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マイホームはおしゃれなコンクリート打ちっぱなしの家にしたいけれども、夏は暑くて冬は寒いって聞くから心配……といった声をよく聞きます。コンクリート打ちっぱなしでも、快適な家にする工夫はあるのでしょうか? この記事では、コンクリート打ちっぱなしの家のメリットや、デメリットとその対策を、川島建築事務所の川嶌代表に伺い解説します。実際の建築事例、メンテナンス方法なども紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
コンクリート打ちっぱなしの家とは、具体的にどのような家を指し、いつ頃から見られるようになったのでしょうか。
「コンクリート打ちっぱなし」とは、RC(鉄筋コンクリート)造やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造で、外装や内装にコンクリートの素材感を活かした家を指します。
「RC造やSRC造の家は、鉄骨や鉄筋を組んで型枠で囲み、コンクリートを流し込んでつくられます。そして型枠を外したコンクリートの上に、タイルを張ったり、吹き付け塗装したりして仕上げるのが一般的です。一方、コンクリート打ちっぱなしは、型枠を外したそのままの素材感を活かして仕上げます」(川嶌代表/以下同)

「コンクリートの家が日本で増えたのは、戦後のことです。当初は民間住宅ではなく、公共の建物にコンクリートが用いられていました。なおその当時は、今のような合板型枠ではなく杉板が使用され、そのデザインを活かすのが主流でした」
コンクリートの家についてもっと詳しく
→RC造(鉄筋コンクリート造)や鉄骨造の耐用年数は?メリット・デメリットを解説
マイホームをコンクリート打ちっぱなしの家にすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
コンクリート打ちっぱなしの家の魅力は、なんといってもその都会的でクールな外観です。シンプルでありながら、スタイリッシュな家づくりを楽しめます。
「コンクリート打ちっぱなしの家をかっこよく仕上げるには、そもそもの建築物としてのデザインがよいことが条件です。水平ライン・垂直ラインを意識したすっきりとしたデザインでなければ、コンクリート打ちっぱなしにしたからといって、かっこいい家にはなりません」

コンクリート打ちっぱなしの家は、RC造・SRC造であるため、木造の家に比べると耐久性が高く、耐用年数も長くなる傾向があります。
「鉄筋とコンクリートでつくられる打ちっぱなしの家は、耐久性は確かに高いといえます。ただ、日本は昔から木造建築が盛んで、法隆寺に代表されるように、一概に木造だから寿命が短いとはいえません。また、コンクリートそのものが100年以上もつとしても、住宅としての寿命も同じといえるかどうかは、設備も含めて考える必要があるでしょう」
RC造・SRC造の家は、木造や鉄骨造よりも柱と柱の間のスパン(距離)を長く取ることができます。そのため柱の少ない広い空間設計ができ、例えば開放的なLDKにするなど、住宅のデザインの自由度も高くなります。
コンクリート打ちっぱなしの家の構造は、引っ張りに強い鉄筋と圧縮に強いコンクリートでできているため、強度が高いことが特徴です。そのため木造住宅と比べると、耐震性が高くなります。
また不燃材料のコンクリートでできた打ちっぱなしの家は「耐火建築物」となり、火災に強いため火災保険料も安く抑えられます。
コンクリート打ちっぱなしの家にはデメリットもあります。対策とあわせて紹介します。
コンクリート打ちっぱなしの家は、一般的な木造や鉄骨造の住宅と比較して、建築費が高いことがデメリットです。
「近年、住宅の建築費は総じて高騰しています。RC造の家に関しても同様で、主材料となるセメントや鉄骨はもちろん、型枠に使う木材も高くなってしまいました。
また、人件費の高騰も、建築費に影響を与えています。とくに型枠を組み立てる型枠大工は、なり手が非常に不足しているのが現状です」
「コンクリート打ちっぱなしにしたいけれども、予算が足りないときには、1階はコンクリート打ちっぱなし、2階以上は木造にする『混構造』を検討するのも方法の一つです」
混構造とは、木造と鉄骨造、木造とRC造など、異なる構造を組み合わせる建築手法を指します。シンプルですっきりしたデザインが魅力のコンクリート打ちっぱなしは、ガルバリウム鋼板(※)の外壁材と組み合わせるとスタイリッシュです。
※ガルバリウム鋼板は日鉄鋼板の登録商標です

コンクリート打ちっぱなしの家は、そのままだと外気の影響を受け、夏暑くて冬寒い過ごしにくい家になってしまいます。これは、コンクリートは熱伝導がよく、外気の温度を室内に伝えやすいことが理由です。
「暮らしやすいコンクリート打ちっぱなしの家にするためには、『外気に接する壁』の断熱が必須です。外壁の断熱は外断熱と内断熱がありますが、外断熱にすると打ちっぱなしの外観にはなりませんし、費用も高額になります。そのため外気と接する外壁の室内側を断熱する、内断熱を選ぶのが一般的です」

家の構造についてもっと詳しく
→RC造とは?SRC造、S造、木造とはどんな建物構造?住み心地は違うの?
「コンクリート打ちっぱなしの家を内断熱にする場合、内側の壁は木造住宅と同様に好みの素材や色を自由に選べます。またその場合でも、外気と接しない間仕切り壁や天井は、打ちっぱなしそのままのデザインを楽しむことも可能です」
打ちっぱなしの内壁を楽しむ場合、黒と白のモノトーンでまとめるとコンクリートのグレーとあわせてスタイリッシュにまとまります。さらに金属素材をあわせるとインダストリアルでクールな雰囲気に。家具も素材感を楽しめるヴィンテージなものを選ぶと、無骨な打ちっぱなしの壁に映えるでしょう。

ここからは、実際に建てられたおしゃれなコンクリート打ちっぱなしの家を紹介します。


大好きな車とともに暮らせるガレージハウスを、地上3階、地下1階のコンクリート打ちっぱなしの家で実現した事例です。居住面積を上へ広げることで土地の費用を抑え、そのぶん建物へと配分しました。
2階のLDKは、柔らかく光を拡散させる白い壁と白いタイルの床に、打ちっぱなしデザインの天井。そこに黒のTVボードを配置することで、きりりと引き締まった印象を与えています。


通りから奥に向かって1.5mの高低差がある土地に、自分たちが理想とするスタイリッシュなコンクリート打ちっぱなしの家を実現した事例です。
南の庭まで見通せる、開放感のある大きな窓を設けた広々としたLDKは、建築基準法の耐震基準を上回る設計手法で耐震性能をしっかり確保。杉板の木目でかたどった、コンクリート打ちっぱなしデザインの間仕切り壁がおしゃれです。


陽光が移動することによる陰影の変化をふまえ、見る角度で変わる造形バランスまで考慮して設計されたコンクリート打ちっぱなしの家は、まるで美術館のような外観です。
2階上部まで伸びやかに続く玄関ホールは、コンクリート打ちっぱなしと白の壁に、ダークブラウンのシューズボックスが高級感を与えています。
コンクリート打ちっぱなしの家を検討するときに、後悔しないためのポイントや注意点を紹介します。
コンクリート打ちっぱなしの家の建築実績が豊富で、知識とノウハウがある建築会社に依頼することが、コンクリート打ちっぱなしの家で失敗しないもっとも重要なポイントです。
「コンクリート打ちっぱなしの家は、型枠を外したそのままが仕上がりになるため、美しく仕上げるには精度が要求されます。例えばコンクリートは柔らかいほうが流れやすく扱いやすいのですが、できるだけ堅いほうが仕上がりはよくなります。
かっこいいコンクリート打ちっぱなしの家にするには、設計士はもちろん、型枠大工や鉄筋工にも高い技術力が求められ、それには経験が必要になるのです」
コンクリート打ちっぱなしの家は、フッ素系のクリア塗装を塗布しておくと、汚れが付きにくくメンテナンス性が高まります。
「コンクリート打ちっぱなしの家は、昔は撥水剤で仕上げていました。しかし撥水剤は4年~5年で効果が切れてしまうため、汚れやカビで真っ黒になってしまうのが欠点でした。そのため今は、長期間防水効果が続く、フッ素系のクリア塗装を塗布するのが主流です」
フッ素系塗料の耐用年数は、15年~20年程度とされています。いつまでも美しいコンクリート打ちっぱなしの家にするためには、塗料が劣化する前に、塗装メンテナンスをするよう心掛けるとよいでしょう。
最後にあらためて川嶌代表に、コンクリート打ちっぱなしの家を検討中の方に向けてのアドバイスを伺いました。
「コンクリート打ちっぱなしの家は、デザイン性が高くなければかっこよくはなりません。また施工する職人にも高い技術力が必要なので、経験と実績が豊富な建築会社に依頼することが何よりも重要です。
ただ、住宅の建築価格は高騰しており、コンクリート打ちっぱなしの家を建てたくても予算的に厳しいと感じる方も増えています。そのようなときには、木造と組み合わせる『混構造』を検討してみるのもおすすめです。ただし混構造についても、高度な技術力が要求されるため、実績がある建築会社に相談するようにしてください」
コンクリート打ちっぱなしとは、外壁や内装にコンクリートの素材感を活かした家のこと
デザインがよくなければ、コンクリート打ちっぱなしにしてもかっこいい家にはならない
快適に暮らせるコンクリート打ちっぱなしの家にするには、内断熱が必要