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廊下の収納にはクローゼット型やオープン棚、薄型や奥行きが深いタイプなど種類があります。注文住宅の廊下に収納棚を設けるときには、何を入れるのかを考えたうえで設計を依頼することが大切です。この記事では、廊下に設ける壁面収納の種類や2階廊下を含む設置場所のアイデア、設置を検討する際のポイントや注意点などを、生活デザイン設計室 サンクの中村光子さんに伺い解説します。
注文住宅を建てるときに、廊下に収納を設けることにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
「廊下に収納を設けると、部屋には必要なものだけ置けるようになることがメリットだと思います。例えばスーツケースやレジャー用品など普段使わないものは廊下に収納しておくと、部屋の収納スペースを圧迫しません」(中村さん/以下同)
「廊下に収納を設けるデメリットは、そのぶん居住空間が狭くなる可能性があることです。廊下に収納を設けるといっても、廊下は通路としての役割があり、それだけの幅は確保しなければなりません。その結果隣接する部屋を狭くしなければならないこともあります」
廊下に収納を設けるぶん、家の床面積も広くできれば問題ありません。しかし土地にはそれぞれ建てられる家の延床面積に制限があります。都市部で建築面積いっぱいに家を建てるようなケースでは、廊下に収納を設けるぶん、隣接する部屋の面積を削ることを検討しなければならない可能性があるのです。

廊下に収納を設けるときには、どのような場所が考えられるのでしょうか?
「まず考えられるのは、廊下の壁面を利用した収納です。廊下幅を確保したうえでさらに壁一面使えるような収納を設けると、スキー板やスティック型掃除機など、高さがあるものも収納できます」
「続いて考えられるのは、廊下の突き当たりです。廊下の突き当たりは歩行の邪魔にならないので、廊下幅いっぱいに収納を設けられます。ただし廊下の突き当たりは両側の壁が干渉し、例えば折れ戸だと開いたときに端に扉がたまり全面が開きません。開き戸だとドアノブが壁に当たることもあります。そのためドアは付けず、ロールスクリーンにするなどの方法もあります」

廊下は床からの高さが2300mm程度あるのが一般的です。そのため高身長の家族がいなければ、吊り戸棚を設ければ収納に活用できます。
「『廊下に吊り戸棚を設けると圧迫感が出るのでは』と心配な場合は、明るい色を選んだり、壁紙や天井の色とあわせたりして存在感を薄くすればよいでしょう」
「廊下に面する階段下はデッドスペースになりがちなので、収納に活用するのがおすすめです。ただ階段下は階段と同じ幅だけ奥行きがあるので深い収納になりがちで、使いにくいと感じることもあります。
その場合、間取りにもよりますが、廊下側からだけでなく廊下を挟んだ反対側の部屋からも出し入れできるようにできればベストです」
階段を上がったところにある手すりや吹抜けの2階部分に設けられる手すりをそのままオープン収納にすることもできます。
「手すりとなる部分を壁にせず収納にするので、デッドスペースの有効活用にもなります。手すり部分の収納は奥行きが浅くなるので、文庫本や漫画の収納に適しています」

廊下に設ける収納の種類と特徴を紹介します。
オープン棚型の収納とは、棚だけを設置し扉を付けないタイプです。扉がないので収納したものをさっと取り出せることが特徴です。
「オープン棚となったタイプは『見せる収納』となるので、生活感が出るようなものの収納には向いていません。また扉がないためホコリがたまりやすいことは念頭に置いておく必要があります。気になる場合は天井からロールスクリーンを付けるのもおすすめです」

クローゼット型の収納は、一面に扉が付いたタイプです。
「廊下にクローゼット型の収納を設けるときには、開き戸や引き戸、折れ戸など、さまざまなタイプの扉を選べます。
なお開き戸は廊下幅にあった可動域を考慮する必要があります。引き戸は廊下に干渉しない一方、引き戸を引けるスペースが必要になる、もしくはスペースがない場合は半分ずつしか開閉できません。折れ戸は端に扉がたまるため有効間口が狭くなります。それぞれメリット・デメリットがあるので、どのタイプを選ぶのかは、入れるものともあわせて検討が必要です」

壁全面ではなく、床から好みの高さまでだけ収納を設けるのがカウンター型です。
「カウンター型は、カウンター部分は飾り棚としてディスプレイを楽しみつつ、収納部分はたっぷり収納として使えます」

吊り戸棚は、廊下の天井に直接取り付けるタイプの収納です。
「廊下の幅は750~800mm程度が一般的なので、吊り戸棚は奥行きを300mm程度に抑えると圧迫感がありません。高いところにある吊り戸棚には、軽いものの収納が適しています」

廊下の収納には、どのようなものを片づけるとよいのでしょうか? 収納するものによって適切な収納の種類やサイズはあるのでしょうか。
掃除機や工具など家族が共用するものは、廊下に収納しておくといつでも誰でも気軽に取り出して使えて便利です。ディスプレイ要素はないので、扉が付いたクローゼットタイプの収納がよいでしょう。
「大抵のものは300~400mm程度の奥行きがあれば収納できます。スーツケースなど大きなものも、向きを変えれば問題ないでしょう」
「トイレットペーパーや買い置きのペットボトルなど、日常のストック品も廊下に収納すると狭いトイレやキッチン空間を圧迫しません。こちらも幅は300~400mm程度確保することをおすすめします」
「本については、A4サイズを想定するなら奥行き300mm、文庫本や漫画であれば奥行き150mm程度がおすすめです。深すぎて前後2列に並べるようになると、奥に何の本があるのかわからなくなってしまいます」
本の収納は取り出しやすさを考えるとオープン棚がよいでしょう。
オフシーズンの服をクローゼット型の収納に保管したり、扉を付けずにウォークスルークローゼットとして家族の服の収納に活用したりもできます。
「ハンガーをかけることを考えると、服の収納には最低でも奥行き600mm程度は必要です」

「スキー用品やキャンプ用品、ほかにはダンボールや新聞紙、資源ゴミなど、居室やリビングには置きたくないものを廊下に収納する方も多いです。こういったものは基本的には玄関収納を検討しますが、玄関に広い収納を設けられない場合は廊下収納が候補となります」
注文住宅で廊下収納を検討するときのポイントや注意点を、中村さんに伺いました。
「廊下に収納がほしいからといって、廊下幅を削ってまで収納を設けるのはおすすめしません。廊下幅は人がすれ違うことを想定すると750~800mm程度、車椅子を想定するなら900~950mm程度は必要です。廊下の収納は、廊下幅を確保したうえでそこにプラスする形、もしくは廊下幅に影響しない吊り戸棚で検討しましょう」
「家を建てる際、『とりあえずできるだけ多くの収納がほしい』と考える方もいます。しかし収納は多ければ多いほどよいわけではありません。
一戸建ての適切な収納率(家の延床面積に対する収納面積の割合)は12~15%といわれています。延床面積が100m2の一戸建てだと、12~15m2程度が適切です。玄関や居室に収納を配置して、それでも不足する場合には、廊下幅を確保するためにもまずは廊下のデッドスペースの活用から検討すればよいと思います」

「お伝えしたように、収納には適切な広さ、とくに奥行きがあります。400mm程度の奥行きがあれば大抵のものが収納できるとはいえ、文庫本や本には広すぎますし、服をかけるには狭すぎます。収納を検討するときは『とりあえず』ではなく『そこに何を収納するのか』まで考えましょう」
「どこに何を収納するかを考えるときには、動線も考慮しましょう。収納は『使う場所の近くに収納する』のが基本です。例えばキッチンで使うストック品はキッチン近くの廊下に、紙ゴミなどはすぐゴミ出しできるよう玄関近くの廊下に収納することを考えます」
「注文住宅を建てるのにあわせ、自分たちの持ちものを整理して減らすことを考えるのも大切です。ものが減れば、『廊下に収納を設けない』という判断ができるかもしれません。
とくに近年は、収納しなければならないものが減ってきています。例えば扇風機は、夏だけでなく空気を循環させるために通年使う方も多いです。加湿器と除湿機が一体型になったタイプは、収納せずとも年間通して使えます。
また最近は『できるだけものを持たず、シンプルに暮らしたい』と考える人も増えてきました。これから家を建てるタイミングで、自分たちが持っているものを洗い出し、必要なもの、不要なものを、ぜひ整理してみていただきたいです」
最後にあらためて中村さんに、廊下の収納を設けるか悩む人に向けてのアドバイスを伺いました。
「収納は多ければ多いほどいいわけではありません。まずは家の間取りを考える段階で、自分たちの持ちものを整理して、どの程度の収納が必要かを考えることをおすすめします。その結果廊下にも収納が必要となった場合も、廊下幅を確保したうえで収納の設置を検討しましょう。
収納で悩むときには、整理収納アドバイザーなど専門家に相談するのも方法の一つです。注文住宅の新築を『自分たちのこれからの暮らしを見直す機会』と考えて、収納計画を立ててみてください」
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