SUUMO(スーモ)は、住宅・不動産購入をサポートする情報サイトです。
リビングに落ち着いた「和」の雰囲気を取り入れたいときには、「和モダンリビング」という方法もあります。リビングを和に寄せすぎず、スタイリッシュな「和モダン」に仕上げるにはどうすれよいのでしょうか?
この記事では、和モダンリビングをおしゃれに仕上げるために間取りや内装、インテリアにできる工夫を、実例を交えながら廣神建設の廣神壮郎さんに伺いました。
和モダンリビングとは、伝統的な和の雰囲気と、洋の都会的でおしゃれな雰囲気がミックスされたリビングのことです。
「日本人は左右非対称なものや、ちょっと崩れているもの、傷があるものに対しても『美しい』と感じる独特な美意識があります。和モダンな家は、きれいに整った洋風デザインのなかに、和紙や無垢(むく)材、塗り壁などちょっとマットだったりざらついたりした質感の素材が入ることに趣を感じます。
私が茶道をたしなんでいることもあり、畳や床で過ごす視線を意識して和の要素を取り入れる工夫をしています。そのうえで、北欧の家具や照明を使うなどしてモダンな雰囲気を演出しています」

和モダンと似たものに「ジャパンディ」があります。和モダンとジャパンディに明確な違いはないといわれています。一般的には、北欧テイストのなかに、和のテイストが混じっているものがジャパンディといわれることが多いようです。
「和モダンは、『日本人が日本人の視点』で心地よさを感じるように和と洋を融合させているのに対し、ジャパンディは『海外の方が海外の視点』で、モダンな空間に和のテイストを取り入れて楽しまれている点が違うように思います」
和モダンリビングは、天井高を高くとり、さらに細かに部屋を区切らず開放的な空間にすることがポイントです。
「もともと和風住宅は、ふすまや障子などを付けたり外したりすることで、さまざまな用途で空間を使えるようになっています。『用途を限定せず曖昧にしておく』『さまざまな使い方ができる余地を残しておく』というのも、和の考え方の一つだと思います」
リビングの片隅に小上がりを設けるのも、リビングに和の要素を加える手法の一つです。しかし小上がりを設けると、和に寄りすぎてしまうのを心配する人もいるようです。小上がりを設けつつ、おしゃれな和モダンリビングにする工夫はあるのでしょうか。
「小上がりのあるリビングをおしゃれな和モダンにするには、リビングとの一体感が大切です。例えば畳は縁があると『線』が増えて、空間を狭く感じさせてしまいます。そのため縁がない畳を選ぶと主張が弱まり、リビングに溶け込みやすくなります」

リビングにつながるように土間や中庭を設けるのも、おしゃれな和モダンリビングを演出するには効果的です。
「日本人はもともと庭をつくり、窓から四季の移り変わりなどを楽しむ風情のある暮らしを好んできました。私たちはまず庭から考えて『どういう景色が見えれば居心地がいい部屋にできるのか』という視点でリビングを考えます。土間は庭とリビングを緩やかにつなぎ、自然と溶け込む暮らしを可能にする存在だと思います」

壁は和風住宅の特徴でもある柱を見せる「真壁」ではなく、柱を隠す「大壁」にすると、和のテイストを抑えたおしゃれな和モダンリビングになります。
「真壁にすると部屋の中に木の分量が多くなり、和の要素が強くなりすぎます。また真壁で柱を見せると『線』が増え、部屋の印象が少しうるさくなってしまうことも、大壁にする理由です」
壁は塗り壁のなかでも漆喰(しっくい)で仕上げると、美しい白い壁で和のテイストを出しながら、スタイリッシュな印象を与えられます。
「塗り壁にはいろいろな種類がありますが、例えば珪藻土などは表面に凹凸ができるのでホコリがたまりやすくなります。その点漆喰(しっくい)は金ごてで押さえればツルツルに仕上がります。静電気を帯びにくいので、汚れにくいのもメリットです。また漆喰には調湿作用や吸臭作用があり、不快な臭いも吸い取ってくれるので、心地よい環境で暮らせます」
壁材についてもっと詳しく
→珪藻土と漆喰の壁材の違いは?塗り壁の施工、メリット・デメリット、新築、リフォーム、DIYのポイントを解説
天井は梁(はり)を見せると、どこか懐かしさを感じる古民家風のおしゃれな和モダンリビングになります。
「人が集まるリビングは、基本的に天井を高くつくるのですが、高すぎる天井はなんとなく居心地の悪さや不安感を覚えるものです。そこに梁(はり)を見せるようにすると視覚的なアクセントになり落ち着く効果があります」

床はフローリングをベースとし、畳を使用するとしても配分は控えめにします。
「建具や柱などはヒノキなど極力木目がない材料を使うのに対し、フローリングに使用する無垢材はナラなど少し木目のあるものを選ぶようにしています。リビング全体を木目がない無垢材で仕上げてしまうと、和の雰囲気が消えてしまうことが理由です」

建具は基本的には引き戸とし、なかでも柔らかな光を通す障子を使うことが和モダンリビングのポイントです。
「ただし障子を多用すると和の印象が強くなりすぎるので、配分は重要です。また障子の桟の数を減らした『荒格子』にするとやはり『線』が減り、少し和から離れてすっきりとスタイリッシュなデザインになります」

和モダンリビングにするときには、洋の雰囲気が強くなりすぎるカーテンの使用は控え、障子やウッドブラインドを選びましょう。
「小上がりで障子を使っているなど、障子の配分が多すぎて和に寄りすぎてしまう場合は、ロールスクリーンを選ぶのも方法の一つです。またウッドブラインドは、一般的な木のものを使うと洋のテイストに寄りますが、竹素材のものを選ぶと和に寄せられます」

和モダンリビングの照明は、リビング全体を明るくするのではなく、間接照明を使い必要な部分だけを照らすとおしゃれです。
「日本人は『陰影』に美を感じる独特な感性があると思います。照明は必要なときにはダウンライトで全体的に明るくできるようにしつつ、普段はペンダントライトやブラケットライトなどで、必要な場所だけに『光の島』をつくるイメージで照明計画を考えるといいでしょう」
和のテイストを取り入れる和モダンリビングでは、床に近い暮らしをするため、家具は背が低いものを選びます。
「座ったときの目線の高さから、どのように庭が見えるのかまで意識して、窓の位置や椅子の高さも考えるとバランスがよくなります」
ここからは、おしゃれな和モダンリビングの実例を紹介します。
高窓や庭に面した大窓から自然光を存分に取り入れられる、勾配天井の和モダンリビングです。
古民家にあるような、すりガラスがはめられたレトロなタイプの障子戸がおしゃれです。北欧製の照明やダイニングテーブルも、違和感なく溶け込んでいます。

玄関との間に、和の雰囲気あふれる格子の引き戸がある和モダンリビングです。
格子戸で空間を緩やかに区切ると、部屋の温度差が少なくなったり、暗くなりすぎたりしないというメリットがあります。また視線が格子戸の向こうまで抜けることで部屋のつながりを感じられ、リビングを広く見せる効果もあります。

大開口から外の景色を楽しめるリビングの横に、和室が配置された和モダンリビングです。
収納棚の下に空間が設けられた、まるで茶室のような和室は、フローリングと畳の表面の高さが同じなので一体感があります。大開口の外側につくられたウッドデッキは、土間と同様に庭とリビングを緩やかにつなぐ役割を果たします。

「おしゃれな和モダンの家にするには、まずは高さを意識することが大切」と廣神さんはいいます。
「具体的には構造的に家全体の高さを抑えたシルエットで、水平ラインがきれいに見えるように切妻屋根や、段違い屋根を採用することが多いです。
日本の家は建築面積をあまり広くとれないケースが多いので、背が高くなると安定感を得られなくなることが理由です。小さいなら小さいなりに、重心を低くし安定感のある外観デザインのほうが、かっこよく見えると思います」

「おしゃれな和モダンの家にするには、家の中の『線』を極力減らすこともポイントです。
お伝えしたように、純日本家屋は柱が見える真壁だったり、障子も格子が細かかったり、畳に縁があったり。とてもたくさんの『線』があります。そういった線を一本一本ていねいに減らしていくと、リビングだけでなく家全体がすっきりとした印象のおしゃれな空間になります」
おしゃれな和モダンリビングが似合う家にするには、和モダンが得意な建築会社に依頼することも大切です。
「私たちのように、和モダンが好きでこだわっている会社というのは、どこも『日本人がもともと持っている美意識ってなんだろう』という根本のところから考えているものです。和モダンの家を建てる経験を重ねたぶんだけ多くの引き出しを持っているので、施主さまのご要望にお応えできると思います」
最後にあらためて廣神さんに、おしゃれな和モダンリビングのある家づくりについてアドバイスを伺いました。
「ピカピカした工業製品ではなく、無垢材や漆喰、和紙などの自然素材を多用する和モダンリビングがある家は、年月とともにより趣が出てくるものです。家と一緒に成長し、メンテナンスも楽しめるような人が、和モダンの家に向いていると思います。
外観デザインや庭づくりも含め、トータルでおしゃれな和モダンの家を考えてくれる建築会社さんを見つけ、ぜひ家づくりを楽しんでいただきたいです」
和モダンリビングとは、伝統的な和の雰囲気と、都会的な洋の雰囲気を融合したリビングのこと
和モダンリビングをおしゃれに見せるには、不要と思われる『線』を一本一本排除していくとよい
和モダンビングは、経年変化を家の成長として楽しめる人に向いている