狭い土地に建てる「狭小住宅」。間取りの自由度が低そう、部屋数が少なそう、収納が不足しそう……など、マイナスなイメージをもってしまいがち。でも、空間を工夫することで、快適な住まいづくりは不可能ではありません。そこで、狭小住宅の施工実績も多数もつ、一級建築士の鈴木信弘さんに実例を交えながら詳しく教えてもらいました。
一般的に、比較的小さな一戸建てを総じて「狭小住宅」と呼んでいるケースがほとんどかもしれません。じつのところ、その定義は曖昧なのだとか。
「プロの視点で言うと、土地面積20坪、延床面積約70平米の一戸建てを狭小住宅と定義することが多いと思います。あとは、住宅の幅が5m未満しか取れないときも、狭小住宅と呼んでいます。ただ、いずれにしても、はっきりと決められているわけではありません」(鈴木さん、以下同)
特に、都市部など利便性の高いエリアでは、土地を購入しようにも価格が高かったり、狭い土地しかなかったりすることから狭小住宅のニーズは増しているとのこと。また、200平米以下の土地は「小規模住宅用地」に分類されますが、固定資産税や都市計画税の軽減対象になります。長い目でみると、経済的にもおトクなのです。
狭小住宅は広さに余裕がないとあって、空間をどう有効活用するかによって快適さが左右されます。鈴木さんがおすすめするのは、LDKを「田の字」にレイアウトする方法。
「狭小住宅は、できるだけ余分な空間を省くことがポイントになります。なかでも、通路にあたる廊下はつくらない設計にすることが望ましいでしょう。そこで、LDKとプラスαの4つのスペースを漢字の『田』になぞらえてレイアウトします。すると廊下が不要になります。例えば、マンションの間取りのような細長いレイアウトに配置してしまうと、通路が必要になってしまうので、余剰のスペースが生まれてしまいます。これは狭小住宅では不利になってしまうのです」
また、階段をリビング内に設置にするなど、居住スペースを最大限に確保するさまざまな工夫もあるようです。
ほかにも、デッドスペースになりがちな壁面をフルに使うこともポイント。設計の段階で収納プランを組み込むことで、少ないスペースの有効活用につながります。
狭小住宅は窮屈になりがちなイメージですが、これについても工夫次第でゆとりを感じるスペースにつくりあげることもできるとのこと。秘訣は“錯覚の利用”。代表的なポイントを3つ教えてもらいました。
「絵画でも奥行きある描き方のコツがありますよね。それと同じような工夫を住まいにも施すんです。例えば、窓をつくるときも天井ギリギリまでガラスにして壁をつくらない。そうすることで、光が行きわたりますし、空がより遠くまで見えるので、空間の広がりを感じます。同じ理屈ですが大きな鏡を随所に取り付けることで、空間を広く見せることも可能に。また、無駄になると思いがちかもしれませんが、小さい家だからこそ上下階に吹抜けをつくることで広さを演出できます」
「上下階を縦につなぐだけの直線的な階段ではなく、半階ごとの空間『スキップフロア』をつくることで、実際の面積以上に空間に奥行きがもたらされます。特に狭小住宅の場合、縦の空間をどのように最大利用するかもポイントになってきますので、スキップフロアを取り入れることも有効な手法のひとつでしょう」
「家の隅や角などのコーナーは、なるべくガラス戸を利用するなど、外へのつながりを感じさせるようにします。さりげない工夫ですが、コーナーを閉ざさずに目線を外に向けることで圧迫感を回避することができます。おすすめは緑を植えること。狭さから庭をつくることが難しいとしても、コーナーを介して緑を眺められるようにすると生活空間に緑を取り入れられ、安らぎを感じる空間に仕立てることができます」
狭小住宅の工夫、いかがだったでしょうか? 狭いからといって空間を削ることばかりを考えるのではなく、メリハリをつけることも大事。工夫限られた敷地面積に建てる狭小住宅ですが、工夫を凝らして住みやすさを実現しましょう。
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