これから一軒家を建てる予定の人は、固定資産税がどれくらいかかるかは気になるポイントだと思います。ここでは、不動産コンサルタントの田中歩さんのお話をもとに、固定資産税の計算方法や軽減措置について解説します。
新築一軒家の例を用いて、土地、建物それぞれの固定資産税額のシミュレーションも紹介。「一戸建ての固定資産税の平均額はどれくらい?」と疑問に思っている方も、ぜひ参考にしてください。
固定資産税とは、土地や家屋、償却資産などの固定資産にかかる税金のことを意味します。固定資産税における家屋には、人が居住する住宅以外にも、店舗や工場、倉庫などの建物まで含まれます。この記事では、家屋にかかる固定資産税は、住宅に焦点を絞って解説していきます。
「1月1日の時点で土地や建物を所有していると、翌年の4月に納税通知書が届き、固定資産の所在する市区町村へ固定資産税を納める決まりになっています。なお、固定資産の一つである償却資産は機械や工具といった事業用資産を意味します。そのため、自己居住用の一軒家の固定資産税を算出したい場合には特に関係ありません」(田中さん、以下同)
一軒家を所有するということは、建物だけでなく土地も所有するということ。つまり、建物と土地、両方に固定資産税が発生するため両者を合算することで、納税すべき金額が明らかになります。一般的な一軒家の固定資産税額は、首都圏の場合、年間十数万円程度が多いようです。(2024年現在)
また、一軒家の固定資産税評価額は築年数の経過とともに下がっていくのが一般的です。総務省が公表している固定資産評価基準によると、築年数1年後には、新築時の80%ほどまで評価額が下がるとされています。
固定資産税についてもっと詳しく
→固定資産税とは?計算方法や安くなるコツ(減免措置)、いつ、どのように払う?
固定資産税の税額は、「固定資産税評価額」または「課税標準額」に自治体が定める税率をかけることで算出できます。ほとんどの場合、固定資産税の税率は1.4%になっています。具体的な計算式については後述します。
固定資産税評価額は、土地や家屋などをどのように評価するかを定めた「固定資産評価基準」に基づいて各自治体が決定したものです。
家屋(一軒家)の評価額は、主体構造や屋根、外壁などに使用されている建築材料や、キッチン、トイレなどの建築設備を自治体の担当者が実地調査、もしくは建築関係書類により把握して算出します。中古の一軒家の場合は、経年劣化の程度も評価材料の一つとなります。
一方、課税標準額とは税率をかけて固定資産税を算出するもとになる金額のことを意味します。通常、固定資産税評価額と課税標準額は同額となりますが、住宅用地特例や新築住宅特例といった軽減措置の特例が適用される場合は、課税標準額が固定資産税評価額よりも低い金額になります。
固定資産税評価額についてもっと詳しく
→固定資産税評価額とは?知っておきたい計算方法や見方、調べ方
「固定資産税は、各市町村から土地や家屋の所有者に届く納税通知書や、役所で閲覧できる固定資産課税台帳で確認できます。中古住宅であればすでに算出されているため、確認は難しくありません。不動産会社の担当者に聞くと教えてもらえる場合もあります。
新築住宅をこれから建てる場合は、完成後に自治体の調査が入るまでは家屋の課税標準額が明らかになりませんが、一般的には建物の請負工事金額の60%ほどの金額が目安といわれています。また、土地の課税標準額の目安は公示価格の70%ほどになります。これはあくまでも目安の数値であり、変動する可能性はあります」
固定資産税評価額は全国的に3年に一度の周期で見直しが行われます。この見直しのことを「評価替え」、評価替えをする年度を「基準年度」といいます。
「直近では令和6(2024)年度は評価替えが行われ、基準年度となります。令和7(2025)年度、令和8(2026)年度は原則として基準年度の価格が据え置きになります」
基準年度でなくても、建物を増築した場合などには評価替えが行われる場合があります。
固定資産税を算出する計算式は以下の通りです。
課税標準額 × 税率
税率は各自治体が自由に決めることができますが、多くの自治体では国の標準税率である1.4%を採用しています。
一軒家の場合は、土地と建物の固定資産税をそれぞれ求めて合算します。
以下は土地と建物の固定資産税評価額の目安となります。
固定資産税評価額は、土地のある場所や形状、道路の状態、家の規模や構造、築年数によっても変動します。
居住用の住宅を新築する場合、一定の条件を満たすと、土地と建物それぞれに固定資産税の軽減措置が適用されます。
一軒家やマンションなど、人が居住するための家屋の敷地として利用される土地を「住宅用地」といいます。(東京都では、その土地の上に存する建物面積の10倍までの土地とされています。また併用住宅の場合にはいくつかの要件があります。)
住宅用地には「住宅用地の特例」という措置が適用され、固定資産税が軽減されます。
土地に住宅用地の特例が適用される場合、課税標準額の軽減率は以下の通りです。
なお、住宅用地の特例措置には注意点があります。
「住宅の建設予定地であったとしても、1月1日の時点で家屋が完成しておらず、登記も完了していない土地は住宅用地として認められず、特例措置の対象外です。そのため、家を建てる場合は年をまたがずに建物が完成したほうが、固定資産税が安くなります。ただし、住宅の建て替えのために家屋が建築中である土地に関しては、一定の要件を満たせば住宅用地として認められる場合もあります。詳しくは土地のある市区町村の担当窓口に確認してみましょう」
床面積が50m2以上280m2以下の新築住宅を購入または建築する場合は、新築住宅特例措置の対象となります。建物を新築してから3年間は建物部分の120m2までの固定資産税が1/2に軽減される特例措置です。(3階建て以上の耐火・準耐火建築物は5年間)
また、長期優良住宅の場合は5年間になります。(3階建て以上の耐火・準耐火建築物は7年間)
この場合、長期優良住宅認定通知書またはその写しを提出する必要があります。
新築住宅特例の対象となるのは令和6年(2024年)3月31日までに新築された住宅でしたが、令和6年度税制改正により、期限が令和8年(2026年)3月31日まで延長となりました。
期間 | 固定資産税 | |
---|---|---|
一般住宅 | 3年 | 課税標準額×1/2×税率 |
長期優良住宅 | 5年 |
新築住宅特例にも注意点があります。土砂災害特別警戒区域など特定の土地に家を建てると適用対象外になる可能性があるため注意が必要です。軽減措置の適用条件にあてはまるかどうかは、不動産会社の担当者や自治体の窓口に確認しましょう。
「固定資産税の軽減措置を受けるには、住宅が所在する自治体に必要書類を提出し、申告を行う必要があります。軽減措置を受けるためには新築した年の翌年(1月1日新築の場合はその年)の1月 31 日までに申告が必要です。家を建てたらすみやかに申請手続きを済ませましょう」
ここからは、一軒家の固定資産税のシミュレーションを紹介します。
条件
(※)土地の購入価格が公示価格並みであると仮定しています。実際は公示価格より高い価格である場合も多いので、詳細は不動産会社の担当などに聞いてみるとよいでしょう。
固定資産税評価額の概算
適用される特例措置
固定資産税の計算式
土地
1400万円(固定資産税評価額)× 1/6(小規模住宅用地の特例) × 1.4% = 約3.26万円
建物
1800万円(固定資産税評価額)× 1/2(新築住宅特例措置)× 1.4% = 12.6万円
固定資産税額
約3.2万円(土地)+ 12.6万円(建物)= 約15.8万円
条件
(※)土地の購入価格が公示価格並みであると仮定しています。実際は公示価格より高い価格である場合も多いので、詳細は不動産会社の担当などに聞いてみるとよいでしょう。
固定資産税評価額の概算
適用される特例措置
土地の固定資産税の計算式
小規模住宅用地の課税標準額:1050万円(固定資産税評価額)×(200m2 ÷ 250m2)× 1/6(小規模住宅用地の特例)= 140万円
一般住宅用地の課税標準額:1050万円(固定資産税評価額)×(50m2÷250m2)× 1/3(一般住宅用地の特例)= 70万円
土地の課税標準額 = 140万円 + 70万円 = 210万円
土地の固定資産税 = 210万円(課税標準額)× 1.4% = 約2.9万円(29400円)
建物の固定資産税の計算式
新築住宅特例適用範囲の課税標準額:1500万円(固定資産税評価額)×(120m2÷150m2)× 1/2(新築住宅特例措置)= 600万円
新築住宅特例適用範囲外の課税標準額:1500万円(固定資産税評価額)×(30m2÷150m2)= 300万円
建物の課税標準額 = 600万円 + 300万 = 900万円
建物の固定資産税 = 900万円(課税標準額)× 1.4% = 12.6万円
固定資産税額
約2.9万円(土地)+ 12.6万円(建物)= 約15.5万円
固定資産税の税額は、毎年4月頃に送付されてくる納税通知書に記載されています。納付回数は一括または分割(4回)を選択できます。納付書に記されている期限までに納付しましょう。納付期限を過ぎた場合、自治体から延滞金を請求される可能性もあります。
固定資産税は、納税通知書に同封されている納付書を使ってコンビニや金融機関で支払うのが一般的です。自治体によってはクレジットカードで納付することも可能です。コンビニや金融機関まで足を運ぶ手間は省けますが、手数料がかかることが多いです。
また、手続きをすることで口座振替も利用できます。口座から自動的に固定資産税が引き落とされるため、納付忘れを防げるというメリットがあります。
固定資産税の支払い方法についてもっと詳しく
→固定資産税は、PayPayなどのQRコード決済や電子マネー、クレカでも納税できる。注意点は?
最後に、住まいの固定資産税をシミュレーションする上で大切なことを田中さんに伺いました。
「一軒家の固定資産税を計算する場合、土地と建物両方の固定資産税評価額を調べたり、固定資産税の軽減措置についても知る必要があります。固定資産税の計算は土地や家の性質によって変わってくるため、分からないことがあれば、不動産会社の担当者をはじめ、税理士やファイナンシャルプランナー、不動産コンサルタントといった住まいの専門家を頼りましょう」
土地や家屋などの不動産を所有している人は、固定資産税を納付する義務がある
「住宅用地特例」や「新築住宅特例」といった固定資産税の軽減措置がある
一般住宅は新築から3年間、長期優良住宅は5年間、固定資産税が軽減される