドに(画像提供/リノベる。)

ファッションのトレンドが生活空間にも波及

シンプルで洗練されたテイストが好まれる傾向は、何をきっかけに生まれたのでしょうか。

「ファッションのトレンドである“Quiet Luxury(静かなぜいたく)”という、派手な装飾を抑えたミニマルなデザインテイストがインテリアにも波及していることが考えられます。また数年前から注目されている海外発のリノベーションホテルのデザインの影響もあるかもしれません」

家事効率のいい「回遊動線」が間取りの定番に

浴槽や寝室はいらない!? キャンセル消費の流れは生活空間にも

また、リノベーションの強みである間取り変更については常識や固定概念にとらわれずいっそう自由に。ここ最近の消費トレンドである“タイパ”や“スペパ”、手間やコストをキャンセルできる“キャンセル消費”に合致するとも考えられています。

「洗面台を脱衣所ではなく廊下やリビングに設える事例は定番化しつつあります。キャンセル消費とも関連しますが、特に単身世帯では浴槽を設置しない方もいらっしゃいます。また寝室を狭くしてリビングを広くとるのは以前からの定番ですが、さらに進んでワンルームにする方も。リビングにベッドを置いてカーテンなどで仕切るなど、見られてもいいようなベッドまわりにされていますね」

“タイパ”や“スペパ”を重視した自由な間取りや効率のいい動線が人気

“タイパ”のいい「回遊動線」の間取りは以前から人気でしたが、今は間取りを考えるうえでの標準に。

「以前はキッチンを中心に水まわりの回遊動線を作って家事ラクを図るのが主流でしたが、今はさらに広がって、帰宅後に洗面→WIC→脱衣室→浴室という動線を叶えたり、朝お弁当を作りながら身支度ができるようにキッチン横に洗面を設けたりと、事例が増えたことで回遊のバリエーションが充実。さまざまな事例を見てご自身のライフスタイルに合う手法を取り入れることが可能になっています」

WICとランドリーをつなげた事例の画像
WICとランドリーをつなげて効率アップ(画像提供/リノベる。)
WICとランドリーをつなげた事例の間取り
WICとランドリールームをまとめた間取り。洗面をキッチン横に設置させているのも回遊の工夫(画像提供/リノベる。)
キッチン、洗面、リビング、納戸を回遊できる事例
キッチン、リビング、洗面、納戸を回遊できる事例(画像提供/リノベる。)
キッチンを中心に回遊動線を作った事例の間取り図
キッチンを中心に回遊動線を作った間取り。玄関から廊下洗面への動線もスムーズ(画像提供/リノベる。)

リノベ後の暮らしを明確にしておくことが情報過多時代に成功するコツ

家づくりにおいて中古物件のリノベーションが当たり前になった今。スタイルも多様化し、事例や情報が充実するあまりに、何がいいのか迷ってしまう人もいるでしょう。そんな今だからこそ「リノベる」では “未来志向”のカウンセリングを重視しているのだそう。

「最も重視すべきは、リノベーションをした後にご自身やご家族がどんな暮らしをしたいか、ということです。平米数や駅徒歩◯分などの条件に囚われすぎず、暮らしのイメージに合う物件をおすすめしたり。SNSで気になった画像をたくさん保存している方には、それらを俯瞰して好みのテイストを言語化したり。カウンセリングを通して、お客さまそれぞれの判断軸を見出すお手伝いをしています」(齋藤さん)

リノベーションの成熟期に入りバリエーションが増える今、改めて“どんな暮らしをするためにリノベーションを行うのか”に立ち返り、明確化しておくことが、家づくりの成功には不可欠のようです。

まとめ

新築マンションの価格高騰もあり、中古マンション購入&リノベーションが一般化

新耐震物件の中でも、資産価値の担保が期待できる物件は競争率がアップ

リノベーションのユーザーが20~30代前半の二人暮らし世帯に拡大

リノベーション費用の平均は1570万円に上昇

トレンドは、リノベ感の薄い洗練されたデザイン

タイパのいい回遊動線が間取りのスタンダードに

SUUMOコンテンツスタッフ
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