おしゃれなコンクリート打ちっぱなしの家を建てたい!メリット・デメリットとその対策などを紹介【実例付き】

公開日 2024年05月30日
おしゃれなコンクリート打ちっぱなしの家を建てたい!メリット・デメリットとその対策などを紹介【実例付き】

マイホームはおしゃれなコンクリート打ちっぱなしの家にしたいけれども、夏は暑くて冬は寒いって聞くから心配……といった声をよく聞きます。コンクリート打ちっぱなしでも、快適な家にする工夫はあるのでしょうか? この記事では、コンクリート打ちっぱなしの家のメリットや、デメリットとその対策を、川島建築事務所の川嶌代表に伺い解説します。実際の建築事例、メンテナンス方法なども紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

「コンクリート打ちっぱなし」とはどんな家? いつからあるの?

コンクリート打ちっぱなしの家とは、具体的にどのような家を指し、いつ頃から見られるようになったのでしょうか。

コンクリート打ちっぱなしの家とは

「コンクリート打ちっぱなし」とは、RC(鉄筋コンクリート)造やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造で、外装や内装にコンクリートの素材感を活かした家を指します。

「RC造やSRC造の家は、鉄骨や鉄筋を組んで型枠で囲み、コンクリートを流し込んでつくられます。そして型枠を外したコンクリートの上に、タイルを張ったり、吹き付け塗装したりして仕上げるのが一般的です。一方、コンクリート打ちっぱなしは、型枠を外したそのままの素材感を活かして仕上げます」(川嶌代表/以下同)

コンクリート打ちっぱなしの壁
コンクリート打ちっぱなしは、型枠を外したそのままの素材感を活かして仕上げる(画像/PIXTA)

コンクリート打ちっぱなしの家はいつからある?

「コンクリートの家が日本で増えたのは、戦後のことです。当初は民間住宅ではなく、公共の建物にコンクリートが用いられていました。なおその当時は、今のような合板型枠ではなく杉板が使用され、そのデザインを活かすのが主流でした」

コンクリート打ちっぱなしの家のメリットは?

マイホームをコンクリート打ちっぱなしの家にすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

クールでスタイリッシュな見た目になる

コンクリート打ちっぱなしの家の魅力は、なんといってもその都会的でクールな外観です。シンプルでありながら、スタイリッシュな家づくりを楽しめます。

「コンクリート打ちっぱなしの家をかっこよく仕上げるには、そもそもの建築物としてのデザインがよいことが条件です。水平ライン・垂直ラインを意識したすっきりとしたデザインでなければ、コンクリート打ちっぱなしにしたからといって、かっこいい家にはなりません」

かっこいいコンクリート打ちっぱなしの家
建築物としてのデザインそのものが高いことがコンクリート打ちっぱなしの家をかっこよくする条件(画像提供/川島建築事務所)

耐用年数が長い

コンクリート打ちっぱなしの家は、RC造・SRC造であるため、木造の家に比べると耐久性が高く、耐用年数も長くなる傾向があります。

「鉄筋とコンクリートでつくられる打ちっぱなしの家は、耐久性は確かに高いといえます。ただ、日本は昔から木造建築が盛んで、法隆寺に代表されるように、一概に木造だから寿命が短いとはいえません。また、コンクリートそのものが100年以上もつとしても、住宅としての寿命も同じといえるかどうかは、設備も含めて考える必要があるでしょう」

木造や鉄骨造よりも広い空間をつくれる

RC造・SRC造の家は、木造や鉄骨造よりも柱と柱の間のスパン(距離)を長く取ることができます。そのため柱の少ない広い空間設計ができ、例えば開放的なLDKにするなど、住宅のデザインの自由度も高くなります。

耐震性・耐火性が高い

コンクリート打ちっぱなしの家の構造は、引っ張りに強い鉄筋と圧縮に強いコンクリートでできているため、強度が高いことが特徴です。そのため木造住宅と比べると、耐震性が高くなります。

また不燃材料のコンクリートでできた打ちっぱなしの家は「耐火建築物」となり、火災に強いため火災保険料も安く抑えられます。

コンクリート打ちっぱなしの家のデメリットは? 夏は暑いってホント?

コンクリート打ちっぱなしの家にはデメリットもあります。対策とあわせて紹介します。

建築費が高い

コンクリート打ちっぱなしの家は、一般的な木造や鉄骨造の住宅と比較して、建築費が高いことがデメリットです。

「近年、住宅の建築費は総じて高騰しています。RC造の家に関しても同様で、主材料となるセメントや鉄骨はもちろん、型枠に使う木材も高くなってしまいました。

また、人件費の高騰も、建築費に影響を与えています。とくに型枠を組み立てる型枠大工は、なり手が非常に不足しているのが現状です」

木造との「混構造」にするのも方法の一つ

「コンクリート打ちっぱなしにしたいけれども、予算が足りないときには、1階はコンクリート打ちっぱなし、2階以上は木造にする『混構造』を検討するのも方法の一つです」

混構造とは、木造と鉄骨造、木造とRC造など、異なる構造を組み合わせる建築手法を指します。シンプルですっきりしたデザインが魅力のコンクリート打ちっぱなしは、ガルバリウム鋼板(※)の外壁材と組み合わせるとスタイリッシュです。

※ガルバリウム鋼板は日鉄鋼板の登録商標です

RC造と木造の混構造の家
コンクリート打ちっぱなしとの混構造は、ガルバリウム鋼板の外壁材を組み合わせるとおしゃれ(元図提供/川島建築事務所 イラスト/上坂じゅりこ)

外気の影響を受けやすくなる

コンクリート打ちっぱなしの家は、そのままだと外気の影響を受け、夏暑くて冬寒い過ごしにくい家になってしまいます。これは、コンクリートは熱伝導がよく、外気の温度を室内に伝えやすいことが理由です。

「暮らしやすいコンクリート打ちっぱなしの家にするためには、『外気に接する壁』の断熱が必須です。外壁の断熱は外断熱と内断熱がありますが、外断熱にすると打ちっぱなしの外観にはなりませんし、費用も高額になります。そのため外気と接する外壁の室内側を断熱する、内断熱を選ぶのが一般的です」

コンクリート打ちっぱなしの家の断熱方法
コンクリート打ちっぱなしの家で快適に暮らすには、外壁の断熱が必要(イラスト/上坂じゅりこ)

コンクリート打ちっぱなしの家の内装は?

「コンクリート打ちっぱなしの家を内断熱にする場合、内側の壁は木造住宅と同様に好みの素材や色を自由に選べます。またその場合でも、外気と接しない間仕切り壁や天井は、打ちっぱなしそのままのデザインを楽しむことも可能です」

打ちっぱなしの内壁を楽しむ場合、黒と白のモノトーンでまとめるとコンクリートのグレーとあわせてスタイリッシュにまとまります。さらに金属素材をあわせるとインダストリアルでクールな雰囲気に。家具も素材感を楽しめるヴィンテージなものを選ぶと、無骨な打ちっぱなしの壁に映えるでしょう。

打ちっぱなしの家の外壁と間仕切り壁
内断熱をした場合でも、間仕切り壁は打ちっぱなしデザインを楽しめる(イラスト/上坂じゅりこ)

おしゃれでスタイリッシュなコンクリート打ちっぱなしの家を紹介!

ここからは、実際に建てられたおしゃれなコンクリート打ちっぱなしの家を紹介します。

地上3階、地下1階のクールなガレージハウス

コンクリート打ちっぱなしのガレージハウス
コンクリート打ちっぱなしのガレージハウス
外観は奥に向かって階段状にデザインされているため、奥行き感を感じられる(画像提供/川島建築事務所)

大好きな車とともに暮らせるガレージハウスを、地上3階、地下1階のコンクリート打ちっぱなしの家で実現した事例です。居住面積を上へ広げることで土地の費用を抑え、そのぶん建物へと配分しました。

2階のLDKは、柔らかく光を拡散させる白い壁と白いタイルの床に、打ちっぱなしデザインの天井。そこに黒のTVボードを配置することで、きりりと引き締まった印象を与えています。

高低差がある土地の特徴を活かしてデザインされた打ちっぱなしの家

高低差を活かした打ちっぱなしの家
高低差を活かした打ちっぱなしの家
高い断熱性能を持たせた家は冬暖かく、夏は自然換気だけでも涼しく過ごせる(画像提供/川島建築事務所)

通りから奥に向かって1.5mの高低差がある土地に、自分たちが理想とするスタイリッシュなコンクリート打ちっぱなしの家を実現した事例です。

南の庭まで見通せる、開放感のある大きな窓を設けた広々としたLDKは、建築基準法の耐震基準を上回る設計手法で耐震性能をしっかり確保。杉板の木目でかたどった、コンクリート打ちっぱなしデザインの間仕切り壁がおしゃれです。

美術館を思わせるアーティスティックな外観のコンクリート打ちっぱなしの家

高低差を活かした打ちっぱなしの家
美術館のような打ちっぱなしの家
ガーデンエリアは外壁材と同じコンクリート造にすることで、デザイン性を高めた(画像提供/川島建築事務所)

陽光が移動することによる陰影の変化をふまえ、見る角度で変わる造形バランスまで考慮して設計されたコンクリート打ちっぱなしの家は、まるで美術館のような外観です。

2階上部まで伸びやかに続く玄関ホールは、コンクリート打ちっぱなしと白の壁に、ダークブラウンのシューズボックスが高級感を与えています。

コンクリート打ちっぱなしの家で後悔しないためのポイントや注意点

コンクリート打ちっぱなしの家を検討するときに、後悔しないためのポイントや注意点を紹介します。

コンクリート打ちっぱなしが得意な会社に依頼する

コンクリート打ちっぱなしの家の建築実績が豊富で、知識とノウハウがある建築会社に依頼することが、コンクリート打ちっぱなしの家で失敗しないもっとも重要なポイントです。

「コンクリート打ちっぱなしの家は、型枠を外したそのままが仕上がりになるため、美しく仕上げるには精度が要求されます。例えばコンクリートは柔らかいほうが流れやすく扱いやすいのですが、できるだけ堅いほうが仕上がりはよくなります。

かっこいいコンクリート打ちっぱなしの家にするには、設計士はもちろん、型枠大工や鉄筋工にも高い技術力が求められ、それには経験が必要になるのです」

外部はフッ素系のクリア塗装で仕上げる

コンクリート打ちっぱなしの家は、フッ素系のクリア塗装を塗布しておくと、汚れが付きにくくメンテナンス性が高まります。

「コンクリート打ちっぱなしの家は、昔は撥水剤で仕上げていました。しかし撥水剤は4年~5年で効果が切れてしまうため、汚れやカビで真っ黒になってしまうのが欠点でした。そのため今は、長期間防水効果が続く、フッ素系のクリア塗装を塗布するのが主流です」

フッ素系塗料の耐用年数は、15年~20年程度とされています。いつまでも美しいコンクリート打ちっぱなしの家にするためには、塗料が劣化する前に、塗装メンテナンスをするよう心掛けるとよいでしょう。

コンクリート打ちっぱなしの家はデザインが重要! 経験豊富な建築会社に依頼しよう

最後にあらためて川嶌代表に、コンクリート打ちっぱなしの家を検討中の方に向けてのアドバイスを伺いました。

「コンクリート打ちっぱなしの家は、デザイン性が高くなければかっこよくはなりません。また施工する職人にも高い技術力が必要なので、経験と実績が豊富な建築会社に依頼することが何よりも重要です。

ただ、住宅の建築価格は高騰しており、コンクリート打ちっぱなしの家を建てたくても予算的に厳しいと感じる方も増えています。そのようなときには、木造と組み合わせる『混構造』を検討してみるのもおすすめです。ただし混構造についても、高度な技術力が要求されるため、実績がある建築会社に相談するようにしてください」

まとめ

コンクリート打ちっぱなしとは、外壁や内装にコンクリートの素材感を活かした家のこと

デザインがよくなければ、コンクリート打ちっぱなしにしてもかっこいい家にはならない

快適に暮らせるコンクリート打ちっぱなしの家にするには、内断熱が必要

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取材・文/佐藤カイ(りんかく) イラスト/上坂じゅりこ
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