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ペット可の分譲中古マンションは数が少なく、探し方のコツが必要です。この記事では、ペット可の分譲中古マンションの効率的な探し方や注意点、リノベーションについて解説。らくだ不動産・副社長の山本直彌さん、さくら事務所のホームインスペクター(住宅診断士)坂瑞貴さんの知見やアドバイスを交えながら紹介します。
ペットと一緒に暮らしたいけれど、なかなか「ペット可」の分譲中古マンションが見つからない…と悩んでいる方もいるかもしれません。SUUMOに掲載されている関東の物件情報を見てみると、新築マンションのペット可物件が全体の50%弱であるのに対し、中古マンションのペット可物件は、全体の約3%程度(2025年1月)。ペット可の住居探しに関するアンケートでは、20代の30%、30代の23%がペット連れの住居探しに困った経験があると答えています。ただし、中古分譲マンションのペット可物件は、比率で言うと少ないですが、絶対数で言うと新築より多いこともわかります。その背景を山本さんに伺いました。
| ペット可(総数) | 比率 | |
|---|---|---|
| 東京都 | 192(526) | 37% |
| 神奈川県 | 106(155) | 68% |
| 埼玉県 | 59(91) | 65% |
| 千葉県 | 44(66) | 67% |
| 茨城県 | 7(15) | 47% |
| 栃木県 | 9(10) | 90% |
| 群馬県 | 6(13) | 46% |
| 関東合計 | 423(876) | 48% |
| ペット可(総数) | 比率 | ペット相談物件数 | 比率 | |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 891(27,164) | 3% | 12,067(27,164) | 44% |
| 神奈川県 | 368(13,949) | 3% | 5,979(13,949) | 43% |
| 埼玉県 | 218(7,498) | 3% | 2,960(7,498) | 39% |
| 千葉県 | 198(6,251) | 3% | 2,515(6,251) | 40% |
| 茨城県 | 15(431) | 3% | 167(431) | 39% |
| 栃木県 | 27(289) | 9% | 140(289) | 48% |
| 群馬県 | 35(368) | 10% | 139(368) | 38% |
| 関東合計 | 1,752(55,950) | 3% | 2,3967(55,950) | 43% |

「ペット可分譲中古マンションが少ない理由はいくつかあります。一昔前に建設されたマンションでは室内でペットを飼育すること自体が想定されていませんでした。特に築古になるほど、その傾向が強いです。当時の管理規約では、『他の居住者に迷惑を及ぼす動植物の飼育を禁止する』という曖昧な表現が多く使われていました。そのため、『ペットを飼っていない方に基準を合わせて厳しめに解釈する』場合が多く、結果として、ペット飼育禁止のマンションが多くなっているのです」(山本さん)
また、規約変更の難しさもペット可物件が少ない要因の一つだそう。
「ペット不可からペット可へ管理規約を変更するには、区分所有者の総数および議決権総数の75%以上の賛成(特別決議)が必要です。このハードルをクリアするのは非常に難しいため、時代が変わって室内でペットを飼育する人が多くなっても、『他の居住者に迷惑を及ぼす動植物の飼育を禁止する』という規約が固定化されたままの中古マンションが多いのです」(山本さん)
SUUMOの物件を見ると、賃貸マンションのペット可物件は全体の約5%程度と少なめです。新築や築浅の賃貸物件では、ペット共生型や対応可能なケースも増えてきていますが、実は分譲マンションとはその内容が異なります。賃貸マンションはオーナーがルールを決定するため、「小型犬のみ」「猫のみ可」といった制限が設けられることが多いです。
「ペットを飼いやすいのは、分譲マンションだと言えます。賃貸マンションでは、建物の傷みを懸念して飼育が禁止されているケースが多くなっています。分譲マンションにおいては管理規約や使用細則などでルールが定められています。ルールの改変には、さまざまな意見がある中、総会での特別決議(区分所有者の総数および議決権総数の75%以上の賛成)が必要で、決めたルールは簡単には変更できません。このような理由で、一度ペット可と認められた場合はそのルールが安定して継続しやすいため、分譲マンションの方が飼いやすい環境と言えるでしょう」(山本さん)

「ペット可」と「ペット相談可」は似ているようで大きな違いがあります。この用語の違いを正しく理解しないと、物件探しの際に思わぬトラブルや混乱を招くことも。スムーズに理想の住まいを見つけるために、ぜひ知っておきましょう。
「ペット可」は、ペットの飼育が明確に許可されている物件を指します。特に分譲マンションの場合、管理規約に基づいたルールが存在します。「ペット不可」の場合、無断でペットを飼育すると最悪退去を命じられる可能性があるため、契約前に管理規約をしっかり確認することが重要です。また、分譲マンションでペット飼育の交渉をすることは、管理規約変更のハードルが高いため、実現は非常に困難と言えます。
「ペット相談可」は、具体的な条件が明確に定められておらず、物件のオーナーと相談しながらケースバイケースで判断される物件です。このような表記の場合、飼育可能かどうかは交渉次第で決まるため、事前にオーナーや管理会社と詳細な確認が必要です。

ペット可の分譲中古マンションは、物件数が限られているため探し方にポイントや注意点があります。ここでは、物件探しを成功させる方法を具体的に紹介します。
物件探しでは、不動産ポータルサイトと不動産会社への直接相談を組み合わせることがポイントです。
ポータルサイトでは、希望の条件を詳細に設定して検索してください。例えば「ペット可」や「分譲」などの条件を入れて絞り込んでください。SUUMOでは、フリーワード検索のほか、新築の場合は「ペット可・相談」、中古の場合は「ペット相談可」の一覧ページを設けています。
信頼できる不動産会社の選び方に関して、残念ながら、ペット可のマンション専門の不動産会社はほとんどありません。そのため、担当者自身がマンションの管理規約やペット飼育ルールに精通しているかどうかが重要です。ペットと住むことを希望しているとあらかじめ伝え、詳しい人に担当になってもらいましょう。ポータルサイトでは「ペット可」と記載されていても、実際には条件付きの場合があります。担当者に、飼いたいペットの種類(犬なら犬種など)やサイズなどを伝え、管理規約などの詳細を確認してもらいましょう。

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中古マンションの場合、管理規約や使用細則、ペット飼育細則に記載されているペット飼育ルールをしっかりと確認することが不可欠。特に注意すべきは、ペットの種類や頭数、サイズに関する制限です。例えば「犬や猫は1匹まで」「成体時の体高が規定以下であること」など、具体的な条件が定められていることが多いですが、規約に曖昧な表現が含まれている場合には注意が必要です。「今住んでいる住民のペット一代のみ」の場合は、今住んでいる住人がペットを増やしたり、新規入居者がペットを飼ったりはできないので要注意です。「今飼っているペット一世代に限る」場合、新たに飼い始めたり、今飼っているペットが子供を産んだりは認められません。不動産会社や管理会社に詳細を確認し、曖昧な点を残さないようにしましょう。
「ペットに関する主な規定例」のうち、トラブル回避のため特に注意するポイントをまとめました。

ペット可マンションの購入には、物件価格だけでなく、初期費用やランニングコストも考慮する必要があります。ペットに関する初期費用には、防音床やリノベーション義務などのペット飼育条件がある場合があります。また、ランニングコストにも注意が必要です。一部のマンションではペット飼育者が加入を義務付けられる「ペットクラブ」の会費が必要になる場合もあります。
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ペットと快適に暮らすリノベーションのポイントについて、マンションリフォームの施工経験が豊富な坂さんのアドバイスを紹介します。
住まいの環境をペットに合わせて整えるリノベーションが有効です。カーペットからフローリングのリフォームをNGにしているマンションもあるため、事前に工事規約を確認しましょう。
「特に要望が多く、おすすめしたいのは、床材を滑りにくくする工事。マンションに使用されているフローリングは、一般的にペットにとっては滑りやすいものです。例えば、ペット専用の滑りにくい床材を採用したり、既存の床にフロアコーティングを施すことで、ペットが走りやすくなるだけでなく、足腰への負担も軽減できます」(坂さん)

壁材に関しては、爪とぎや汚れ対策を施すとよいでしょう。傷に強いビニールクロスや、壁の下半分にパネルを設置する方法もあります。また、取り外しやすい見切り材を取り付けることで、壁の一部だけ簡単に張り替えることができるのです。これにより、ペットによる壁の損傷を最小限に抑えることができます。
間取り変更を行うことで、ペット専用のスペースを作ることも可能です。ペットのストレスが軽減され、しつけもしやすくなるというメリットがあります。
「例えば、収納の下にトイレスペースを設けたり、ペットが落ち着ける専用の居場所を確保する方法があります」(坂さん)
賃貸マンションでペットを飼う際、バルコニーには転落防止柵を設置することが重要です。透明なアクリル板やネットを活用すれば、安全性を高めつつ景観も損なわずに済みます。また、人工芝やウッドパネルを敷くことでペットが快適に過ごせる空間を演出できます。

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リノベーション費用は工事内容によって大きく異なります。ペット用のフロアコーティングを施す場合、70平米の住まい全体で30万円程度が相場です。また、カーペットからフローリングに張り替える工事の場合、50平米の広さで約50~60万円ほどかかるケースが一般的です。入居後に工事を行うと、その間ペットにストレスがかかることもありますので、リノベーションは入居前に行った方がよいでしょう。
| 工事内容 | 広さ | 費用の目安 |
|---|---|---|
| ペット用フロアコーティング | 70平米 | 約30万円 |
| カーペットからフローリングへの張替え | 50平米 | 約50~60万円 |
探すのが簡単ではないペット可分譲中古マンションですが、物件探しのポイントや探すうえで知っておくべき注意点を理解して、不動産会社と協力してペットとの夢の暮らしを実現しましょう。
ペット可中古分譲マンションと新築の物件数の比率では新築の方が多いが、絶対数では分譲中古マンションの方が新築より多い
分譲マンションでは、ペットの条件について管理規約で詳細に決められている。「ペット可」の文言だけではなく規約も確認しよう。信頼できる不動産担当者の選定も重要
内見時にはペット用設備や住民の飼育状況、周辺環境を確認し、トラブル回避につなげる
リノベーションは入居前に行うとペットのストレスが少ない。滑りにくい床材や傷に強い壁材などが効果的
●取材協力
山本直彌さん
らくだ不動産 副社長。得意分野は、マンション管理士の資格を活かしたマンション取引で、不動産仲介取引件数は累計500組以上。
坂瑞貴さん
さくら事務所のプロホームインスペクター(住宅診断士)。一級建築士で、リフォームでは700件以上の施工経験がある。