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マンション探しをしていると、意外と物件数が多い「築30年」前後のマンション。希望の条件を満たしていても、築年数が古いと色々と不具合が起きないか?と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。築30年のマンションを選ぶときに後悔しないためのチェックポイントや、「あと何年住めるの?」といった疑問を「リノベる。」の上出さんに伺いました。
不動産のポータルサイトで検索すると、築30年、40年、中には50年の中古マンションも数多く掲載されています。
現在(2025年9月)SUUMOに掲載されている築30年以上の中古マンションの物件数をみてみましょう。
| エリア | 築30年以上の物件(割合) |
|---|---|
| 首都圏 | 28,708(52.4%) |
| 〈東京23区〉 | 10,793(47.6 %) |
| 関西圏 | 16,124(59.7%) |
| 東海圏(愛知県・静岡県) | 4,703(54.5%) |
表を見て分かる通り、首都圏、関西圏、東海圏のいずれも、築30年以上の物件数が中古マンション全体の半分を超えているのです。物件数が多いということは、選択の幅が広がるということ。例えば、駅近のマンションが欲しい場合、築年数の条件を30年以上まで広げれば、購入予算内で希望の物件が見つかる可能性が高まります。
ちなみに、東京都の物件の築年数分布は、築30年以内が52.4%、築30年台(30年~39年)の物件は13.6%、築40年以上が33.9%でした。中古マンション市場では築30年台は若手の方で、築40年以上の物件が存在感を増していることが読み取れます。
国土交通省がまとめた「将来の分譲マンションの戸数の推移」でも、築40年以上のマンションは年々増加し、2043年末には463万8000戸、2044年末には482万9000戸になると予測されています(下グラフ)。

マンションにあと何年住めるのか?の答えは、マンションの物理的な寿命ではなく、管理組合の方針によります。というのも、国土交通省の「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について(平成25年8月)」で紹介されている「固定資産の耐用年数の算定方式 大蔵省主税局(1951)」の鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄筋コンクリート造の物理的な寿命(効用持続年数)は、躯体である鉄筋コンクリートに限っていえば120年。適切なメンテナンスをした場合、150年とされています。
ほとんどのマンションは物理的に朽ち果てるから建て替えるのではなく、管理組合が資産価値の向上や安全性などを考えて建て替えを起案しているのです。
ちなみに、マンションで多く使用されている鉄筋コンクリート造(RC造)の耐用年数は47年になっていますが、耐用年数は減価償却の計算に使われるもので、建物の寿命とは関係ありません。
では、実際にどのくらいの数のマンションが、築何年で建て替えをしているのでしょうか。
国土交通省の資料によると、2025年3月31日時点に建て替え工事が完了したマンションは323件で約2万6000戸。マンションのストック総数は2024年末時点で約713万1000戸なので、建て替えを行ったのは中古マンション全体の約0.4%程度。もちろん築年数によって建て替えをする確率は変わりますが、全体で見るとそう頻繁に起こることではありません。
続いて、実際に建て替えをしたマンションが築何年だったのかを見てみましょう。
下の表は、「マンション建替え円滑化法」の制度を利用して建て替えを行ったマンション事例(154件)の建替組合認可時点の築年数を割合で示したものです。築40年台が最も多く37.0%、次いで築50年台が33.1%、築40年未満での建て替えも約25%となっています。
建て替えを実施したマンションは、駅近で好立地であったり、建て替え後に戸数が増やせている(容積が余っていた)特徴がありました。建て替えで資産価値が上がる良い条件を揃えていたと言えます。
| 築年数 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 築30年未満 | 7 | 4.5% |
| 築30年台(30~39年) | 33 | 21.4% |
| 築40年台(40~49年) | 57 | 37.0% |
| 築50年台(50~59年) | 51 | 33.1% |
| 築60年以上 | 6 | 3.9% |
マンションの寿命は、築年数や建物の構造から一概に判断できるものではありません。マンションが置かれている環境に合わせて、どれだけ適切に管理されているかが寿命に大きな影響を与えます。
例えば、海の近くに建てられたマンションは、潮風の影響で鉄部分が錆びやすくなります。マンションの管理組合がどれだけ塩害対策をするかでマンションの寿命は変わってくるでしょう。
実際に、寿命を延ばす効果を期待して行ったマンション改修の例などを、こちらの記事で紹介しています。
マンションの建て替えをする理由には、再開発に伴う資産価値向上や安全性の向上などさまざまなものがあります。マンションの劣化具合は、築年数やもともとの構造、災害によるダメージ以上に、大規模修繕の内容や回数に左右されます。築●●年経ったから建て替えをしなければならないというわけではありません。
目当てのマンションにあと何年住めるか知りたいのなら、購入時に管理組合に建て替えの予定はあるかどうか確認するのが確実です。管理組合で建て替えの議論がされているならば、議事録に記されていますので議事録の開示を不動産会社に相談してみましょう。
建て替えを予定していないとしても、建て替えた方が良い、あるいは避けた方が良いマンションも存在します。どのように判別すればよいのでしょうか。
「築30年のマンションというと、1995年頃に建てられたということになります。ちょうど日本のバブルが終わった頃です。好景気でマンションがよく売れたため、中には資材の質を下げて急ピッチで建築されたマンションや、オーバースペックなほどしっかり建てられたマンションも存在します。
マンションに問題があるかどうかチェックするには、不動産会社に確認するほか、購入意思を示すことで議事録で事故や修理の履歴を見られる場合があります。新築の時点ではわからなかった問題も、築30年も経っていれば、『施工不良が発見された』『台風や大雨で浸水した』『地震で破損した箇所があった』など自然災害を経験したことでわかる建物の弱点も、さまざまなかたちで現れてきます」(上出さん)
築30年の中古マンションとなると、「住み始めてすぐに建て替えが始まり、建て替え費用を負担したり、一時的に引っ越さなきゃいけなくなって損なのでは?」と心配になります。ですが、建て替えはデメリットばかりではありません。
「建て替えは、マンションの資産価値を上げるチャンスと考える人もいますし、負担と考える人もいます。
建て替えのメリットは、マンションの資産価値向上につながること。私が見てきた中では、マンションの劣化が激しくどうしようもなくなって建て替える例ばかりではなく、再開発に伴う建て替えなど、マンションの価値を高める建て替えもありました。うまく建て替えれば、マンションの資産価値が高くなることもあります。
ただ、建て替えをすれば必ず良いマンションになるとは限りません。例えば、古いマンションの中には、古い法律の基準で建築されており、現行法では不適格な部分がある物件(既存不適格)も。特に昭和40年代から50年代の初めくらいまでは住宅不足だったため、特別に建設を認められるケースがありました。
こういったマンションは違法ではありませんが、建て替えの際は現在の法律に合わせなければなりません。その結果、階数が少なくなったり、部屋が狭くなったりする可能性があります。
建て替えのデメリットは、建て替えに伴う費用負担や、引越しの金銭的・肉体的な負担、環境が変わるストレスなどがあることです。
中古マンションは立地の良い物件が多いのも魅力のひとつ。マンションの立地が自分の人生にぴったりだったのなら、建て替えを経て住み続けるという選択も良いと思います」(上出さん)

築30年の物件には、価格が安いこと以外にもさまざまなメリットがあります。築年数が経過しているからこそのメリットを見ていきましょう。
(1)価格が安い
(2)価格の下落が起きにくい
(3)管理状態を把握しやすい
(4)新耐震基準で建てられている
中古マンションの中でも、築年数が古い物件は価格が安い傾向にあります。
将来マンションを売却する予定なら、できるだけ購入時と変わらない値段で売りたいもの。
新築マンションを購入して中古マンションとして売る場合、「新築」のプレミアがなくなってしまいます。例え1年しか住んでいなくても、価格が大きく下がる可能性が高いです。
中古マンションとして購入し中古マンションとして売却するのなら、購入時と売却時の価格差を抑えやすいでしょう。
「管理状態を把握できることは、中古マンションの大きなメリットです。管理の履歴を見れば、管理組合の意識の高さがわかります。例えば、大規模修繕は12~15年に1度くらいの頻度で行われていると良いですね。
また、中古マンションだと、住人の方々の暮らしぶりを知ることもできます。どのような方と暮らすことになるか事前に知れるのは、新築にはないメリットです。
さらに、築30年も経っていると、自然災害を経験している可能性が高いです。地震や大雨の日に、マンションにどのようなことが起こったのかも確認しておくと安心材料になります」(上出さん)
中古マンションを選んでいると、「旧耐震」「新耐震」という言葉をよく目にします。
「旧耐震」には、建築確認日が1981(昭和56)年6月1日より前の物件が当てはまります。震度5程度で倒壊や崩壊が起こらなければ良いという基準です。震度5以上の大きな地震に対する定めはありませんでした。
しかし、1978年の宮城県沖地震(仙台市などで震度5)で建物崩壊の被害が大きかったことなどから基準が見直されました。新しく定められたのが「新耐震」基準です。
「新耐震」には、建築確認日が1981(昭和56)年6月1日以降の物件が該当します。震度5強程度の地震ではほとんど損傷が起こらず、震度6強から震度7程度でも命に危険を及ぼすような倒壊などの被害が生じないことを目安としています。
1981年6月1日以前に建築確認されたマンションは、2025年現在、築約43年以上になっています。築30年代のマンションなら、新耐震基準で建築されています。
「築30年以上の中古マンションを探している方が最も気にされるのが、新耐震と旧耐震です。旧耐震のマンションであっても、新耐震基準に適合したり、近いうちに耐震工事をする予定の物件もあります。築年数だけ判断できるものではないので、耐震診断の有無や計画もチェックしましょう」(上出さん)
築40年以上の中古マンションも視野に入れていて、旧耐震についてさらに知りたい方は、こちらの記事をお役立てください。

築30年物件のデメリットも知っておき、購入後に後悔しないよう備えましょう。一般にデメリットと思われがちだけれど、長い目で見ればメリットにつながる項目もあります。
(1)買ってすぐ大規模修繕が始まる可能性がある
(2)管理費(共益費)や修繕積立金が値上がりする可能性がある
(3)リフォーム費用が嵩むことがある
マンションの大規模修繕は、基本的に10数年に1度。新築マンションに住み始めれば、向こう10年程度は大規模修繕なしに暮らせます。しかし、築30年程度の中古マンションの場合、購入してすぐ大規模修繕がスタートする可能性も。慌ただしく感じたり、修繕積立金では足りない分が徴収されたりするかもしれません。
しかし、大規模修繕自体はマンションの外観を良くし、資産価値と安全性を高め、暮らしを快適にしてくれるもの。生活する人々にとって多くのメリットがあります。
マンションの大規模修繕について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
管理費(共益費)や修繕積立金は、値上がりの傾向にあります。
「管理費(共益費)は昔より高くなってきています。マンション業界全体として、管理費を下げて価格競争をするよりも、しっかり管理費を集め資産価値を保っていこうという傾向です。マンションを丁寧に管理するために使われるお金ですから、『値上がりすること=デメリット』とは限りません。
また、修繕積立金も、値上がりしたり、大規模修繕の前になって足りない分を徴収されることがあります。『まだ少ししか住んでいないのに積立の不足分を払わなきゃいけないなんて』とデメリットに感じるかもしれません。ですが、こちらもマンションの住み心地や資産価値を上げるための出費。長期的に見れば必要な費用です」(上出さん)
築年数が古いほど、リフォームやリノベーションの費用はかさむ傾向にあります。
「まずはアスベストです。アスベストは飛散性によって危険度のレベルが分かれるのですが、最も危険なレベル1だと撤去費用が数百万円になる場合もあります。築30年を超えるマンションだと、レベル1のアスベストが使われている場合があります。
次に、断熱性や遮音性を高めるリフォームです。やはり新築マンションほど性能が高くない傾向にあるので、生活の質を上げるために断熱材を入れたり、二重窓にする方も増えています。
最後にお風呂のリフォームがあります。お風呂には在来工法の浴室とユニットバスがあり、新築マンションは基本的にユニットバス。ユニットバスは、工事が簡単で費用も安く、機能性も高いです。中古マンションを購入して、在来工法の浴室をユニットバスに変えたいという要望がよくありますが、ユニットバスをリフォームするより、在来工法の浴室をユニットバスに変更する方がお金がかかります」


在来工法の浴室からユニットバスにリフォームする場合の費用や期間について、例を紹介しています。
築30年の中古マンションを購入しようと情報を集めると、さまざまな心配事が増えてしまいます。例えば、「住宅ローンは組めるのか」「築30年だと、すぐに建て替えが始まる?」「大規模修繕費がどんどん値上がりして、後から住み始めた私は損しそう」など。
建て替えや大規模修繕の時期は、築年数から一概に断定できるものではありません。目星をつけた物件の管理会社に確認しましょう。また、大規模修繕費や管理費などの値上がりも、物件によりますし、少なければ良いというものでもありません。
築30年の中古マンションのメリット・デメリットを理解した上で、物件ごとの管理状況や管理の履歴を確認するようにしましょう。
中古マンション購入する前にこちらもチェック
→築40年、45年、50年マンションの後悔しない選び方!いつまで住める?売却できる物件の特徴は?
→ホームインスペクションの費用は? 中古戸建や新築戸建購入を後悔しないための住宅診断とは
「築30年=すぐに建て替え」ではない。建て替え予定は管理組合に確認を
築古マンションは、立地の良い場所に建てられていることが多いため資産性が安定傾向にある
築30年のマンションは、新耐震基準で建てられている。(新耐震基準で建てられているのは、建築確認日が1981(昭和56)年6月1日以降の物件。2023年現在、築約40年以前)
大規模修繕や管理費・共益費は、マンションの住み心地や資産価値を上げるために使われる。長期的には良い投資になることも