中古でBELS（ベルス）を取得しているマンションはあるの？購入メリットなどを解説

公開日 2024年06月27日

中古マンションを購入するときに「省エネ性能の高い物件を選びたい」と考える人は多いのではないでしょうか。建物の省エネ性能を評価する基準で、近年よく目にするのがBELS（ベルス）です。

この記事では、BELSとはどのようなものなのか、BELS評価書を取得済の中古マンションはあるのかなどを、一般社団法人住宅性能評価・表示協会の中山拓郎さんに伺い解説します。

記事の目次

1. BELSとは？
2. 中古マンションでBELSは取得できるの？
3. BELS評価を取得している中古マンションを購入するメリット
4. BELSを取得している中古マンションを購入する際の注意点は？
5. BELSを取得している中古マンションは掘り出しもの！　見かけたらチェックしよう

BELSとは？

BELSとは「建築物省エネルギー性能表示制度（Building-Housing Energy-efficiency Labeling System）」の略語で「ベルス」と読みます。BELSは、2024年４月から国が努力義務を強化した「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度（建築物の販売・賃貸の広告などに省エネルギー性能を表示しなければならないとする制度。以下、省エネ性能表示制度）」に対応した制度の一つで、建物の省エネ性能について第三者認証をおこなう制度です。

BELSは一般社団法人住宅性能評価・表示協会が運営しており、同協会に登録しているBELS評価機関が第三者的立場で評価をおこないます。

「省エネ性能表示制度では、事業者は新築建築物を販売する際の広告等に、その建築物の省エネ性能を記載したラベルを表示しなければなりません。実際に住んでみないとわかりづらいエネルギー消費性能や断熱性能が、星や家マークの数で確認できるため、専門知識がなくても省エネ性能が一目でわかります」（中山さん／以下同）

省エネ性能を表示するためには、事前に省エネ性能を評価する必要があり、その方法には『自己評価』と『第三者評価』の二つがあります。事業者が自ら省エネ性能を評価することを自己評価といい、BELS評価機関に依頼し評価を受けることを第三者評価といいます。

「省エネ性能表示制度の第三者評価は、現在のところBELSに限られます。BELSによる評価を受けた住宅は、省エネ性能ラベルに『第三者評価 BELS』と表示されますので、ラベルを見れば、自己評価か第三者評価かを確認できます」

BELS評価取得済のマンションは、客観的に評価された省エネ性能が一目でわかるラベルが広告などに表示される（画像出典／国土交通省ウェブサイト）

なお、このラベルは2024年4月以降に建築確認申請をおこなった建築物を対象としたものです。2024年3月31日以前にBELSを取得している中古マンションの省エネ性能シールや評価書には断熱性能の家マークが表示されていないなど内容が異なります。詳しくは「2024年3月31日までのBELSは表示項目や内容が異なる」をご覧ください。

BELSとZEH-M（ゼッチマンション）の違い

住宅の省エネ性能と聞いたときにZEH（ゼッチ）を思い浮かべ、BELSと混乱する人も多いようです。国土交通省によると、ZEHは以下のように定義されています。

“ 外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅 “（引用：国土交通省）

なかでも「一棟全体」がZEH基準に達したマンションを、ZEH-M（ゼッチマンション）と言います。一方BELSは第三者が評価した省エネ性能を、視覚的にわかりやすく表示する制度のことです。

「BELSの評価を受けた住宅には、省エネ性能を表示したラベルに加えて、より詳細な性能を記載した評価書が発行されます。BELSの評価書は、省エネ性能に関する『通知簿』のようなものと考えていただくとよいと思います。

例えば、エネルギー消費性能は星マークにより、断熱性能は家マークにより表示されますが、そのマークが多いほどそれぞれの性能が優れていることがわかります。ちなみに、エネルギー消費性能が星マーク3つ、断熱性能が家マーク5つ以上となる場合は、ZEH水準に達したと判断されて、ラベルや評価書にもその旨が表示されます」

ZEH-M（ゼッチマンション）や種類についてもっと詳しく
→ZEH-M（ゼッチマンション）とはどんなマンション？選ぶメリットや新築マンションで増えている理由も解説

中古マンションでBELSは取得できるの？

「BELSは新築・中古でも取得できますが、フルリノベーションを行う場合をのぞき、中古の段階でBELSの評価を受けるケースは稀です。建物の断熱性能等の情報が必要となりますので、新築した事業者（デベロッパーなど）の手を離れて申請を行うことが難しいのだと思います」

2024年４月以降、新築建築物の販売・賃貸時に省エネ性能を表示しなければ勧告対象となったことから、今後はほぼすべての新築マンションで省エネ性能が表示されると考えられます。

「省エネ性能表示制度の普及ととともに、新築時にBELSの評価を取得するマンションは増加しています。こうした物件を中心に、今後はBELS評価書付きの中古マンションの流通量が増えていくことを期待しています」

リノベーションでBELSを取得し売り出される中古マンションもある

2024年4月に省エネ性能表示制度の努力義務が強化されました。ただし、努力義務が強化されたのは2024年4月以降に建築確認申請をおこなう新築建物が対象で、中古物件はあくまで任意とされています。

その一方、中古マンションをリノベーションして再販する事業者のなかには、物件の価値を高めるためにBELSを取得するケースも出始めています。

こちらは、リノベーションにより省エネの見える化に取り組み、BELS認証「ZEH Oriented」を取得したマンション、「東急ドエル・アルス千住（事業主・設計・販売リノベる）」です。（2024年5月現在）

室内窓を設け、室内の空気が循環しやすいよう工夫されている（画像提供／リノべる）

料理をしながらリビングやダイニングを見渡せる対面キッチンを採用（画像提供／リノべる）

洗面カウンターは既製品ではなく、住戸ごとにあわせて造作されている（画像提供／リノべる）

この住戸は、BELSの評価により、年間光熱費の目安が約16.8万円と表示されています。

省エネ性能ラベル表示があると、エネルギー消費性能や断熱性能を視覚的に把握できる（画像提供／リノべる）

「建物の断熱性等の確認ができれば、中古の段階でもBELS評価を取得することができます。そのためこの事例のように、中古マンションの住戸をいくつかまとめてリノベーションする物件を中心に、BELS評価で新たに省エネ性能を『見える化』するケースも出てきているようです」

近年はフルリノベーションする際に、消費者のニーズを受けて省エネルギー性能を高めることが一般的になりました。しかし性能が評価されていなければ、実際にどの程度の性能があるのかを知ることは困難です。BELS評価を取得した中古マンションであれば、それが一目でわかるので、省エネ性能について安心して購入できるでしょう。

BELS評価を取得している中古マンションを購入するメリット

BELS評価を取得している中古マンションは、現時点では希少ですが、今後増加してくると考えられます。BELS評価取得済の中古マンションを購入することには、どのようなメリットがあるのでしょうか？

省エネ性能を把握して購入できる

省エネ性能が高い中古マンションで快適に暮らしたいと考えたときに、「しっかり断熱しているので、省エネ性能は高いです」と説明されても、実際にどの程度なのかわかりません。新築時やリノベーション時にBELSを取得している中古マンションなら、どのような省エネ性能を有しているのかを確認したうえで購入できます。

第三者評価なので信頼性が高い

省エネ性能表示制度には、事業者自らが省エネ性能を評価する「自己評価」と、他者に評価を依頼する「第三者評価」があります。その第三者評価は、現在のところBELSに限られます。

自己評価よりも第三者評価のほうが、客観的な視点で評価されるため信頼性が高いと感じる人もいるのではないでしょうか。そのような人は、自己評価ではなくBELSによる第三者評価を取得している中古マンションを選ぶとよいでしょう。

BELSは第三者機関による評価であるため、客観的な評価を確認できる（イラスト／いぢちひろゆき）

【フラット３５】Ｓで省エネ性能を証明できる

BELS評価書は【フラット３５】Ｓ利用時に、省エネ性能を確認する書類として活用できます。【フラット３５】Ｓとは、高い省エネルギー性や耐震性などを備えた住宅に対し、金利を0.25%～0.75%引き下げるメニューです（2025年3月31日までの申込受付分に適用）。

中古マンション（竣工後２年を超えている、または人が住んだことがあるマンション）で【フラット３５】Ｓを利用するときには物件検査を受ける必要がありますが、BELS評価書は省エネルギー性の確認書類の一つとして認められています。なかでもZEH-M（ゼッチマンション）を対象とした【フラット３５】Ｓ（ZEH）では、原則、BELS評価書（住棟評価）の提出が求められます。